男性不妊用語集

男性不妊の種類 → 検査 → 治療 → 薬品の順番で掲載しています。


男性不妊の種類
名称 説明・原因 診 断 治 療
乏精子症 精子濃度2000万/ml以下 精液検査 薬物療法・IVF・ICSI
精子無力症 精子の運動率50%以下 精液検査 薬物療法・AIH・IVF・ICSI
精液減少症 一回の射出精液量が2.0ml以下 精液検査 薬物療法・AIH・IVF・精子回収によるICSI
精子奇形症 正常精子形態率が30%以下 精液検査 頭部奇形の無い精子を選別してICSI
無精液症 精液が全く出ない状態。
原因は性機能障害や糖尿病や直腸がんの手術、脊髄損傷など。
問診 薬物療法・AIH・IVF・精子回収によるICSI
精子死滅症 精子濃度は十分だが射出された精子が全て死んでいる状態。
原因は精子形成の異常か体内の分泌液に異常があり死滅してしまう場合がある。

精液検査
精子生存性試験
精子回収によるICSI
精子不動症 精子濃度は十分で精子は生きているにもかかわらず運動率が0%の状態。
精子尾部の構造に問題がある場合がある。
精液検査
精子生存性試験
HOSテストで生きている精子を選別してICSI
無精子症 精液中に精子が1匹も居ない状態 精液検査 下記の「閉塞性無精子症」「非閉塞性無精子症」を参照
閉塞性無精子症 造精機能に問題は無いが、精管などに障害があり精子が出られない状態。
無精子症のうち2割を占める。

原因はそけいヘルニア・精管欠損症や性病による精管のつまりなど
触診・血液検査
FSH値が正常で精巣の大きさが標準の場合診断されます。
精路再建手術・精子回収によるICSI
非閉塞性無精子症 造精機能が低下している状態。
無精子症のうち8割を占める。

原因は性器の外傷や高熱、おたふくかぜ、染色体異常・遺伝子異常など
触診・血液検査
FSH値が上昇していて精巣が小さい場合診断されます。
精子回収によるICSI
精索静脈瘤 精巣のまわりに血液が溜まり温度が上がることによって造精機能が下がっている状態。
超音波検査・触診
静脈瘤が大きい場合は違和感や痛みがあったり、勃起時にみみず腫れのように浮き上がり自己判断がつく場合も。
薬物療法・静脈瘤除去手術・AIH・IVF・ICSI
逆行性射精 精子が射出されず、膀胱に逆流する病気。
原因は糖尿病や直腸の手術の神経障害や前立腺の手術による機能不全など
問診・尿中精子検査
精液が出ないか非常に少ない・射精感はあるのに精液が出てこないなどはこの病気が疑われます。尿中に精子が発見されれば診断されます。
薬物療法・尿中精子回収によるAIH・IVF・ICSI
遺伝子・染色体異常 受精の段階で異常を起こし、生まれつき生殖にまつわる遺伝情報が欠失していたり精子の形成に異常を来たしたりする。
下記のクラインフェルター症候群とロバートソン転座は男性不妊で特に多いもの。
他には46XXmale・47XYY・Y染色体構造異常・相互転座・逆位・リング染色体などがある。
染色体検査
遺伝子検査
遺伝子や染色体の異常を根本から治す事は現代の医学では不可能ですが、精子回収が出来ればICSIが出来ます。
クラインフェルター症候群 性染色体異常の一種。
通常よりもX染色体が一本余分にあるため造精機能障害を起すと言われている。
染色体検査 同上
ロバートソン転座 常染色体異常の一種。
通常二本一組である染色体が一本に融合し、染色体の数が正常よりも一本少ない45本になっている状態。
男性不妊では13番と14番染色体で融合を起している事が多く、作られる精子に遺伝子・染色体異常が起こる可能性が高い。

