妻の愉しみ


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 日当たりの良いストーブの前で妻がツル篭を編んでいます。 そばではいつも、ニ匹の犬達が妻の作業を見守っています。 私はオバタリアン三人組、と呼んでいます。
 あまり趣味のなかった妻がある日突然「ナベさん、ツルをとって来て!」と命令をくだしました。 エッ?と思いながら私はトラックに飛び乗り、山道を分け入り、荷台にいっぱいのツルをとってきました。 そのツルの太さを選別して行く妻に、何を作るのか訊ねると、篭を編むというのです。
 そんなことをしている妻を見たことが無い私は、できるの?と聞くと、「やったことが無いから分からない」という至極当たり前の答えが返ってきました。 その日から、我が家の特等席であるストーブの前はオバさん三人組に占領されっぱなしです。 大体この場所は、私が夕飯後に本を読みながらウツラウツラする所だったのです。 いわば私の特等席だったのです。
 それからはCS放送のホームチャンネルを見たり、図書館から借りてきた本を読んだりしていろいろ研究した様です。 一個できるたびに「いいでしょ?いいでしょ!」と聞いて来ます。 私にはガラクタにしか見えないので、生返事をしていると「センスないんだから!」と怒りだしました。

 肩が凝る,とか,指が痛い,とかぶつぶつ文句をいいながらも、トラック一台分のツルを編み終わるころには、どうにか格好がついてきました。 編んで行くスピードも早くなり、次にとって来たツルはアッという間に使い終わっていました。
 良くしたもので、ときどき遊びに来る妻の友人達が、それを買って行ってくれたり、お店のデイスプレーに使ってくれるようになりました。 私はツルだったら何でも良いのかと思っていたら、アケビがどうの、フジがどうの、クズがどうの、スイカズラがどうのといって来ます。 わけが分からないので本を持って、二人でツルを取りに行くことになりました。 山には何処にでもツルがあるのですが、急な斜面の大きな木に絡み付いているツルが良いようで、私は大変苦労をしています。

 先日遊びにきた友人と娘と妻の三人組で出かけて行ったきり,昼飯時になっても返りません。どうしたのかと探しに行くと、どうやら迷っていた様です。 方向音痴の三人とニ匹が、ホンの裏山で迷っていたのには笑ってしまいました。
 最近は草木染めに凝り始めました。 昔、東京にいたころ、皮のカービングに使っていた染料でハンカチを染めていた時、突然、草木染めをやりたい、と言い出したのです。 そこで私は、高崎の染料植物園に電話をして、体験コースの申し込みをしました。 初めて染めた絹のハンカチは、私に言わせると妻の好きなウンコ色をしていました。 これからのちツルとりと共に、草木染め用の草花を取りに行くことになりそうです。
 草木染めに詳しい方、生地の仕入れ先等教えて下さい

 いろいろやりたいことが出来て来て,私達の田舎暮しは、ノンビリ出来ない様です。