足助町に通い始めて1年余。過ぎゆく季節とともに変わるまちの姿は「足助"外様"歳時記」で逐次報告してきたが、季節とは関わりない山里あすけならではの風習や伝統、生活規範がある。それは都市生活からすれば鬱陶しく感じられるものも多い。こうした足助ならではの生活を見たまま、気が付いたまま綴ってみたい。
 良好な環境やコミュニティを求めて、足助町への定住を希望する人も多い。しかし、足助の側から見ると、定住者の手前勝手な思いこみや甘えがあり、地元の人に迷惑をかけたり不愉快な気持ちにさせているケースも見られる。こうしたことの回避にもつながればと思う。
 なお、「足助町 罵詈雑言」というタイトルにしたが、悪口を書き連ねようという意図ではなく、外様ゆえに気付いたことを書くことが、愛する足助のためになるとの思いを持ちつつ、あえて刺激的なタイトルとしてみた。筑紫哲也の「多事争論」に掛ける意識も。ご理解ください。
市町村合併 ●葬祭 ●祭りと氏神 ●農作業 ●炭焼きと山仕事 ●地域計画・集落計画 ●子育てと教育 ●交通機関 ●区費 ●光ファイバとテレビ事情 ●けものの害 ●お役と地域行事 ●ケーキ屋(商業施設) ●区長・伍長 ●草刈り ●がんどうち ●消防団


●市町村合併
 足助町は今、豊田市及びその周辺の5町村との市町村合併に向けての動きが急である。既に平成14年度から研究会を設置して検討を重ねてきたが、15年秋の住民アンケート等を経て、11月に豊田加茂合併協議会が設立。平成17年3月の合併をめざす。合併の形は豊田市への吸収合併、新市名は豊田市、市役所の位置は現豊田市、ということで合併後は人口40万人の大都市の一部となってしまう。世界的大企業トヨタ自動車のお膝元として、今も人口増加を続け、財政状況も格段に優れる豊田市と、4割を切る財政指数と過疎化・人口減少が続く足助町では、地域の現状や課題が違いすぎる。このため、合併にあたっては都市内分権を掲げ、地域の課題や特性に応じた行政サービスが図られるよう、支所や地区協議会の設置などが検討されている。しかし一方で行政の合理化が求められていることは豊田市に同じであり、行政サービスの統合や再検討などの結果、現状より一定程度、行政サービスが後退していくことは避けられない。もちろん地域では豊田市の潤沢な財政力による地域整備等に期待する声も強い。
 しかしこうした目に見える行政サービスではなく、日ごろから近くに役場職員がいて、何かと気を配り対応してもらえる状況がなくなることの方が大きいだろう。特に足助の場合は、各地域に担当職員が割り振られ、地域活動の支援をしているだけにその差は大きい。町では合併に備え、住民主体による地域計画・集落計画の策定や地域活動費の支給などをしてきたが、これからは真の意味で、地域力・住民力が問われるようになるだろう。

●葬祭
 高齢化率が高い足助では、毎年100人近くの方が亡くなっている。葬式は集落の重要な行事の一つだ。集落内で葬式があると、全戸から人が出て、準備や世話をする。死は突然やってくるから、このつきあいは大変だ。墓はたいてい自分の所有する山か、集落内にある。墓を守るために古家を手離せない、と考える人も多い。かつては土葬でその経験を語る人もいるが、岐阜県などと比べれば比較的早く火葬に変わったようで、集落の山の中に、昔の火葬場と言われる土地が今も残っていたりする。今は、足助に近い豊田市内にある火葬場を利用している。

