「誰も愛知万博を批判しないのはなぜ?」



人間の世界じゃあさ、「犬は喜び庭かけまわり〜」なんて歌があるらしいけど、そのせいでおいら大迷惑してるんだよ。じつはおいら寒いのが大の苦手なんだワン。なのに、ご主人ときたらこの寒いのに、「ほら、雪だぞ〜」なんておいらを外に出そうとするんだ。

でも、やっと最近暖かくなってきたからおいらもひと安心だ。いよいよ春も近しって感じだね。そして、テレビや新聞でも春の話題の中心といえば愛知万博だ。なんでも今年は名古屋県の愛知市ってところで万博が開かれるらしくてね、おいらもご主人に連れてってもらおうかなぁ、と思ってるんだワン。世間では、今年の万博って、「史上最大の大型万博だ!」なんて言われてるらしいからね〜!

そこでおいらご主人に言ったんだ。
「いやぁ、なかなか面白そうだね、愛知万博。おいらも行きたいワン!」

ところが、ご主人ときたらまたもや怒ったんだ。
「ポチのバカっ!」
おいらは驚いた!
「ええっ、なんでだワン?」

するとご主人はため息をつきながら教えてくれた。

ポチも「いやいやマスコミ」の宣伝に乗せられてるだけなのさ。じつはな、マスコミ現場の人間だって、だーれも愛知万博が盛り上がるなんて思っちゃあいないんだよ。「え〜、ほんとにやるのぉ?」って感じだ。プレス向けの先行取材に行った人たちだって「疲れるだけでなにも目新しいものなんてなかった」って言ってる。たしかにお金はかかっててすごいらしいけど、みんなネズミーランドかなんかで見たような出し物ばっかり。あんなところにわざわざ遠くから来て何時間も並んで見る時代なんて終わったんだよってみーんなそう思ってるさ。それを流行に敏感な業界人たちが「万博だぁ!」なんて盛り上がるはずないだろ。ただ、一応大きなイベントだから紹介しないわけにはいかないけど、みんな本当のところ、シブシブ・イヤイヤ紹介したり記事を書いたりしてるのが本音なんだよ。

「ええっ、だって過去最大の大型万博なんでしょ?」
おいらはご主人に訴えた。

そうさ。でもそれは「お金が」ってことさ。今回の万博は会場建設費1350億円、運営費550億円で、過去最大の「お金を積んだ万博」だってことなんだよ。大阪万博や筑波博だって会場建設費と運営費を両方足して900億円ぐらいだったんだぜ。それが軽く2倍ぐらいまでいっちゃってるんだからなぁ。まさに金にまみれた万博だ。俺もあきれちゃうよ。

「ひぇー、それほんと?」おいらもビックリだ。
「そうさ、愛知万博の公式HPにだってちゃーんと書いてあるさ」とご主人。

「でもさ、そんなすごいお金、誰が準備してくれたの?」
「国が450億円、地方自治体が450億円、その他が450億円さ。これもちゃんと公式HPに書いてあるよ」

ええっ、国が450億円?? だって、国が出すってことは、みんなの税金なわけだワン?
日本の人間君は今1億3千万人ぐらいいるんでしょ? ってことは一人350円ずつ無理矢理出させられてるんじゃないの? おまけに地方自治体の450億も含めれば900億、、、すごい金額じゃワン? それなのによくみんな怒ったりしないんだね〜。

「おっ、ポチもいいところに気づいたなぁ」と、ご主人はおいらをなでてくれた。

たとえば、少し前に銀行が倒産しかけたりして、公的資金投入なんてやるときは、新聞もテレビも大声で議論を巻き起こしたんだ。「なぜ国民の金が使われるんだ!」とか「責任を取れ!」「誰が悪い!」「血税を使うのは反対だ!」なんて具合に、あちこちで大いに取り上げていたもんさ。それが今回の万博で、莫大な公的資金が使われているのに、だーれも問題にしないんだからなぁ、不思議なもんだろ?

「そういや、イラクで日本人が人質になった時なんて、何百万円かの税金が使われた!、ってみんな大騒ぎしてたよねぇ。たった何百万円で怒るのに、なんでみんなは450億円も使われてる今回は騒がないの?」
おいらはとても不思議だった。

「そこがマスコミのずるいところさ」
ご主人はニヤリと笑い、周囲を注意深く見回しながら言った。
「大きな声じゃ言えないけど、マスコミは万博があると儲かるのさ!」

「ええっ!」おいらはビックリした。
「それってほんと??」

よく考えてみろ。万博っていうのは国をあげてやるお祭りだ。お祭りに人を呼ぶためには、たくさんの広告や宣伝が必要になるだろ? 広告や宣伝ってのはマスコミがやるんだよ!

