味の素 島 洋一郎
数字っておそろしい

味の素で探索動態を担当している島と申します。これまで執筆されてきた方々のタイトル、面々すごいので、はて自分はどうしようと思いましたが、普段思っていることを書けばいいかなと思い、引き受けさせていただきました。
 入社したのは、はや11年前、ADMEという言葉すら知らなかった自分を初々しく思え、懐かしいですが、ADMEはやっていて非常に面白く、泥臭く、なんでも出来る分野と思います。見方を変えれば、何でも屋の忙しい部署ですが。これは、ひとえに味の素が異業種参入企業で、何でもやる必要があるからでしょうか?この点、これまでの製薬企業の方と感覚が違うかもしれません。が、めげずに書き進めます。
 私は、もともと開発動態(こんな言葉があるのかな?)に所属していました。申請概要書データ取りが主な仕事です。概要書のどこもかしこも数字です。新人でペーペーの頃など、どの数字にどれだけの意味があるかも分かりません。こんなに数字が載っているのは、薬物動態が群を抜いている気がしました。そうこうしている内に、探索動態という言葉が東から、西からも聞こえるようになります。もう、耳にたこが出来てしまったくらい「早いうちから、動態でだめなのを落とそう。」「そうだ、そうでなくては!」自分も、共感しました。これならいい薬が出来そうだと。薬物動態がにわかに注目されたときです。味の素でも、探索動態を扱う部署が出来ました。しかし、実際、探索動態を担当していらっしゃる方はお気づきかと思いますが、「落とす」のと「拾う」はセットです。そう思い始めるには時間がかかるかもしれませんが、探索動態が泥臭く、面白いのはここです。落とすのも数字、拾うのも数字です。自社バージョンのクライテリア=数字設定、ヒトBAの予測などやるなら、取り扱えば扱うほど、数字は外に出て行きます。いったん外に出れば、数字は、もはや単なるアラビア文字ではありません。マジックとして働きます。ヒトって不思議なもので、判断が付かない場面であればあるほど、数字に頼りたがるのではないでしょうか?その数字の出所、持つ意味が何であれ。ですから、動態屋の数字の出し方には、一工夫も二工夫も必要ですね。こうして考えてみると、薬物動態ほど、定量的にも、逆に定性的にも数字を扱える分野はないのではないでしょうか?薬効・合成分野の方は、不思議がるかもしれませんが、定量的感覚でトレーニングされるうちに、定性的感覚が身についてきているのです。例えば、「1」と「2」が違うのか、ほとんど一緒なのか、場合によって変わる感覚をもち、それを説明することです。こういった経緯にしたがって、薬効、合成、毒性、物性いろいろなところから数字的根拠を求められます。そうこうするうちにいろんな分野のヒトとやり取りが生まれ、その分野を勉強するわけです。皮肉にも、大学にいる時よりもよっぽど勉強している気がします。いや、しています。全部をまじめやる必要はないでしょうし、まじめにやっていたら、実際体も持たないのですが、そうやって、創薬のバランス感覚が段々と、養われている気がするし、そういう様に心がけないと気が滅入るわけです。研究所に一日のほとんどいるわけですから。
 こういった背景から、探索動態をやっている人たちは動態が好きであろうとなかろうと、引きこもりたかろうとなかろうと、引きこもれないのが現状かと思うわけです。少なくとも現場はそうです。しかし、他の分野から薬物動態を扱うヒトはどのように見えるのでしょうか?ややこしい計算、パラメーター、予測とかばかりして、最後に数字を出してくるところだと思っているのでしょうか?探索動態では、数字を先に出すか、判断を先に出すか考えますが、いずれにしろ、「判断根拠は?」と聞かれるので数字を出すと、「その数字の意味は?」といった堂々巡りになったりする経験はおありでしょうか。何でこういったことが起こるのかというと、数字が何も背負わず、一人歩きしているからです。数字がやはり薬効や物性、活性とセットでないと。これだと数字が生きてきて、良し悪しを含めた判断の出来る数字になります。これを肝に銘じて、最近仕事しています。
ここまで取りとめもなく、うちの探索動態の話をしてきました。皆さんの探索動態はどうなのでしょうか?いいやり方があれば内緒でお教えてください。ともかく、探索動態が深く関与した薬をどんどん出していきたいですね!