真空管ラジオの選び方〜購入の前に






真空管ラジオが一般家庭から消えて20年以上経ちました。現存する真空管ラジオは新しい物でも製造から40年、古い物では製造から70年経過しています。今からラジオのコレクションは始めようとするとき、どのようにして入手し修理するか、またどのような物を購入したらよいのか、課題は沢山あります。このページをご覧になる様な方は、既に相当な知識を持ってコレクションされている方も多いと思いますが、これから始める方へラジオの入手と修理方法をご紹介します。
 
 


真空管ラジオの入手


一般家庭から真空管ラジオが消えて20〜25年になり、普通の家では既に粗大ゴミとして廃棄され残っていません。持っているとすればよほど物持ちの良い人か、押入や納屋等に忘れられた物でしょう。田舎に行くと納屋や蔵の中から出て来ることも有るようですが、一般の人がこれらを発掘することはほぼ不可能です。都市部等では狭い住宅環境のため、更に絶望的です。私が燃えないゴミとして捨てられている真空管ラジオを最後に目撃したのは、今から15年前でした。
しかし、諦める事は有りません。下記の方法でかなり高い確率で手に入れることが出来ます。
 

・骨董店,リサイクルショップ
 

都市部では骨董店やリサイクルショップが必ずあります。こまめに見ていると、時々真空管ラジオが置いてあることがあります。ただ、良い物に出会えることはまずありません。骨董店やリサイクルショップは真空管ラジオの価値や相場というものを理解していません。骨董店では外観が綺麗でかつ古そうな物(縦型)等は非常に高価な値段で販売されていることがあります。また、新しい物でも相当高い値付けです。プラスチックケースのmT管トランスレス不動品が20,000円という値段が付いていることも珍しくありません。リサイクルショップではかなり安く出てきますが、やはり良い物はないでしょう。(結論・これらのお店はあまり期待できません。)
 

・アンティークラジオ専門店
 

東京へ行くと数軒あるようです。私がのぞいた店の住所と店名はあえて書きませんが、沢山のラジオが売られていました。ただし非常に高価です。例えばこのホームページにあるNational AS-350はなんと80000円でした。誰がこんな値段で買うかと思われるような値段ですが、本当に売れるのでしょうか。しかし、メリットもあります。それはプロの手による完全整備済みであるという点で、動作は完璧、保証もあります。壊れた場合の修理もしてもらえるでしょう。
 

・雑誌の部品交換欄
 

無線と実験、CQ誌等の専門誌には部品交換欄があり、個人売買されています。この欄をチェックすると月に1,2台は真空管ラジオが売られています。出ていなければ自分で広告を出すのも手です。この方法は売り主は専門技術を持っていることが多く、価格も適正であるのが普通です。ただ、技術レベルは個人差が大きく、動作品として購入しても動作不良だったり、改造されている事もあります。しかし、驚くべき高度な技術で修復されていることもありました。この方法の欠点としては現物の確認が出来ないことでしょう。状態や色、デザイン等は現物を見ないと分かりません。過剰な期待は持たぬ事です。
 

・インターネットオークション
 

最近始まったインターネットオークションにも沢山のラジオや部品などが出ていて、まるで博物館即売会?の様相を呈しています。手っ取り早く好みの製品を入手するにはここが一番です。殆どの人が写真付きで掲載していますので、状態も判断できますし、不明な点は質問もできますから便利です。ただ、オークション(競争入札)ですから購入するためには他の人よりも高い価格を付けなければなりませんし、貴重な製品や美品はその道の専門家「ラジオプロ」的な人も狙っていますので、なかなか購入できません。また詐欺も多発していますので十分な注意が必要です。よほどの稀少品でない限り、落札出来なくても半年程度でまた同じ物が出てくることが多いので、熱くなって高い買い物をせぬように注意が必要です。


 
 
 
 


どんな真空管ラジオを買ったらよいか

真空管ラジオの入手ルートを確保できたら、いよいよ購入です。古い製品ですからどんなものでも買って良いという訳ではありません。買って集めるのですから、やむを得ない経年変化は別として、最終的にはレストアし、汚れ一つない完全動作品を目指したいものです。そのためにはどんな物を選べば良いのでしょうか。
 

