「からくりテレビ」のからくりと、TVやらせ事情



 おいらが新聞を見ていたら、こんな記事が出ていた。
「スッポンテレビでやらせ疑惑!」
見ると、スッポンテレビの番組で、またまたヤラセが発覚したんだって。

おいらは、ご主人が帰ってきてから聞いてみた。
「ねぇ、よく、やらせやらせ、って言うけど、本当にあるの?」
「ああそうだな。ほんとのところ、やらせなしにテレビ番組を作るのは無理なんだ。新聞に載ってるのなんて、ほーんの氷山の一角だよ」と、ご主人。

 たとえば、いちばんわかりやすいのが、番組内に出てくる魚釣りのシーンだ。「幻のポチマグロを追え」なーんて番組で、ポチマグロを釣りに出かけたとするよね? ところが、そもそも「幻」なんだから、なかなか釣れないし、仮に普通の日はたくさん釣れていたとしても、ロケの当日に魚が釣れないこともあるわけだ。でも、テレビくん達は忙しい。番組オンエアまでに時間はないし、制作費も限られてるから、たくさんのスタッフを連れて再度来る暇なんてありゃしないんだ。

 だから、魚が釣れなかったらどうするかというと……仕方ないから前もって釣っておいた「ヤラセ魚」を針につけて、もう一度釣り直してもらうわけ。それで「とうとう釣れました〜!」なんてやってるわけさ。この前も、市場で買った伊勢エビを番組で使ったのがバレて新聞に載ってたよね。

「でも、魚はなかなか釣れないんだから、しょうがないんじゃないかなぁ?」と、おいら。

 まあね…。こんぐらいだと、見てる人も「ああ、ロケでは釣れないだろうから仕方ないよねぇ」って、暖かい目で見てあげたりするから、「あれはやらせだっ!」って抗議する人も少ないだろうな。でもな、問題なのは、テレビ界にこの「やらせ魚」が、他にもた〜くさんいるってことなんだよ。

「ええっ? 釣り番組以外でもやらせ魚がいるの??」と、おいら。
「そうなんだよ」とご主人。

 まず多いのは「街頭インタビュー」かな? たとえば、番組のちょっとしたコーナーで「町ゆく人に、失恋体験を聞いてみました」なんてあったとするよね? さて、その映像を作りたくて、実際に「道を歩いている人に失恋体験を聞いてみよう!」って撮影に出て行っても、実際にはほとんどの人にインタビューを断られちゃうんだ。簡単な質問ならともかく、自分の素顔がさらされてしまうような問題に答えるのは、誰でもいやなんだよ。マイクを向けても、「今忙しいんで…」「テレビに映るのはちょっと…」なんて具合な。たまに運良く答えてくれても、話が下手で、全然面白くなかったり、意図することを答えてくれなかったり……。おまけに、その場では了承してくれても、あとでよく考えたら気分が変わっちゃって「あのときの映像は放送しないで下さい!」なんて電話してくる人もいるんだ。たぶん、家に帰ってお母さんに話したら「やめなさい!」なんて言われたんだろうね。

 そんな状況だから、いくら街角インタビューなんてやってみたところで、じつはあんまり使い物にならないんだよ。テレビ君たちも、忙しい中せっかく時間を割いて出てきたのに、そんな状態じゃ困っちゃうわけ。

 そういうときにどうするかというと、「ヤラセ魚」として、エキストラ事務所から派遣されてきた人を用意しておくんだ。その「やらせ魚」を放流して、町中でさも偶然話を聞いたように釣りあげて、映像を作り上げるわけさ。こういうのを「仕込み」とも言うんだけどね。 以前、バラエティ番組に出てるシロウト女性がモデル事務所の女の子だって話はしたと思うけど(→<その1>恋のから騒ぎ編)あれと同じなわけ。テレビに出たくて、しかもお金が欲しいアルバイトくんたちのために、ちゃーんとエキストラ事務所っていうのがあるんだよ。

「えーっ、エキストラってドラマや映画だけじゃないんだ??」おいらは驚いた。

 たとえば、日曜のお茶の間で人気の「産婆さんのからくりテレビ」ってのがあるだろう? あの中で、英語で質問されて、しどろもどろになって返事をする通行人がいるよね? あれなんかまさにそうさ。いちいち通行人をつかまえてロケをしていたんじゃ、丸一日やったって、満足な映像が撮れないからね、エキストラにヤラセるわけ。あっ、ちなみに、「産婆さんのからくりテレビ」の「酔っぱらいクイズ」コーナーでは、クイズ直前にめちゃくちゃたくさん酒を飲ませて、無理矢理酔っぱらってもらってから出演してもらってるし、「お年寄りクイズ」では、わざと変な答えになるようにスタッフが編集してるんだけどね。それらもヤラセのひとつって言えるかな?

