流体(流れ)の基礎    go to home

粘性 :

流体が運動している場合には接線応力が現れる。その大きさτは変形速度すなわち速度勾配によって定まる。この性質を粘性,τを粘性応力という。水や空気など通常の流体では粘性応力は速度勾配に比例する。しかし高分子物質あるいはその溶液の中には、τが速度勾配のもっと複雑な関数であるものが多く見出される。τが速度勾配に比例するものをニュートン流体、そうでないものを総称して非ニュートン流体という。いずれにせよ、粘性は速度勾配を減少させ速度を平均化する作用をもつものである。

連続体力学:
気体の密度が小さくなると、ここの分子の相互の干渉がすくなくなり、連続体ではなく粒子の集合体として扱わなければならなくなる。(分子運動論) 逆に、本来は粒子の集団として扱われるプラズマなどは、密度が十分大きくなると流体としての性質を示すようになる。もちろんどんな物質も原子や分子の集合体であるから、これを連続体として扱いうるか否かは、その構成粒子の平均自由行路 が、考えている領域の大きさまたはその中で運動する物体の大きさ L に比べて非常に小さいか否かによってきまる。(Kn = l/L をクヌーセン数というが、粒子群の運動が流体として扱いうるには、Kn << 1 の場合である。)

定常流と非定常流:
流速 、圧力 p 、密度 ρ、などの、流れの場の量が時間 t によらない流れを定常流、そうでない流れを非定常流という。定常・非定常の区別は座標系の選び方に依存する場合がある。(たとえば、静止流体中を物体が等速度で運動する場合は、静止流体に固定した座標系で見れば、非定常流であるが、物体に固定した座標系で見れば定常流である)

ラグランジュの方法とオイラーの方法:
流れを調べるには二つの方法がある。一つは流体の個々の粒子の行動を時間的に追跡する方法(ラグランジュ(Lagrange)の方法)、いま一つは流体の各部分における物理量(速度、密度、圧力、温度など)が空間的にどのように分布し、またそれが時間的にどのように変動するかを調べる方法(オイラーの方法)である。前者は質点系の力学を連続体に拡張したもので、個々の粒子につけた名前(たとえば時刻 t = 0 にこの粒子が占めていた点の座標 (a,b,c) ) と時間 t が独立変数として用いられる。後者では通常の空間座標 (x,y,z) と t が独立変数である。

流線、流跡、流脈:
ある時刻における各流体粒子の速度ベクトルの包絡線を流線 (stream line) という。いいかえれば、各点における接線がその点の流体粒子の速度の方向と一致しているような曲線が流線である。流体内の任意の閉曲線を切るすべての流線を側面とする管を流管という。
 各流体粒子の運動経路を示す曲線を流跡 (path line) という。
 定義からわかるように、流線が流れのオイラー的な表現であるのに対して、流跡はラグランジュ的表現であるといえよう。また流れの可視化のために、液体の場合には色素で着色した液を、気体の場合には煙を、それぞれトレーサとして流れる中の定まった場所で注入することが多い。連続的に注入すればトレーサは線状につながるが、これは一般には流線とも流跡とも異なる曲線で、流脈 (streak line) と呼ばれる。

次元解析と相似法則

次元解析:
粘性流体中を運動する物体が受ける抵抗と速度の関係を、流体運動の基礎方程式を直接解いて求めることは容易ではない。しかし抵抗が速度の何乗に比例するかというような最も基本的な関係は、物理量の次元 (dimension) を考察することによって比較的容易に導くことができる。この考え方を次元解析法 (dimensional analysis) という。この方法は物理科学、工学の問題全般に適用されるものであるが、流れの問題に対しては特に効力を発揮する場合が多い。

U 定理:
次元解析の基礎となるのは次のU(パイ)定理である。
ある現象に関与する物理量を Q1,Q2,・・・Qn とし、それらの間に
                  F(Q1,Q2,・・・Qn) = 0
という関係が成り立っているとする。物理量は一般に独立な何個かの基本量 (たとえば長さ、質量、時間)から組み立てられる次元を持つ。いま Q1,Q2,・・・Qn のうち次元的に独立な量が r 個あるとし、それらを例えば Q1,Q2,・・・Qr とする(通常の現象では r <= 3である)。残りの ( n-r )個の量 Qr+1,Qr+2,・・・Qnをそれぞれ Q1(α1)Q2(α2)・・・Qr(αr)の形の量で割って無次元にしたものを qr+1,qr+2,・・・qn とすれば、上式は
                 f(qr+1,qr+2,・・・qn) = 0
の形に表され、この現象に関与する量を測る単位系の選び方にはよらない普遍的な関係を与える。

相似法則;
幾何学的に相似な二つの系は、基礎方程式の中に現れる物理量を無次元化したときに方程式の中に残る無次元パラメータの各値がそれぞれ等しい場合に物理的に(あるいは力学的に)相似であるという。このとき、二つの系について場の量が座標と時間の本質的に同一な関数で表される。

例;粘性流体の流れ
流れに関与すると考えられる物理量は流体の密度ρ、粘性率μ、物体の大きさを代表する長さL、代表的な流速(または物体の速度)Uである。次元的に独立な3個の量として,ρ、L、U、を選べば、無次元のパラメータ μ/ρU L が1個だけ残る。その逆数 Re = ρU L/μ = U L/ν (ν = μ/ρ ; 動粘性率あるいは動粘性係数) レイノルズ数という。幾何学的に相似な流れは Reが等しいとき互いに力学的に相似となる(レイノルズ(Reynolds)の相似法則)。