●祭りと氏神
 香嵐渓に架かる橋を渡る手前に古風蒼然とした足助八幡宮がある。ここで毎年秋に行われる足助まつりは、足助のまちなかのお祭りだ。町内4町から山車が八幡宮まで引き出され、奉納される。山車の上で若者が踊り狂う姿は勇壮だが、同時に山車の中ではゆったりとした調べの笛や太鼓が奏でられている。また山車を出さない町内も、揃いの半被を着て、火縄銃や棒の手を奉納する。祭りの間中、火縄銃のドーンという音がまちなかに鳴り響いている。
 また春には足助神社の春まつり。こちらも同じまちなかの祭りで、秋まつりよりは多い7台の山車が引き回される。秋とは違って春の山車は低く花で飾られ、山車の中には女の子が乗って、謡を謡い、鼓を叩く。
 どちらの祭りも町の若者たちは、祭りの1ヶ月近くも前から、お囃子や踊りの練習をする。夕方7時頃から9時過ぎまで、そしてその後親睦の宴会。それが連日1ヶ月近くも続く。
 山間部の集落でも、秋には同じ頃に氏神様のお祭りがある。棒の手の奉納などもあり、その練習が行われる。氏神は集落ごとにあって、数戸から10数戸程度で維持されている。その他にもお桑さんやお不動さんなど、一つの集落でいくつもの神様を祀り、その世話をしている。その祭礼の時には集落一同が集まり、祭祀の後も飲み食いが続く。もちろんそれらの多くは集落のお年寄りで支えられており、中には朽ちてしまった社もある。

●農作業
 足助町は山間の町で平地が非常に少ない。統計(平成12年)を見ると耕地は675haで町域面積の3.5%に過ぎない。農家数は約1,000戸で、うち専業農家はわずか33戸である。1,000戸のうち農協等へ生産物を出荷している農家は435戸で大半は自家用の農作物を作っているに過ぎない。「農業をして生活したい」と言ってくる人も時折いるが、現実はほとんど不可能と考えた方がよい。しかしそれでも東部では組合を作って水耕栽培に取り組んだり、高原野菜等を出荷している専業農家もある。また鶏卵や花きなどに取り組む人もいる。
 一般的には先祖伝来の田んぼを持ち、農協から示されるスケジュールにしたがって苗を買付け、田植えと稲刈りをして自家消費米を生産している。それぞれ田植え機やコンバインなどを所有するが、それらの減価償却や自らの労働賃も計算すると採算は取れていないが、楽しみでもあり、世間体もあるので、シーズンになるとみんな一斉に取り組む。農協が生産指導する米の品種はミネアサヒと言って、旨いと評判だ。
 放棄農地も目立つ。都会の人に貸しているケースも多く、その場合は1反につき米1俵といった形の物納で借りていることも多い。しかし見ず知らずの人に貸すことはないので、地元の人と泥懇になることが必要だ。

●炭焼きと山仕事
 足助町は町域の86%が山林で、それもほとんどが民有林である。かつては林業で大いに栄え、取引のため町なかに別宅を構える林業家も多く、芸者を抱える料亭も多かったと聞く。また、炭焼きも一大産業で、名古屋などへ手広く薪炭を供給していたようだ。しかし木材は輸入解禁による国産材の低迷、炭はガスの普及により、産業としては見る影もなくなっている。
 山間部の町民の多くは、先祖伝来の山を所有しているため、森林組合に加入し、組合費を納めつつ、間伐などの山仕事を依頼したりしているが、経費の方がかかるような状態のため、荒れていく山も多い。それでも各家たいていはチェーンソーを持ち、正月など長期の休みには、間伐や枝払いを行う人も多い。最近はボランティアや趣味で間伐などの山仕事を体験したいという人も多く、きこり塾山仕事実践の会など、山仕事を教えてくれるグループがいくつかある。これらは東海農政局豊田統計情報出張所が出した素人の山仕事入門に詳しい。
 また同じく東海農政局が出した炭焼き賛歌によれば、足助町を中心とするこの地域になんと100近い炭焼き窯があるという。その多くはもっぱら趣味で、年に数回、炭焼きをする程度だが、篭林から下山方面へ向かう県道沿いには、窯を数基も据えて炭焼きを生業としている方もみえる。炭焼きは炭木の伐出しから窯焼きまで相当な重労働に加え、煙の管理など熟練の技術を要するが、炭焼きをしたいという方は年々増えているようで、町内有志で炭焼き塾も開催されている。
 さらに山の楽しみといえば、山菜とキノコがある。キノコの菌は森林組合に注文すれば手軽に入手でき、広葉樹の木肌に打ち込めば後は待つだけなので取り組む人も多い。ただし原木の伐出しと保管には労働と経験が必要だ。
 足助の山はほとんどが民有林で山には必ず持ち主がいる。勝手に入って山菜を取ったり、枝を折ったりするような行為だけは慎みたい。

