【例04】日本ビクター蓄音機 5R-70の修理

 

今回は戦前のラジオを修理します。このラジオは昭和14年に発売されたスーパーヘテロダイン受信機で、大変貴重なラジオです。戦前のラジオは殆どが再生付きのストレート方式で、スーパーはまず出てきません。1000台に1台あるかないか、またはそれ以下ではないでしょうか。今回は幸運にも5R-70型が2台揃いましたので、欠点を補いつつオリジナルの5R-70を1台復元してみたいと思います。
 
 



【作業内容】

現在動作できる状態の物が1台、完全ジャンクが1台。動作する物のオリジナルと異なる部分を復元する。
 
 


 
【修理】
 
【1】まず良い方の物を正面から見ます。天板にも正面にも傷などがほとんどなく、布も大変良い状態で残っています。裏蓋も大変良好です。ただ、残念なことにつまみが1個失われています。木箱に塗られたニスは曇っていて、輝きを失い、セルロイドの窓も中が殆ど見えないくらいに曇っています。しかし、全体としては60年以上経過しているとは思えないくらい良い状態です。
 
 

【2】裏蓋を外して、セットの後ろを観察します。真空管はオリジナルの57,2A7,58,2A5,80で、修理されていますが改造されずに一応動作しています。最大の欠点はオリジナルのスピーカーが失われていることで、この辺はジャンクから外して修理します。
 
 

 

【3】こちらはジャンクの方です。写真ではよく分かりませんが、塗装が剥げてボロボロになっています。布も腐っているようです。写真では良く見えませんが、正面左側に昭和30年完成とマジックで書かれ、セルロイドの窓にも放送局の位置を示す線が書き込まれています。この木箱も補修するとそこそこ綺麗になりますが、今回は使いません。裏蓋もボロボロです。幸運にもつまみは3個揃っていますので、補修に使えます。
 
 

 

【4】ジャンクの方を後ろから見ます。真空管は全て取り外してありますが、付いていたのは6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80で、全て使用できました。これは戦後のラジオの標準球なので、補修用として保管しています。IFTも戦後の物に替えられています。真空管の配置も変更されていて、もはや復元は不可能に近いかも知れません。電源トランスとスピーカー、バリコンは当時のまま残っていますが、6.3V管のヒーターはどのようにして供給しているか不明です。電源トランスにも改造が入っているかも知れません。それにしてもどうしてこんなに改造されてしまったのでしょうか。元々スーパーなので、戦後に改造する必要性も無いはずなのですが。いずれにしろ、スピーカーとつまみだけを採用して、あとは使えないと見るしかなさそうです。手が空いたらあまり部品で5球スーパーを組んでみるのも良いでしょう。
 
 

 

【5】ジャンクのシャーシを裏から見てみます。やはり原型をとどめぬ程に改造されていて、欠品が多く元に戻せません。6.3V管のヒーターは電源トランスの2.5V巻き線を2つ直列にして供給しています。電圧は5Vになりますが、当時は適当でも良いと思ったのかも知れません。5R-70の補修に使えるのはスピーカーとトランス、つまみだけです。他、価値のある物は戦後のスーパーに使える真空管とIFTだけです。
 
 

 

【6】スピーカーとつまみを取り出します。大変汚れていますので筆と歯ブラシで綺麗に清掃します。つまみは相当使用されたようで、多少すり減っていますが問題はありません。スピーカーのコイルが切れていないかが心配したが、フィールドコイルは1500Ω、ボイスコイルは約3Ωを示し使えることが分かりました。
 
 

 

【7】ここのリンクにもある「ぼくらの真空管ラジオ」を書かれている吉村さんから、5R-70についての資料を頂きました。これは昭和14年10月の無線と実験のコピーで、回路図、定数、特性、外観、寸法に至るまで詳細に解説されています。修復に大変役立つ資料です。この資料をもとに復元作業を進めます。
 
 

 

【8】材料が整ったところで修理を開始します。まずはいつもの通りに外装を綺麗にします。今回のラジオは資料によると、胡桃材を使用しているようでなかなか高級です。塗りが厚いので、コンパウンド等で僅かに削り、曇りと汚れ取りを行います。これが実施前です。
 
 

 

【9】これが実施後。大変綺麗になりました。注意すべき点は塗りの厚い物に対してだけ行うこと、汚れが取れる程度にすること、出来る限り微粒子のコンパウンドを使用して、塗装の厚さを変えないよう汚れだけを除去することです。これがなかなか難しく、時間の掛かる作業です。
 
 


 

【10】次に修理する方のシャーシを取り出して、上から観察します。現状で動作していますから、重大な欠点は無いはずです。よく見ると配線にひび割れがあり、裸線が出ている部分があります。これは交換しなくてはなりません。









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