ラジオ展示室「真空管式レシーバー」


高度成長期を迎えた昭和30年代以降、生活もだんだん豊かになって、昔ながらのラジオでは満足できなくなる人が出てきたようです。この様な状況で、いわゆる電気蓄音機「電蓄」とは別の、Hi-Fi路線の真空管アンプが出てきました。いわゆるオーディオコンポの初期の製品で、アンプの他にプレーヤーとチューナー、スピーカーを接続して使用する製品です。この中でチューナーとアンプが一体になっている物をレシーバー又はトライアンプ(商標?)と言います。

初期の製品はモノラルアンプに中波チューナーを複合した製品でしたが、時代が進むに従いアンプ部分がステレオ化、FMチューナー付と発展してゆきます。初期の製品は、現在の回路技術から見ると実用にするには多々問題があるようですが、中には大変優れた製品もあり、現在でも通用するような良い物もあります。
こちらも順次修理調整中ですので、修理清掃済みのものから展示していきます。
 


 

【501】福音電気(PIONEER・現:パイオニア) SM-Q141型 1957年(昭和32年製)

使用真空管:6AQ8*2,6BA6*3,6BE6*2,6BQ5*2,6CA4,6E5*2,12AX7*3 15球式

受信周波数:525-1605KC(MW),3.8-12MC(SW),80-108MC(FM)

定価:不明
 



 

福音電気、現パイオニア(株)の真空管レシーバー、いわゆるトライアンプ。このセットはラジオ工房の内尾さんから4年ほど前にお譲りいただいた物で、不動品を修理した物。失礼ながら、大変な状態で、修理に多大な時間を要した。それ故に修理の手応えはたっぷり、お譲りいただいた以上は直さぬ訳にはいかない。

入手した時、本体前面部の白いパネル部分が錆ついて、表面の塗装が剥がれ落ちてボロボロ。前面のつまみの真ん中にはまっている銅の飾りも緑青がわいて汚く、本体内部は汚れて見る影も無い。スピーカーを止めるネジ他、錆びて使用できない状態である。修理は電源トランス等の主要部品が使用出来る事を確認した上で、外装の復元から開始した。

まず前面のパネルのアルミ部分は外して水洗いの上、曲がりを補正。白いパネル部分の塗装は、薬品と紙やすりで全て剥がし、鉄無垢の状態に戻した。その状態で剥がした塗料から元の色が白に近いクリーム色であると推定、スプレーを使用して再塗装した。パネルの文字は一部浮き出しになっているため、真っ白ではおかしい。元の塗装では文字は別に黒く塗られていたと推定されるため、文字部分だけ黒く塗装した。全ての塗装が終了した後、ガラスをはめて前面部分は完成。錆と元の塗料を完全に剥がす作業に多分30時間以上、塗装と文字入れ、修正に10時間以上を要している。これほど長時間をかけることは珍しい。シャーシ内部は歯ブラシと筆で清掃、真空管はアルコールで洗浄、錆びて使用できないスピーカー端子のネジ等は新しい物と交換した。つまみは洗剤で洗った後、銅の部分をコンパウンドで錆取りしている。

回路内部の損傷は比較的少なかったが、スイッチ類は接触不良で殆どダメ。一度取り外して分解、接点を錆び取りしグリスを引いて再度組み立てている。部品交換は殆ど行っていない。一部の電解コンデンサとXキャパシタ、抵抗等5点ほどの交換である。

