展示会からご来場の皆様へ

 

最近、企業や個人のホームページやオークションなど、インターネットによる情報があふれています。古いラジオや家電製品を修理してくれるところも、探せばいくらでもありますし、技術情報も沢山あります。でも情報を鵜呑みにする前にちょっと考えてみて下さい。色々なホームページを見るうちに感じたことを書いていきます。

 


 

【メーカー製品は絶対に改造しないこと】

最近メーカー製品の改造を推奨するようなホームページや、修理と改造を請け負う内容のホームページを多数見かけます。でもちょっと待って下さい。メーカー製品は語り尽くせないほど多くのことを考えて設計されています。したがって改造すると、それら配慮された項目のどこかが破綻する場合が多いのです。メーカーと言っても大手からすぐに消えてゆく零細企業まで色々ありますので一概には言えませんが、一般化するとメーカー製品は下記のことを考慮して設計されています。

 

 

\宿覆梁冤冉数が経過するまでは故障しない事。万一故障した場合は安全に回路が停止すること。

製品によって異なりますが一般には10年程度、安定に動作することを目指して設計されています。もちろん、これは完全ではありません。部品の不具合や製造時の欠陥、回路動作のバラツキにより、本来の寿命が来る前に故障してしまう製品も数%あります。メーカーの製品は故障した場合でも安全に停止できるよう配慮されており、例えば発煙、発火、破裂、感電などの事故が絶対に発生しないように、全ての部品が故障することを想定して厳しく試験しています。

 

⇒∩、保管などで故障が生じないこと。また異常な使用方法をされても安全に故障すること。

製品はトラックや鉄道輸送などの振動で故障しないように配慮されています。また、万一水をかけたり、箱の中につめこんで高温で使用した場合など、使用者側に責任がある異常な状態にさらされても、出来る限り安全性が確保できるようにして有ります。

 

N婿裟が良いこと。また量産した場合に製品が均一であること。

回路を設計して、1台だけ性能を出すのは難しいことではありませんが、10万台生産して同じ性能を出すのは難しいものです。メーカーでは量産時の部品のバラツキ等による性能の違いを、調整や回路技術で吸収できるように配慮して設計しています。

 

ぅ灰好函∪能のバランスが取れていること

一般に性能を追求しますと、部品数が多くなり高価になります。これは使用者の要望にも寄りますが、一般にはある決められたコストを設定し、その範囲で最大限の性能が出るように設計しています。このため生産時間の短縮や部品の共通化など、見ただけでは分からない工夫がされています。

 

ソねする際に簡単に修理できること、また修理後は初期の性能が維持できること。

部品交換のしやすさを重視して設計しています。ただ、最近はチップ部品が多く、手作業では交換できない部品もあるため、基板交換する場合もありますが・・・。

 

以上を考えますと、メーカー製品を改造することが、いかに難しいことであるかが分かると思います。一般に改造する理由はい砲△蝓更なる性能追求、例えば音質・画質の向上を求めるのだと思います。しかし、これは一見簡単なようで実は技術的に相当難しいのです。例えばよく見かける改造例として下記のような事が考えられます。

 

 

(改造例1)

アンプの音質向上を図るため、電源に使用されているダイオードをショットキーバリアダイオードに変更した。ダイオードの逆方向電圧及び出力電流は同等の物を用いた。

 

これは何ら問題がないように思われますが、実は非常に難しい改造です。

        ダイオードのIFSMが確認できていません。電源投入直後は平滑用のコンデンサに充電されていないため、ダイオードに大きな順方向電流が流れます。整流ダイオードではこれに耐え得るようにIFSMなるスペックが記載されていますが、素人改造では殆ど考慮されていませんので、電源電圧の変動や温度変化などにより、最初は壊れなかったダイオードが、ある時突然故障することもあり得ます。なお、この確認には必ずデジタルオシロスコープとカレントプローブが必要です。これらの測定器は高価なため、素人が持っているとは考えられません。(安い物では帯域やサンプリング速度が遅くて見えない場合がありダメです。)