・キャビネットの良い物、または修復が容易な物を選ぶ
 

まずキャビネットについて着目します。キャビネットは木製とプラスチック製、金属製に大別されます。

木製の場合はひび割れと塗装剥がれに注意します。数mmもある隙間が空くようなひび割れが入っている物は、元通りにするのが大変難しいので避けましょう。これは長い年月の間に木が乾いて生じた物で、たいてい修復できません。同様に木が反っていたりする物もダメです。また塗装剥がれは昭和35年以降の物に多く見られるもので、当時の合成塗料の技術の低さが原因です。これは完全に剥がして再塗装するという手もありますが、もはやオリジナルとは呼べなくなります。もちろん、再塗装されているラジオも避けましょう。木がボロボロに腐っている物や箱が解体しているものは論外です。雨に当たっているかも知れません。多少の虫食いは仕方がないので良しとします。

プラスチック製のキャピネットはひび割れが無く、変色が少ない物を選びましょう。変色はプラスチックの分子構造が変わってしまっているので元に戻りません。また真空管ラジオは熱くなりますから、小型の製品では熱により変形していることもあります。
 

・部品の全て揃っている物を選ぶ
 

戦前のラジオではある程度の欠品は仕方有りませんが、戦後の製品ならつまみの全て揃っている物を選びましょう。つまみを失うと同じ物の入手はまず不可能です。最悪、同じ機種を2台揃えて1台を作るという手もありますが、お金が2倍かかります。ただ、型を取って同じつまみを自分で作るなら別ですが・・・。同様に裏蓋やメーカー名のエンブレムがない製品も避けたいところです。
 

・出来れば動作する物を選ぶ
 

古い物が多いので、動かないのは当然なのですが、希に受信出来るラジオが売られていることがあります。受信が出来るということは調子が悪いにしろ回路が働いていると言うことで、致命的な不良が少ないことを意味します。こういう製品は修理が容易なことが多いようです。ただし、受信できるからと言って油断は禁物、素人が下手な修理をして取り返しが付かないほど哀れな状態と言うこともあり得ます。また動作するからと言って修理せずに使い続けられる物はまず有りません。
 

・改造されていない物を選ぶ
 

分かっていることなのですが、これも時々失敗します。戦後のスーパーが改造されている事はまずありませんが、戦前のラジオは良く改造されている物に出会います。以前戦前のスーパーとして購入したラジオには、驚くことに戦後開発された真空管である6WC5が入っていました。戦前のラジオはストレート方式で感度も選択度も悪く、戦後スーパーに改造されてしまった物が多くあります。プロが改造した物にはすばらしい出来の物もありますが、下手な素人が改造していると悲惨です。改造品は元に戻せないことが多いので、よほどの理由が無い限り手を出さない方がよいでしょう。
 

・最初は修理が簡単な製品を選ぶ
 

はじめて修理に挑戦する時は、戦後のmT管スーパーで、MWのみの製品を選ぶのが無難です。比較的新しい製品なので、故障個所が少なく修理が容易な場合が殆どです。出来れば箱の大きい物が直しやすくてお勧めです。いきなりFM/MW2バンドのラジオや戦前の製品を手がけるのはやめましょう。FMやSWが付くと調整が難しいばかりでなく、コイルが多く配線も相当複雑になります。また戦前の製品は複数箇所で故障している事が殆どです。10点近い部品の交換、多くはコイルの巻き直しや配線の張り替え等、高度な修理が必要です。また古い物ほど部品の入手も困難です。

・最初は国産の製品を選ぶ

最初は国産の製品を選びましょう。アメリカ製のラジオは早くから使い捨ての考えで設計されており、修理する際に苦労する事が多いようです。実際、集合部品が使用されていたり、IFTが断線していたりと散々です。電源電圧は120Vですから、国内でも使えないことはありませんが、時計付きの製品は特に避けるべきです。北米は60Hzですから、東日本の50Hz電源では時間が合いません。また時計付きの製品はずっと通電されているため、傷みが激しい物が多いようです。一方、ドイツ製のラジオはしっかり作られていて好感が持てますが、真空管の入手に苦労するでしょう。また欧州の製品は電源電圧が220〜240Vのため、国内ではそのまま使用できません。


各メーカー毎の真空管ラジオの特徴について

最初はメーカー製の真空管ラジオを選ぶ事になると思いますが、どんな製品でも修理できるというわけではありません。メーカーにより設計方針や思想が異なっているため、なおしにくい製品もあります。私の少ない経験から、各メーカーの特徴を書いてみます。

