大辞典 原発マスコミの罠(ワナ)にだまされるな!

 いやあ、ほんとに怖かったワン。この大地震はおいらにとっちゃ生まれて初めての経験だったんだよ。まわりのものはガラガラと崩れ落ちるし、本棚からは本が落ちるし、食器はおっこちるし、、、ご主人が仕事に出かけていなかったから、一匹部屋の中でおいらはもう心細くて心細くてさ、食卓のテーブルの下で、ご主人が帰ってくるまで、ブルブル震えていたんだワン。

 でもなんとかおいらもご主人も無事で、ご主人が帰ってきたときは、おいらポロポロと涙が出て止まらなかったよ。でも、それからのテレビのニュースを見て、おいらはもっと悲しくなってしまった。だって、多くの人が亡くなったり、家を失ったり。なんとか助かった人も食べ物や暖房や薬がなくて、大変な生活だ。おいらはそんな人たちのことを見て、毎日とっても胸が痛んでるんだワン。おまけに、原子力発電所ってところが大変らしい。犬のおいらにはよくわかんないけど、毎日みんなが深刻そうな顔をして話をしている。そして、みんなは日本の政府が悪いとか会社が悪いとか、そんなことばっかり言ってるみたいだ。

 でも、そんなある日、ご主人が帰って来るなり、おいらに言ったんだ。
「おいポチ。じつはな、内緒の話なんだけど、どうやらアメリカの専門家が、日本の原発はもうダメだ、早く逃げた方がいい!って言ってるんだよ!」
おいらはそれを聞いておどろいた!
「ええーっ! それは大変。はやく逃げないと!」
おいらは、そう言うなり、隠してあったとっておきの骨を掘り出して、くわえてとにかくどこかへ走って行こうとしたんだ。

 そのときだった。ご主人が大きな声で怒鳴ったんだ。
「ポチの大バカーーーーーーーーーーーーっ!!」

 おいらは、何がなんだかわかんなかったよ。だって、原発が危ないって言ったのは、ご主人なんだワン…。するとご主人は悲しそうな顔をしておいらに説教を始めた。

 何で俺の言ったことを何にも考えないで無条件で信じるんだよ、おまえは! じつは俺がさっき言ったことは、ポチが相変わらずバカかどうか試したかったんだ。おまえなぁ、俺のさっき言ったことを、よーく考えてみろよ。

おいらはご主人のさっきの話を思い出した。ご主人はアメリカの専門家が…って言ってたんだっけ。

「そうだ、アメリカの専門家だ。で、ポチはそのアメリカの専門家ってのが誰なのか知ってるのか?会ったことがあるのか?どんなやつだか知ってるのか?」
「だっておいら犬だから…」
「まあいい、それが誰なのかは置いておいて、次に、なんで日本の専門家より、見たことも聞いたこともないアメリカの専門家の言うことを信じるんだ?」
「いやぁ、なんとなく日本の専門家よりアメリカの専門家の方が偉い気がして…」
「じゃあ聞くがな、お前が今住んでるこの家の事を一番よく知ってるのは誰なんだ?」
「もちろんご主人だワン!」
「おまえの話だと、俺よりもアメリカの専門家の方がこの家のことをよく知ってることになるぞ!」

おいらはハッとした。おいらは昔からアメリカって国がすごいすごいって聞かされてたもんだから、なんでもアメリカの方が偉いと、知らず知らずのうちに思ってたんだ。

「まあ仕方がないことなんだけどな」
そういうと、ご主人は苦々しい顔をして話し始めた。

人間っていうのは、いや、犬もそうかもしれないが、困った習性があるんだよな。なんというか、身内を信じなくて、他の人の言うことを信じる、みたいなもんなんだけどさ。そのせいで、今回の原発問題でも、みんないろいろな「ワナ」にひっかかってる。たとえば外国人が避難してるから危ないんじゃないか、とか、外国の人が言ってるからダメなんじゃないか、とか。これ、ちょっと頭をひねればおかしいことに気づくはずなんだけどなー。日本の国の中で起こってることをいちばんよく知ってるのは日本人なんだ。なのに、日本のことをよく知らない、しかも見たことも聞いたこともない外国人が言ってることの方が正しい気がしちまうんだから、笑っちまうよ。仮にさっきの「アメリカの専門家」が有名な人だったとしても、日本の国の中で毎日原発を動かしている人より、日本に1回か2回しか来たことがない「アメリカ人の専門家」の方が原発についてよく知ってるのかね?俺にはかなり疑問だけどな。