「ああっ、それじゃ、マスコミは宣伝料が欲しいから黙ってるんだっ!」
おいらは大声で叫んだ。
「シ〜っ、あんまり大声で吠えるんじゃないよ!」
と、ご主人はおいらをたしなめる。

そう、ポチは大正解だ! 万博を宣伝する広告ってのはハンパな量じゃない。国をあげてやるんだから、どんな大会社の宣伝よりも、もーっとすごい金額の広告宣伝費が投入されることになるんだ。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてインターネット。見てみろよ!どこもかしこも「愛、地球博」だらけだ。トトロの仲間のような可愛いマスコット君がみんなを誘ってるだろ? それに、「愛知万博に行きましょう!」なんていう旅行会社や運輸会社の広告、愛知万博に協賛している企業の広告も含めて、その宣伝料金としてマスコミのフトコロにおちるお金は、ものすご〜い額なのさ。み〜んな万博のおかげで儲かっちゃうわけだ。

ご主人はさらに続けた。

それもな、公的な宣伝だと高〜いお金を取れるんだよ。じつはここだけの話、テレビや新聞や雑誌の広告料金なんて、定価は決まってるけどダンピングしまくりなんだよ。

「へぇ〜、ダンピングって、空から飛んじゃうわけ?」とおいら。
「ポチのバカっ、それはダイビングだっ!」
ご主人は怒りながら教えてくれた。

ダンピングってのは料金を安くするってことさ。定価は高額でも、テレビや新聞君たちは広告が入ってこないと困っちゃうから、実際は「安くしますから広告入れて下さいよ〜」なんて、普段から金額を大まけして売っちゃってるんだよ。定価の半額、いやそれどころか10分の1なんてこともある。だって、売れ残っちゃったら1円にもならないからな。新聞の一部が白くなっちゃっても格好悪いだろ?だからダンピングしてでもなんとか売ろうとする。ところが、万博みたいな公的な広告は、広告料金を高〜い定価で払ってくれるから、とってもオイシイんだよ。この不景気な時代に、定価で広告料金を払ってくれるお客様なんて、政府公報と万博さんぐらいさ。それだけじゃない、雑誌で万博の特集をやればいつもより売り上げが伸びるわけだし、テレビで万博の番組をやればいつもより視聴率はアップ。結局みんなそうやって儲けることができるからな。

「ひ、ひどいワン! マスコミくんたちは自分が儲かるときは何も言わないなんて!」
おいらは吠えた。

ポチ、なに怒ってるんだよ? マスコミっていうのは企業なんだぜ。お金を儲けるために仕事をしてるんだ。そのおかげで俺だってこうしてポチにエサを食わせてやれるんだぞっ。儲からないことはやめて儲かることをするのは、資本主義社会では当然のことなんだよ(詳しくは→『エピローグ:マスコミの正体』を見るべし)。

「だっ、だって、、、クゥ〜ン」
おいらは再び悲しく吠えたよ。

ポチ、、、怒るなよ。それに俺らだって仕方なくやってるんだ。愛知万博は「ワン通」が仕切ってるから逆らえないんだよ。というか、全国で行われる大型の博覧会やイベントは、すべてワン通が中心になって動いてるんだ。

ご主人は悲しそうに言った。

「ワン通って、前に『その16、さわやかサラ金CMにだまされるな!』で出てきたサラ金CMを作っていたり、韓流ブームの仕掛け人とか言われてる、怪しい広告代理店だワン?」
おいらは驚いた。

おっ、ポチもよく覚えていたな! そうだ、いずれ詳しく説明するつもりだったけど、日本のマスコミ業界っていうのは、「ワン通」が牛耳ってるっていっても過言じゃないんだ。万博の立役者とも言えるネコタ自動車をはじめ、みんなが知ってる有名な化粧品会社、電話会社、酒の会社、洗剤会社、ほとんどの有名会社は、ワン通が宣伝を取り仕切ってるのさ。この中には愛知万博に協賛している有名企業も数多く含まれているぜ。ワン通は、色々な宣伝を一手に引き受けて、それを色々なマスコミに流すのが仕事なんだよ。すると、テレビや新聞や雑誌なんかは、広告が欲しいからワン通には逆らえない仕組みになってるんだよ」

「だからどうだっていうのさ?」
おいらはご主人をにらみつけた。

そんな怖い顔すんなよ。愛知万博を成功させるために、ワン通が万博批判をさせないんだぜ。じつは何年か前に万博の概要が決まる頃には、万博を批判するマスコミも少なくなかったんだ。自然環境破壊だの、今どきの時流に合わないだの、政治家の利権がどうのってね。でも、万博が近づくにつれてマスコミもトーンダウンして、最近ではすっかり誰も万博批判しなくなっちゃった。それは万博の広告料が欲しいからってことと、ワン通から色々な圧力をかけられるってのもあるのさ。それに、万博に協賛している企業の気分を害して、CMや広告を出してくれなくなっても困るしな。まぁ、これ以上は俺の口からは言えないけど、その辺を詳しく知りたかったらこんな本も出てるさ。

ま、それは置いといて、ある人間はお金が欲しいから、ある人間は仕方なく、結局マスコミみんなで寄ってたかって、面白くもない愛知万博の宣伝をするわけさ。そして、なにも知らない普通の人たちだけが、「万博に行ってみようかしら?」なんて思わされちゃうってわけ。でも、ポチもそこんところは忘れるんじゃないぞ。誰も万博なんて楽しいとは思っちゃいないんだ。仕方なくやってるだけなんだ。

ご主人は寂しそうに笑った。

仕方ないからおいら、万博じゃなくてワン博につれてってもらうことにするよぉ。



マスコミの嘘と裏