プロレスは八百長か?


 じつは、テレビ嫌いのご主人も、にこやかにテレビを見ていることがあるのでござる。それは、動物がたくさん出てくる番組と、そしてプロレスなのだワン。なんだか裸の男達が暑苦しく首を絞め合ったり殴ったりしてる映像なんて、おいら、さっぱり面白くないけど、ご主人は好きらしい。

 今日もプロレスを見ていたら悪役登場。人気レスラーはやられて血みどろになってる。そして体を押さえつけて、レフリーが「ワン! ツー! ス……」。おーっとスリーカウント直前でなんとかはね返したよ。でもなんかヘンだなぁ、三つ目のカウントが気のせいかゆっくりだったような気がするんだけど、、、あっ、わかった。あれもマスコミが嘘ついてるんでしょ?ほんとはプロレスは八百長なんでしょ?

 するとご主人は怒り出した。「ポチのバカっ!」

 いつもならテレビは嘘つきって言うご主人なのに、なんで怒るんだろう?するとご主人は語り始めた。

 ポチ、あれはなぁ断じて八百長なんかじゃない。体を張ったステキなショーなんだ! 鍛え抜かれた肉体の男達が戦い合うパフォーマンスなんだぜ。本気で戦えば、数秒で決着がついちゃうさ。でも、そこがすばらしいショーマンシップ。お客さんを楽しませるために、その試合には「危機一髪のハラハラ場面」や「場外乱闘」なんかを作り出して、お客さん達をハラハラドキドキさせるわけさ。場外に飛ぶシーンだって、一方ばかり飛んでいたのでは、反対側のお客さんが見れないだろ? だから、次の時は必ずもう一方に飛ぶ。それが暗黙のルールなんだよ。

 「なんだ、じゃあ打ち合わせ済みなんだね」と、おいら。するとご主人は「ポチのバカっ!」と再び怒る。「確かに打ち合わせ済みだ。…でもな。打ち合わせしてるからって危険がないことなんてこれっぽっちもないんだぞ。みんな一歩間違えば本当に死んじゃうほどの壮絶な戦いを、お客さんのためにやってるんだぞ!」

 なんでも、一度ご主人が仕事でプロレスを間近で見たときに、選手の体勢が悪くて、地面に激突、どうやら骨が折れていたらしい。リングの上では一瞬相手の選手も心配そうな顔をしていたけど、その選手は小さい声で「大丈夫だ、このままやってくれ」と、体をボロボロにしながら必死で最後まで戦ったんだよ。もちろん、負けちゃったし、試合後は入院しちゃったけどな。

ご主人は涙目になりながら続ける。

 じつはプロレスラーにはいい人が多いんだよ。とくに悪役がそうだ。たとえば、最近は出てないけど、「じゃじゃコング」っていう、恐ろしい女性レスラーがいただろ。テレビでは「おめえらー殺してやる!」なんて、迫力十分だったけど、じつはあの子とーっても大人しくていい子なんだよ。撮影の現場でもちゃんと礼儀正しくてなぁ、小さな声で「よろしくお願いします」なんてしおらしいんだぜ。俺はすぐにファンになっちゃったよ。じつは昔色々あって、イジメラレっ子だったらしいよ。でも、そんな子がリングの上ではお客さんを楽しませるために「おんどりゃー!」って、悪役を演じてるんだぜ、ポチ泣けてこないか??

 ちょっと古いけど、竹刀を振り回して怒鳴り散らしていた上田鹿之助。あの人もそうだったなぁ。あの人が出てくると、みんなブーイングで、本当に嫌われ者だったな。今じゃ体中がボロボロになって入院してるらしいけど、「お客さんを怖がらせることが俺の使命だ!」っていつも体を張ってがんばっていたんだ。

 そんなプロレスを「八百長でしょ?」なんて言うのは野暮(ヤボ)の極みさ。そんなやつは、ネズミーランドに行って「なんだい、このワンデレラ城って偽物じゃん!」って文句を言うのかい?みんな偽物だとわかっていながら楽しむわけだろう?? 水戸黄門だって、最後の最後で印籠が出てくるのは誰でも知ってるし、吉本の新喜劇だってお決まりのギャグが飛び出すじゃないか? それを「なんだい、また印籠出してやんの、つまんねー」なんて言うヤツはいないだろ??

 おまけになぁ、大もうけのネズミーランドと違って、だいたいのプロレス団体っていうのは、いつつぶれてもおかしくないぐらい、超貧乏なんだよ。レスラーにファイトマネーが満足に払えないところも少なくないんだ。でも、プロレスって言うのはお客さんに夢を与える仕事だからって、そんなこと一言も言わずにみんながんばってるんだよ。

 岩手県の議員になったグレート・サムケたちなんてなぁ、東北地方の人たちにプロレスの良さをわかってもらいたくて、ボロボロの車で東北を巡業して、宣伝をするために、レスラー自らポスター張りさ。あの正義のヒーロー「グレート・サムケ」が、吹雪の中、電柱にポスターを貼って歩いて遭難しかけたっていうんだぜ。泣けないか?

見るとご主人はすっかり涙にむせている。

 まぁ、場外乱闘とか団体抗争とかちょっとやりすぎのような気がするけど、プロレス雑誌もスポーツ新聞も、プロレス業界になんとかがんばって欲しくて、大げさな記事を書いているわけさ。そのぐらいは許してやれよ。

 「でも最近流行のJ-1とかフライドって言うのは本気で戦ってるんでしょ?」とおいら。するとご主人は「あんな格闘技、人間ドラマがなくて全然面白くないよ」だって。

 う〜ん、いつもマスコミ批判するご主人も、今日はなんだか違うね。では、次はおいらももうちょっと暖かい目でプロレスを見てみようかなぁ??




マスコミの嘘と裏