大辞典関西テレビの歯切れが悪いもうひとつの理由



「いやぁー、とうとうバレちゃったね」
ご主人はニヤニヤしながら言った。
「そうだね」
おいらもちょっとニヤニヤしてみたワン。

なんてったって、ご主人が前から文句を言っていた『あるある大事典』のウソがバレちゃったんだからね。そりゃあもう、みんな大騒ぎだワン。納豆だけじゃなくて、レタスだとかアズキだとか、過去の分も次々にばれちゃってるんだからさ。もう歯止めが利かないかんじだ(そういえばご主人が前に言った「お笑いを見たら血糖値が下がる」っていうのと「寒天ダイエット」のところも、早く追求して欲しいワン!)。

「でも、おかげで、納豆を買えるようになったからな〜」
ご主人はちょっと上機嫌なようすだ。じつはご主人、大の納豆好きなんだけど、今回の事件のせいで納豆がしばらく買えなかったんだワン。ちょっと前はすごく不機嫌で、おいらもホトホト困ってたんでござるよ。でも今夜のご主人たら、高級な「ワラ仕込み納豆」を買って上機嫌で食べているんだ。

 でもさ、おいら思ったんだけど、今回の関西テレビの偉い人たちの会見ってなんかヘンなんだよね。なんだかいつも歯切れが悪くて、なにかを微妙に隠している感じなんだよね。「それは勘弁して下さい」とか「言うわけにはいかない」とか、なんだかまだまだ隠してることがた〜くさんありそうな気がするんだけど、、、

おいらがご主人にそう言うと、
「おっ、ポチもそう思ったか?」と、
ご主人は驚いた様子でおいらに言ったんだ。
「じつはな、俺もあの記者会見を見てピーンと来たよ。あれはまだまだ隠してることがたくさんある、ってな」

「隠してることってなんだワン?」
おいらは興味シンシンだ。ご主人は腕組みをしながら話しはじめた。

そうだなぁ、思い当たることはいくつかあるな。まずは「不正に誰かが儲けていた」ってとこかな? 本来、あの番組は「ガオー」の一社提供だ。ということは、番組制作費はすべてガオーからもらっていなけりゃならないんだ。他からお金をもらっていては、ガオーとの契約違反になってしまうわけだ。ところが、、、だ。前もポチに話したと思うけど、あるある大辞典の放送前には、いつもなぜか放送前に流通業界に情報が流出していたんだ。そのことは、業界内では有名な逸話だ。ということは、、、だ。誰かがその情報を事前に横流ししているのは確かだよな。通常、放送局は放送前の番組内容については、新聞のテレビ欄やテレビガイド誌に出す以外は、外部に出してはいけないからな。でも、漏洩しているのは、テレビガイドに流すような内容より、はるかに詳しい内容だ。これは、番組を作っているプロデューサークラスか広告代理店のやつらにしかできない芸当さ。

「えっ、ってことはその誰かが情報を売ってお金儲けをしていたってこと?」
おいらは驚いたよ。ご主人は続けた。

ああ、その可能性は高いぜ。前も言ったと思うけど、番組のプロデューサーが、その地位を利用してお金儲けや「いい思い」をしてるってことは、テレビ業界じゃアクビがでるほど当たり前のことなんだよ。とくに情報番組のプロデューサーともなれば、自分のところの商品を紹介してもらいたい色々な業者がお土産をぶらさげて日々訪れてくるのは常識だからな。テレビで紹介してもらえればブレイク間違いなしってことで、色々なメーカーやサービス業の担当者はみんな必死でやってくるのさ。ま、現金ではなかったにしても、お土産や接待で「おいしい思い」なんてのは日常茶飯事だろ。

また、下請けの制作会社が組織的にやってるところなんかもあるぞ。本来、番組制作ってのは、テレビ局からもらった番組制作費で作るのがスジだ。ところが、金儲けを考えた下請け制作会社が、企業から金を取って番組内で紹介するサイドビジネスなんかをやっちゃってるところもある。お金はもらわないにしても、制作費の一部を負担してもらったり、取材協力金という名目で受け取ってる場合だってある。テレビ局もそんなの知らないはずはないんだけど、多少のことはお目こぼしっていう体質だからな、この業界は。

「ひぇ〜、テレビ業界って金儲け話だらけなんだねぇ」
ああそうさ。だから、今は下っ端のやつらも「いつか俺もあんなおいしい思いしたい!」って夢見て、過酷な現場をがんばっているわけさ。

