【例13】松下電器産業 T14-Z1Mの修理

 

今回は番外編としてラジオから離れ、昭和30年代半ばのテレビを修理することにします。この機械はコレクターの方からお譲りいただいた物で、外観は清掃済みで大変良好です。内部は手つかず、通電可能との事ですので、通電から修理をすすめます。
 
 


 
【故障内容】
 
水平同期流れ。
 
【推定原因】
 
映像増幅回路のゲイン不足、同期分離回路の不良、又は水平発振回路、AFC部の不良等。
 
【故障の考え方】
 
水平同期が流れるのは複数の原因が考えられます。まずは映像増幅回路のゲイン不足による、同期分離のミス。または、同期分離回路の不良による同期流れ。あるいは同期が正常に分離されていたとしても、水平発振回路の異常により、AFCの引き込み範囲内に水平発振周波数が入らない、またはAFCの不良により水平周波数にロック出来ない等、色々と考えられます。修理はこの辺の回路から点検していきます。

【注意】

・通常、テレビの修理は受信機に関する高度な知識が必要です。テレビのブラウン管には10〜32KVの電圧が加わっており、大変危険です。電源を切ってもブラウン管には数日程度電圧が残っていますので、素人修理は絶対にしないで下さい。

・真空管テレビは殆どがトランスレス方式です。従って回路全体が高圧充電部であり、触り方によっては命に関わります。回路部品に触れる場合や、機械内部に手を入れる場合は必ずコンセントを抜く必要があります。

・水平同期流れの場合、水平周波数が15.734KHzからずれているわけですが、水平周波数が下がっている場合は、ブラウン管のアノードに印可する高圧が上昇しています。これは、高圧が偏向ヨークの水平巻線に発生するフライバックパルスから生成しているためです。従って十分な注意が必要です。

・高圧整流管は現在の安全基準を超えるX線を放射しています。したがって動作中は絶対にシールドを外したり、手を近づけてはいけません。また動作中のフライバックトランス、偏向コイルに触ってはいけません。

【準備】

・回路図(回路図がないテレビの修理は時間がかかり困難です。)  回路図はこちら(Acrobat Readerが必要です。)

・100MHz以上の帯域があるオシロスコープ、及び100:1高電圧プローブ

・NTSC方式信号発生器(クロスハッチ、モノスコープパターン)

オシロスコープ無しでテレビの修理をするのはほぼ不可能です。できればデジタルストレージオシロでTV同期付きがあればベストです。オシロ、回路図無しでも時間をかければ出来ないことはありませんが、適切に修理が出来ず無駄な作業が増えます。信号発生器は必要に応じて使用します。NTSCでなくても白黒の物で構いません。
 
 


 
【修理】

【1】正面から見ます。ご覧のように磨き上げられてとても綺麗なテレビです。とても40年経っているとは思えません。鉄箱に入った14インチ白黒テレビですが、ブラウン管が丸いためとガラスが厚いため、実質現在の12インチと同じ大きさです。また、チャンネルは当然の事ながら12chまでしかありません。UHFが付くのは昭和40年頃からです。古い物では6chや11chまでのテレビも存在します。なお、いつもの通り作業室が散らかっているのは御愛嬌ですので・・・見苦しいのですがお許しを。


 

【2】前の持ち主が「電源を入れて相当長時間放置したが直らない。」と言っていましたので、今回は電源を入れてみることにします。まったく電源を入れたことがないテレビで有れば、いきなりの通電は無理ですから、ラジオの修理に準じた点検が必要です。結果はご覧の通り映像が水平に流れています。この状態を「同期流れ」或いは「同期が立たない」と言います。キーという音が大きいことから水平周波数が低めになっていることが予想され、危険な状態です。映像信号が音声側に漏れてバズ音が聞こえますが、多少は仕方有りません。音声は一応正常に出ているようです。確認後、すばやく電源を切ります。
 
 

 

【3】コンセントを抜いてから内部を確認します。まず目に付くのは水平出力管25E5が日立製であること、松下のテレビなら松下製が入っているはずですから交換されたのでしょうか。また手前の灰色の電解コンデンサが最近のマルコン電子製が付いています。ここはリモコン回路が付くはずですが、この機種ではあいているところです。回路が触られているのでしょうか。
 
