In Search of Wonder
海外SFのページ

海外SF研究のためのリファレンス・ブック(初級編)
 
 

ハヤカワ解説目録  リストやインデックスの類が好きだ。そのきっかけとなったのは、中学生の時、書店でタダでもらったハヤカワの「解説目録」だったと思う。<1973年6月>と表紙に記されているこの目録には、3305「ドラゴンの戦士」までのSFシリーズをはじめ、SF文庫、JA文庫、日本SFノヴェルズ、世界SF全集他、当時刊行されていたハヤカワのSF関連書籍がすべて掲載されていた。SF文庫はまだ100番「砂丘のメサイア」までしか載っておらず、しかもこれが現行のタイトル(「砂漠の救世主」)と違うことからもわかるように、96番以降は未刊で内容紹介欄は空白のままである。メインはまだSFシリーズの方だったのだ。私はこの目録にチェック欄を作り、購入予定の作品にマークを付け、購入したものに別のマークを付け、読み終えたものにさらに別のマークを付けていった。これがやがて稚拙な自作の蔵書目録のようなものに発展し、そうこうするうちに病が嵩じて公刊されているさまざまなインデックス類に手を出すようになった。

  以下は、私が既訳未訳の海外SFの中から面白そうな作品を探すのにいつも参照させてもらっている本です。ちょっと年季の入ったファンなら誰でもお持ちのものばかりでしょうが、いずれもたいへんな労作で著者の方々にはほんとに感謝に堪えません。こういう本を辿って、ひとりの作家の作品を執筆順に読んだり、同テーマの作品を読み比べたり、昔読んだきり忘れていたものを新たな視点から再読したりする楽しさは、行き当たりばったりに本を読むのとはまた違ったものがあります。どれも現在では新刊書店で気軽に買えるような一般的な本ではないのがちょっと気が引けるけれど、持っていれば海外SFが何倍も面白く読めることは請け合います。

  重要なアイテムがぽろぽろ抜けていますが、あくまでもこれは筆者の私的な興味、経済力、根気、運などに基づいて(^^;)収集したものを紹介したような次第なので、バランスの悪さはご容赦ください。ちなみに<中級編><上級編>はありません(^^;)



配列は原著の刊行年代順です。 書影をクリックすると、4倍に拡大してご覧になれます。


Index to the Science Fiction Magazines 1926-1950 "Index to the Science Fiction Magazines 1926-1950" (1952) Donald B. Day 

SFMで野田昌宏さん(73年6月号)や石原藤夫博士(80年7月号)らが言及されていた、世界初のSF雑誌のインデックス。アメージングに始まる英米の全SF誌を作品名、作者名などから引ける。石原博士の労作SFMインデックスの原型といえよう。SFMインデックスの初出データも本書に負うところが大きいそうだ。前述の紹介記事では「まず手に入らない」、「日本に数冊しかない」とのことだったが、案外簡単に入手できた。もっとも私ごとき生ぬるいファンには猫に小判かも(^^;;


In Search of Wonder "In Search of Wonder" (1956; rev 1967) Damon Knight 

一世を風靡したオリジナル・アンソロジー「オービット」の編者デーモン・ナイトが、Book reviewer として1956年度ヒューゴー賞を受賞した有名な評論集。別冊「奇想天外」に抄訳が載っていたが今は手元にない。InfinityF&SFで書評を担当していた初期のものが中心で、大家の作品と言えど歯に絹を着せず、なで斬りにしている。ヴォークトも犠牲者の一人で「非Aの世界」など相当突っ込んだアラ捜しの対象となっている(^^;)。同じワイドスクリーン・バロックでも、私のいちばんの贔屓であるハーネスについてはかなり好意的なのでホッ(^^)v  弊サイトの名前は、いうまでもなく本書のパクリです(^^;;;; 


New Maps of Hell 「地獄の新地図」 (1960) キングズリイ・エイミス 山高昭訳
"New Maps of Hell" (1960) Kingsley Amis

邦訳は持ってない。SF離れしていた時期に出たので買い逃してしまった。エイミス自身はそれほどSFをたくさん書いているわけではないが、本書でのSFへのアプローチは主流文学の人による評論にまま見られるような違和感は全くなく、ジャンルSFへの親近感に満ちている。言及されている作品にはたいてい邦訳があり、福島さんなどもこの本をけっこう参考にしていたのでは、と思う(これといった根拠はないが^^;)。あと、本書同様SF評論の基本図書である、メリルの「SFに何ができるか」も、貧乏な10代の頃に散々立ち読みして通読してしまい、結局今に至るまで買いそびれている。


The Issue at Hand "The Issue at Hand" (1964)  William Atheling Jr. 

