【例09】松下電器産業 8A-1の修理


今回は終戦直後のラジオを修理します。このラジオは昭和21年に発売された松下電器最初のオールウェーブスーパーヘテロダイン受信機で、大変貴重なラジオです。戦前は短波放送の受信は禁止でしたが、戦争が終わりオールウェーブ受信機が作れるようになりました。真空管の数も多く、回路が複雑で損傷も激しいため、鳴るところまでいけるかどうか分かりませんし、仕事の都合でかなりの長期戦になりますがおつきあい下さい。なお、現物は松下電器歴史館(一般入場可能)にもあります。




【故障内容】

電源を入れて使える状態ではない。動作未確認。

【推定原因】

故障内容等一切不明。

【故障の考え方】


終戦直後のラジオで巨大なオイルペーパーコンデンサの様な物が使われています。そのまま電源を入れることは不可能です。回路も変更されている可能性があるので、内部と回路図を合わせながら修理していくことにします。




【修理】


【1】まず正面から見ます。かなり汚れていて傷も多いのですが、布は良い状態で残っています。木箱は狂ってはいませんが、接着剤が外れているところが有ります。




【2】裏蓋を外して、セットの後ろを観察します。真空管はオリジナルの回路では6D6,76,6C6,6D6,76,6C6,42,80ですが、混合管が6WC5に変更され、シールドケースが1本失われています。シールドケースは同型の手持ちがありますから大丈夫ですが、混合管周辺の回路がどうなっているかが心配です。裏蓋は失われてありません。




【3】シャーシを引き出します。多少汚れていますが、箱の中は綺麗な方だと思います。いつものように掃除機で清掃します。




【4】シャーシを上から観察します。配線が相当痛んでいるのと、大きなオイルコンデンサ(右上)2個のうち1つが外れてずれています。ねじは木箱の中に落ちていました。オイルコンデンサは電解コンデンサが出来なかった時代の産物ですが、使っている油が悪いためショートしていると推定されます。なお、この時代はPCBが出来る前ですから、有害物質の心配はありません。




【5】シールドケースを全て外してみます。真空管は混合回路の6C6が6WC5に変更されている以外はオリジナルです。ただ、真空管自体は数回交換されたようで、一番新しい物は昭和30年代半ばと見られます。問題は6WC5周辺で、発振の76が回路につながれて6WC5で混合しているのか、それとも76を切り離して6WC5で周波数変換しているのかです。後者の場合、回路が大幅に変わっている可能性が高くてやっかいです。




【6】つまみは左から音量、音質、バンド切り替えです。ロータリースイッチはオリジナルと見られますが、他は二つは交換されたと見られます。ロータリースイッチのつまみが延長されていますが、資材調達が困難な昭和20〜21年の設計・量産なのでやむを得ません。




【7】シャーシを裏から見ます。相当痛んでいるようですが、回路変更は6WC5のベースだけのようです。発振管の76も使われているように見えます。コンデンサには松下電器産業無線機器部と書いて有る物と、戦前の松下無線の名前と鷲のマークが付いている物が混在しています。これらはほぼ全滅と見られます。




【8】目盛板には深刻な問題があります。中波表示の部分が燃えて、電球が見えています。目盛版はセルロイド製の為、電球の熱に耐えられなかったか、電球が接触していたのでしょう。大変残念ですが、これは修正不可能です。受信周波数は550〜1500KC、3.5〜22MCで、下の方に松下電器産業無線機器部と英語で書いて有ります。




【9】バンド切替スイッチは複雑ですが、悪くなっているようには見えません。同調つまみには減速機構が付いていますが、あまりにも減速比が大きいため、中波の受信は大変そうです。




【10】めずらしく、セラミックコンデンサが使われています。ナショナル苗場と書いて有りますが・・・使えるでしょうか。









次頁へ
 

トップページへ戻る