●地域計画・集落計画
 平成14年度から15年度にかけて、足助町の全集落で集落づくり計画(全部で63計画)、旧学区単位に15の地域づくり計画が策定された。足助では役場職員全員がどこかの地域を受け持つ地域担当制が敷かれており、これらの役場職員がある程度リードしつつも、基本的には地域で選出された計画策定委員が主体となって策定をしている。委員の内訳は地域ごとにまちまちで、区長などの役員が中心のところもあれば、小さな集落ではほとんど全世帯が参加しているという話も聞いた。どこも比較的30〜50代の若い男女が中心となっているようだ。
 町の意図としては、平成17年度から始まる次期総合計画のベースとするはずだったが、市町村合併の話が本格化したことから、合併後、新豊田市の埋没しない足助の各集落の地域力の基礎という役割に変化している。内容も、当初役場が心配していたような公共事業要望型ではなく、住民自らが取り組むイベントや活動が中心となっている。その詳細の一部は、「まちづくり・あれこれ」「足助のまちづくり」で報告しているので参考にされたい。
 またこれらの計画の実現はもっぱら住民の主体的な活動に拠らざるを得ないことから、町では平成15年度末に各地域に数百万単位の活動費を支給した。これは合併後、今までのような行政支援が困難になると予測されることから、財産区が今まで確保してきた積立金の寄贈を受け分配したもので、今後の住民活動の原資となる。さらなる活発な活動を期待したい。

●子育てと教育
 足助町内に小学校は全部で10校。一番大きいのは町なかにある足助小学校で生徒数107人。その他はだいたい40〜60人程度で、一番小さい御蔵小学校は平成15年度の生徒数が24人。もちろん複式学級だ。かつては15校あったが、大多賀、大河原、東大見、椿立の各小学校が順次閉校となり現在の数に統合された。閉校後の建物は、ユースホステルに使われたり、醤油醸造所や企業の研修所などに再利用されている。一部スクールバスも運行されているが、生徒によっては毎日1時間近くも徒歩で通学する子もいる。お昼過ぎ、集団で下校する生徒たちに行き会うと、こちらが車でも元気よくあいさつの声が上がり気持ちがよい。動物教育を進める佐切小学校、名文暗誦・朗読に力を入れる新盛小学校など、特徴ある教育に取り組んでいる学校も多く、地域の学校として父兄の関心も高い。
 中学校はだいぶ前に1校に統合され、スクールバスが運行されている。高校は県立の足助高校が1校。しかし豊田市の高校へ通う生徒も多い。その場合は親が西中金駅まで送り迎えするケースが多い。
 幼稚園は町営のものが1園。保育園は町なかに1園と山間部に7園ある。その他、最近の少子化で子供が少ないことと、山間部で家が離れていることが多いことから、ぽっぽの会やふれあい広場、子育てサポートファミリークラブなどの子育て支援対策が実施されている。中では学区ごとにある育児サークルが心強いという話を聞いた。
 公民館あたりでたむろしている高校生や茶髪・ミニスカートの生徒もいるが、概して足助の子供たちは純朴でのびのびと育ってる印象。そうした教育環境を求めて都会から転入する世帯もある。

●交通機関
 足助の交通機関といえば、何と言っても自動車。それも軽トラック。狭い道はもちろん、四駆なら多少の悪路や急勾配でももろともせずどこへでも登っていく。もっとも自宅には軽トラックのほかに立派な乗用車(トヨタ製!)があるというのが一般的。男女を問わず免許は田舎暮らしの必需品だ。冬もそんなに雪が降ることはないが、東部などの山あいではスタッドレスタイヤは必須。凍結すると融雪材を散布して回る。
 紅葉の時期の渋滞は有名だが、秋ばかりでなく夏の土日の渋滞もひどい。奥三河や南伊奈谷へ向かう観光客も足助を通過せざるを得ない。また中央自動車道の恵那山トンネルが危険車両通行禁止のため、タンクローリー車も足助を通過する国道153号線を使って飯田方面に向かう。バイパスとして町なかに迫る山の中にトンネルを掘る工事が進められているが、なかなか進捗しない。平成19年頃完成予定?
 山あいを走る県道・町道はなかなか拡幅が進まず、待機所ですれちがうしかないような道路も多い。しかし一方山の中に突然幅員12m以上の立派な舗装道路が続いていてびっくりすることがある。広域農道だ。道路関係予算と農林関係予算との差を感じる。
 公共交通機関としては、名鉄豊田駅から三河線が猿投駅まで延びており、その先はレールバスが豊田市西中金駅までつながる。その先は中金足助バスが、町の中心部を通り、町営福祉センター百年草まで行く。豊田市と足助が共同運行しているもので、レールバスの時刻に合わせて夜の9時過ぎまで概ね1時間に1本運行されている。それ以外の地域へは、名鉄東岡崎駅へ行くバスが日に10本。足助病院から旭町、稲武町へ向かう町営バスも日に数本。その他、足助病院と各地域を結ぶ町営バス「あいまーる」やスクールバスも乗車可能だが、事前申込みが必要だったり、週に1回の運行だったりで、便利とはいえない。
 ちなみにレールバスは2004年3月で廃止が決まっており、その後は代行バスが運行される予定となっている。やはり自動車なくては暮らせない。

