脳性まひについて(多聞との関連から)

 この項をまとめるにあたり、「特定非営利活動法人自立の家をつくる会」作成の「二次障害の基礎知識」を多く引用させて頂きました。ありがとうございます。

 
詳しくは、こちら

1.脳性まひの定義について
・厚生省(1968年)
「受胎から生後4 週以内の新生児までの間に生じた、脳の非進行性病変に基づく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発現する。」
 脳性まひの主な症状は、中枢神経系の損傷による症状とそれに伴う運動障害と考えられています。脳性まひの原因となる脳(神経系)の病変そのものは非進行性ですが、運動障害は永続し変化するという特質をもっています。
 
2.脳性まひの発生について
 1950年代以降、新生児用の抗生物質や脊髄性小児麻痺を引き起こすとされるポリオウイルスに対する生ワクチンの開発や核黄疸に対する光線療法など、医療の進歩に伴い、脳性まひの発生は大幅に減少しました。
 しかし、1980年代以降、脳性まひの発生率は再び増加傾向を示しました。さらなる医療技術の進歩(人工呼吸管理と人工肺サーファクタントの補充療法等)によって、従来なら死んでいたであろう胎児の救命例が増加し、それに伴い脳性まひの発生率が上昇したものと考えられます。特に脳無酸素症による仮死状態からの蘇生の増加に伴い、その障害も重度・重複化の傾向にあるようです。
 多聞は、この新生児仮死状態で生まれ、それによる脳性まひを発生させたと考えられます。脳の損傷は好発部位(損傷しやすい場所)があるようで、多聞のような低出生体重児(未熟児)の脳無酸素症のケースでは脳室周囲白質軟化症を起こしやすいそうです。これをいかに防ぐかが現在の新生児医療の重要課題だと言われています。

3.脳性まひの原因について
 脳性まひが、発症する時期と原因は、次のものが考えられています。

E出生前(現在はこの時期が最も多いようです)
 胎内感染、母体の栄養障害や中毒、胎児の黄疸、未熟・仮死状態での出産など
  多聞は、前期破水による未熟・仮死状態での出産でした。
 何の兆候も無く、急に破水してしまい、緊急入院となりました。
  
E出生時
 分娩時の脳出血や脳外傷、脳の無酸素症など

E出生後
 脳炎、脳内出血、中枢神経感染症など

4.病型分類                                  
※麻痺の部位による分類
 ・四肢麻痺:重度の障害で、上下肢の障害が同程度
 ・片麻痺:片側の麻痺で、上肢の障害が重い
 ・両麻痺:上肢に比べ、下肢の障害が重い(多聞はこれにあたります)
 ・対麻痺:下肢の障害のみで上肢の障害はない

※神経症状による病型分類
・痙直型
 痙直性とは、伸張反射が異常に高まった状態のことで、筋の伸長により反射的に強く収縮し、身体の力はなかなか抜けません。主として下肢に多いようです。
 痙直型は、錘体路系(主に手足の筋肉の随意性をつかさどる)の障害が関与していると言われています。
 多聞は、この型で、特に股内転筋の痙直性があり、そのため脚の内旋が強い状態です。

・アテトーゼ型
 アテトーゼとは不随意運動のことで、不随意的な運動を伴う型です。意図的な運動をする際、また精神的緊張のある時など、手足が自己の意志に従わず、不自然な姿勢となってしまいます。錘体外路系の障害が関与すると言われ、不随意性の運動が自発する傾向にあります。

・失調型
 筋の力が弱くなかなか力が入らず、バランスをとる能力が弱い型です。主に平衡感覚の障害があります。比較的まれな型です。

・固縮(強剛、硬直)型
 四肢に硬直性があり、間接を屈げたり伸ばしたりすると、鉛管を曲げ伸ばしするような抵抗があります。きわめてまれな型です。
*実際には、上記の混合型のケースも多いようです。

※麻痺の程度による分類
 軽症………自力あるいは簡単な補助具(装具など)で歩行可能な能力
 中等症……軽症と重症との中間程度の能力
 重症………寝たきりから座位保持程度までの能力
   多聞は、この分類でいくと、軽症もしくは中等症になるのでしょうか

5.脳性まひの症状
E運動発達の遅れ
 定頸(くびがすわる)や座位保持などの遅滞が著しく、運動発達全般に遅滞がみられます。
E反射の異常(アトテーゼ型に多い)
 ・モロー反射や非対称性緊張頸反射等の原始反射の残存
 ・頸の立ち直り反応やランドー反応、保護伸展反応(パラシュート反応)等の出現の遅れ
E筋緊張の亢進
 ・股内転筋、下腿三頭筋などの痙直性(痙直型)
 ・筋緊張低下は四肢筋にみられます(アトテーゼ型)
※痙直型の場合、成長に伴い、痙直性の内容や程度が変化すると言われ、筋緊張は強くなる傾向があるようです。

