衝動を抑える脳の場所!?

 

 私たちは、近い将来得られるであろう大きな利益よりも、目先のちょっとした利益の方を優先さてしまって、つい衝動的な行動を起こすことがよくあります。

 このような「衝動的な行動」に関わる脳の場所はいったいどこなのでしょうか?

 最近報告された研究によると、少なくともネズミ(ラット)では、側座核(nucleus accumbensという領域がないと、衝動的な行動を引き起こしやすくなるということがわかりました。

 この研究では、側座核(側座核の中でもnucleus accumbens coreという領域)が傷害されたラットと正常なラットに、それぞれある課題を行わせ、その二つのグループ間で衝動的な行動をする頻度が異なるかどうかを調べました。

 詳細は省きますが、衝動的な行動を調べる課題というのは、「量は少ないが、ただちにエサをもらえる行動」と「量が多いが、遅れてエサをもらえる行動」のどちらをラットが選ぶか?ということを調べる課題です。

 もし衝動的な行動をする傾向が高ければ、「量は少ないが、ただちにエサをもらえる行動」をすることが多くなるわけです。

 結果、正常なラットに比べ側座核を傷害されたラットは、「量は少ないが、ただちにエサをもらえる行動」をすることが多いことがわかりました。つまり、側座核を傷害されたラットは衝動的に行動することが多かったわけです。

 このように、側座核という領域が傷害されると、衝動的な行動が引き起こされやすくなるわけですが、言い方を変えれば、側座核という領域は、衝動的な行動を抑える働きをしているかもしれないわけです。

 この研究では、さらに、二つの高次大脳新皮質(帯状回, anterior cingulate cortexと前頭皮質, medial prefrontal cortex)の関与についても検討していますが、結果はシロでした。つまり、これら二つの領域のどちらかが傷害されても、衝動的な行動が引き起こされやすくなるという結果は得られませんでした。

 この研究は、衝動性を一つの特徴とする注意欠陥多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder, ADHD)に関わる脳の領域を知る手がかりとなるかもしれない、という意味でも価値がありそうです。

 

<紹介した論文>

Impulsive Choice Induced in Rats by Lesions of the Nucleus Accumbens Core
Cardinal RN, et al.
Science 292: 2499-2501 (2001)


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