●区費
 足助町は地区行事も盛んだが、地区に収めるお金もバカにならない。地区によって異なるが、だいたい月2,000円から3,000円を徴収している。この他にも、集会所建設等の積立金や消防団協力費、PTA会費(子供がいない世帯も払っていることが多い)、保育園協力費、国県道建設要望のための期成同盟会費、神社祭礼費、テレビ組合費などなどなど・・・。田舎暮らしは何かとお金がかかる。
 ついでだが、物価も高い。米や野菜は自前でつくるとはいうものの、町なかに暮らす人はそれらも買わざるを得ないが、都会のスーパーに比べればやはり高い。100円ショップなどない。豊田市へ出るには車かバス、レールバスとなるが、当然、運賃やガソリン代がかかる。ちなみにガソリン代も高い。でも遊ぶところは少ないからその分は節約できるかな。

●光ファイバとテレビ事情
 都市部ではADSLは当たり前だが、足助町ではまだまだいつになるのか見当もつかない。豊田市ではケーブルテレビも広い範囲で普及しているが、足助町はサービス区域外だ。今年の12月にはデジタルテレビ放送が始まるが、足助町まで電波が届かないのではないかと危惧されている。ちなみに現在のアナログ波のテレビ放送ですら、自前のアンテナで受信できる地域は限られている。町内の多くは、共同受信のテレビ組合を組織し、月500円程度の組合費を負担して、テレビ視聴をしている。
 こうした状況を踏まえ、町では今年度(平成15年度)、全町内、光ファイバ網の敷設に踏み切った。来年度4月には試験運用、6月本格運用、そして10月には光ファイバー経由でテレビ視聴もできる予定だ。加入金は今年度に限り5万円。使用料は月々4,500円(高齢者は5年間1,500円の特典あり)。Bフレッツで言うベーシックタイプらしいので、サービス内容に比較すれば安いんだろうけど、みんながみんな利用するものじゃないだろうと思っていたら、なんと9割近い人が加入したらしい。おかげで一部地区ではテレビ組合を解散する動きもあるとか・・・。
 本当にデジタルテレビは入らないのか。アナログ放送中止時に全国的に難視聴対策は講じられないのか。来年度以降、足助町に転入してくる人の加入金はいくらかかるのか。それって定住者にとっては非関税障壁じゃないの??? まだまだいろいろ問題が発生しそうです。

 ●けものの害
 春から秋にかけて、足助の田畑に作物が育ち実る頃、農家の一番の頭痛の種がイノシシ害だ。タケノコが顔を出すのを一番に察知し掘り起こしてしまうのもイノシシ。梅雨時には田んぼの中で転げ回り、育ち始めた稲を倒す。サツマイモなどのいも類は大好物。器用に掘り起こして平らげてしまう。だから、この時期は農家も戦々恐々。田んぼや畑は軒並み、トタンや網、電気柵で囲われ、イノシシ除けの対策が講じられる。トタンや網は、イノシシの体当たりに耐えられるよう頑丈に作るのはなかなか大変。一方、電気柵はアース用の金棒を埋めるのは少し骨が折れるが、比較的広大な区域でも簡単に設置でき、購入費に対して補助もあるので、ある程度の規模がある場合はよく使われる。ただし、電線に雑草が少しでも接触すると漏電してしまうので、定期的な下草の管理が必要。
 イノシシと並んで足助で近年話題になっているのが、ハクビシン。こちらはすばしっこく飛び回り、木に登って果実を食べたりする。対策は防御網くらい。その他、タヌキなどの害もあるようだ。足助よりさらに奥の山間部ではサルの害も聞くが、足助では幸いまだあまり聞かない。
 防御するだけでなく、積極的に捕獲し駆除するためには、捕獲檻やワナが仕掛けられる。ただし、捕獲解禁期間は11月15日から2月15日までで、狩猟者登録等が必要となる。この期間は、どれだけ取れた、何匹かかった、という話をよく聞く。イノシシ肉として我々の口に入るのもこの時期。味噌で煮込んだシシ鍋の味は格別。