ウィリアム・アセリング・ジュニアはジェイムズ・ブリッシュが書評を書く時のペンネーム。ナイトに負けず劣らず舌鋒の鋭い、辛口の評論集である。そのわりには、そしらぬ顔で自分(ブリッシュ)の作品を論じていたりもする(^^;)。ナイトの書評を絶賛しているブリッシュだが、ナイト同様、ハーネスの評価が高いのは嬉しい。本書に限らず、英米のこの手の本には必ず詳細な作者、作品名の索引が付いていて非常に便利。


SF入門 「SF入門」 (1965) 福島正実

SFM初代編集長福島正実が、当時望みうる限りのメンバーを集めて編纂したわが国初のプロパーSF入門書である。しかし、さすがにみんな多忙だったらしいこともあってか、小松左京「拝啓イワン・エフレーモフ様」をはじめ、SFMなどからの転載が多い。各論において突っ込んだ話がなされている一方で、個々の作品についてはそれほど触れられていないため、ガイドブックとしての価値はあまりない。意外に「SF」というものの全体像の見えにくい印象だ。


Seekers of Tomorrow " Seekers of Tomorrow" (1966)  Sam Moskowitz

1940〜1965年の代表的SF作家を取り上げて論じている。伊藤さん、野田さん等によってたびたび紹介された有名な本。シャンブロウをひっさげてC.L.ムーアがデビューしたときのエピソードなども、本書に詳しく載っている。ちなみに目次に名前が出ている作家は、E・E・スミス、キャンベル、ラインスター、ハミルトン、ウィリアムスン、ウィンダム、ラッセル、ディ・キャンプ、デル・リイ、ハインライン、ヴォークト、スタージョン、アシモフ、シマック、ライバー、ムーア、カットナー、ブロック、ブラッドベリ、クラーク、ファーマー。他に20ページに及ぶ索引があり、厖大な作家、作品名が上がっている。プロの解説用ネタ本の1冊か? (^^;


Index to the S-F Magazines, 1951-1965 "Index to the S-F Magazines, 1951-1965" (1966)  Erwin Sheehan Strauss

ドナルド・B・デイの後を引き継ぐ形で1951年以降のSF雑誌のインデックスを作ったのが、このアーウィン・S・ストラウス。もうひとり、ノーマン・メトカーフという人にも同じ年代をカバーしたインデックスがある。ストラウスはMIT出身なので、編纂にはコンピューターを使っているが、そのわりには初出・再録などの区別がなく、いまいち信頼性が低いといわれる。1966年以降のインデックスは、このストラウスもメンバーだったMITSF協会から刊行されている。


SF英雄群像 「SF英雄群像」 (1969) 野田昌宏

出版こそ1969年だが、この本の大半は1963〜1965年にかけてSFMに連載されたものがベースになっている。つまり、これが書かれた頃、野田さんはまだ英米SFを読み始めて10年そこそこしか(!?)経っていなかったわけだ。今では私なんかもSF読書歴が(ジュヴナイルを除いても)四半世紀を越え、本書執筆当時の著者の年齢をかなり上回ってしまったが、とうていこんなに面白く正確で見事な紹介はできっこないなあ。武器としてのSFだけでなく、こうしたエンターテインメント系のSFがすぐれた人材を得て継続的に紹介され続けてきたのは、わが国のファンにとってとても幸運だったといえよう。


More Issues at Hand "More Issues at Hand" (1970) William Atheling Jr. 

アセリング=ブリッシュの書評第2作。前作は1952-1963年に書かれた書評を集めたものだったが、こちらには50年代から1970年までの書評が載っている。内容は、このページでも紹介しているデイやモスコウィッツの参考書の類からメリット、ハミルトンにまで及んでいるが、アルジス・バドリスに1章をまるごと割いているのがいい(といっても分量的には短い^^;)。バドリスもあんまり紹介されないが、なんか気になる小説を書く人だ。そういえば、彼の書評もなかなか頼りになるというようなことを伊藤さんがスキャナーで書いていたなあ。


Index to the Science Fiction Magazines 1966-1970 " Index to the Science Fiction Magazines 1966-1970 " (1971)  N.E.S.F.A.