染色体検査
遺伝子検査
同上
停留精巣(睾丸) 本来陰嚢にあるべき精巣がうまく下降していない状態。本来母親の胎内に居る間に精巣は降りて来るものなので、幼少期に手術を受けて精巣を陰嚢内に戻さないと乏精子症や無精子症の原因になります。 触診 精巣の位置を正しい位置に戻す手術を受ける。
ヤング症候群 気管支の拡張と副鼻腔の炎症という症状があり、両側精巣上体の閉塞を伴い閉塞性無精子症となる病気。 問診 「閉塞性無精子症」を参照
脊髄損傷 事故などで起こった脊髄損傷により下半身がマヒし何年も経つと精巣の機能が落ちてきて、勃起障害、逆行性射精、造精機能障害を引き起こします。 問診 障害の程度により精子回収によるAIH・IVF・ICSI
性機能障害 勃起障害、射精障害など。
4回に3回セックスがうまくいかない場合に診断されます。
原因は心理的な要因と、神経や内分泌系に障害がある器質性障害があります。
問診 薬物療法、陰茎の血行再建手術、勃起補助療法
前立腺炎 前立腺に炎症が起こり、精液に白血球が混入し精子の状態を悪くしている状態。 精液検査 薬物療法
男性不妊の検査
名称 検査方法・説明 ポイント
問診 質問用紙に記入します。 不妊症に関係するホルモンに作用する薬品を服用していないか、喫煙、飲酒、性腺機能(性欲など)、無精子症に関係する疾患の病歴などが無いか
視診・触診 ベッドの上に横になり、下着を膝まで下げて診察します。 体毛の生え方→男性ホルモンの分泌が正常かどうか

そけいヘルニアや腹部手術の傷が無いか→それらは閉塞性無精子症の原因になります

陰嚢の皮膚疾患が無いか→皮膚疾患があると陰嚢の温度が上がり機能が下がる

陰嚢がぶらんと下がっているか→下がっていないと陰嚢の温度が上がり機能が下がる

精巣の大きさのチェック→大きさは造精機能のバロメーターと言われています。

精巣のかたさ→張りがあるのは正常、やわらかいのは造精機能に問題がある場合がある。固すぎる場合は精巣ガンの疑いあり。

精管の有無→精管が欠損していないかどうか。

しこりの有無→精索静脈瘤や腫瘍がないかチェック。
陰嚢超音波検査 陰嚢にゼリーを塗りブローブを当てて超音波検査 精巣容積測定、腫瘍の有無、精索静脈瘤の有無、精巣の血流のチェック
精液検査 病院で配布されたカップにマスターベーションで採取する。持込の場合は1時間以内に、精子は寒さで運動率が下がったり死滅する事があるので寒い時期は妻の胸に挟んで保温して持ち込むなどの対策をしないと正確なデータが出ない事もあります。コンドームには殺精子剤が入っているので使わない事。採取専用のコンドームを配布してくれる病院もあります。 外見→乳白色、不透明が正常。透明な場合は無精子症、黄色かったり血が混ざっている場合は白血球が多い(炎症を起している)事が疑われます。

精液量→正常2ml以上。それ以下の場合は逆行性射精や前立腺の疾患が疑われます。

粘稠性→正常な場合は糸をひかない。

精子濃度→正常値2000万個/ml以上。

正常形態精子率→奇形精子がどれだけ居るのか染色をしてチェックします。正常値は30%未満。

クルーガーテスト→Type1〜Type6まで精子を評価し、Type1(良好精子)が14%居るのが正常とされています。
精液検査(特殊検査) 同上 ハムスターテスト→ハムスターの卵子にヒト精子を侵入させる事で精子の受精能力を測る検査。15%〜30%が正常。

アクロビーズテスト→精子の頭部に含まれている酵素を調べ、受精能力を確かめるテスト。

精子生存性検査→動かない精子が多数居る場合に、その精子が生きているか死んでいるか染色して確かめるテスト。生きている精子が75%以上が正常。

HOSテスト→精子を浸透圧の低い液の中に入れると尾部の構造が変化する事を利用して良好精子を選別出来ます。ICSIの際に用いる精子が少ない場合などに行われます。
ホルモン検査 血液検査 FSH(卵胞刺激ホルモン)→造精機能の目安となります。正常値よりも高すぎても、低すぎても造精機能に影響します。

LH(黄体化ホルモン)→男性ホルモンの分泌を促すホルモン

PRL・プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)→免疫系の機能に作用し、造精機能が妨げられたり勃起障害の原因になる場合もある。