●お役と地域行事
 各地域(区)で行われる活動のうち、地域の環境維持等のため義務的に全員参加を求められるものは「お役」と呼ばれる。具体的には、道路の草刈り・清掃などで、春・秋の2回行われる地区が多い。道路の他に、河川掃除や区有林の下刈り作業、農道の草刈りなどもお役として行われることもある。欠席者は役不足金として、別に費用負担を求められることもある。
 学区全体の行事として、毎年夏に、夏まつりが行われる。盆踊りを中心に、打上花火や小学生の松明の踊りの披露、お菓子投げ、抽選会などが行われ、区民総出で賑わう。夏の終わりにはPTAスポーツ大会。各学区のPTA毎にチームを作ってレクバレーなどを楽しむ。秋の小学校の運動会は生徒だけでなく、地域住民も一緒になって学区運動会として行われる地区が多い。また住民親睦のため、新年会や忘年会、慰安旅行などを行っている地区もある。

●ケーキ屋(商業施設)
 「ケーキ屋」というタイトルで何を書くんだとみんなに聞かれた。ここで書きたかったのは、「足助にはケーキ屋が1軒もない。」ということ。「足助にはスーパーやコンビニはありますか?」とも時々聞かれる。答えは「どちらもあります」。ただし、ジャスコやユニーといった大規模店舗はない。国道沿いにある数十台分の駐車場を備えたスーパーマーケット「パレット」が最大のもので、あとはスーパー形式の個人商店が数店に、魚屋、肉屋など。飲食店は多い。書店も2軒。これらはこだわった味や品揃えだ。パチンコ店は1軒。鍛冶屋や竹の釣り竿など特徴的な専門店もある。
 ケーキ屋の話に戻ると、町内に和菓子屋は数多くある。「日月もなか」など足助ならではの和菓子も多い。しかしケーキは売っていない。クリスマスには和菓子屋で予約をすれば作ってもらえる。ちなみにマクドナルドなどのファーストフード店もない。人口1万人の商圏で成り立つ商売という視点で見ると興味深い。ただし、足助の場合は、豊田市へわずか30分圏内であり、週末は豊田市内の大規模店舗で買い出しをしてくるという世帯も多い。

●区長・伍長
 足助の地域組織といっても、特別に他の市町村と異なるわけではない。町内を概ね大字毎に63の地区に分け、各区の代表が区長となる。各区は大きい区で170世帯、小さい区では山ノ中立の7戸というのもあるが、通常は30〜60戸程度で構成される。中にはいくつかの区がまとまって一人の代表区長を選出している地区もある。たとえ小さくても地理的に離れてまとまった集落を形成していれば、一つの区とせざるを得ないのだろう。区長の選出方法は区によって異なるが、選挙を行っている地区もあれば、順番で回している地区もある。
 区長の仕事は行政と地区との連絡調整、地区内の行事や施設の維持管理など種々雑多に及ぶ。行政からの連絡は年に数回、区長会議がある他、毎月、町広報等が届けられる。冬期の融雪剤や道路の補修材料の申請・受取り、災害等の調査や工事要望、集会所や区有地の維持運営、お役や祭り等の調整、区費の管理などなど、区長の仕事は忙しい。。
 区の中はそれぞれ10戸程度の組に分かれ、それぞれ組長又は伍長が選出される。こちらは回り番で連絡調整が主。小さい組では2戸で交互に担当しているという話も聞いた。
 区内の様々な調整を図るため、多いところでは毎月、大体は2ヶ月に1回程度、区の常会が開かれる。多くは区民全員出席だが、まちなかでは伍長さんや役員だけで行っている地区もある。

