著者の独り言

異論もあろうと思いますが、あくまで著者の独り善がりの考えですので笑って許してください。

 

  1. 学会に行って思うこと
  2. SDとSEを知っていて使い分けてるの
  3. 遺伝子診断とテーラーメード医療
  4. 線形?非線形?
  5. PDが一人歩き
  6. P-gpと吸収
  7. 良い薬とは
  8. In silico予測
  9.  

 

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1.学会に行って思うこと

学会に行くと、企業の発表が少ないと感じます。各企業から1題位出ていてもいいのに。確かに、企業の研究は外部に出せない部分も多いし、基礎研究をやっている訳でもないので、多くは出せないことはわかりますが、参加している人は企業の人の方が多いと思います。発表しても参加費が上がるわけでもないので、折角参加するのなら、発表してはと思います。発表意識して仕事をするとモチベーションも上がるので仕事の効率もよくなるでしょう。人材育成にもなると思います。会社では学会発表できる研究をさせてもらえないという言葉を聞くことが多いですが、発表を意識して行えば、申請資料用の研究でも発表できます。大学でやっているような基礎研究がどこの会社でもできる訳ではありませんので、これを意識してたら、発表は無理でしょう。できる範囲内のことを考えてみてもいいのではないでしょうか。

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2.SDとSEを知っていて使い分けてるの

色々な研究データをみているとデータのばらつきの程度をSD(標準偏差)やSE(標準誤差)で表してますが、違いを知っていて使っているのか疑問を持ちます。SDは得られたデータがどの程度ばらつくのかを表すのに対し、SEは平均値のばらつきを表してます。SDはデータ数が増えても変化しませんが、SEは小さくなっていきます。ばらつきが小さいからSEを使うのでしょうが、この場合は絶対例数を示さないといけないのに示していないものがあったり、示していてもn=4-8とか範囲で示していたりします。SEは平均値に差があることを示すのにわかりやすいのですが、それ以外はSEを使う必要はないと思います。すべてのデータをSDで示してもいいのではないでしょうか。

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3.遺伝子診断とテーラーメード医療

最近、動態関連遺伝子の変異が多数見つかってきており、テーラーメード医療に向かって動いている感がある。しかし、遺伝子の方にばかり注目しすぎているのではないだろうか。確かに2D6等はpoor metabolizerとextensive metabolizerで血中濃度推移は大きく異なる。しかし、遺伝子を調べたからといって酵素活性は予想できない。私の遺伝子を調べて、体重と身長が予想できるかである。年齢や環境によって変わるため、遺伝子だけでは片手落ちで、実際に調べてみないと酵素活性は結局わからない。ここで威力を発揮するのはpopulation kineticsであろう。遺伝子に注目しすぎており、実際にその情報を使う方法も充実させないと片手落ちとしか思われない。

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4.線形?非線形?

動態をやってる人は必ず使っている言葉でしょう。線形、非線形て、なんでしょう。線形とは、1.投与量に対して、AUCやCmaxが比例して増加すること、2.全身クリアランス、分布容積、MRTが投与量により変化しないこと、である。1.では原点を通る直線であることが要求されることから、これから線形性を言おうとすると3点以上必要なので、2用量では線形性は議論できないようなことをいう人がいるが、2.で考えれば2用量で充分。線形、非線形の判断があいまいなため、線形を主張するために、統計的手法を用いているが、この規準で線形は言えるが、この規準に当てはまらないからといって、線形とは言えない、または非線形としなければいけないのだろうか。線形の規準は臨床を想定した規準であり、非臨床の規準でない。ラットの試験で4例程度では90%信頼区間が80-125%にはいるどうか疑問である。非線形についても1.5倍位差がないと有意な差があるともいえない。つまり、非臨床では線形とも非線形とも言えないという結果になってしまう。非線形がなぜ問題化というと投与量が増えた場合、投与量の増加よりもAUCが増加し、副作用発現リスクが高くなるためであろう。1.5倍平均値が変われば統計的に有意差が検出できる。これが検出できないほどの個体差が有る方が非線形があるないを議論するよりも重要に思う。やはり、線形、非線形については統計学とともに、薬効的、毒性的にも、もっと議論するに必要があるだろう。

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5.PDが一人歩き

最近PK/PDという言葉が多く使われるようになった。血中濃度推移と薬効を結びつけて解析し、最適な投与量、投与間隔を予測するのに、PK/PD解析は、極めて有用である。しかし、PDという言葉を薬効の意味で使う人が多くいる。教科書をみるとPharmacodynamicsは血中濃度と薬効の関係をみることと書かれている。薬効を意味することを書いてあるものを見たことがない。薬効試験で血中濃度を測定すれば、PK/PD試験と言えるであろうか。PDという言葉が定義されずに使われているような気がしてならない。毒性試験では血中濃度を測定しているが、TK/TD試験とは言わない。やはり、血中濃度と薬効が関連付けてこそ、PK/PD試験といえるのではないだろうか。

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6.P-gpと吸収

小腸にP糖タンパク(P-gp)が発現しており、脂溶性の高い薬物の吸収阻害に働いている。多くの場合、P-gpの基質はCYP3A4の基質にもなることから、バイオアベイラビリティの低下にどちらが主に関与しているか明らかでない。市販薬についてPKデータを見る限り、P-gpよりもCYP3A4の方が影響を及ぼしているように見える。市販薬ではP-gpが大きく吸収に影響するものは、上市されていないのではないだろうか。P-gpの基質になるかどうか初期スクリーニングに取り入れる風潮がある。やるにこしたことはないが、基質になるからといって、そんなに騒ぐ必要はないと思う。P-gpの基質になっても、膜透過性が高ければ吸収されるため、基質になるからといって特に問題はないであろう。ただ、脳移行についてはP-gpの基質になるものは極めて注意が必要である。薬物相互作用によって脳中濃度の上昇が予想されるからである。P-gpのスクリーニング結果をどう取り扱うか、ApicalからBasalへの透過係数が大きければ、あまり騒がず、慎重に考えるべきである。

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7.良い薬とは

良い薬とは、情報量の多い薬である。これは私の元上司が言った言葉である。私もそう思う。副作用がない、動態に非線形がない、薬物相互作用がない、これらはいずれも良い薬である。しかし、副作用があり、非線形でもどれくらいの用量、血漿中濃度でおきるかわかっている薬、情報量が多くあり、その情報に従って、注意して使用すれば、全く問題がない薬、これも良い薬である。非臨床の動態試験は定型的なものが多く、面白くないという人がいる。しかし、これらのデータから、新たな発見があり、それが発展し、臨床で良い薬になるかもしれない。必要のない試験はやらないはずである。自分で必要のない試験にしないよう充分考えて試験に取り組んでいただきたい。

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8.In silico予測

In silico予測がなされるようになってきた。すばらしいことだと思うし、これが発展していけば、我々は実験をしなくてもよくなる日も来るであろう。だが、現時点では多変量解析やニューラルネットワークで予測している。この予測も有用であることは、理解できるし、利用していきたいが、統計学で行う予測は対数での相関係数は、0.8止まりであろう。やはり、メカニズム的な予測でなければ、予測精度は期待できないであろう。蛋白の一次構造はほとんどわかっており、コンピュータの計算スピードも上がってきているので近い将来、蛋白と基質の反応予測が可能になるであろう。その時の我々は何をすべきか、今から考えていかなければ、時代に取り残されてしまうであろう。

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