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『今月のトピックス』(2000年12月)



今月のトピックスは,地絡事故時の零相電圧(V0)を取り上げて解説する.解説の都合上,11月掲載分を再掲のうえ解説することにする.

[2000年11月分再掲]

 

零相残留電圧とは?


今月は高圧非接地配電線に存在する零相残留電圧(中性点残留電圧とか単に残留電圧ともいう)について解説する.

高圧非接地配電線において,対地静電容量以外の線路定数を考えない場合の等価回路は第1図のように表される.同図において,電源電圧の不平衡も考えられるがここでは(a(bおよび(cは三相平衡しているものとする.
零相電圧には地絡事故時に現れるものと,健全時に仮想中性点と大地間に現れる零相残留電圧があるが,今回は零相残留電圧(残留V0)について解説する.
第1図において,
(ca=jωCa((N(a)
(cb=jωCb((N(b)
(cc=jωCc((N(c)
キルヒホッフの電流則により,
(ca(cb(cc=0
  [理由…非接地系のため,電流の帰路がないためである.]
∴jω(Ca+Cb+Cc)(N=−jω(Ca(a+Cb(b+Cc(c)
(N=−(Ca(a+Cb(b+Cc(c)/(Ca+Cb+Cc)
=−{(Ca+a2b+aCc)/(Ca+Cb+Cc)}(a
(b=a2(a={-(1/2)−j(√3/2)}(a(c=a(a={-(1/2)+j(√3/2)}(a

|Ca+a2b+aCc
=|Ca−(1/2)Cb−(1/2)Cc−j(√3/2)(Cb−Cc)|
=[{Ca−(1/2)Cb−(1/2)Cc}2+(3/4)(Cb−Cc)21/2
=[(1/2){(Ca−Cb)2+(Cb−Cc)2+(Cc−Ca)2}]1/2
ゆえに,零相残留電圧の大きさは,相電圧の大きさをEとして,
01=E[{(Ca−Cb)2+(Cb−Cc)2+(Cc−Ca)2}1/2/{√2(Ca+Cb+Cc)}]
となる.

高圧架空配電線の装柱例を第2図に示す.同図でわかるように,配線の幾何学的配置は非対称となっている.そのため,対地静電容量は若干不平衡となる.(第2図の配置では両サイド線の対地静電容量より,中線の対地静電容量が少し大きくなる…計算根拠省略)
いま,中相対地静電容量;Cbが両サイドのそれ(Ca,Cc)より若干大きいとして,
b=C1,Ca=(1−α)C1,Cc=(1−β)C1と置いてV01を計算すると,
01=[(α2+β2−αβ)1/2/{3−(α+β)}]E
となる.特別な場合として,α=β>0のとき(第2図の装柱の場合はこうなる)には,
01={α/(3−2α)}E
となる.
実際の配電系統では,装柱方法や単相2線区間の存在などで,一般的にはα≠β>0となる.
[(注)相の指定をしない最も一般的な場合には,α,βは正負両方を取り得て,0<|α|,|β|<1(←通常は0.1以下で0.02〜0.03(2〜3%)程度の値)とすればよい.]
ここまでは,高圧架空配電線における残留V0について解説したが,次に過密都市部のケーブル配線の場合の残留V0について計算をまじえて解説する.

6,600[V]高圧ケーブルの構造は第3図のようである.ケーブルのシールドは三相とも同電位で接地されるため,電界は軸対称に心線から出てシールドで終わる.またケーブルの構造は端末部を除いて幾何学的に完全に対称(=電気的に,線間および対地間で完全に対称←架空線では実現不可能)であるため各相の対地静電容量は極めてよくバランスしている.
また,ケーブルの対地静電容量は架空線のそれに比べてはるかに大きいという特徴がある.
[例えば,高圧架空配電線の1線当たりの対地静電容量の一例;0.0037[μF/km]に比べ,6,600[V]3心電力ケーブル;38[mm2で0.32[μF/km],60[mm2]で0.37[μF/km]であり,同一距離では約100倍の大きさがある.]
いま,架空線部分の対地静電容量がCa=(1−α)C1,Cb=C1およびCc=(1−β)C1で,ケーブル部分の対地静電容量が各相Cとしたときの零相残留電圧の大きさ;V02は,
02=E[(α2+β2−αβ)1/21/{3C+(3−α−β)C1}]
=E(α2+β2−αβ)1/2/{3(C/C1)+3−α−β}
となる.
ここに,C≫C1なので,(C/C1)≫1(装柱の状態とか架空線とケーブルの構成比率にもよるが,現実には10〜20あるいはそれ以上となる)であり,
02≪V01
である.
すなわち,都市部ケーブル系では残留V0の大きさは非常に小さいことがわかる.
[完全1線地絡電流が30[A]以上の系統で,残留V0は0.2〜0.3[%]以下である.]
【SVRによるV0の発生】

遠距離郊外配電線で電圧降下対策として第4図に示すような,V結線形SVR[SVR=Step_Voltage_Regulator;線路用電圧調整器]が設置されることがある.
この場合には,残留V0の様相が都市部ケーブル系とは大きく異なってくる.