松下電器産業/松下無線(National)
戦前からある電機メーカーの一つです。製品数も比較的多く、種類も豊富です。従って現存する製品も相当数あります。戦前はラジオの組み立てのみで、東芝製の真空管を採用していましたが、戦後は真空管も自社で製造していました。戦前の製品は比較的豪華な物が多く、作りもしっかりしています。 戦後の製品も大変丁寧に作られている物が多いのですが、昭和32年頃までのラジオに使われている内部配線がボロボロにひび割れているため、修理に手間がかかります。また、昭和32年以降の製品ではIFTがシャーシにかしめてあるため、部品取りには向きません。電源トランスも全てリードタイプなので再利用は難しいでしょう。戦後の製品はほぼ全てに回路図が貼付されています。内部配線の交換に自信が有れば、比較的直しやすい部類ではあります。

東京芝浦電気/東芝(Toshiba/マツダ)
戦前からある老舗の電機メーカーですが、戦前は真空管の製造が主力でラジオセットの生産は殆ど行っていません。従って現在目にする製品は殆ど全てが戦後の物です。戦後の製品に限って言えば部品点数も少なく、非常に直しやすいメーカーです。ただし、部品を削減しすぎて性能が劣っているラジオも多々あります。昭和20年代のトランスは端子タイプの物が多く、部品取りとしても適当です。mT管ラジオでは6R-DHV1等の希少球を採用しているセットが有りますので、こういうラジオは最初は避けた方が良いでしょう。また、ST管のラジオでは回路図が付いていないことが多いので注意が必要です。

三洋電機(sanyo)
これも戦前からある電機メーカーですが、ラジオセットの生産は戦後になってからのようです。真空管は三洋の名前が入っていますが、日本電気から供給されていたように見えます。デザインが良いラジオが多く、比較的人気がありますが、回路は平凡です。回路図も付いていることが多く、直しやすいメーカーです。

早川金属工業/早川電機/シャープ(SHARP)
早くからラジオセットの製造をしているメーカーで、戦後の製品より戦前の物を良く見かけます。戦前の製品は高級品が多く、修理は容易ではありません。また、戦後の製品もデザイン、回路共に凝っている製品はなおしにくいので注意が必要です。ただ、シャーシが浅いため作業はしやすいでしょう。トランスはリードタイプを使用していることが多く、部品取りには向きません。回路図は付いていないことがあります。

日本ビクター蓄音機/日本ビクター(Victor)
戦前のスーパーヘテロダイン受信機、高周波2段増幅付き等は修理しにくく最悪です。シャーシが深くて部品が重なって配置されているため、部品交換が容易ではありません。戦後の製品も終戦直後の物は直しにくく、部品取りにも向きません。回路図が貼ってあることも殆どありません。

日立製作所(HITACHI)
戦前からあるメーカーですが、ラジオセットの生産は戦後になってからです。残存数はあまり多くなく、ST管使用の物は殆どありません。mT管のラジオも安物が多く、高級品はありません。比較的直しやすいでしょう。回路図も付いていることが多く、回路も標準的です。自社の真空管を使用しています。

日本コロムビア(COLUMBIA)
会社は存続していますが、ごく最近外資に買収されたメーカーです。戦前の製品は珍しく、殆ど残っていません。戦後の製品は時々目にしますが、ダイヤルプーリーの下に部品が付いていたり、シャーシを引き出さないと真空管が外れなかったりと、作業性は最悪です。回路は標準的で、回路図も付いていることが多いのですが、避けた方が良いかも知れません。

八欧電機/富士通ゼネラル(GENERAL)
戦前の製品は珍しく、殆ど残っていません。戦後の製品は数多く目にしますが、凝った製品が多く回路が複雑です。丁寧に作られている製品が多く、シャーシも浅いため比較的修理しやすい部類ですが、回路図がないと苦労するかも知れません。

七歐通信機(NANAOLA)
戦前からあるラジオメーカーです。戦前の製品には高級品が多く、回路が複雑でシャーシが深いため修理は容易ではありません。チョークコイルが多用されていたりすると断線に泣かされます。戦後のST管ラジオは回路が単純でお勧めです。

山中電気(TELEVIAN)
戦前の製品は廉価品が多く、回路図も付いていることが多いようです。回路も単純ですが、戦前物は損傷が激しいためお勧めできません。戦後の製品は直しやすい物が多く、お勧めです。部品の不良も比較的少ないように感じます。

日本電気(NEC)
戦後になってからラジオの生産を始めたメーカーですが、終戦直後に数機種作っただけで真空管ラジオは殆ど現存しません。大変高級なオールバンドで、回路も複雑かつ標準的ではありません。容易に修理できる物ではないと考えた方が良いでしょう。




 
 
 



 
 

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