【例01】松下電器産業 RE-830の修理

 

このラジオは戦後のトランスレス受信機です。標準的な物としては中波のみの物が多いのですが、このラジオは割と高級モデルだった様で、MW/SW/FMの3バンド、2スピーカーです。ただしFMはMPX回路を内蔵していないため、モノラルでしか聞けません。しかし外観は大変綺麗ですし、受信周波数帯域も現在と同じですから、修理すると十分実用になります。購入したときは「動作する」と言われて買ったので、早速使ってみましたが、10分位でFMの音が小さくなり始め、更に1分ほどで全く動作しなくなりました。






【故障内容】

電源ON直後は動作良好。数分後に受信できなくなる。しばらく放置した後、再度電源を入れても動作しない。

【推定原因】

コンデンサ又は真空管の不良。

【故障の考え方】

一般に時間の経過と共に症状が出る故障は、しばらく放置すると直るものが多いようです。この場合はコンデンサの絶縁不良、抵抗の断線等により回路の動作がおかしくなり、どこかのコンデンサにチャージされて徐々に音が出なくなるという事が考えられます。ある程度暖まってくると突然受信不能になる場合は、真空管の電極構造に不良があることが疑われます。また、暖まると突然音が出なくなるのは半田付け部分の接触不良と言うこともあります。音が出なくなったときに叩いてみて、復旧する場合は真空管の不良か接触不良と思って進めます。

今回の場合は、症状が出た後再度電源を投入して動作しないので、上記とは別物です。この場合は最初の電源投入で、何かが完全に不良になったと考えるべきです。徐々に鳴らなくなったこと、再度電源を入れても動作しないことから、FM/SW/MWの共通回路に不良が発生していることは明らかです。従って不具合は整流から音声出力の間にあることになります。整流にはダイオードが使用されており、ダイオードが10分程度の時間で徐々に不良になるということは考えられません。従って電源の平滑か、音声出力かに絞られます。

ここで、電源コンセントが外れていることを再度確認し、平滑用のブロックケミコンを触ってみます。すると熱くて触れなくなっています。したがって、平滑用のブロックコンデンサの漏れ電流が大きく、徐々に電源電圧が低下、ついにパンクしたため動作しなくなったと判断できます。
 
 


 
【修理】

【1】まず電源コンセントが外れていることを再度確認します。トランスレスは電灯線と回路が絶縁されていないため、下手に触ると感電します。最初はツマミ類を丁寧に外します。無理にこじったりするとツマミが割れてしまいますから注意が必要です。
 
 

 

【2】次にダイヤル指針を糸から外します。下の写真を見てください。ダイヤル指針が裏から見える位置になるようにダイヤルを回し、ねじをゆるめて指針をはずします。東芝のラジオでは接着剤で固定されていることが多いので、糸を切らないように丁寧に金具からはずします。元に戻せるよう、十分に観察することが必要です。
 
 

 

【3】ここで、シャーシを箱から取り出します。この時、何か引っかかっている様な感じがするので有れば、他に固定されている物が無いか再度確認して、ゆっくり取り出します。シャーシの清掃をするために真空管を全て外しました。真空管がどの位置に付いていたかを覚えておきます。シャーシは乾いた歯ブラシ、書道用の筆(未使用の物)と掃除機で埃を取ります。真空管が汚れている場合は消毒用のアルコールをティシュペーパーに付けて光るように磨きます。捺印が消えないように注意が必要です。下の写真は清掃後です。一片の埃も許さないと言う気持ちで磨いています。不良の部品は写真右端の銀色の円筒状の部品です。
 
 

 

【4】いよいよ問題の電解コンデンサ部分を修理します。シャーシをひっくり返して、平らになるように下に台としてティシュの箱を置きます。問題の部分は下の写真で一番右側のボリウムの上になります。暗くて分かりずらいのですが、円盤状のダイオードSD-1が見えます。電解コンデンサの足は中継端子にも使われているようです。一つの端子に何本も線が付いています。この電解コンデンサは回路から完全に切り離さなければいけません。よって新たに中継端子を作る必要があります。
 
 

 

【5】ブロック電解コンデンサの定格はコンデンサ本体の表示より40+40+40uF150WVです。これは40uF150WVの物が3個入っているという事です。150WVというのはworking voltageの略で動作電圧です。現在では単に150Vと表示します。ここで、問題は同じコンデンサは手に入らないという事でしょう。仕方がないので47uF160Vのコンデンサを3個使います。このラジオはダイオード整流なので、コンデンサは若干大きめでも構いませんが、ダイオードのサージ電流を考慮して100uF160Vを使うのはやめます。整流管を使用しているセットではオリジナルの容量より1つ小さめの容量とします。これは整流管を痛めないためです。現在の電解コンデンサはこの時代の物よりインピーダンスが低くなっているので、小さな容量でも十分です。シャーシの足がねじ止めされていることを利用して、ここに3Pのラグ端子を付け中継端子とし、そこにコンデンサを取り付けて必要な配線を行います。他の2個はブロック電解コンデンサの足が中継端子になっていなかったため、それぞれ元々接続されているところへ電解コンデンサを取り付けます。そして元のブロック電解コンデンサへの配線は全て外します。配線の時、他のリードやシャートと接触しない様に、適当に絶縁チューブを使います。また抵抗等、熱くなる部品と電解コンデンサが接触しないように注意します。図の茶色の抵抗は10Ω1Wの抵抗ですが、これも黒く変色していずれ断線しそうなのでついでに交換しました。
 
 

 

【6】一応これで修理は完了したはずです。誤配線が無いかどうかを十分確認します。そして元通りに真空管を挿すのですが、下の写真のような治具を使ってmT管の足を正しいピッチに修正してから、ソケットへ挿入します。
 
 

 

【7】下の写真のようにゆっくりと挿してなおします。
 
 

 

【8】シャーシのまま、一度鳴らしてOKであれば、元通りに組み込み、指針を取り付けます。実際に放送を受信して、目盛りと針が合う位置に取り付けます。不良のブロック電解コンデンサは残して有ります。これは外観をそのままに保つためです。シャーシには修理した日付と、ボリウムに書かれていた製造年より、このラジオの製造年をラベルに印刷して貼ります。
 
 

 

【9】つまみを元通り取り付けて完成です。ローレットボリウム(軸にギザギザが付いている物)でツマミが入りにくかったり外れたりするときは、先の割れている部分の間隔をドライバーやラジオペンチ等で調整します。
 
 


 



 

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