第5図中SVRの一次側の対地静電容量をC1,二次側のそれをC2とすれば,キルヒホッフの電流則より,
(a1(b1(c1(a2(b2(c2=0
∴jωC1((N(a)+jωC1((N(b)+jωC1((N(c)+jωC2((N(a)+jωC2{(N(b+n((b(a)}
+jωC2{(N(c+n((c(a)}=0
両辺をjωで割り整理すれば,
(3C1+3C2)(N+(C1+C2)((a(b(c)+nC2((a(b(c−3(a)=0
電源電圧は三相平衡しているとすれば,(a(b(c=0であるので,
3(C1+C2)(N−3nC2(a=0
(N={nC2/(C1+C2)}(a(01
となる.
一方,SVR二次側各相の対地電圧は,
(a'(N(a
(b'(N(b+n((b(a)
(c'(N(c+n((c(a)
SVR二次側(0は,
((a'(b'(c')/3
(N+(1/3)((a(b(c)+(n/3)((a(b(c−3(a)
={nC2/(C1+C2)}(a−n(a
=−{nC1/(C1+C2)}(a(02
   となる.
この場合には,C1とC2の比率および昇圧比nの値によっては,かなり大きな残留V0(上式;V01およびV02)が発生するので,DGRのV0の整定には特に注意を要する.(少なくともDGRのV0タップ電圧を残留V0より大きくしなければ意味がなくなる.)
SVRは残留V0の大きさだけでなくその位相に直接的影響を与えるので,場合によってはDGRの不必要動作を起こしたりあるいは正常動作が不能になることがある.
そのためSVRが設置されている配電線から受電している需要家の地絡保護協調を図るためには,電力会社にV0情報を問い合わせるなどの慎重な対応が必要となる.

[2000年12月分]

 

1線地絡事故時の零相電圧とは?1線地絡電流とは?







第1図のように,線間電圧;V=6600[V](相電圧;E=V/√3=3810[V]),角周波数ω=2πf,1線と大地間の静電容量がC[F]の高圧非接地系配電線において,a相電線が地絡抵抗R[Ω]で地絡した場合を考える.

第2図のように,各部の電圧および電流を定める.同図において,
(ac=jωC((N(a)…(1)
(bc=jωC((N(b)…(2)
(cc=jωC((N(c)…(3)
(g=((N(a)/R…(4)
キルヒホッフの電流則により,
(ac(bc(cc(g=0…(5)
(5)式に(1),(2),(3)および(4)式を代入して整理すれば,
{j3ωC+(1/R)}(N+jωC((a(b(c)+(1/R)(a=0…(6)
(6)式において,
(a(b(c=0であるから,
(N=−((a/R)/{j3ωC+(1/R)}=−(a/(1+jω3CR)…(7)
また,
(a(N(a
(b(N(b
(c(N(c
零相電圧;(0は,
(0=((a(b(c)/3
=(3(N(a(b(c)/3=(N
=−(a/(1+j3ωCR)…(8)_(注)
となる.
また,1線地絡電流は,
(g=((N(a)/R=j3ωC(a/(1+j3ωCR)…(9)
となる.
(注)実際にDGRの位相判定に使用するのはこの(0(=対称座標法でいうところの(0)ではなく,位相反転したもの(=−(0(a/(1+j3ωCR))である. 

1線地絡電流;Ig,零相電圧;V0および完全1線地絡電流;Ig0との相関関係は?


ここまでの解析の結果,対地静電容量C[F]/相の非接地系で,a相電線が地絡抵抗R[Ω]で1線地絡したときの地絡電流は,
(g=j3ωC(a/(1+j3ωC)
で表される.
また,零相電圧は,
(0=−(a/(1+j3ωC)
で表される.
それぞれの大きさ(絶対値)は,
g=3ωCE/{1+(3ωCR)2}1/2

=Ig0/{1+(3ωCR)2}1/2

[ここで,Ig0は,R=0[Ω]のときの地絡電流(=完全1線地絡電流)で,Eは相電圧の大きさ(|(a|=E)である.] 