 そうそう、「あいのり」や、もう終わっちゃったけど「ガチンコ!」っていう番組だってそうだ。「あいのり」の出演者も一般人じゃないし(普通の人は、会社を休んで長旅になんか出られないのでござるよ)、「ガチンコ!」なんか、普通の落ちこぼれ不良君たちがボクシングを学んで大人になっていくというコーナーがあったんだ。ところが、その中のひとりがたまたま事件を起こして逮捕されちゃったら、警察の発表で、その不良くんが芸能プロダクションに所属していたことがばれちゃった。結局、「ガチンコ!」に出ていたあの不良くんたちは、普通のシロウトじゃなかったというわけさ。そもそも本当の不良くんたちなんか集めてロケやったら、スタッフの指示なんて聞いてくれないし、危なくてしょうがないよ。

 なんでこんなヤラセが増えてきたかというと、やっぱりテレビくんたちに余裕がないというのが大きいよね。メチャ忙しくて毎週毎週じっくり番組を作ってる暇なんてないし、制作費も安いから、番組を作っている制作会社の環境は劣悪(この辺はそのうちに詳しく…)。だから、テレビくんたちの頭の中は「やらせでも何でもいいから、とにかく早く番組作ろう」なんだもの。

 とくに、シロウトを出演させる番組では問題が多いんだ(→キスイヤ編)。番組を発注するテレビ局は、視聴率が大切だから、毎回、刺激的で面白いネタを放送することを求てくるだろ? ところが番組制作の現場では、実際のところ、みんなが楽しめるような刺激的なネタや面白い人を毎回毎回そろえるのなんて無理なんだよ。だからといって「ネタが集まりませんでした」なんて言ったらテレビ局から怒られちゃう。だからやらせたり過剰な演出に走っちゃうんだよね。

 それに肖像権の問題もあるね。今は肖像権が大切だってことをみんな知ってるから、了解を得てない一般人をテレビに写すことをしにくいんだよ。放送したあとで訴えられたり文句を言われたりするとまずいからね。以前ある番組で、たまたま入れ墨があるような怖いお兄さんが写っていたことがあったんだ。そしたら、そのテレビ局は、怖いお兄さんたちに脅されてしまったんだよ。そんなこともあるから、テレビくんたちは、あとで面倒なことになる可能性のあるシロウトさんをテレビに出すのはやりたくないわけ。その点、エキストラやモデルなら了解も得てるし、指示通りに動いてくれるからね。テレビくんたちにとっては好都合。おまけにエキストラだってお金もらってるから、がんばってやってくれるし…。さっき言った「産婆さんのからくりテレビ」なんかでは、エキストラだけじゃなく、子役モデルなんかもうまく使っちゃって、からくりがいっぱいだろ??

「あっ、だから、からくりテレビって言うんだね。じゃあ、テレビ番組に出てる人って、みーんなそうなの?」とおいら。
「全部とはいわないけど、かなり多いよ」とご主人。もちろん、やらせ魚として使われるのは、エキストラ事務所の人だけじゃなくて、スタッフの友達だったり、スタッフそのものだったり、その辺を通りがかってる人にお願いしたりとかね。俺も一度知り合いに頼まれてお客さんになったことがあるんだよ。客の入りが少ないからって。

でも、普通のシロウトさんを映すのは、ほんとうに少ないよ。もしドキュメンタリー番組なんかで本当にシロウトの人たちが写っている場合は、顔にモザイクやボカシをかけたりするし、、、
「ああなるほど、じゃあ、顔にモザイクがかかってたら本物と思っていいのでござるね」とおいら。

 いやー、そうとも言い切れないんだ。本物のシロウトの場合に顔を隠す場合もあるけど、映像がヤラセだってことが「ばれないように」顔にモザイクかけてる場合があるんだから……。顔を見せちゃうと、「あっ、近所のポチくんだ!」ってバレちゃうことがあるからね。番組名を忘れちゃったけど、大喧嘩をするカップルが登場する番組がそうだったよね? 顔を隠して暗いところでしゃべる「被害者Aさん(プライバシーのために、音声を変えて放送しています)」なんていうやつにも、じつはそういうのが混じっていたりするんだ。

う〜ん、なんとも腹の立つ現実だワン!
でも、お金がもらえるんなら、おいらも犬のエキストラ事務所にでも登録しようかなぁ?

するとご主人。
「ポチの顔じゃモザイクかけられちゃうよ」だって…。





マスコミの嘘と裏