 

        ショットキーバリアダイオードは温度が上昇すると逆方向にも電流が流れやすくなります。ダイオードの形状などにより、温度が上昇した場合は損失が増え、ダイオードの暴走を招くおそれがあります。

 

        一般に整流素子を変更すると、電源ラインに輻射するノイズも変わります。したがってライン輻射が電気用品安全法以下であることを確認する必要があります。

 

3番目は安全上問題にはなりませんが、他の機器の誤動作やノイズに悩まされるかも知れません。その他の項目は平滑用のコンデンサや後ろの回路までもを破壊する可能性があり、大変危険です。したがって整流ダイオードの品種変更は十分な知識と測定機器を持った技術者に依頼する必要があります。

 

(改造例2)

真空管ラジオのハム音が大きい。よって平滑用のコンデンサを100μFに交換した。

 

最近は大容量高耐圧でも小型のコンデンサが多数有ります。但し、大容量のコンデンサを付けますと電源投入直後に整流素子に流れるIFSMが大きくなり、整流素子を痛めます。ダイオードで有れば最悪ショート破壊、製流管は寿命が著しく短くなり、最悪は断線します。

 

ラジオ用製流管の直後に平滑用として付けることが出来るコンデンサの容量は、回路にもよりますが一般に下記の値です。ただし、抵抗を通して付ける場合は大容量でも構いません。(抵抗値と電圧により制限はある。)

 

12B,12F,12FK       4μF前後

80,80K,5Y3            10μF前後

80BK,80HK             8μF前後

6X4,6X5                   10μF前後

19A3                         60μF前後

25MK15,35W4       40μF前後

 

(改造例3)

テレビの画質改善のために、使用している電解コンデンサを全てBG(ブラックゲートコンデンサ)に交換した。

音質改善のために、アンプのコンデンサをOSコンに変更した。

 

これは絶対に止めて下さい。電解コンデンサは電子部品の中でも最も難しく危険な部品です。一般に電解コンデンサには耐圧、容量の他に下記スペックが規定されています。

 

[許容リプル電流]

電解コンデンサに流すことが出来る交流電流です。これを越えて電流が流れると、容量抜けが発生しセットが正常動作しなくなります。

 

[逆方向電圧]

一般に電解コンデンサには極性があり逆電圧を加えることは出来ません。ただし、物によっては一定時間内、ごく低い電圧なら逆方向に電圧を加えても良い製品もあります。これは外見では分かりません。また無極性電解コンデンサもありますが、これは見てすぐに分かりますから間違えることはないでしょう。

 

[自己温度上昇]

一般には5℃以下です。リプル電流が大きい場合や周波数が高い場合に損失が大きくなり発熱が増えます。発熱が大きい場合は容量抜けになりますが、著しい場合は防爆弁が開いて白い煙が吹き出します。

 

[使用温度範囲]

一般品は−20〜85℃程度です。最高使用温度はコンデンサのスリーブに記載されています。最高使用温度を超えて使用することは出来ません。また最高使用温度以下でも自己温度上昇は規定値以下に抑えなくてはなりません。低温の場合は壊れることはありませんが、コンデンサの容量が落ちてインピーダンスが上昇します。

 

[寿命]

一般品で2000h/85℃です。一部に間違いが記載されているホームページがありますが、これは保管時のスペックではなく、動作時のスペックです。寿命は温度が10℃下がる毎に倍になります。よって2000h/85℃の電解コンデンサを55℃(機器内部の温度)で使用すると、寿命は8倍の16000時間になります。寿命と温度はコンデンサにより異なり、4000h/105℃等というものもあります。これは当然長持ちします。なお、電解コンデンサの保管期限は一般には半年です。半年以上経過した電解コンデンサはメーカーでは廃棄しますが、仕様書によってはエージングすれば使用可能と書いて有ります。実際は実力で10年程度の保管は可能、それ以上経過した物はエージングすれば使用可能、ただし性能は不明といったところです。