6.随伴障害(二次的障害ともいうのでしょうか)(ここからは主に痙直型について記します)
E痙直型の随伴障害
 ・脳性まひの主症状である運動障害だけでなく、それに伴う障害も合わせもつという意味で、症候群ともいうべき随伴障害があります。
 随伴障害として、知能の低下、てんかんや痙攣(けいれん)、視覚や聴覚といった感覚機能、知覚の障害、情緒や言語の障害、さらには呼吸や摂食の障害などがあげられます。
 これらの随伴障害は、個々のケースでその内容や程度は異なります。早期産児、低出生体重児のケースが多いことを考えると、脳をはじめとする各器官が充分形成されていない状態での出生なので、随伴障害を考える際も、個別に存在するというより、相互に影響しあうというべきでしょう。
 また、これらの機能や能力の成熟は、生後の生活経験に負うところも大きいので、経験不足を余儀なくされる脳性まひ児にとっては、まさに運動障害による二次的な障害という側面も大きいと言わざるを得ません。
 多聞の場合、医師より、呼吸障害として呼吸窮迫症候群、黄疸、心雑音(心室中核欠損症)、内斜視(右眼)、脳波異常(痙攣に要注意)との所見がありました。
 呼吸窮迫症候群や黄疸は、NICU(新生児集中治療室)での治療のおかげで、大事に至らず、心室中核欠損庄も生後一年位で、孔が塞がったようで、心雑音もおさまりました。
 内斜視については、昨年夏(多聞3歳時)手術により、矯正することができました。この手術は、一度でうまくいかないケースもあり、その場合は児童期に再手術をするそうですが、ありがたいことに、一度の手術で見事成功しました。が、親としては、幼い息子にメスを入れるのは、やはり心苦しいものがありました。
 脳波異常については、現在も予断を許さない状況であり、てんかんや痙攣は幼児期後半に起こるケースも多く、親としてはなかなか気が抜けないものです。
 また、筋緊張の強い下肢は、成長とともに亜脱臼に至るケースもあることから、緊張をいかに和らげるかが、現在の課題となっています。
 運動障害については、他に手指の巧緻性にかかわる問題(ボタン止めや箸を用いるなど)がありますが、ボタン止めも最近徐々にできるようになり、箸も握り箸の状態で食事をしたりしています。
 運動機能以外にも、嚥下なども充分でなく離乳が遅れたり(今も飲み込みがまだ充分ではありません)、お漏らしも多い状況です。脳性まひのために排泄機能の障害をもつケースもあるようです。
 雑記しましたが、親としてはこれまでハラハラドキドキの連続だったように思います。それでも、ここまで成長できたことを嬉しく感じている次第です。

7.脳性まひ者の二次障害 

「自分の意志によらずに筋や筋肉に力が入る」「その力の方向は一方向のみである」      ↓
二次障害を発症させる根本原因

@脳性まひ者の体の特徴から
 ・一方向の力
 ・集中点
  不随意運動の方向には体幹からとらえると、力の中心点、集中点が存在する
 ・体のパターン化
  一方向の力が入りつづける中で発育するので、姿勢がパターン化(定型化)する

A筋や筋肉レベルでの二次障害
  体に一方向の力が入りつづけることからくる筋や筋肉、骨や骨格、神経のトラブル
 ・かたよった筋肉のつき方・
 ・筋肉の凝り
  一方向の力が入りつづける状態の筋と筋肉は、凝りやすい
 ・凝りから痛みへ
  一方向の力が入りつづけることによって、凝りが発症し、悪化すると痛みへ
 ・痛みからしびれへ
  さらに悪化すると、末梢の毛細血管の流れも悪くなり、知覚も鈍くなり、痺れへ
 ・しびれから無感覚状態へ
  痺れの段階の次の症状は、無感覚状態→自覚できないほどの体の状態の悪化
 ・身体機能の低下
  筋や筋肉の無感覚状態に至ると、身体機能の低下が現れてくる。

   一方向に力が入りつづけてしまうことで、筋と筋肉は劣化し、弾力性を失う

固くなる(老化現象)

力が入らなくなり、体は動かなくなる

自力で可能だった身辺自立が不可能な事態となる

B骨や骨格レベルの問題
 ・骨の歪み
  骨格全体は、一方向の力の方向で歪んでいってしまう
 ・骨の磨耗
  一方向のみの力が入りつづけるので、骨の磨耗が生じやすい。
 ・筋や筋肉が弾力性を失っていると、骨は外的な力などの打撃を直接受けやすくなる
 ・脊椎の変形
  骨が次第に変形したりとげを形成したりする
  (骨と骨の間の椎間板が磨耗して、骨がずれたり滑りだすこともある)

C神経レベルの障害
 ・筋や筋肉の異常による末梢神経の圧迫
  弾力性を失っている筋や筋肉は、四肢の神経を圧迫する。
 ・骨の変形による脊髄・神経の圧迫
  一方向の力が入りつづける筋や筋肉によって、骨の変形も生じるが、
  それによって神経根や脊髄(自律神経も含む)を圧迫する場合もある。
 ・痙性麻痺
  錐体路系の神経を圧迫した場合、痙性麻痺となる。
 ・自律神経系の障害
  脊髄神経には、自律神経も混在している。この自律神経系は、内蔵諸器官を支配し、
  内蔵と中枢の情報交換の架け橋を担っている。
  この経路への圧迫は、生命への危険に直結しているとも考えられる。
 7.の脳性まひ者の二次障害は、「特定非営利活動法人自立の家をつくる会」作成の「二次障害の基礎知識」をまとめさせて頂いたものですが、脳性まひがいかに大変なものであるかが伺えます。脳性まひ者は、肢体不自由という障害のみならず、こうした二次障害にも向き合わなくてはならない現実があるということです。
 多聞も、脚の内旋方向への緊張があることで、歩行の獲得に困難をきたしていますが、今後さらにこの二次障害をいかに防いでいくかが重要な課題となります。
 


「energy flow」by Kacchan