TEST(テストステロン)→精巣内の細胞から分泌される為、正常値でない場合は精巣自身にダメージがある事が推測されます。
抗精子抗体検査 血液検査、精液検査(男性の場合) 抗精子抗体は男女それぞれにあり、抗精子抗体は精子の運動率、受精率を阻害します。
TESE(精巣生検・精巣内精子回収法・バイオプシー) 精液検査で無精子症と確定した場合に行われる。陰嚢を切開し精巣を露出し精巣組織を採取し、精巣内の精子を探す検査(手術)。
精子が居るか確かめるだけでなく、見つかった精子は凍結してICSIに使用するという治療のひとつでもある。
閉塞性無精子症の場合は精巣の何処の部分でも精子を作っていて、ほぼ前例で精子を回収する事が出来ます。非閉塞性無精子症の場合、従来は何箇所もの精巣組織を採取しても精子が回収出来る可能性は4割程でしたが、近年は精子を作っている部分の精細管が太くなっている性質を利用して、顕微鏡で太い精細管を探すマイクロセダクションという方法で約6割の精子回収が出来るようになりました。
精管精嚢造影 陰嚢の皮膚に麻酔をして精管の内容物を吸引し、その後精管に造影剤を注入してレントゲン写真を撮影する。 無精子症で逆行性射精ではなく、TESEで精巣内に多数の精子が認められる場合に、閉塞部位を調べるために行われます。検査結果によっては精管再建手術が可能かどうかも調べられます。しかし造影剤が体内で固まってしまう場合もあり、陰嚢を切開して行う大変な検査なので近年はあまり行われていないそうです。
染色体検査 血液検査 血液中のリンパ球だけを取り出し培養液の中で72時間培養した後染色をして、精子に関する染色体に異常が無いか調べます。
遺伝子検査 血液検査 血液中のリンパ球からDNAを抽出し、染色体検査だけでは分からない微妙な遺伝情報の欠失や遺伝病などが無いか調べます。
尿中精子検査 射精した後に採尿し精子が居ないか調べる。 精液検査をした時に精液量が少ない場合や、精液が出ない場合に行います。尿中に精子が多数発見される場合は逆行性射精と診断されます。
男性不妊の治療
名称 説明 備考
手術療法 精索静脈瘤を取り除いたり、閉塞性無精子症の精管再建手術など 精索静脈瘤の手術の場合、6〜8割の方が精子の状態が改善されますが再発の可能性もあり、精管再建手術は術後自然妊娠が可能になるかどうかは個人差があります。夫婦の年齢を考慮して行うのが望ましいと思われます。
薬物療法 下記の「男性不妊で使用される薬」参照
精子回収法 精巣内精子回収法(TESE)→(上記の「男性不妊の検査」参照)

精巣内精子吸引法(TESA)→精巣に針を刺して精子を回収する。

膀胱内精子回収法→逆行性射精の場合に行う、膀胱を洗浄した後にマスターベーションを行った後の尿から精子を回収する。

精巣上体精子回収法(PESA)→精巣上体に針を刺して精子を回収する。
TESAやPESAは陰嚢切開の必要が無いため、検査的に行われる事もあります。
多くの精子回収が期待できる為、精子回収法はTESEが主流になっていると思われます。
人工授精(AIH) 夫の射出精子を妻の子宮内にチューブを使って直接送り込む方法 2000万/ml以上の精子濃度が必要です。成功率は1周期あたり5%〜20%と言われています。
体外受精(IVF) 排卵誘発の後採卵された卵子に精子を加え培養し、成長した胚を子宮内に移植する。 1000万/ml以上の精子濃度が必要です。成功率は1周期あたり20%〜30%と言われています。
顕微授精(ICSI) 排卵誘発の後採卵された卵子の卵細胞の中に精子を一個注入して受精させ、成長した胚を子宮内に移植する。 数個の精子さえあれば可能な方法です。
成功率は1周期あたり20%〜30%と言われています。
男性不妊で使用される薬
適応 薬品名 作用
FSH値の軽度上昇 クロミッド・セロフェン(服用)

FSH・LH値を上昇させ造精機能を上げる
FSH・LHの低下 パーゴグリーン・ヒュメゴン・プロファシー(注射) FSH・LH値を上昇させ造精機能を上げる
高プロラクチン血症 テルロン・パーロデル(服用) プロラクチン値を下げて造精機能を上げる
精子数・運動率が少ない 運動率増加→補中益気湯(服用)

精子数増加→八味地黄丸・牛車腎気丸・メチコバール(ビタミンB12)(服用)

運動率、精子数増加→ユベラ(ビタミンE)・カリクレイン(服用)
精子数、運動率の改善
前立腺炎 フルマーク・ミノマイシン(服用) 炎症を鎮める
精索静脈瘤 桂枝茯苓丸(服用) 炎症や鬱血を取り除く
性病による精管通過障害 冠脈通塞丸(服用) 精管の炎症を鎮める
抗精子抗体が陽性 プレドニン(服用) 免疫を抑える
勃起障害 バイアグラ(服用) 陰茎海綿体に直接作用し勃起を持続させる