 

電解コンデンサの防爆弁から吹き出す高温のガスは可燃性です。ガスが吹き出した所に高温の抵抗があると、最悪着火して火炎放射器と化します。上記内容を全て考慮し電解コンデンサの交換が出来れば別ですが、一般には壊れていない電解コンデンサを交換するのは無意味ですし、音質画質が良いと言われているコンデンサは別の特性が劣っていますので、要所要所に使用するのが良いのであり、全て交換するのは困ります。

 

(まとめ)

設計のプロでも間違いは沢山あります。内情をばらせば全てを考慮して設計しても、不具合は盛りだくさん・・・試作に試作を繰り返して設計しています。それでも市場で問題が出ることもあり、毎日悪戦苦闘しています。まして、メーカーの技術者が連日深夜までかかって設計した物を、以上を全て考慮した上で改造し、性能向上を図った上で、その他の特性を落とさずに改善できる素人がいるとは考えにくいのです。一見良くなったように見えても、何か不具合が発生したり、犠牲になっている特性があるはずです。もし完璧な改造が出来るとしたら、それはその製品の設計者でしょう。

修理をしつづけても使いたいと思うような製品は高価な物が多いと思いますが、このような製品は総合的に見て非常にバランスの取れた良い設計になっていることが多く、メーカー製品は改造を行う必要は全くありません。かえって寿命を短くしてしまったり、重大な故障を招いたり、性能を損なうだけです。

 


 

【オークションで買い物をする前に】

最近インターネットオークションが盛んに行われており、珍しい物がたくさん出てくる事に関しては、良い時代になりました。私も昔は考えられなかったような物を見ることが出来、また入手することも出来ました。しかし、売り手側に全く知識がない場合、時に非常な高値でゴミを掴まされる事も少なからずあり、しかも売り手側に悪意が無い場合はお金を溝に捨てる事にもなりかねません。そこで、実際に2年ほどオークションを見ながら、思うところをつづってみたいと思います。

 

不良真空管に注意

真空管は電子部品ですから、善し悪しは動作させて見なければ分かりません。しかし、外観を見ただけですぐに分かる不良真空管も時々出品されています。このような真空管は買わないように注意することです。下の写真は買ってはいけない真空管です。6R-DHV1ですが、ガラス全体が透明になっています。本当は真空管の頭が銀色に輝いているのですが、それが消えているのです。銀色に輝く部分をゲッターと言いますが、完全に消えている場合や虹色になっている場合は、徐々に空気が入った証拠です。また真っ白になって粉を吹いたようになっているのは、ガラスが割れるなどして急激に空気が入った場合です。いずれの場合も真空管としては動作しません。

 

 

またゲッターが茶色の物は動作する可能性が大ですが、不良の可能性もあります。真空度が落ちてきた真空管は、動作中にグローを生ずることがあります。下の写真は新品の50C5で発生したグローです。球の内部の空間が青白〜白色に光り、正常に動作しません。これは真空度が落ちているためです。もう少し真空度が落ちてくると橙〜赤色に光るようになります。ただし、管壁が青く光るのは蛍光と言って問題にはなりません。出力管や整流管では良く蛍光を生じます。なお、この真空管は30分程度でゲッターが消えて動作しなくなりました。

 

 

真空管は新品が良いか、中古が良いか

真空管は製造中止になってからかなり経ちますので、中古を買われる場合も多いと思います。でも新品元箱入り(新品でメーカーの化粧箱に入っているということ)も大変魅力的で購買意欲を誘います。それぞれ下記の様な特徴がありますので、値段と現物をよく見て買うと良いでしょう。

 

・新品

一般的には中古より特性も良く長く使えるはずです。但し、初期不良管も混ざっていますから、まれに数時間で動作しなくなったり、全く使えない球も有ります。新品元箱未開封は特に注意が必要です。中を開けたらリークしてゲッターが真っ白だったという事も・・・。法外な高値で購入するのは考え物です。

