榴弾[High Explosive]


●榴弾[High Explosive]とは
 榴弾の構造概略図を図1に、榴弾による攻撃の概略図を図2〜4に示す。榴弾とは、中空の弾体に炸薬(爆薬)を詰めた構造で、砲から装薬で射出した後、着発、近接または時限信管を用いて炸裂させ、弾体の破片効果および炸薬の爆風で目標に被害を与える砲弾である。通常、榴弾の攻撃目標は、人員や装甲化されていない車両、物資、構造物などであり、破壊効果の観点から弾体は10グラム前後の破片が大量に発生するように設計されている。また、炸薬の質と量も重要で、弾体の構造と合わせて調整されている。榴弾の破壊効果は、開けた地形では、弾体の破片によるものが主である。一方、延期信管を用いて掩体、掩蓋、トーチカなどの構造物の内部を破壊する場合は、爆風効果によるものが大きい。一般的に、その殺傷効果から榴弾と同意語で使われている弾種に榴散弾があるが、榴弾と榴散弾では以下の点が異なる。
1)榴弾は炸薬の爆発により弾体を破片化して目標に被害を与えるのに対し、榴散弾では、霰弾と呼ばれる子弾を炸薬で飛散させることによって同様の効果を与える点
2)榴弾は炸薬の爆発によりほぼ全周にわたって破片が飛散するが、榴散弾は弾体が破壊されないような構造になっており、炸薬の爆発で子弾(霰弾)は砲弾の前方に一定の散布角で飛び出す点

●榴弾の語源
 「榴弾」は英語で[High Explosive]である。これは、直訳すると「高性能爆薬」とでも呼べるだろうか。一方、日本語の「榴弾」は、「柘榴弾(ざくろだん)」に由来すると言われている。「柘榴弾」とは、果物の柘榴(ざくろ)がはじけるように、内部の炸薬によって弾体がはじけることから名付けられた。いつごろからかは判らないが、柘榴弾の拓の字が省略されて、「榴弾」と呼ばれるようになったようだ。

●榴弾による攻撃
[地上目標への攻撃]
 榴弾による地上目標への攻撃の概略図を図2に示す。榴弾による通常の地上目標への攻撃には、瞬発信管が使用される。榴弾が目標付近の地面に接触した瞬間(実際は10000分の1〜2秒後)に炸裂し、爆風とともに破片を周囲に飛散させ、目標に被害を与える。
[掩体への攻撃]
 榴弾による掩体への攻撃の概略図を図3に示す。掩体とは、野戦における防御手段の形体で、地面に穴を掘り、穴の周囲に盛土をしたものなどを呼ぶ。榴弾にて掩体を攻撃する際に瞬発信管を使用すると、掩体への直撃でない限り、爆風や破片は掩体内に入らないため、効果的な被害を与えられない。そこで、破片や爆風を掩体内に入りこませる方法が考案された。その方法とは、榴弾に時限信管または近接信管を付け、掩体上空の一定高さにて榴弾を炸裂させるというもので、この攻撃方法を曳下射撃と呼んでいる。この方法であると、榴弾が掩体を直撃しなくても被害を与えられる可能性が高くなる。
[掩蓋への攻撃]
 榴弾による掩蓋への攻撃の概略図を図4に示す。掩蓋とは、掩体の上につける丸太や土などによる蓋のことで、掩体により強固な守備力を持たせるための工夫である。この掩蓋が強固であると、瞬発信管による榴弾の直撃でも、曳下射撃でも内部に被害を与えられない。そこで、掩蓋への榴弾による攻撃には、延期信管または短延期信管という、着弾から時間を若干遅らせて作動する信管を取り付け、掩蓋に榴弾を直撃させ、貫通してから炸裂するような攻撃方法がとられる。

●榴弾の威力範囲
 リンク先(こちら)を参照のこと。

●榴弾の破片質量分布
 榴弾の破片質量分布を表1に示す。 砲や砲弾の名称は判らないが、旧日本陸軍の75mm野砲の榴弾破片の質量分布のデータを見ると、10グラム以上の破片の数は125個である。この砲弾の威力半径は判らないが、ほぼ同一の弾質量と炸薬質量を持つ38式野砲の94式榴弾の威力半径が22mである。この砲弾の炸裂点付近での破片の速度は1000[m/sec]程度である。
 旧日本陸軍ラ式15cm榴弾砲試製尖鋭弾の10グラム以上の破片の数は467個である。この砲弾の威力半径は判らないが、ほぼ同等かやや威力が高いと思われる4年式15cm榴弾砲の92式尖鋭弾の威力半径が32mである。注目すべきは、500g以上の破片が存在することである。75mm野砲弾の炸裂点付近の破片の速度は1000m/sec程度であり、15cm榴弾の破片も同程度の存速を持っているとすると、その運動エネルギーは250[kJ]に相当する。これは、ドイツ軍の3.7cm対戦車砲Pak35のPzgr.[AP弾]の砲口エネルギー:190[kJ]よりも大きい。破片形状やAP弾との材質の違い、破片の命中角度も勘案する必要があるが、破片の貫徹能力は、Pak35の100mにおける直立から30度傾けたRHAに対する貫徹能力:35mmに匹敵すると推察される。このデータは、口径150mm程度の榴弾であれば、装甲の薄い軽戦車や中戦車の側面への至近弾でも、大破片が装甲を貫通することが十分にありえることを示している。
 97式中迫撃砲試製2式榴弾については、7グラム以上の破片のデータが無いが、7グラム未満の破片の数が、ラ式15cm榴弾砲試製尖鋭弾よりもかなり多いことが判る。これは、弾体の材質も関係するが、弾質量に対する炸薬の質量が大きいことに起因すると思われる。ちなみに97式中迫撃砲試製2式榴弾の弾質量に対する炸薬の質量比は21.3%、ラ式15cm榴弾砲試製尖鋭弾のそれは13.5%である。10グラム以下の破片は、空気抵抗による存速の低下が大きく、威力半径が小さくなる。

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表1 榴弾の破片質量分布
砲名 ラ式15cm榴弾砲 97式中迫撃砲 75mm野砲 4年式15cm榴弾砲 38式野砲
弾名 試製尖鋭弾 試製2式榴弾 不明 92式尖鋭弾 94式榴弾
口径[mm] 149 150.5 75 149.1 75
弾質量[kg] 38.425 22.88 6.04 36 6
空弾質量[kg] 33.22 18 5.2 29.85 5.19
炸薬質量[kg] 5.205 4.88 0.84 6.15 0.81
炸薬/質量比 13.5 21.3 13.9 17.1 13.5
威力半径[m] 32 22
破片質量[g] 破片個数[個]
500 4
300 4
200 19
100 46 1
70 42 2
50 47 0
30 90 14
20 67 33
10 148 75
7 85 49
5 144 183 49
3 168 318 400
1 383 731
1未満 455 548
合計 1702 1780 623

 

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作成:2001/08/15 Ichinohe_Takao