●草刈り
 足助の山間部の人にとって、草刈りは必須の仕事だ。春から秋までの間、土地という土地に雑草が生い茂る。これを最低年2・3回、几帳面な人は毎月のように刈る。住宅敷地の回りはもちろんだが、山あいの土地ゆえ田畑が段々となっており、その土手の部分(「ぼた」という)の草刈りが大変だ。2枚の田の間にあるぼたの斜面は、下の田の所有者が刈るのが原則だ。これは日照や刈った草の利用権にもつながるルールである。
 各自の所有地は所有者が刈るのは当たり前だが、自分の土地に接する道路や赤道(「あかみち」又は「あかせん」。古くから存する集落の道で、国が所有し県や市町村が管理者となっている)なども接する者が刈ることを暗黙のルールとしている地区も多い。各自に委せられない道路等は道役(お役。地区のボランティア行事)として区民全員で刈る。
 草刈りは昔は三日月型の手鎌で刈っていたが、今はエンジン付きの草刈り機を使う。腰の曲がったおばあさんが草刈り機のエンジン音を響かせている姿もよく見かける。足助生活必須のアイテムである。

●がんどうち
 「がんどうち」というのは奥三河地方から岐阜県山間部に伝わる「ひなまつり」の風習である。HPで調べると「強盗打ち」という字が振ってあるページもあった。由来はどこにあるのだろう。いずれにせよ、旧暦のひなまつりの日に、各家庭に飾られたおひなさまを、子どもたちが見て回るかわいい風習である。各家庭では、子どもたちのために、お菓子などを用意して渡す。
 このまま読めば、今に伝わるほほえましい風習であるが、これを迷惑に思う大人も少なからずいる。今は子どもたちの数もすっかり少なくなったが、この時とばかりに田舎に帰ってくる子ども、友だちと連れだっていくつかの集落を回る子どもたちもいて、各集落の子どもの数以上にたくさんのお菓子を用意しなければならない。おひなさまを飾るのは女の子がいる家庭だけでなく、子供のいない家庭やお年寄りだけになった家庭も、家のおひなさまを出してきて飾る。配られるお菓子も「つぼんこ(竹筒に寒天を詰めたもの)」などの昔ながらのものは少なく、スナック菓子などに対して子供の健康を心配する声もある。
 旧暦のおひなさまが平日の場合は土日に行う地域もあり、こうなるとその日は全く外出できなくなってしまう。でも子供が少なくなった山村で、子どもたちの歓声が聞かれる風習はやはりなくなってほしくないと思う。ちなみに町の中心部で行われる「中馬のおひなさん」はこの流れを汲むイベントに違いない。

●消防団
 足助には消防団がある。いや、消防団は全国どこにもあるが任意加入で、都市部では加入していない人も多いだろう。さすがに足助程度の町となると、周りの目もあり、加入しないで済ますことはなかなか難しい。よって、消防団嫌さに転出していく若者もいる。
 足助の消防団は22歳から37歳までの男性が加入する。町内は役場職員で組織する本部分団と6つの地域別分団でなり、火災発生時には基本的に本分団とその地域の分団が出動する。もちろん仕事を投げ打って。
 足助町にも消防署はある。正確にはあすけ地域消防組合を周辺町村と組織している。幸いなことに消防組合の本部は足助町内にあるので、他の町村に比べれば多少は条件がいいが、それでも町域が広大で山間部が多いので、初期消防の点で消防団に期待される役割は大きい。しかし基本的には消防署の後方支援が主たる業務である。都市部と同等な消防力が期待できない以上、消防団の必要性や貢献度は高い。町民の期待や感謝の気持ちも強く、各戸から消防協力費を徴収している地区も多い。また消防団員は特別公務員として年数万円程度の報酬と手当が出る。だが金額以上の活動をしているというのが実態だろう。
 しかし火災は年にそう多くあるわけではなく、普段は消防訓練を定常的に行っている。また訓練に目標を与え、消防団員としての自覚を促すため、定例的に行事が設定されている。正月の出初め式、春の観閲式、そして消防操法大会である。特に操法大会は、地域大会、県大会、全国大会などがあり、上位入賞を目指し、連日厳しい訓練が行われる。また、行事終了後の打ち上げは団員の楽しみの場であるが、嫌な人には嫌だろう。

(もし間違い等があったら指摘してください。お願いします。)