【例06】松下電器産業 PS-54の修理

 

今回も大変貴重なラジオの修理をします。このラジオは昭和28年に発売されたスーパーヘテロダイン受信機ですが、国産メーカー品としては数少ないオールGT管ラジオです。日本のラジオは戦後スーパーヘテロダイン方式になり、ST管を使用して製造されましたが、当時アメリカ等では既にGT管からmT管へ移行している時期でした。その為、日本ではST管の時代が終わると即mT管へ移行し、メーカー品でGT管を使用したラジオは極端に数が少ないのです。
 


【故障内容】

 
不明。売り主は動作すると言っているが、電源を入れて確認できる状態ではない。
 
【推定原因】
 
故障内容等一切不明。
 
【故障の考え方】
 
この年代のラジオはきちんとレストアされた物以外絶対に電源を入れてはいけません。今回は前の持ち主が動くと言っていますが、回路を痛めないためにも、電源を入れるのは避けるべきでしょう。毎度のことですが、一度解体してじっくりと観察し、危険な部分を検査、修理した後、動作確認と再修理という順序でなおしてきます。
 



【修理】
 
【1】まず正面から見ます。天板に大きなひびが入っていますが、その他は汚れているだけで良い状態です。スピーカーがよく見える構造になっていますが、中に埃が積もっていますから取り除かなければなりません。
 

 

【2】裏蓋を外して、セットの後ろを観察します。真空管は左から12SA7GT/M,12SK7GT,12SQ7GT/M,35L6GT,35Z5GTです。12SK7GTはマツダに交換されたようですが、その他の球は松下製が残っています。/Mが付いている球は、松下が真空管を作り始めた頃の真空管で、/Mが付かない球と互換性があるようです。特性などは不明ですが、もしかすると性能が悪いのかも知れません。裏蓋は紙で出来ていますが悪くはありません。全体的に綺麗な方だと思います。
 
 

 

【3】底のネジを外してシャーシを引き出します。かなり汚れていますのでスピーカーの線を切断してシャーシを外します。キャピネットの内部に付着しているのは埃と、コンデンサから垂れた蝋ですから、ティシュペーパーとアルコールで除去する必要があります。
 
 

 

【4】シャーシを上から見ます。こちらも埃をかぶっています。幸い煙草のヤニなどで固まった埃ではないため筆と掃除機が有れば簡単に除去できます。フェライトバーアンテナが付いていますが、ゴムブッシュが固くなってグラグラと動きます。これを折らないように注意して作業します。
 
 

 

【5】シャーシを裏から見ます。大きな障害はなく比較的綺麗な方です。電源コードと電解コンデンサは交換する必要がありそうです。大きな丸い紙筒が電解コンデンサですが、私はこれを使う勇気はありません。膨らんではいませんが、全体的に汗ばんだように紙が変色していますし、錆も出ています。
 
 


 

【6】真空管を取り外してソケットと球をアルコールで磨きます。写真の如く綺麗になりましたが、マツダの球1本を除いて全てルーズベースです。応急処置としてガラスとベースの間に瞬間接着剤を2滴ほど流します。大体はこれでOKです。12SA7-GT/Mと12SQ7-GT/Mは相当使い込まれているようです。
 
 



 

【7】今回もキャビネットの補修から始めます。このラジオはベークライトのキャビネットにアクリル樹脂の目盛板が付いており、下の写真のように3つの部品に分解できました。当時は型技術が低かったため、スピーカーグリルと本体を一体成形できなかったようです。これが幸いして比較的容易に綺麗になりました。目盛板とスピーカーグリルは洗剤で水洗い、本体は回路図が貼ってあるため水洗いできませんから、アルコールとコンパウンドで丁寧に洗浄します。もちろん、スピーカーは外して埃を落とします。
 
 




 

【8】清掃後、再度組み立てたところです。焦げ茶色のキャビネットに輝きが戻ってきました。アメリカ的なスタイルで当時の憧れだったのではないでしょうか。
 
 




 

【9】内部はこんな感じです。大変綺麗になりました。写真では分からないかも知れませんが、天板にヒビが入っていますから、瞬間接着剤をつけて補強しておきます。ベークライトは割れるのが欠点なので、無理な力を加えないようにしなければなりません。スピーカーにはいつもの様にコネクタを取り付けます。
 
 



 

【10】次にシャーシの修理を行います。交換するブロック電解コンデンサの配線の行き先をよく見て、新しいコンデンサを取り付けます。このラジオはトランスレスですが、シャーシはアースからコンデンサで浮いています。よってシャーシ内にアース母線が張ってあるので、配線をしっかり見て、コンデンサのアース側をアース母線に接続します。幸い、回路図が付いていますから簡単ですが、アース線を見誤って変な配線をすると事故の元になります。新しいコンデンサを取り付けたら、古いコンデンサは撤去します。シャーシ上にブロックコンデンサがある場合は外観を保つために残しますが、今回はシャーシ内部なので外しても良いでしょう。
 
 


 



 

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