デイ、ストラウスの後、SF雑誌インデックスはMITSF協会が発展してできたN.E.S.F.A.が作成。70年以降は毎年前年度の分を1冊にまとめた形で出ている。ボール紙の表紙をホッチキス止めした簡素な作りだが、有用なことに変わりはなく、けっこうそれなりの値段だ。N.E.S.F.A.は最近ではマニアックな作家の埋もれた作品をハードカバーで年に数点刊行するなど、相変わらず目が離せない。この11月には、ハーネスのワイドスクリーン・バロック系の3大長編プラス未発表長編1編をまとめたものが出るそうだ。買うぞ!


The Universe Makers "The Universe Makers" (1971) Donald A. Wollheim

伊藤典夫さんがSFスキャナーの後SFMに連載されていたコラム、「エンサイクロペディア・ファンタスティカ」で(旧態依然としたSF観の悪い見本として^^;)かなり詳しく取り上げられていたウォルハイムのSF論。前述のアセリング=ブリッシュとは立場が全く異なるため、二人は犬猿の仲だという。そういうワイドショー的興味も含めて、この大時代な評論を読んでみると面白い。エースブックやDAWブックスなども好きな私としては、それなりに楽しめたりもするのだけど……(^^;;


The Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy through 1968, consisting "The Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy through 1968, consisting of Vol 1: Who's Who, A-L" (1974)  Donald H. Tuck

ペーパーバック、ハードカバーなど単行本として出版されたSFを作品、作者、出版社などから引けるインデックス風百科辞典の第1巻。簡単なあらすじや短編集の収録作品もきちんと押さえてある。以下、かなり間が開いたものの"Vol 2: Who's Who, M-Z " (1978) , "Vol 3: Miscellaneous" (dated 1982 but 1983) と続刊が出て完結した。クルートらのエンサイクロペディアやコンテントのインデックスが出るまではもっとも便利で充実した辞典のひとつだった。SFMでも安田均さん(80年6月号)、石原博士(同7月号)によって紹介されている。


新版 SFの世界 「新版 SFの世界」 (1976) 福島正実

著者の遺作となった大部のSF入門書だが、福島SF観の集大成である。大半を占めるSFのテーマ分類とその代表作紹介は、いまとなっては筆致がいささか古めかしくはあるけれども非常に充実した内容で、取り上げられた作品も福島編集長時代のSFM掲載作などけっこうマイナーどころも多く、日本語で書かれた本でこれを凌ぐ類書はまだないと思う。芳賀書店や講談社文庫の福島編アンソロジーの理論篇とでも言うべき内容だ。巻末のSF事典もいまとなってはちょっと気恥ずかしくなるようなSF用語がずらりと並ぶが初心者には有用だろう。


The Science-Fiction Collector #1; ACE BOOK INDEX "The Science-Fiction Collector #1; ACE BOOK INDEX" (1976) J. Grant Thiessen 

値段高めのインターネット古本屋Pandora's Books店主Thiessenが主宰するファンジンの創刊号はエースブック・インデックスだった。今では他のソースでも容易に得られるデータだが、こういうのを作った意気込みに共感して紹介。SFMで安田均さんが紹介されていたのを見て欲しくなり、入手した(^^;


未踏の時代 「未踏の時代」 (1977) 福島正実

SFMに連載中、著者の逝去によって中絶した日本SF草創期の貴重なドキュメント。わが国におけるSF受容史という視点からも興味深い。多分に主観が入っていようし、早川書房のSFM編集長という立場による制約も大きいけれど、この人でなければ書けなかった部分もまた多いはず。私は70年代に新刊のSFMと並行して60年代のバックナンバーを毎日漁っては読んでいたので、ヴァーチャルに追体験した60年代というものが70年代の記憶と分かち難く結びついている(ちなみに私はSFM創刊号と誕生日が1週間違い^^;)。60年代の日本SF界は当時の世相や時代と今以上に接近しており、誌面にもそれはさまざまなかたちで如実に現れていた。星さん、光瀬さんと最近のSF界は訃報続きだが、当時を知る方々が存命のうちに、いまひとつの「日本SF史」が出版されることを期待したい。福島さんに関しては毀誉褒貶さまざまだが、あの時代にはなくてはならない人材であり、編集者としての選択眼、翻訳家としての言語感覚はともにたいへん優れていたと思う。ひるがえって、この90年代のわが国SFの現状を考えると複雑な心境だ。福島さんが健在だったら、はたして何というだろうか(おそらく何も言わない人なのだろうが……)。


