短編童話「大事な仕上げの味付けは?」

「さあ、これでごはんのできあがり!」とお母さんが思ったときでした。

「大事な味付けを4つも忘れているよ」とどこからか声がしました。
びっくりしてあたりを見まわすと、
かわいい天使くんがニコニコしてこちらを見ているのです。

「大事な味付け?」お母さんは聞き返しました。

「そう、大事な味付けが足りないんだよ。僕が仕上げの味付けを教えてあげよう」

そう言って天使くんはタクトを取り出して、ひとふりしました。
すると玄関から
「ただいま!」とケンちゃんの声。
「ただいま!」とお姉ちゃんの声。
「ただいま!」といつもは残業で帰りの遅いお父さんまで、会社から帰ってきたのです。
「おなかがすいた! 早く食事にしようよ」ケンちゃんが言いました。
家族がそろって食事なんて何ケ月ぶりでしょう。

天使くんはお母さんに言いました。
「これが1つめの味付けだよ。みんながそろって食べることさ。
 さて次の味付けは・・・・・」

そう言って天使くんがまたタクトを振ると、
今度はお父さんがニコニコして言いました。

「このハンバーグおいしいな! 一口食べるとお母さんの愛情が、 からだいっぱいに広がっていくぞ!」

いつもはごちそうさましか言わないのに、お父さんがこんなことを言うなんて
新婚の時以来です。お母さんはとってもうれしくなって、明日からますます
おいしいものが作れそうな気がしました。

「これが2つめの味付けだよ。ほめられると ますますおいしいものが作れるのさ」

みんなが笑顔で食卓を囲み、本当に楽しいひとときでした。
しばらくしてお母さんは時計を見ました。
何だか、だいぶ時間がたっていたような気がしましたが、
まだ5分しかたっていませんでした。
天使くんはこっそりささやきました。

「食事の間だけ、ゆっくり時間が進むようにしてあるんだよ。
 時間を気にしないでゆっくり食べることが3つ目の味付けなんだ」

そう言ってから天使くんはもう一度タクトを振ると、どこかへ消えてしまいました。

「こんなおいしいものが食べれるなんて とっても幸せだね」
とケンちゃん。

「でも、なかなか食べることができない国に住んでいる人も  たくさんいるんだよ」
とお父さん。

「世界中のみんながこんなふうにおいしいものが食べられるといいね」
とお姉ちゃん。

みんながそう思いました。
他の人のことも思いやることができるという天使くんの4つ目の味付けでした。

この童話は 次男が おなかにいた頃 つわりの最中に
 通販「フェリシモ」で 台所に関するエッセイや童話、
その他を募集していた時に 応募したものです。

その作品集の中に選ばれるだけでも いいなぁなどと軽い気持ちで
応募したこの童話、何と審査員「桐島 洋子賞」の次点になりました。
(次点というか 総評に「消去法で残った2点のうち・・・」という桐島さんの文章に
大賞の方と私の名前がありました。)

桐島洋子さんの総評は
「内容的には大事なところを押さえているのですが、教訓がナマすぎて
 童話とはいえ、ちょっと気恥ずかしい気がします」とのこと。
ありがたき プロのお言葉。

でも私にとっては 自分の書いたものが はじめて本の中に収録されたと いう驚きと
喜びの方が 大切な宝物でした。


わんだほキッチン