アトランティス大陸





 かつて、大西洋にはアトランティスと呼ばれる広大な大陸があった。そこには、巨大なアクロポリス・首都ポセイドニアを中心に、楽園とも言えるような高度に発達した文明が栄えたが、 今から約1万2千年前、突然の天変地異により、このアトランティス大陸は海の底に沈んでしまった。
アトランティスに関する伝説は世界中に多彩な形で残っているが、紀元前ギリシアの哲学者プラトンの著書によれば、 ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の向こう側にあったアトランティスには、海神ポセイドンの子孫である十人の王たちが十の地域とその市民を治めるという連合国家的大帝国が築かれ、その強大な帝国は地中海沿岸をも支配していたという。
アトランティス人は海を渡ってギリシアを侵略しようとしたが、ギリシア人はこれと戦い撃退する事に成功した。 大陸を消滅させる天変地異が起こったのはその直後のことである。長い年月に渡り、栄華を誇っていたアトランティスは、 突如として起こった大地震と大津波により、わずか一昼夜にして地上からその姿を消してしまったのだ。
現在、世界各地には、 このアトランティス文明の名残りとされる遺跡が多数発見されている。 我々人類の文明発祥の地は、アトランティス大陸なのかもしれない‥。



 さて、 世間に流布されている話をまとめると、 大体、以上のような感じになる。 有名な話だし、ロマンのある話だとも思うけれど、残念ながら、このアトランティス大陸の話も、世の中にあふれる妄説の一つにすぎない。 アトランティス否定の根拠はいくらでもあるが、 簡単にまとめると・・・、
1.科学的理論上、大陸は簡単に沈む事は出来ないし、大西洋に大陸が存在した可能性はない。
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【注1】プレート・テクトニクス理論→地球上の大陸はマントルの上に乗っていて、時と共に少しずつ移動している。世界地図をよく見てみよう! 遠く離れた大陸と大陸の海岸線がジグソー・パズルのようにピッタリと合わさるだろう? かつて世界の大陸は一つの大陸だったのだ。 そして大西洋に別の大陸が存在した余地はない。)
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【注2】マントルの上に乗っている大陸地殻の厚さは平均約35km。 仮に、「陸地の面積×地殻の厚さ=1億立方km」の岩盤がプレートの沈没により消滅するとしたら、軽く見積もっても1億年以上は掛かってしまうらしい。 もっと現実的な陸上の侵食による消滅を仮定しても、1千万年以上の時間が必要となる。
アトランティスの大きさは不明ではあるが、「リビアとアジアを合わせたよりも大きかった」とされているわけだから、 実際にはその消滅に想定される期間は、たった「1億年」とか「1千万年」などの比ではなく、はるかに膨大なものになるだろう。)

2.アトランティス信奉者は、世界各地にアトランティス文明の名残りの遺跡が見つかっているかのように主張しているが、 それは彼らが勝手に各地の遺跡をアトランティスと結び付けているだけに過ぎない。 それらの一つで、ビミニ島沖合の海底で見つかった石造建築物とされるビミニ・ロードなどは、 実は遺跡ですらなく、大型の方解石で出来た自然の造形物である。
また、近年、サントリーニ島の噴火によるミノア文明の消滅を、アトランティスと結び付ける説がまことしやかに説かれたが、その後の調査によって、ミノア文明は、サントリーニ島噴火後も約150年は継続していた事が判明しており、すでに科学的に否定されている。
3.実際に行なわれた海底調査によっても、 大西洋に大陸が沈んでいる可能性は否定されている。
仮に大陸がかつて存在したなら、薄い層しか形成されていないはずの大西洋海底の堆積物は、調査の結果、約790mもある事がわかった。 しかも、最も深い層から得られた微生物を分析した結果、それらの堆積物が6千300万年以上も前に堆積したものである事も判明している。
そもそもアトランティスは大西洋にあったとされているわけだから、そこに大陸が沈んでいない事がわかった時点で、 アトランティス大陸説は破綻しているのだ。
4.アトランティスに関する伝説/伝承が、 各地に残っているかのように紹介される事も多いが、それも大抵の場合、アトランティス信奉者が無理やり各地の伝説をアトランティスにこじつけている場合がほとんどである。  そうでない場合も、基本的にアトランティスに関する伝説というのは中世以後になって発生したものであり、 それらの伝説の元ネタは、古代ギリシアの哲学者プラトンの著書『ティマイオス』『クリティアス』なのだ。 つまり、すべてのアトランティス伝説は、このプラトンの著書がキーポイントになっている。ところが・・・。
実は、対話編として描かれたこれらのプラトンの著書は、
理想の国家とはどうあるべきかという事を表すために書かれた「架空」の物話なのだ。そうした自らが創作した寓話を通して自身の理念を表明するという手法は、プラトンが残した他の主だった著作物にも数多く見られる。 だが、それらの物語の中において語られる「真実の話」や「信頼できる筋からの話」というのは、それぞれの著作物でみな内容が異なっている。 「これは真実である」と記されてはいても、それはプラトン自身の言葉として記されているのではなく、彼が作った物語の登場人物が「これは真実である」と述べているのに過ぎないのである。
端的に言えば、架空の物語に出てくる架空の伝説、 それがアトランティス伝説の正体であり、フィクションを基に作られたこの妄説に、現在も多くの人々が惑わされている。 <End>

 

 
  <イグネイシャス・ダンリー氏> 

 

  1882年、有名な著作『アトランティス〜大洪水期前の世界』 
  を発表。 現代のアトランティス大陸説は、この人物により
  広まったと言っても過言ではない。
  他にも「シェークスピアとフランシス・ベーコン同一人物説」
  を唱えるなど、大変、素敵なおじ様である。