 

 

【4】回路で危険な部分を確認しておきます。ブラウン管についている吸盤のような物、これを「アノードパッド」と言います。ここがブラウン管の陽極電圧の供給口です。ここは絶対にめくったりしてはけいません。ブラウン管はアノードと外部導電膜との間にコンデンサを形成していますので、電源を切っても電圧が残っています。動作中は手を近づけてもいけません。小型の白黒テレビですから概ね10KV程度かかっていると見られます。現在の大型カラーテレビの場合は30KVを超えていますので大変危険です。ここを外す場合は外し方があります。ブラウン管の外側に塗られている物が外部導電膜で、高圧のアース側になります。ここを編組線で回路のGNDに接続し、ブラウン管を接地します。つまり接地線が外れるとブラウン管の外部導電膜も高圧側となり、大変恐ろしいことになります。(実際、接地線が外れると、とても怖いです・・・言葉になりません。)
 
 

 

【5】これが偏向ヨークです。見えているコイルは垂直偏向コイル、更にブラウン管側にフェライトコアがあり、内部に水平偏向コイルが入っています。コイルは動作中高温になりますし、コイルには鋸波電流が高速かつ大電流で流れているため、高い電圧が発生しています。動作中にコイルに触ると確実に感電しますから危険です。偏向コイルは精密に調整されていますので、絶対にネジを緩めたり外したりしないようにします。白黒テレビは比較的簡単ですが、カラーテレビの偏向コイルを外すと、素人ではまず元に戻せません。
 
 

 

【6】これがフライバックトランスでテレビ技術の特殊部分です。アノードに加える高電圧を作る回路で、水平偏向コイルに発生した高電圧を更に昇圧し、整流してアノードに加速電圧として加えます。下のコイル部分がフライバックトランス本体、中をフェライトコアが通っています。上のガラス管が高圧製流管1X2Bです。この球は高電圧、低電流の特殊整流管です。コロナ放電を防ぐためベースにアクリルのコロナリングが付けられています。このベースは先ほどのアノードパッドと接続されているので、電源が切れた状態でも真空管を引き抜いたりしては行けません。真空管を抜く場合はブラウン管をディスチャージしてからにします。またこの真空管はX線を放射します。従って動作中に手を近づけたり、遮蔽板を外したまま動作させてはいけません。(今は撮影のため遮蔽板を外した状態。)このフライバックトランスは現在の物とは異なり、空気中にコイルが露出しています・・・大丈夫なのでしょうか。
 
 

 

【7】修理のため、セットを横倒しにします。このテレビは底面から回路の修理が出来ます。見ますと1カ所を除いて部品交換された形跡はありません。電解コンデンサが多数見えますが、ブロック電解コンデンサに外観で分かる不具合はありません。単品の電解コンデンサにいくつか寿命を迎えてひび割れている物が見られる程度で、かなり綺麗な方です。
 
 

 

【8】交換されていると思われる電解コンデンサ。金具が新しいようですし、変なところに取り付けられています。物も最近の物のように見えます・・・。
 
 

 

【9】電解コンデンサから出た線は、古い電解コンデンサに並列に接続されていました。時々見かけますが、古い電解コンデンサに新しい物を並列接続すると、一端は良くなっても後から不良になります。抵抗もこんがり狐色になっていますし、抵抗横の電解コンデンサも膨らんで青いゴムが出ていますから、電源部分は補修が必要です。
 
 

 

【10】故障部分の特定に入ります。同期が流れているため、同期分離と水平発振、AFC部分の動作を見ていきます。現在のテレビはビデオ信号復調後に同期分離を行いますが、真空管テレビでは復調後、ビデオ出力まで信号を増幅してから同期分離を行うのが普通です。このテレビもビデオ増幅の終段V6 12BY7Aのプレートから同期分離に入ります。まず12BY7Aのプレート電圧波形を確認します。同期信号の間に映像信号が出ていますから、チューナーからIF、ビデオ出力までは仮にも動作していると言うことです。同期の先端はほぼ100Vです。(オシロは2V/div、プローブ10:1で20V/div、ノンストレージ)
 
 






 
 

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