【例03】山中電機 6S-404の修理


ひさびさにST管5球スーパーを修理することにします。このラジオは戦後すぐに製造された山中電機の5球スーパーヘテロダイン受信機、庶民の憧れの受信機です。動作するようになると、現在のラジオとほぼ同等の性能を示し、暖かみのある良い音で鳴ってくれるはずです。アンティークラジオとしては比較的人気のある部類ですが、古いためmT管のラジオに比べて修理は難しくなります。 

回路構成は単純なマジックアイ付き5球スーパーです。球のラインナップは6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80HK,6E5で、戦後のラジオとしては大変標準的です。ただ、スピーカーにフィールドダイナミック型を使用している点が比較的珍しいでしょうか。現在のように良質の永久磁石が作れなかった頃の物です。

このラジオは部品取り程度という感覚で購入しましたが、部品が全て揃っており、程度も比較的良好、なにより現存しない山中電気製である事から、修理することにしました。





【故障内容】

電源を入れて使える状態ではない。動作未確認。


【推定原因】

故障内容等一切不明。

【故障の考え方】

この年代のラジオはきちんとレストアされた物以外絶対に電源を入れてはいけません。たとえ前の持ち主が動いたと言っても、電源を入れるのは避けるべきでしょう。製造から50年程度経過しており、複数の故障があると考えて当然です。一度解体してじっくりと観察し、危険な部分を検査、修理した後、動作確認と再修理という順序でなおしてきます。




【修理】

【1】まず正面から見ます。正面の窓はアクリルパネルですが、赤い塗料が付着しています。また木箱の塗装はしっかりしているようですが、ニスが曇って汚れており、いろいろと物を置いたのか天板には跡が残っています。よってアルコールとコンパウンドで処理して綺麗にすることにします。布は大変良い状態で残っていますから、これはこのまま使います。




【2】裏蓋を外して、セットの後ろを観察します。このラジオも電源コードの交換が必要です。固くなって所々裸線が露出しています。木箱の横に変な物が付いているのが目立ちます。蓑虫クリップでバリコンに接続されているようですが・・・・。




【3】横に付いていたのは日本短波同調器なる装置でした。これは日本短波放送が開局した時に取り付けられたと思われます。中にコイルとコンデンサが入っており、これをバリコンのOSC側と同調側に接続することにより、受信帯域を変更して短波を聞いていたのでしょうか。これは取り外す事にします。




【4】真空管を全て取り外します。6D6はトップグリットが付いていますから、グリットキャップを慎重に外します。トップグリットがグラグラしている時は不用意に外すとグリット端子まで外れて6D6がダメになることがあります。またST管を外すときは必ずベースを持って外すようにします。ガラス部分を持って外すと、ベースだけがラジオ側に残り球が抜けてくる事にもなりかねません。付いていた球は全てマツダ製でした。この事は一度も真空管を交換していない可能性を意味しています。6ZDH3Aと6WC5の頭が黒くなっているようです。また、6E5のターゲットも茶色くなっており、相当使い込まれた球のようです。




【5】シャーシを取り出します。出力トランスとスピーカーは木箱に付いていますから、この間をつなぐリード線はニッパーで切ってしまいます。多少のサビと汚れが有りますが、悪い状態ではありません。ブロック電解コンデンサの頭が多少円味を帯びています。これは膨らんでいると思われ、使うことは出来ません。とりあえず電解コンデンサの交換は決定です。




【6】シャーシを裏返して観察します。こちらも大変良い状態です。真ん中に見えるボリウムは交換された形跡が有ります。これでラジオの製造年を探る手がかりが一つ失われました。ボリウムには部品の製造年が書いてあることが多いからです。交換されたボリウムの半田付けは下手ですが、配線等は適切です。ボリウムの下に見える日本ケミコンの電解コンデンサは1958年製で、後から追加されたのでしょう。ブロック電解コンデンサに並列接続されています。この追加されたコンデンサとブロック電解コンデンサへの配線は後ほど外します。他の電解コンデンサは全てルビコン製で、全滅の模様です。青い部品は帝国通信工業(NOBLE)のコンデンサ、緑色は小林のペーパーコンです。これらは使えるかも知れません。抵抗は全てテレビアンでこれも多分大丈夫でしょう。これらは後で確認します。




【7】スピーカーを外します。テレビアンの1500Ωフィールドタイナミックスピーカーです。比較的新しいスピーカーの形をしていますが、フィールド型で古いタイプです。あまり大きくはありません。フィールドコイルとは普通磁石が入っている部分に巻いて有る大きなコイルで、永久磁石の代わりに電磁石として働きます。また電源のチョークを兼用しています。このコイルと出力トランスが断線していないかテスターで確認したところ、出力トランスの1次側が断線しています。これはこの年代のラジオによく見られる故障で、10台有れば3台程度は断線していますが、修理は結構厄介です。同じ大きさのトランスはまずありませんからネジ穴が合いませんし、巻き直すのはもっと大変だからです。とりあえず、出力トランスは交換することにします。フィールドコイルは無事でした。あとは綺麗に清掃します。




【8】木箱の内部を清掃します。天板の裏に貼って有る金属板はアンテナです。時々見られる形式ですが、比較的めずらしいものです。これもオリジナルでしょう。




【9】天板の様子です。大変汚れており拭いても綺麗にならないように見えますが、コンパウンドでニスを少し削れば大丈夫です。後で直すことにします。実は外観を綺麗にする事は大変重要な事です。汚いままだと正常に動作しても良い音でも、家族に認めてはもらえません。触っても汚くない、美しいアンティークと思わせる事が顰蹙かわすコツです。




【10】真空管を全て磨き終わりました。アルコールで洗浄しますが、この時ベースとバルブに無理な力を加えるとルーズベースになりますから注意して下さい。もしルーズベースになっている場合、軽微であればベースとガラスの間に瞬間接着剤をごく少量、3方向から垂らすとなんとかなります。また品番表示等が消えないように配慮する必要があります。磨いた真空管は他のラジオに挿して実働試験をします。全て使えましたが、マジックアイは殆ど光りませんでした。これは交換するしかないのですが、最近6E5は高いので、全く点灯しなくなるまで使うことにします。










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