「スペシャルゲスト」にだまされるな!



 天気のいいある日、ご主人はおいらをドライブに連れてってくれたんだワン。山里は秋もすっかり深まっちゃって、おいら、とってもいい気分。みんなも同じらしくて、行楽地へ向かう道路は大混雑だ。仕方ないからご主人もラジオのスイッチを入れて、渋滞にそなえてる様子、、、。

 そんな時、ラジオからビッグニュースが流れて来たんだワン。なんと、来週のラジオ東京ではスペシャル豪華ゲストとして、あの「おニャン子娘。」が来るらしいんだワン! いやー、じつはおいら「おニャン子娘。」の大ファンなのでござるよ。もう、来週は絶対おいらラジオ東京を聞くワン! ああ〜、来週が待ち遠しいワンワン!!

おいらがワンワンと大はしゃぎしていると、ご主人は横で冷たく笑った。
「ふっ、もう、ポチは単純だなぁ〜」

おいらは言ったよ。
「いいじゃん、だっておいら『おニャン子娘。』の大ファンなんだからさ! おまけに来週は現金総額100万円の豪華プレゼントもあるっていうよっ!!」

 するとご主人「あーあ、ポチもラジオ東京のスペシャルウイークにすっかりだまされちゃってるんだなぁ、、、」だって。
せっかくおいらがいい気分に浸ってるというのに、ご主人はいつも水をさすんでござるよ、、、。

「スペシャルウイークがどうかしたの?」とおいらが言うと、ご主人はいたずらっぽい顔でおいらに訊ねた。

「ポチはチョーシュリツって知ってるか?」
「昔いたご主人の好きなプロレスラーでござるか?」
「ポチのバカっ! それはチョーシューリキだっ!!」

ご主人は怒りながら説明してくれた。

 「チョーシュリツ」ってのは、ラジオの視聴率だ。テレビに「視聴率」ってあるだろ? どれだけの人がその番組を見たか?ってやつ。あれのラジオ版なんだよ。「どれだけの人がそのラジオを聞いたか?」ってこと。

「それがどうかしたの?」とおいら。

「スペシャルウイーク」ってのは、じつはラジオの聴取率を調査する週なんだよ。テレビの視聴率は毎日調査してるの知ってるだろ? 「昨日の『恋のバカ騒ぎ』は10.4%でした」とかってな。けど、ラジオの聴取率ってのは、なんと年に6回しか調査しないんだ。(※東京以外の地方ではたったの2回でござるよ!) その週を「レイティングウイーク」なんて言うこともあるけど、要はその週にラジオ番組がどれぐらいの人に聞かれてるかを調査するわけ。だから、ラジオ番組を作ってるラジオ君たちにとっては、その週の番組は必死なんだ。

「へぇー、大変なんだねぇ、、、」
しかしおいらには、どうもピンと来ない、、、。

 ラジオ局にとっちゃ聴取率ってのは命なんだよ。たくさんの人が番組を聞いてるならスポンサーがお金を出してくれるけど、聞いてる人が誰もいなかったらスポンサーもついてくれないからな。だから、その週のラジオ局は各局競って色々な手段を使って聴取率をとりに来るわけさ。「スペシャルウイーク」なんて名付けちゃって、普段は来ないクセにスペシャルゲストが来たり、なぜか突然豪華プレゼントをあげたり、、、。そんなコソクな手段を使って、なんとかリスナーを囲い込もうとするのさ。

「なっ、なーるほど! だから来週は『おニャン子娘。』が来るってわけだね!!」と、おいらはシッポを振って叫んだワン。

 おお、ポチもやっと気づいたか。そうさ、そうやってスペシャルゲストやら豪華賞品をつけて、ポチのような純情なリスナーをだまくらかしてラジオを聞くように仕向けてるわけさ。それだけじゃなくて、そのときだけ電車の中吊り広告を出すFM局もあるし、パソコンや現金をプレゼントするところだってあるらしいよ。さらにずる賢いラジオだと「キーワードを発表しますので、番組を最後まで聞いてくれた方にはステキな豪華プレゼントが!」なーんていう作戦までとったりするぜ。こうしておけば、番組を全部聞いてくれるっていう寸法さ。

「ウ〜ひどいワン! おいらすっかりのセられてたよ。」
おいらは怒りでシッポがブルブル震えた。

そこでご主人はボソっとつぶやいた。
「そう、こんなアホなことばっかりやってるからさ、、、ラジオは絶滅寸前なんだよ、、、」

おいらは驚いた。
「ええっ、ラジオはなくなっちゃうの???」

「いや、まだ決まったわけじゃないけどさ」
ご主人は寂しそうな顔で語りはじめた。

 ここだけの話だけどな、業界内でも「ラジオは危ない」ってささやかれてるんだ。実際のところ、ラジオのスポンサーってどんどん減っちゃってるんだよ。ラジオ局ってのはCMを出してくれるスポンサーがいないと経営が成り立たないだろ? だから大変なことになってるんだ。ほとんどCMが入ってないラジオ局も少なくないらしいぜ。

「でも、なんでスポンサーが減っちゃったの?」
おいらにはさっぱりわからなかった。

時代の流れ、、、かな? 昔はラジオを聞いてる人もたくさんいたんだよ。「深夜放送ブーム」なんかもあったしね。でも最近はみんなテレビばっかり見るようになっちゃって、おまけにインターネットとかゲームとかもあるから、ラジオを聞いてる人がどんどん減ってるんだ。おまけにラジオの「広告効果」ってのが、全然わからないんだよ。

「広告効果ってなんだワン??」とおいら。

スポンサーがお金を出すってことは、そのCMを出すことによる「広告効果」がなくちゃ意味がないわけよ。出した分のお金に見合うだけの「いいこと」がないとね。ラジオを聞いて、モノを買ってくれる人が増えたり、知名度がアップするからこそ、スポンサーは「じゃあ、お金を出しましょう!」って思うんだから。でも、ラジオときたらさっき話したように「スペシャルウイーク」なんてアホらしいことをいまだにやってるぐらいだからさ、正しい広告効果なんてさっぱり見えやしないんだ。聴取率の調査方法だって時代遅れだし、そもそも年6回しか聴取率調査してないんじゃなぁ。だから、そんな時代遅れのこと続けてるようじゃ、「お金を出しましょう」なんて言ってくれるスポンサーなんていやしないよ。インターネットに広告だした方が、よっぽど反応がダイレクトだからね。

「そっかー。でも、おいらみたいに車や家でラジオ聞いてる人も多いと思うんだけど」
とおいら。

「そうなんだよ。まだまだラジオのファンだって多いはずなんだ。それに広告宣伝まみれになっちゃったとは言え、ラジオにはまだまだいい番組も多いんだよな。深夜放送とかリクエストとかカリスマDJのトークとか、独特の文化があって、おバカなテレビよりはよっぽどマシだからさぁ、、、」
ラジオで育った世代のご主人は、なんだかちょっと悲しそうだ。

そしてご主人はいたずらっぽく笑ったんだ。
「でもなぁ、犬は聴取率調査の対象じゃないからなぁー」




マスコミの嘘と裏