昨日は、何をしていたんだろう。
告知から今日で二日目。時間の感覚が無い。
寝ていたのか、起きていたのかよくわからない。
昨日、今日と兄や妹、兄のように慕っている友人みんなが俺に会いに来た。皆が俺を励ますが、、励ましは・・・キツイ。
励ましに対してうなずいてはいるがキツイんだよな。

オヤジが俺に丸山ワクチンをすすめてきた。それで助かった人がいるらしい。末期患者で。俺と一緒か。ただ、いいか悪いかわからない。全ての人が効くってもんでもない。でも、今の俺にはそれしか残っていないのか?もう一つ、オヤジは俺に他の病院で検査をするように言ってきた。ガンセンター。なんでも知り合いの伝で良い医者を紹介してもらったという。この2日間、オヤジはかなり動いていたんだな。

選択肢、他にはないのか?
海の物とも山の物ともわからないような民間医療。
それしか道はないのか?
アメリカはガン研究でも最先端だ。実験台になってもいいから新しい薬、治るかもしれない薬を俺の体を使って投与して欲しい。ただ、海外へ行く体力がある間に向こうへ行かなくてはならないが。

嫁にパスポートを調べさせる。なんとか、有効期限はある。あとは、どこの病院でするかだ。ただ、かなり難しいようだ。。。しかもお金だってかかる。

ふ・・とよぎる。
出来れば蓄えは、俺が死んだあとに嫁と子供に残しておきたい。その半面、、お金より俺の命を優先したい気持ちもある。

当然、こんな事を話したら嫁に怒られた。
病人の俺を叱る嫁も嫁だが
「治ったらまた貯めればいいでしょ?貯えがなくなったら、私が働くし。」お願いだから、お金の心配はしないでくれと言われた。

仕方ない。でも、色々な事が次から次へと俺の頭をよぎるんだから。仕事だってそうだ。やっと昼の仕事に慣れてきて、やりがいも、先も見えてきていたのに。

仕事を休む事になったので、昨日、俺は社長に電話をした。社長は、俺がホストとして働いていた時の先輩だ。今は、雑誌、不動産、飲食店経営、、と手広く成功している。
俺が夜から引退したいと話した時、直ぐに

「俺のところに来いよ。待ってたんだぞ」

そう言ってくれた人だ。迷惑かけるのが心苦しい。

内容を話した。出来れば話したくはなかった。社長の奥さんも2年前、ガンで亡くなっているから。

夕方、社長が来た。嫁とは、初対面だ。実は、俺の結婚式には、昔のホスト関係者は、1人もよんでいなかった。嫁は俺の仕事を知っていたが、ホスト関係者には、、内密にしていた。狭い世界だから、どこでバレるかわからない。現役ではないにしろ、俺に恨みをもってる人間だっている。そう、あんまり褒められた事、してきていないから。

見舞いに来てくれた社長は、俺にお金の事は心配するなといってくれた。治るまで、給料を出してくれると・・・。申し訳ない。でもとても嬉しかった。

「沢村、そのかわり、治ったら倍働けよ(笑」

そう言ってくれた。次に何か待っている・・・そういう事を残してくれるというのは、どんな励ましよりも良いのかもしれないな。そう感じた。

玄関の外まで嫁が社長を見送りに行った。なかなか帰って来ない。きっと、色々、俺の前じゃ話せない事があるのだろう。俺の前じゃ、社長も聞き難い事があるんだろう。疑心暗鬼にはなっていないが、今の俺も、病気について色々目の前で話されるのは嫌だ。

兄として慕っている友人の伊藤さんも、お見舞いに来てくれた。今も現役で競輪選手として頑張っている。クラスはS級ではないけど。俺が好きな食べ物を色々持って来てくれた。ガンにいいと言われているお茶も。あんなに大好きだった、あの店のサンドイッチ。見た瞬間、吐き気がした・・・。ただ、せっかく持って来てくれたんだ。

「今、腹減っていないっすよ。後で食べますわ」

そうごまかした。

皆が心配してくれるのはとても有り難い。

ただ、凄く孤独感を感じる。

皆が帰ったあとで、息子がいない事に気づいた。
1週間、嫁の妹の家で預かってもらうそうだ。
離れるのは寂しいが俺がこんな精神状態だ。
少し、、ホッとした。強い父でいたいから。泣き言言えないしなぁ、、子供の前じゃ。嫁と二人だけなら、さらけ出せる。子供には可哀想な事をしてると思うが、

そこまで余裕がない。。