memory.1 「ラストダンス」(2002/08/19)
memory.1「ラストダンス」
「音楽とほろ苦い恋の思い出」なんて都合のいいものが誰にもあるわけじゃないと苦笑いしながらテキストを考えていた。
そして唐突に蘇った記憶は、もう10年経ったとは思えないほど鮮明だ。
3月はじめ、まだ寒い季節。もう何度目か判らない食事の後、彼女が呟く。
「今日で最後にして欲しいの。」
キャンドル 揺れる横顔 グラスに落とす かすかなため息
二人で靴がすり減るほど 歩いたこのまち 今夜は淋しそう
心のどこかで覚悟はしていたかもしれない二度目の台詞。やりなおしてみようよ、と説得して引きずったもう一年だった。でもやはり彼女にとって私は人生をともに歩む相手ではなかったのだろう。
もう一度 踊っておくれ このままで
もう一度 口づけおくれ このままで
理由は今でもはっきりとは判らない。しかし思い当たることはある。彼女には彼女なりの夢や希望があって、それはささやかなものだったのに、仕事が忙しかったり、面倒だったりしてうまく応えられなかった自分の未熟さや身勝手さ、そして甘えとかそういうもの。
「もう一度やり直せたら・・」 馬鹿だぜ そんな話しはもうやめよう
僕が僕である限り 何度やっても同じことの繰り返し
浜田省吾に特別な思い入れがあったわけじゃない。同僚が勧めてくれたアルバムを車の中でかけっぱなしにしていただけだ。
彼女をアパートに送り届けた帰り道、そのときの自分に奇妙にシンクロしたその曲を、なんとなく繰り返し聞いていた。彼女と過ごした2年間の楽しかったことや悲しかったことを思い浮かべながら私は、夜の国道を走り続ける。
もう一度 踊っておくれ このままで
もう一度 口づけおくれ このままで
と、そのとき。道ばたから飛び出してきたのは、なぜか旗を持っているおまわりさん。
「はい、とまってー。ちょっと出ていたみたいですねー。免許証もって・・」
武士の情けを請うても仕方がない相手というのはいるものだね。
(ダンディーズ祭り参加作品.「ラストダンス」作詞・作曲 浜田省吾)
(補足:8/20)
夜9時ころに旗もったお巡りさんというのは変かも。光る棒だったのかな?
鮮明な記憶というのは怪しい(笑)
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