0=E/{1+(3ωCR)2}1/2

これらの式に,

g0=3ωCEすなわち,3ωCR=(R/E)Ig0

を用いることにより,

g=Ig0/{1+(R/E)2g02}1/2

0=E/{1+(R/E)2g02}1/2

となる.

 現在,電力会社の配電線地絡保護は,一部電力を除いて,6[kΩ]地絡抵抗検出を条件にしている.
この条件に従い,IgとV0の式に,R=6000[Ω],E=6600/√3=3810[V]を代入し,Ig0を変数として計算した結果を,第1表に,また,第3図にそれをグラフ化した結果を示す.

第1表.6000Ω地絡検出条件における1線地絡電流と零相電圧
(変数;完全1線地絡電流)

完全1線地絡電流Ig0 1線地絡電流Ig 零相電圧V0 (R/E)Ig0
1 0.536 2042 1.575
2 0.605 1153 3.150
3 0.621 789.0 4.724
4 0.627 597.4 6.299
5 0.630 480.0 7.874
10 0.634 241.4 15.75
12.72 0.634 190.0 20.03
15 0.634 161.1 23.62
20 0.635 120.9 31.50
25.46 0.635 95.00 40.09
30 0.635 80.63 47.24
31.83 0.635 76.00 50.12
40 0.635 60.48 62.99
50 0.635 48.38 78.74




結論として言えることは?


6[kΩ]地絡抵抗検出の条件で,
・Ig0が12.72[A]を超えると,V0が190[V](5%地絡)以下になる.
・Ig0が25.46[A]を超えると,V0が95[V](2.5%地絡)以下になる.
・Ig0が31.83[A]を超えると,V0が76[V](2%地絡)以下になる.
つまり,完全1線地絡電流が大きなケーブル系統では,需要家構内で6[kΩ]抵抗地絡が起こった場合に,V0が出にくいため,構内地絡事故にもかかわらず需要家設置のDGRがV0不足のため動作できないことになる.
一方,先に解説したように,完全1線地絡電流の大きなケーブル系統では,残留V0が非常に小さいため,電力会社のDGRはV0を高感度に整定することができ,6[kΩ]地絡検出・遮断が可能である.
すなわち,都市部ケーブル系統においては,6[kΩ]地絡で,電力会社DGRは正常動作するが,需要家DGRはV0不足で動作不能となるためいわゆる波及事故になってしまうことになる.

0過小問題に対する対策は?


ここで,微地絡(=6[kΩ]地絡)時のV0過小問題に対し考えられる対策例を紹介する.
(1)V0感度増加法…ZPC(ZVC)とDGRとの間に増幅器(ブースタ)を挿入し,実質的にV0感度を上げるもの.[実施例…(財)東北電気保安協会殿]
(2)需要家受電用DGRを設計変更して,小さなV0タップ(例…5-2.5-2-1.5-1%)を設ける.
(3)需要家受電用DGRを設計変更して,従来型のDGRの機能に,過小V0の条件でのトリップ機能を付加する.[実施例…H社]
(1)については,V0=5%固定型または最小V0タップ=5%の従来型DGRには動作可能領域が広がるのでその分有効な方法であると思われる.
(2)については,M社:V02.5%タップ,T社:V02%タップの例がある.この場合,6[kΩ]地絡で,V0が2.5%または2%に至らない場合には保護協調が取れないことになる.また,運用面での問題として,V0整定を小さくしすぎると残留V0より整定V0が小さくなってしまうおそれが出てくる.
・需要家V0整定値,電力会社V0整定値および残留V0との間のシビアなせめぎあいが必至となる.
・電力会社が例えば,V0=1.3%に整定した場合には,需要家DGRは少なくともそれ以下に設定しなければ地絡保護協調は取れないことになる.また,電力会社の整定も系統の変更で当然変わってくるわけで,この意味からも需要家側のV0整定で地絡保護協調を確保することは非常に困難となる.[下図参照]

・上図の例では,需要家DGRのV0整定値を1%にとれば一応地絡保護協調は可能である.しかし,DGRはV0とI0の大きさとその位相関係を判別して動作するものであり,V0の大きさが小さすぎると確実な位相弁別ができるかどうか疑問である.[力率計があるレベル以上の電圧および電流を入力しなければ正常に動作しないのと同じ.]
(3)現在発売されているH社製品では,過小V0トリップ条件により,需要家ケーブル等のC分が大きい需要家においては,I0整定の条件によっては,もらい動作(不必要動作)を起こす可能性がある.[非公式情報ながら,近々,改良バージョンが発売されるらしい.]

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