Who's Who in Science Fiction " Who's Who in Science Fiction" (1976; rev 1977) Brian Ash

ハードカバーの初版には誤りが多いので注意が必要とのこと。私のは改訂版のペーパーバック。シンプルなSF人名辞典だが、それでもデータ量は国内で出版された入門書よりもかなり多めである。私自身他の大部の辞典に当ることが多くてあんまり利用していないため、改めて読んでみると妙に新鮮だ(^^;


SF百科図鑑 「SF百科図鑑」(1978) ブライアン・アッシュ編  日本語版監修山野浩一
"The Visual Encyclopedia of Science Fiction " (1977) Brain Ash 

サンリオから出版された、邦語文献としては当時最高水準のSF百科。「図鑑」、"Visual"の名が示すようにグラフィック面でも充実している。かなり細分化された独特とも思えるテーマ分類がなされており、未訳のものも含めて言及される作品は多数に上る。分厚い上質紙を使用しているので見た目のボリュームほどの情報量はないが、邦訳があるものは出典もきちんと付いていて便利。


別世界通信 「別世界通信」 (1977) 荒俣宏

70年代初めの荒俣さんのスキャナーを読んで、いわゆるSF系のファンタジーとは若干異なる言語体系で書かれたファンタジーの流れがあることを知った。ここで取り上げられているファンタジストたちは、そうした(SF界のような)ゲットーに所属しない、独自の小宇宙の創造者の一群だ。本書で紹介された作品は、ほぼ前後して刊行された妖精文庫や世界幻想文学大系、ゴシック叢書などの系統だが、岩波文庫の白帯など意外なところにも濃いファンタジーが潜んでいることを教わり目からウロコが落ちた。巻末に厖大な荒俣流別世界への読書ガイドがついているが、このリストはちくま文庫版で増補改訂されている。


世界神秘学事典 「世界神秘学事典」 (1981) 荒俣宏編

いわば前掲書の思想哲学編である。百科全書派アラマタの面目躍如といった感じで、古今東西のありとあらゆる「世界の認識方法」が集大成されている。
荒俣さんのアプローチはここでも「物語」に対するそれと基本的に同じで、対象がノンフィクションにかわっただけだ。80年代のニューアカデミズムから90年代のエヴァンゲリオン、オウムまで、この本を読んでいたおかげで多少の予備知識を持って接することができたのは幸いだった(^^;)。原書を含む巻末の参考文献リストは質量ともにものすごく、一時若気の至りで邦訳のみでも制覇してやろうと意気込んだこともあったが、いまだに100分の1も読めていない(^^;)。 


世界のSF文学総解説 「世界のSF文学総解説」 (1984) 責任編集伊藤典夫

伊藤さんの名前がメインに出ているが、大勢のプロ、BNFが作品ごとに手分けして執筆。比較的新しい作品&長編偏重のきらいがあるものの、これだけの数の作品を概観できるのはありがたい。ただし、各作品についてはあらすじがダラダラ書いてあるだけで、すでに読んだものの場合は不要だし、未読の場合は興が殺がれてしまうのでじっくり読めない。いまひとつ、使い道のない本ではある。私はごく最近、古本で拾った(^^;)。同じようなあらすじ紹介でも、スキャナーだと興味深く読めるのは、海外の情報源の前振りが面白い上、伊藤さんの視点がハッキリしていて的確なコメントが付いていたからだろう。


一兆年の宴 「一兆年の宴」 (1973; 1986改訂) ブライアン・W・オールディス & デイヴィッド・ウィングローヴ
"Trillion Year Spree" (1973; rev and exp 1986) Brian W. Aldiss with David Wingrove 

60年代以降の英米SF史をオールディス流に概観した本格的な評論。わが国未紹介の作家や作品もかなり取り上げられている。70年代後半以降、翻訳紹介が追いつかなくなり、そうしているうちに賞味期限が失われてしまったりしてなかなか出版されないような現状では、まるでレムやボルヘスの架空の書評を読むような印象も受ける(^^;;


