親子訓練について
−家庭での訓練のすすめ−

 動作法による訓練を開始する以前、多聞の機能改善(リハビリ)については、週に一度の療法士の先生によるPT(理学療法)だけで、家庭でもその必要性を感じつつもできていない状況でした。「親が訓練して怪我でもさせたら大変」という思いから、多聞の身体に触れることに対する躊躇があったのです。
 
 動作法による訓練を始めた当初も、「多聞のような障害児は骨折や脱臼を起こしやすいのでは?」と思い、多聞の身体にさわることに抵抗を感じていました。
 
 安好先生は、「子どもの動作不自由について、固いところはどこか? 緊張が強いところはどこか? 何が自由な動作を妨げているのか? 訓練者は、まず子どもの身体の状況をしっかりと把握しなければならない。見るだけではダメ、実際に身体にふれ、さわってみて、つかんでいかなくてはならない。そして、子どもの動作不自由の状況を肌身で感じて(寄り添うようにして)、一つ一つ改善していくことが大切である。子どもが大変がっているのに、それが分からないような訓練者では,子どもとの間に信頼関係は築けない。また、“弛めや補助の力の入れ具合はどれくらいか?“とよく聞かれるが、それも子どもの身体の状況を把握したうえで、見極めていくのである。」と、指導されました。

 我が子の身体をさわることに対する躊躇は、まさに我が子の身体や障害の状況を把握していないことの裏返しであることを痛感した次第です。
 
 訓練を始めて、多聞の肩、腰(特に股関節)、膝、足首等の各関節がかたく、屈方向への緊張が強いことが分かりました。脳からの刺激がたえず屈方向に働くため、動きをコントロールすることも困難で、それが常態化することで可動域も狭まり、そのことがさらに動きのコントロールをより困難にしていくという、悪循環につながっているようです。

 痙縮(拘縮)は,脳性まひに伴う症状ですが,尖足や膝の屈曲、さらには脊湾などは、関節の可動域が狭まり固定化された結果引き起こされたものと言えます。しかも厄介なことに、痙縮(拘縮)は成長とともにさらに進行する傾向があり、一度硬直化した関節は、その柔軟性が損なわれ、なかなか元に戻らない(戻りにくい)だけに、脳性まひ児者にとって、二次障害ともいえるこの痙縮(拘縮)をいかに予防し最小限に抑えていくかが重要な課題となっています。まさしく,「訓練」が重要不可欠である所以です。

 多聞は、4歳にして動作法による訓練を始め、以来1年余りが過ぎました。先日、安好先生にぶしつけながら質問をしました。「多聞が(動作法による)訓練をしなかったとしても、(多聞自身のもつ成長の力で)歩けるようになっていたでしょうか?」 それに対し、先生は「それはなかったと思う。むしろ、ますます足首等の関節がガチガチになり、それまで以上に行動が制限される状況になっていたのではないか。」と答えられました。これは、予想していた答えでもあり、自身の考えを再確認するものでもありました。

 運動機能の維持・増進をはかるためには、毎日少しずつでも訓練を行なうことが大切であると言えますが、理学療法などの専門的な訓練の機会を毎日もつことはおよそ困難な現状にあることから、その訓練効果の維持・増進をはかるためにも、家庭における訓練が重要であると思います。また、子どもの体調が悪い時など、訓練の場に連れていけない場合、訓練の間があいてしまう状況がありますが、家庭なら子どもの状況に合わせて取り組むことができます。

 わが家では.家庭における子育ての一環として「訓練」を位置づけています。多聞と私のまさに「ふれあい」の場であり、貴重な時間でもあります。これまでの私は、「多聞を何とか歩かせてやりたい。そのために何かできることはないだろうか?」と模索しつつも、妻の補助的な役割として多聞の世話にあたるだけでした。それだけに、動作法による訓練は、まさに父親である私の出番ともいうべきもので、自らが希望し実践するに至っています。

 動作法では、全国各地に訓練の場としての訓練会があり、訓練者が訓練するのみならず、母親(父親も)に対する訓練の研修も行なわれています。親が家庭で子どもに訓練できるようにとのねらいからです。もし、このホームページを読み、動作法による訓練を取り入れてみようと思われましたら、お気軽にお問い合わせください。

 訓練を行なう際の留意事項として、決して無理をせず、無事故第一で行なうということだと思います。先にもふれましたが、無理な訓練は禁物です。脱臼や骨折といった怪我や事故に結びついてしまったのでは.機能の維持・増進のために行なう訓練がかえって反対の結果を招くことになります。その意味で、訓練はそのあり方によって、諸刃の剣となります。そうしたことを防ぐためにも、正しい訓練法を身につけるべく研修に励み、子どもの状態をしっかり把握することが大切だと言えるでしょう。

 現在、多聞は、動作法の訓練の他に、週に1回のPT及び月2回の通電治療を継続しています。他にもOT(作業療法)や外来相談などの機会ももっています。動作法は素晴らしい訓練法で、多聞の歩行獲得に直結した訓練法だと思っていますが、「はじめに」でもふれましたが、障害児をもつ親としては、障害の軽減・克服はもとより、子どもの成長・発達に向け、より多くの手だてや機会が用意され、必要に応じて活用できる環境をもつことが何より大切なことだと思います。家庭での親子訓練は、その重要な手だての一つであり、その意味からも「動作法」を紹介できればと思う次第です。
 
 

平成12年7月26日 記す


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