こうしてよみがえったSM-Q141の構成であるが、チューナーが2台組み込まれた、いわゆる2波AMステレオ対応機である。左のチューナーはMW/SW、右のチューナーはMW/FMであり、左右のチューナーはそれぞれ独立して動作する。左は6BE6-6BA6-12AX7,6E5の単純な構成であるが、6AV6を使用せずに12AX7が使われている。右はFM付きで高周波増幅と周波数変換を6AQ8を2本使用して行い、MWは左と同じ構成の6BE6-6BA6-12AX7,6E5で受信する。マジックアイ6E5は使用しているチューナーのみ点灯、どちらのチューナーを使用しているかの表示も兼ねている。もちろん、両方使用している場合は両方とも点灯する。中波ステレオ対応のため、中波を2波同時受信することも出来るが、FMとSWの同時受信なども出来る。中波を同時に2台のチューナーで受信したときに、IFが干渉することを嫌ったのか、片方のIFは455KHz、もう一方は463KHzになっている。FMは受信帯域が正式に決定する前であるため、80-108MHzである。当時から90-108MHzはテレビ放送に使用されていたため、普通の物は80-90MHzになっている場合が多いが、このセットはテレビの1-3chの音声も受信できる。ただし、80MHz以下の放送は受信できないため、現在使用するには不満がある。しかし、受信帯域を変更するのは改造になるため止めた。

アンプもステレオで6BQ5シングルで2本使用、12AX7でドライブする。電源は6CA4で整流。6BQ5のシングルであるため、せいぜい5Wが限度、外部入力はPHONO,TAPE,AUXの3系統、トーンコントロールとラウドネス付き、動作モードはSTEREO,MONO(L,R,L+R),及び左右の入れ替えが出来る。当時としては標準的な機能と思われるが、現在使用するにはマッチしない。

CDプレーヤー等をAUXに接続して聞くことも出来るため、とりあえず視聴してみたが音質はナロー気味である。低域は良く出るが高域は押さえ気味、NFBが弱いためか大音量で歪みっぽくなりHi-Fiとは言いにくい音である。しかし、真空管独特の音でCDのデジタル臭い音が消え、味はある。現在は使用せずにコレクションとして置いて有る。
 
 


 
【502】山水電気(Sansui・現:山水電気) APS-310型 1967年(昭和42年製)

使用真空管:6AQ8*3,6BA6*3,6BE6,6BL8,6BN8*2,6BM8*4,12AX7,6GE12A 16球式

受信周波数:525-1605KC(MW),76-90MC(FM)STEREO

定価:不明
 



 

山水電気の真空管式レシーバーAPS-310型。2年前にオークションで落札し、私が最近まで実用で使っていた物。前の持ち主も長年使っていたようで、調子は大変良く、美品。機器は大切に使い続けると、性能を維持できることが多い。酷使したり、押入にしまい込んではダメのようだ。

チューナー部はFM/AMでAMは6BE6(周波数変換)-6BA6(IF増幅)-0A91(ダイオード検波)-12AX7(低周波増幅)、FMは6AQ8(周波数変換)-6BA6(IF増幅)-6BA6(IF増幅)-6BA6(IF増幅)-6BN8*2(レシオ検波、低周波増幅)-12AX7(低周波増幅)になっており、切り替えを含めるとかなり複雑。AMはプラスチックの筒に入ったフェライトバーアンテナで高さ方向には調節できるが、向きは調整できない。FMアンテナは75Ωのターミナル。AMはそこそこ感度も良く、十分実用になる。FMは初段が双3極管構成のためゲインが低く、感度は悪い。ステレオ放送受信時はぜひ本格的な外部アンテナが欲しい。ただ、AFCのON/OFF、強制モノラルが出来るため、弱電界の場合や隣接局がある場合でも実用になる。チューニング表示は昔ながらのマジックアイであるが、6GE12Aが使われている。これは2つのマジックアイが独立して動く物で、片方は同調すると閉じ、もう片方はステレオ放送時に閉じる。長年交換しないで使用したと見られるが、何故か新品同様に明るい。6E5と蛍光体が違うのかも知れない。

アンプ部分は12AX7の後に続き、6AQ8(トーンコントロール)-6BM8*4(P-Pステレオ出力)の構成になっている。トーンコントロールはBASS,TREBLE独立、LOUDNESS付き。このほか、ボリウムコントロールとバランス調整が可能。出力は10W+10Wで、スピーカーは8Ωと16Ωに対応している。入力はPHONO,TAPE,TUNER,AUXの4系統あるから、CDも接続できる。音質は好みに依るところが大きいため一概に言いにくいが、癖も無く広域低域まで伸びた良い音であると思う。



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