 

・中古

使い古しの球なので、寿命はそれなりかも知れません。ただし、中古はそれまで正常に動作していた球ですから、事故球は少ないはずです。動作確認済みの球で有ればまず問題ないでしょう。ただし、不良になった球が中古球として出回る事もあり得ますから、やはり現物確認は大切です。良くエミッションチェッカーでテストしてOK云々という物を見かけますが、これでは電極間ショート、その他の異常は分かりません。もちろん、これでNGの球は使えませんが。ラジオ球で有ればラジオで動作させて、感度低下や雑音など、問題のない球が動作品と言えます。ただし、ラジオでは相当使い古した球も動作します。やはり経験が必要です。

 

 

改造した真空管ラジオ(戦前のスーパー)に注意

これも時々見かけます。私も時々判別できないすばらしい改造品があります。(笑)戦前のラジオに四角いIFTが載ったスーパーヘテロダインは一部の例外を除き改造品です。これらは戦前の並四等、ストレート方式のラジオを戦後スーパーに改造した物です。戦前のスーパーはまず出てこないと思った方が無難です。ヤフーオークションで戦前のスーパーが出る確率は、ほぼ半年に1台程度。戦前のラジオが1000台あれば1台あるか無いかだと思います。先日、松下電器の当選号が90000円台で落札されていきました・・・でも四角いIFTが見えています。当選号にIFTが付いているはずがないのです。十分に注意が必要です。

 

大型電蓄はメーカー製か

大型電蓄も時々見かけます。小さな冷蔵庫程度の大きさで、下にラジオ、天板が開いて中にターンテーブルが入っているタイプです。よくナショナル製が出品されていますが、ナショナル製と称した物で、本当にナショナル製だったのは過去に1〜2台だけです。出品者はプレーヤーにナショナルと書いてあればナショナル製といいますが、大部分はナショナルのターンテーブルとキャビネットを買って、素人が組み立てた製品です。この手の物は修理が大変ですから避けた方が無難です。大型電蓄は昭和28年頃の値段で10万円〜20万円もしました。こんな高価な物がそうそう残っているはずがないのです。本物のメーカー製は、キャビネットの蓋に大きなメーカーの社章が入っているとか、目盛板にメーカー名が入っているとか、エンブレムが付いている事が殆どです。またメーカー製のシャーシがアルミで出来ていることはまずありません。(アルミは加工がしやすいため素人が好むが、反面高価で強度不足のためメーカーは嫌う)

 

真空管ラジオの完動品

良く、完動品として出品されるのを見かけます。完動品とは言うまでもなく完全動作品の略であり、手入れをしていない真空管ラジオではまずあり得ません。完全動作品は初期性能を保っているべき物であり、下記条件を満たしている物と考えられます。

 

        感度、選択度に問題のないこと。

        スイッチの接触不良やボリウムのガリが無いこと。

        内部配線や電源コードに痛みが無く、当時と同じ安全性が確保できていること。

        埃や汚れなどが無く、クリーニングの必要がないこと。

 

古い物ですからこんな事はありません。私が過去に購入した物で真の完全動作品と呼べるのはRE−760とRE−777Nだけでした。よって購入後の手入れは必要と考えるべきです。音が出れば完動品と書く人が多くて困ります。

 

その値段は適正か

法外な値段で真空管ラジオが出品されていることがあります。例えば戦後のmT管ラジオの不動品が4万円、ST管5球スーパーが8万円など・・・。当然、こんな値段で買う人はいないと思います。出品者はたいてい骨董屋かラジオの区別が付かない素人のようですが。適正価格は他のラジオの値動きをよく見ていれば自然に分かります。不動品の価格は概ね3000円(mT管スーパー)〜50000円(初期縦型、極美品)程度でしょう。

 


 

つづく・・・

 


 

 

 

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