SFキイ・パーソン&キイ・ブック 「SFキイ・パーソン&キイ・ブック」 (1986) 石原藤夫+金子隆一

SF入門書も数あれど、本書は編者の名前からも想像される通り、ハードSFに的を絞ったかなり硬派なアプローチだ。たとえばブラッドベリのブの字も出てこない代わり、ハードSF作家としてのアンダースンには相当な頁数が割かれ、刊行当時未訳だった「タウ・ゼロ」も大きく取り上げられている。全くの初心者が本書のみを手がかりにSFに入っていくのは多少危険が伴うけれど、わが国では言及されることの少ないハードSFの意義を知ることのできる貴重な一冊だ。初版刊行以後かなり賑わっている様子の英米サイエンス・フィクションについて、増補改訂版でのフォローが望まれる。


世界幻想作家事典 「世界幻想作家事典」 (1979初版, 1988改訂版第2刷) 荒俣宏

高価すぎてなかなか手が出せず、やっとリーズナブルな古本で入手できたと思ったら、期待とは裏腹に内容は意外にお粗末。まず、今となってはボリュームがなさすぎる。上質紙のせいで厚みはあるもののたったの400ページではひとまわり大きい版型、細かい活字で1000ページを超える原書の類書に情報量で遠く及ばない。本書の売りは荒俣流の独特な幻想文学へのアプローチなのだが、それもこの限られたスペースでは通り一遍の記述の域を出ていない。荒俣美学を知りたい向きは「理科系の文学史」や「別世界通信」他を当ったほうがよい。さらに大きな不満はデータの不備だ。複数のそれぞれ名のあるライターの原稿をまとめたらしいが、これ本当に荒俣さんがチェックしているのだろうか。まえがきで「調査できる範囲でなるべく完璧に記述してある」と明言している翻訳書誌だが、「アーカムハウス叢書」、「定本ラヴクラフト全集」をはじめ、本書初版から改訂版発行に至るまでに出版された書目が軒並みフォローされていないし(いったいどこを改訂したのだろう)、それ以前の分にしたところで邦訳作品の訳題がまるっきり違っている。邦訳をチェックせずに原題から直訳したのが丸分かりだ。例をあげていくときりがないが、「集え、闇よ!」、「闇の中の妖精」、「夢見る都市」、「闇のカーニヴァル」、「ジョナサン鯨と宇宙船」等々、私がそらで覚えているジャンルSF系ファンタジイだけをざっと流し読みしてもたちまちのうちにこれだけ出鱈目なタイトルが出てくる。初心者がこれらを当てにして邦訳を探しても見つかりっこないものだ。豪華な装釘や権威ある著者名から、まさかこんないいかげんなことが書いてあるとは夢にも思わないだろうに、罪な本である。他にもムアコックのペンネームがC・P・ブラッドベリになっていたり、その名で「火星の無法者(Outlaw of Mars, '65)」という本を書いていることになっていたりする(ご丁寧に「関口幸男訳」と訳者名まで書いてある)。事典の類いの出来を知るには自分のよく知っている項目を見て判断すればいいといわれるが、これじゃ私の期待していた未知の作家のデータも残念ながら全幅の信を措くことは難しい。改訂版発行の際に誰からも指摘がなかったとは信じられないのだが、荒俣さんの名誉のためにも改めて徹底的な改版が早急に望まれる。しかし、いったいなんでこんな初歩的なミスだらけなのだろうか。不思議でたまらない。


ウィアードテールズ 「ウィアードテールズ 別巻」 (1988) 那智史郎 宮壁定雄 編著

5巻本にまとめられたウィアードテールズ傑作選の別巻として刊行された資料集。たいへんに濃い内容で、WTの歴史から、競争誌、読者投票による人気作品、イラストレーター紹介、邦訳リスト付き全巻インデックスなど、これ一冊でWTのすべてを概観できる。同時代のパルプマガジン一般についても詳しい記述があり、読み物としても面白い。図版も多数収録。
 


SFハンドブック 「SFハンドブック」 (1990) 早川書房編集部編

対談あり、マイベストのおすすめあり、SF講座あり、と今の時代らしいバラエティに富んだとっつきやすいSF入門。しかし、SF文庫の既刊リストが100ページ以上を占めているし、じっくり読むところはあんまりない。入手しやすい重版されている作品中心で短編の紹介が少ないのも不満だ。これも最近古本で拾った。


