薬物動態について

薬物動態とは

薬を飲むと、薬は小腸から吸収され、血液中に入り全身に広がっていき、肝臓で代謝されたり、腎臓で尿に出ていきます。この出来事を学問的に取り扱ったものが薬物動態です。薬物動態は吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)の4つの過程に分けられ、それぞれの頭文字を取ってADMEと呼ばれたりします。


吸収

多くの薬物は小腸から吸収されます。この小腸からの吸収は脂溶性(油への溶け易さ)が高いものほど良く吸収されますが、脂溶性が高くなると水に溶け難くなりますから、水に溶けないとそのまま糞に出てしまいます。水に溶け難くても、溶け易くても薬にはなり難いのです。生体で必要な糖やアミノ酸は水に溶け易いので、吸収され難いのですが、生体はトランスポーターという特別なポンプを持っており、これを使って吸収します。逆に脂溶性の高い薬物の中には小腸のトランスポーターにより吐き出され、吸収され難いものがあります。脂溶性が高いものは生体からすれば異物ですので体に入らないように守っているためと思われます。

分布

吸収された薬物は血液で全身に運ばれていきます。脳、精巣、胎盤など重要な臓器には、物質の移行を制限する関門が存在し、必要な物は取り入れ、要らないものを吐き出すトランスポーターが存在します。脂溶性が高い薬物は脂肪組織に行き、そこに蓄積することがあります。水溶性ビタミンであるビタミンB、Cは体に溜まり難いのに対し、ビタミンA., D, Eは溜まり易いので取り過ぎに注意する必要があります。

代謝

体の中に入った薬物は代謝されることにより、水溶性を増します。酸化、還元等の第1相反応、グルクロン酸抱合等の第2相反応があります。主代謝酵素として酸化酵素であるチトクロームP-450があり、1A, 2B, 2C, 2D, 2E, 3A等の複数の分子種が存在する。ヒトでは3Aで代謝される薬物が多い。

排泄

体の中に入った薬物は代謝あるいは排泄により体から消失します。排泄経路としては胆汁、尿への排泄が主経路です。ものによっては呼気中に排泄されるものもあります。尿中への排泄は糸球体ろ過と分泌の2つの経路があり、分泌はトランスポーターによってなされます。この尿中排泄においても脂溶性が高い薬物では尿細管で再吸収されますので、排泄速度は小さくなります。


基本解析法の特徴及び関係

 

動態解析の基本的な解析法として3つの解析法がある。

1.コンパートメントモデル解析

生体を1つの箱とみなして解析する方法。生体を反映しない。解析・予測が容易。

2.生理学的モデル解析

生体を反映したモデル。蛋白結合、代謝等の各種変動による血漿中濃度の変動を予測可能。モデル構築が困難。

3.モーメント解析

動態を統計量で捉えようとする解析法。モデルを仮定しないため、いかなる動態でも計算できる。計算が容易。

生理学的モデルは全組織を血流でつなぐモデルであるが、すべての組織のパラメータを求めるのは困難であるため、主要組織以外は1つあるいは2つのコンパートメントで記述するハイブリッドモデルが有用である。

コンパートメントモデル、生理学的モデル、モーメントともに薬物の動態を特徴づけ記述するものであるが、モーメントは記述のみであり、予測はできない。予測するためにはモデル化が必要である。コンパートメントモデル、生理学的モデルで解析する際、複雑なモデルではモーメントパラメータから、動態を把握してモデルを構築していくと比較的解析しやすい。