ま、それはさておき、そういった問題をテレビ局として認めてしまうと、大スポンサーであるガオーのメンツが立たないってのが大問題なんだ。前も言ったとおり、この番組はガオーの一社提供。ガオーだけが好きに注文をつけられる番組なわけだ。それが他からもお金をもらっていたかもしれないなんて、ガオーとの契約違反にもなりかねない問題だからな。だから、この情報漏洩問題については追求されたくないのが本心だろうよ。

「フ〜ン、だからテレビ局の偉い人も、歯切れが悪かったんだね?」
おいらは、なるほどと思ったよ。でも、、、ご主人はまだまだ別の考えがあるらしい。
「でもな、そんなことは大した問題じゃない。それより俺はもっともっと別の大きな問題が表に出るのを、関西テレビやフジテレビが恐れているとニラんでるんだよ」

「えっ、別の大きな問題ってなんだワン?」
ご主人のもったいぶった言い方に、おいらはじれったくなって吠えたよ。

すると、ご主人は周囲を見回して、ヒソヒソ声でおいらに言ったんだ。
「じつは、テレビ界には今まで内緒にしてきた大きな問題がある」
「な、なんだワン?」
「それはな、『偽装請負』だっ!」

「えっ、『すもう、ハッケヨイ』って?」
するとご主人は、ワラ仕込み納豆のワラで思い切りおいらの頭をはたいたんだ。
「ポチのバカっ、『相撲はっけよい』じゃなくて『ギソウ・ウケオイ』だっ!」

偽装請負っていうのはな、違法な仕事の形態のことさ。たとえば車を作るメーカーなんかが車を作るときに、自分ところの社員じゃ人が足りないからって、派遣社員というのをやとって車を作るわけだ。でも、その派遣社員ってのを使うときは色々な厳しい取り決めが決められているんだ。勝手にやめさせちゃいけないとか、保険をかけなきゃいけないとかその他もろもろな。派遣社員が不利にならないように労働基準法ってので細かく決められてるわけさ。

ところがな、この仕事も「派遣」じゃなくて「請負(うけお)い」という発注方法にすれば、そんな細かい規則は守らなくてもいいんだよ。請負っていうのは、普通は下請けメーカ−に「こういうものを作って下さいね」って外注する仕事の形態だ。普通なら、下請け会社は、発注主に頼まれたものを自分の会社で作って、それを納品してお金をもらうわけ。今の世の中では、車でも電機製品でも、中の部品はすべて、こういう下請けメーカーさんのおかげで成り立ってるわけだな。すばらしいネジを作ったり、すばらしい電線を作ったり、そういう下請けメーカーが山ほどあって、大きなメーカーは製品を作ることができるんだ。だから、大きなメーカーはそういう会社に「こんな部品を1000個作って下さい、料金は10000円でお願いします」なーんて具合に部品を発注しているわけだ。その代わり、請け負った会社は自分たちの会社で作るんだから、働く人のことは自分たちの会社で面倒をみなくちゃいけない。それは当然のことだ。

ところがだ、ずる賢い大メーカーのやつらが考えたんだよ。「自分のところでやる仕事だって、『請負い』という形で外注してることにすればいいじゃん!」ってな。「そしたら、請け負った会社の社員の面倒なんて、俺たちがみる必要もなくなるし…!」というわけで、本来はその会社の社員がやらなくちゃいけない仕事を『請負い』という形態で外注して、請け負った会社の社員を自分たちの会社で働かせて部品を作らせちゃったんだよ。

「う〜ん。難しくて、おいらなんだかわかんないワン」
おいらが鳴くと、ご主人はシブイ顔をして言った。

まぁ、ポチが理解できないのも仕方ないよ。働いたことがないポチにその内容を理解しろってったってムリな話だからな。でも要は、「偽装請負」というズルい方法をとることによって、給料は安く、しかもいつでもやめさせることができるように、労働者を確保してるやつらがいるってことさ。でも、これは明らかに実態は派遣社員で法律逃れだ。だから、この問題は昨年あたりから、色々なところで問題になっているんだよ。