乱れ殺法SF控 -SFという暴力- 「乱れ殺法SF控 -SFという暴力-」 (1991) 水鏡子

これこれ、こういうのが読みたかったのだ。単行本化された邦語文献としてはこれ以上興味深いSF評論はないなぁ。著者のSF事始め的な前半部も上述の「SFハンドブック」掲載のどれよりも面白いし。水鏡子さんはファンジン「オービット」の頃からファンだったが、せっかく関西の大学に入学しながらファンダムとは縁がなかったので、数年前の京フェスでようやくお目にかかれたときは感激。すばらしいおみやげ(海外SFの資料)もいただいて、再燃中のSF熱に拍車がかかった。


The Encyclopedia of Science Fiction "The Encyclopedia of Science Fiction" ( The second edition, 1993) John Clute and Peter Nicholls

1978年に出てSFMにも抄訳された画期的な百科辞典の第2版。軽く1300ページを上回るボリュームがあり、キーワードによるクロスリファレンスも考慮されるなど、データ量、使い勝手ともに、とりあえずこれ1冊あれば不自由しない。80年代以降かなりの期間SFと意識的に距離を置いていた私が現役に復帰するのに大いに役立ってくれた本である。これを読んでスターウォーズから現在までのSF史の流れが凡そ理解できたし、SFの面白さを再認識するきっかけになった。


The Multimedia Encyclopedia of Science Fiction "The Multimedia Encyclopedia of Science Fiction" (1995) John Clute and Peter Nicholls

上記の紙版を入手してほどなくCD-ROM版が出ているのを偶然発見。パソコンを始めてCD-ROM店を覗くようになっていたのが幸いした。やっぱり紙版より検索が容易なので、最近はこちらを参照することが多い。点数はそれほど多くないが、紙版にはなかった表紙絵や作家の画像も収録されている。


SF: The Illustrated Encyclopedia "SF: The Illustrated Encyclopedia" (1995)  John Clute

これも偶々覗いた京都の丸善にて発見、即ゲット。震災で避難中のできごとだった。「SFMインデックス」をはじめ、あの震災のせいで失った資料もかなりあったが(ToT)、こうしたイレギュラーな出会いによってSF熱が再燃するようになったのも事実。本書の日本語版は期待した邦訳リストに不備が多く、買う価値を見出せなかった。レイアウトや書体などグラフィックデザインは原書の方がきれいだし。


The Locus Index to Science Fiction & Index to Science Fiction Anthologies and Collections "The Locus Index to Science Fiction(1984-1997) " Charles N. Brown & William G. Contento combined with "Index to Science Fiction Anthologies and Collections (-1983) " (1997) William G. Contento

紙版で正・続2冊になって出ていた、短編集とアンソロジーに関するものとしては最高のウイリアム・G・コンテントの手になるインデックス(石原博士がSFM 80年7月号で紹介している)が、それ以降のローカスによる補遺と合体してCD-ROM化された。重たい紙版よりも使い勝手は当然よい。これがあれば目当ての短編がどの短編集(アンソロジー)に入っているのかすぐ分かる優れものだ。オンライン版もあるが、これだけはぜひ手元に置いておきたい。


Science Fiction, Fantasy, & Weird Fiction Magazine Index "Science Fiction, Fantasy, & Weird Fiction Magazine Index(1890-1997) " 
(1997) Stephen T. Miller and William G. Contento

上記のCD-ROMと姉妹篇になる、SF雑誌のインデックス。詳細に突き合わせてチェックしたわけではないが、ドナルド・B・デイ以降の各種インデックス所載のデータはこれ1枚で事足りるようになったのではないだろうか。私も楽なので、最近はもっぱらこちらを参照することが多い。ほんとに便利。


創元推理文庫SF全リスト 「創元推理文庫SF全リスト」 (1997) 渡辺英樹編 

背表紙に<SF>マークのある、<創元推理文庫>時代のSF全403冊を書影入りで網羅した完全リスト。表紙絵は初版に基づいているので、私の世代にはとても懐かしい。創元はハヤカワより割安感があって、こづかいの乏しい中学生の頃は買いやすかったので、ハヤカワとはまた違った意味で親しみを覚える。四半世紀前の時点で創元SF唯一の絶版だった、ガン「不老不死の血」は当時場末の古本屋で50円で拾ったが、以来店頭では見たことがない。渡辺さんによれば、近々、全短編リスト、文庫データボックス内容一覧、表紙絵のヴァージョン違いなどを補足した改訂版が刊行されるとのこと。