「でもさ、日本の政治家や専門家が嘘をついてるかもしれないよ」

そこなんだよ、大きな問題は。人間って言うのは普段から信用してない人の言ったことはすべて嘘だと思ってしまうクセもあるんだよな。実際、最近の日本の政治家たちはとても頼りないように思っていた人が多いのは確かだ。そんな人たちのことが信じられない気がするのは仕方ないとも思うよ。

でもな、俺が聞きたいのは、なら、おまえたちはその「アメリカの専門家」とか「アメリカ政府」が、日本政府よりもっと信頼できるヤツらなのかどうかを知ってるのか?ってことだ。ポチは、アメリカ政府の人や専門家の言ってることを見たり聞いたりしたことがあるのか?彼らは信じられる人間なのか?

「うぐっ…」
おいらは困ったよ。だっておいら、よく考えたらアメリカ政府のことなんて何にも知らないんだ。

ほら見ろ。おまえもワナにはまってるのさ。実際、アメリカ人に聞いてみると、アメリカ人たちだって、アメリカ政府や専門家のことなんて、ちっとも信じちゃいないんだ。いや、アメリカだけじゃなくて、どこの国の人も、自分たちの国の政府は最低で、能なしで、困ったもんだと思ってる。そして他国の政府はきっと優秀じゃないかと思っている。人間っていうのはそんなもんなのさ。

日本人も多くの人は、残念ながら今までの日本政府に不信感を抱いていたからな。他の国の人が言ったことを「それみろ!やっぱりこっちが正しい!」って思ってしまいがちなんだ。そして、それに荷担しているのが、原発マスコミだ。じつはな、あいつらは今、とても困っているんだ。

「えっ、なにを?」

簡単なことさ。自分たちで原発の取材がなにひとつできないってことさ。普通の物事なら、自分たちがカメラやマイクを持って、その場所で実際に見聞きしたことを記事や番組にするだろう?それが、原発の場合は立ち入り禁止だからできないんだよ!

「あ、そうかっ!」

やっとわかったか! あいつらマスコミは、実際に原発に近づけないのだから、記事や番組なんてなにひとつ作れやしないんだ。入ってくるのは政府の公式発表だけ。これだけじゃお得意のセンセーショナルな記事なんて作れやしない。おまけにほとんどの記者や制作者には、正しい知識もないからな。でも、それじゃ国民からアホ呼ばわりされてしまうし、新聞も売れないし、テレビも見てくれないから、なんとか記事や番組を作ろうとする。それで、日本のわけのわからない「専門家」や外国人の「専門家」の話をもとに話を作り上げるしかないんだ。やつらの本分を思い出してみろよ。一般マスコミの本分は金儲けをすること、つまりテレビや雑誌を売ることだ。決して国民を救いたいわけじゃないんだ。その結果があれだよ。適当にセンセーショナルな記事を作り上げては、新聞や雑誌を売ろうとしたり、テレビの視聴率をとろうとする。結局、それに踊らされてる人間だけがバカを見るってことさ。

「でもさ、おいらバカだから、もういったい何を信じたらいいのかわからないよ」
おいらはご主人さえ信じられないんだから、困ってしまうんだワン。

簡単なことさ、怪しい人の言ってることなんて聞かないで、客観的で一番信じられる事実だけを元に、自分で判断すればいいのさ。そして、無駄なことは考えない。たとえば俺は、原発の専門家でもなければ、原発の現場なんて行ったことも見たこともない。まして、今何が起こっているのかなんてまったくわからない。シロウトの俺がいくら「早く4号機を冷やせよ!」とか言っても、そんなことは無駄なことなんだ。ただし、今までの経験からこれだけは言えるのは、ぬくぬくとして暖かい部屋で本ばかり読んでる有名な「専門家」より、毎日その仕事に携わっている無名の人の方が、よっぽど「専門家」だということさ。それだけは自信があるぜ。だから俺は彼らを信じる!

「地震だけに『自信がある』んだワン?」
するとご主人はおいらの頭を思いっきりはたいた。
「ポチのばかーっ!」



P.S.
ご主人が「おもしろい記事があったぜ」って教えてくれたワン
http://www.j-cast.com/2011/03/27091410.html

マスコミの嘘と裏