「へぇ〜、おいら知らなかったよ。テレビでも見た覚えがないなぁ」
おいらは不思議に思った。

そうだろ? それは当然さ。この偽装請負ってのは、みんなが知ってるネコタ自動車を始め、杉下電機や西芝電機なんかでもやってることが明るみに出ている。いつも言ってるとおり、これらの大企業はマスコミにとって大お得意様だからな。あまり大きく騒ぐことはしないんだよ。実際のところ、この問題を追及しているのは一部の新聞だけで、一般のマスコミではあまり報道されないからな。

、、、でもな、じつはそれだけじゃなくて、マスコミ、とくにテレビがこの問題を報道しないのには、他に大きな理由があるんだ。

「理由ってなにさ? それに、あるある大辞典とどんな関係があるのさ?」
おいらにはとんとわからなかったよ。

もう、ポチはトロいなぁ。放送業界も偽装請負の宝庫だからに決まってるだろ!

「な、なるほどー!」
おいらはやっと納得したよ。

あるある大事典の問題で、関西テレビが「下請け会社が勝手に…」なんて言ってただろ? じつは、放送の制作現場って、下請けが完全に独自で番組を作ってることなんてほとんどないんだ。下請けの会社に発注された番組でも、実際は放送局とかにでかけて行って、テレビ局所属のプロデューサーやディレクターの指示で、テレビ局員と一緒に番組を作ってることが多いんだよ。

たとえばある番組があったとしたら、まずは放送局や大きな制作会社に「作戦本部」みたいな部屋(スタッフルーム)が作られる。そして、そこには色々な会社のプロデューサーやディレクターなんかがワラワラと集まってきて、みんなでワイワイと番組をつくっているんだ。そこでは、誰がどこから来たのかなんてみんな知らない。テレビ局のプロデューサーもいるし、フリーのディレクターもいる。制作会社から来たADもいれば、派遣会社から来たADもいれば、単なるアルバイトのADもいる。だから「あっ、おたくは●●テレビ制作会社さんなんですか!」なんて、挨拶しあってるぐらいだからな。人が入り乱れてほんとめちゃくちゃな状況なんだよ。

だから、テレビ局が「制作会社に外注しました」なんて言ってても、実態は同じ部屋で、目の前の色々な会社から来たスタッフが契約社員のように一緒に番組を作ってたりすることが多いんだ。

おいらはやっと事情がのみこめた。
「あっ、それって偽装請負だワン!」

ピンポーン!正解だ。ポチもやっとわかったな。じつはテレビ局自身がモロに偽装請負の大親分なんだよ。これは長年の伝統でもあるんだ。テレビ局やラジオ局は、偽装請負の仕事形態で番組を作るからこそ、制作費を安く抑えられて、自分たちは人もうらやむ高給をとることができるわけだ。で、実際の制作現場の人たちの給料は、テレビ局社員の半分いや3分の1以下だったりするのが現実だ。ポチもひどいと思わないか? 

 ところが最近偽装請負の事件が世間をにぎわしたからな。各放送局もこの問題にはナーバスになっているはず。関西テレビの経営陣も、下請け会社に対する発注形態とか仕事の状況とかは、あまり詳しく公表したくないわけだ。あまり詳しく状況を話してしまうと、偽装請負が横行している状況がモロバレになっちゃうからなぁ。おまけに自分のところの労働組合からも突き上げられている最中だろうし。ま、俺はあるある大事典のスタッフの実態は知らないけどな、あの現場にも少なからず偽装請負が存在しているとニラんでるよ。

 何度も言うけど、この問題は関西テレビだけじゃなくて、他のどんなテレビ・ラジオ局も抱えている大問題なんだ。テレビ・ラジオ業界では番組を外注していると言っても、実態は各協力会社のスタッフが局にやって来て、テレビ・ラジオ局員の指示で働いている現実。制作会社とは名ばかりで、実質は人材を派遣しているだけの制作会社の存在。これはまさに偽装請負に他ならないぜ。この問題が波及すると、他のテレビ局だってウカウカしてられなくなるのは確かだな。あの記者会見での関テレの偉いさんの歯切れ悪い話しぶりも、発注主であるテレビ局と、請負企業である制作会社の関係……その問題にあまり触れたくないのがアリアリと見てとれるぜ。

そこでおいらはピンと来た。
「アリアリ大辞典ってこと?」

するとご主人はまたもおいらをワラ仕込み納豆のワラではたいた。
「ポチのバカっ!」





<ポチの追伸>
ご主人が、「こんな話あんな話も忘れるなよ!」だってさ。



マスコミの嘘と裏