The Encyclopedia of Fantasy "The Encyclopedia of Fantasy" (1997)  John Clute and John Grant

同じ著者らによる、The Encyclopedia of Science Fictionの姉妹編である。このことからも分かるように、本書の対象はSF系のファンタジイが中心となっており、実際The Encyclopedia of Science Fictionとダブっている項目も多い。しかし、全体的には80年代以降の大河ファンタジイの洪水に寄与している作家が幅を利かせているらしく、そっち方面に疎い私はこれでお勉強中(^^;)。目を通せば一応の現代ファンタジー界の見取り図は書けそうだ。今年出たトレード・ペーパーバックの改訂版は、1000ページを優に越える情報量で2500円程度とお買得。CD-ROM版が欲しいが、すでにSFのほうは廃盤になったようだ。


幻想文学1500ブックガイド 「幻想文学1500ブックガイド」 (1997) 「幻想文学」編集部編

こちらは逆に、SFも含むが文学系のファンタジイがメイン。テーマごとに分類されているので読みやすく使いやすい。季刊「幻想文学」本誌で特集されていたネタを一冊にまとめたような内容だ。いろいろあって80年代以降90年代半ばまで、SFMは買わなくても「幻想文学」は買い続けてきた私は、あえて本書を買わなくてもバックナンバーで読めるような気がするが、こういうガイドブック仕立てには弱くて思わず買ってしまった(^^ゞ  1500のうちほとんどの作品が新刊で入手できるうえ他に類書はないので、「幻想文学」読者でない方にはたいへん有用だろう。前掲のThe Encyclopedia of Fantasyと併用すれば一層強力だ。


タイトル情報辞典 「和英・英和 タイトル情報辞典」 (1997) 

英米の小説、映画、音楽などのタイトルが邦題、原題からそれぞれ引けるという便利な辞典。SFも1600の見出し語があり、小川隆、高橋良平、星敬の三氏が担当されている。たとえば「銀河」で始まるタイトルを見ると、銀河おさわがせ中隊、銀河系の超能力者、銀河市民、銀河帝国の興亡、銀河帝国の崩壊、銀河鉄道の夜、銀河の女戦士、銀河のさすらいびと、銀河の壷直し、銀河は砂粒のごとく、銀河パトロール隊、銀河ヒッチハイク・ガイドと絶版のものもリストアップされている。しかし、脱出を待つ者、ウルフヘッド、異星の人、ガラスの塔、シェールの諸作など漏れているものも多く、選択基準が良く分からない上(「銀河の超能力者」を載せるくらいなら後者を優先すべき)、「大地は永遠に」が「地球は永遠に」になっていたり、「薔薇の荘園」が長編となっているなどミスも散見されるので信頼性はまあまあ。巻末に人名索引あり。


SF雑誌データベース Ver.01 「SF雑誌データベース Ver.01」 (1998) 石原藤夫,  SF資料研究会

SFM(1-500号)を中心とする14種の国内SF雑誌をカバーしている。かつての「SFMインデックス」と比べると見出し項目が少なく、翻訳作品の初出も省略されている。まぁ、海外のインデックスで補える範囲の欠点だが、あの石原博士の携わったものとしてはいささか期待外れの感は否めない。とはいえ、これはもちろん基本文献中の基本文献として海外SF研究には必携である。あと、入力時に生じたらしい細かい表記の違いなどがいくつか目についた。ささいなことのように見えるが、これは検索漏れにつながるので注意する必要がある。


SF書誌の書誌 第1版 「SF書誌の書誌 第1版」 (1998) 野村真人編 SF資料研究会

「書誌の書誌」とは、リストや文献、インデックスなど本に関するデータの出典をまとめたものである。本書にはファンジンも含め、膨大な情報が収録されている。こうした書誌データ類は熱心なアマチュアがビジネス抜きでこつこつ書いたものが多いのでファンジンを視野に収めるのは当然といえば当然だが、著者の苦労はたいへんなものだったと思う。全然現物を見たことがないものも多いが、眺めているだけでも十分楽しめる。


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Last Updated: Dec 11 1999