粘性流体の流れ

粘性:
流れに垂直な方向に流速の勾配があると、流体内には速度差をならそうとする応力が現れる。これが流体の粘性(viscosity)である。流れが x 方向を向き、これに垂直な y 方向に流速 u が変化しているときには、上記の接線応力は τ = μdu/dy と表される。μは通常の流体 (ニュートン流体, Newtonian fluid)ではその種類、温度によって定まる物質定数で、粘性率、または粘度、年粘性係数(coefficient of viscosity)とよばれる。またこれを密度で割った ν= μ/ρ のことを動粘性率 、または動粘度、動粘性係数(coefficient of kinematic viscosity)という。固体との接触面では流体は粘性のために固体表面に粘着する(粘着条件)

Navier-Stokes方程式とレイノルズ数:
水や空気など通常の流体の運動はN-S方程式によって記述される。上記次元解析の部分でも述べたように、各変数に適当なスケール変換をほどこすと、これをレイノルズ数というただ一個の無次元パラメータ Re = ρUL/μ だけを含む方程式に書き直すことができる。Reの値の大小により流体の運動の様相は非常に異なったものとなる。

おそい流れ:
Re がきわめて小さい場合(Re <〜1)には、N-S方程式の中の速度について2次の項を省略したストークスの方程式が成り立つ。また 1 <〜 Re <〜 10 の場合には、2次の項の効果を線形に取り入れた近時が成り立つ (オセーン (Oseen)の方程式)。これらの線形方程式についてはこれまで種々の解析的な取り扱いがなされ、多くの重要な結果が得られている。たとえば、球をすぎるおそい流れに対するストークスの方程式の解が求められている。特に球に働く抵抗に関するストークスの法則は有名である。これらの結果は粘性の大きい流体の運動、あるいは流体内での微粒子の運動などの考察に用いられる。

圧縮性流体の流れ

マッハ数:
圧力や密度の微小な変化は音速 a = √dp/dρ で気体中を断熱的状態変化で伝わる。理想気体では a = √kp/ρ (k :比熱比)で、空気の場合常温で約 340m/s である。物体をすぎる速度 U の流れにおいて、物体から十分遠方での音速を a∞ とするとき、流れを特徴づける無次元パラメータ M∞ = U/a∞ のことをマッハ数とよぶ。(静止流体中を物体が速度Uで運動する場合には、M∞ を物体の運動のマッハ数という)。流れの中の各点での流速u とその点での音速 a との 比 M =u/a を局所マッハ数という。M が1に比べて十分小さいときには、圧縮性の影響はM(2乗) に比例して現れる。液体の場合には圧縮率が小さく音速が非常に大きい(水の場合常温で a =1450m/s )からM は通常きわめて小さく、したがって水撃現象のような場合を除き通常非圧縮性流体とみなすことができる。空気でも、100m/s くらいの速度までは圧縮性の効果はあまり出てこない。
 
M∞ < 1 、M∞ > 1 の流れをそれぞれ亜音速流(音より遅い流れ、subsonic flow)、超音速流(音より速い流れ、supersonic flow)という。また局所マッハ数 M が < 1 , > 1 の領域をそれぞれ亜音速領域 、超音速領域という。亜音速流でも超音速領域は現れうるし、超音速流でも亜音速流は存在しうる。M∞ =: 1 の流れを遷音速流(音に近い流れ、transonic flow)という。

衝撃波:
断面積一定の管の中に静止した気体をピストンで押すと、その前面に生じた圧力の微小な増加は気体内を音波として伝わっていく。ピストンの速さを次第に増すと前面の圧力にしたがって密度、温度が高まり音速が増大するから、圧力の上昇は前よりも速く伝播し、はじめに出た音波に追いついてその強さを増す。こうして最後には圧力、密度、温度などが有限の値だけ不連続的に変化する面が形成され、それが静止気体中を伝播していくようになる。この不連続面のことを衝撃波(shock wave)とよぶ。衝撃波が通過すると、それまで静止していた気体粒子は衝撃波の進行方向に突然運動しはじめ、圧力、密度、温度、エントロピーなどの諸量が急に上昇する。このときの圧力上昇の割合が衝撃波の強さを与える。

自由表面を持つ流れ

自由表面:
水と空気、あるいは水と油というように、2種類の流体が接していて自由に変形することのできる面を自由表面あるいは自由境界面と呼ぶ。川や溝のような、自由表面を持つ水路のことを開水路という。

水の波:
水の表面には重力および表面張力による復元力のために波動が伝播する。波長が振幅に比べて大きく主として重力の作用で起こる波を重力波(gravity wave)、逆に波長が小さく主として表面張力の作用で起こる波を表面張力波(capillary wave)という。

フルード数:
物体が波を立てながら水面上を運動する場合にはρ、U(物体の速度)、L(物体の長さ)および g が問題になる。これらから作られる無次元パラメータは、F = U/√gL で、フルード(Froude)数と呼ばれる。相似形の船の造波抵抗係数はFによってきまる。

水滴と気泡:
空気中の水滴や水中の気泡は閉じた自由表面をもつ。十分小さい水滴や気泡は表面張力の作用で球形に近い形を保つ。表面張力σの効果は無次元パラメータ W = σ/(ρU^2L)(ウェーバー(Weber)数)によって表される。水中の気泡の運動においては、気泡自身の質量がきわめて小さいので気泡の仮想質量が重量な役割を演ずる。気泡が球形である限りその抵抗は上昇速度Uに比例し、Uは気泡の直径の2乗に比例する。この関係は固体球についてのストークスの法則と同じであるが、表面での境界条件が異なるので、固体球の場合よりもっと大きいレイノルズ数の範囲まで成立する。