【例12】松下電器産業 UW-115の修理


今回は香川県の方から依頼された電池管ポータブルラジオの修理を行います。このラジオはトランジスタラジオが普及する前の製品で、電池で真空管ラジオを動かすという、今から考えればある意味で凄い製品です。電池管ポータブルラジオは消費電力を低く抑えるように設計されているとはいえ、真空管方式のためトランジスタの消費電力に比べれば遙かに大食いです。そのため電池代が高く、使い込まれた製品はまずありません。しかし、部品が詰まっていること、スイッチを含む機構部品が特殊である面、非常に直しにくい物です。





【故障内容】

電源コード欠品、及び鳴りが悪いとのこと。

【推定原因】

調子が悪いが鳴るというのは、致命的な欠陥は無いと考えられますが、鳴ったのは10年前のようですから現在どうなっているかは開けてみないと分かりません。電池管の場合は発熱も小さく電圧も低いため、どこかが焼けていると言うことは比較的少なく、全体的に部品が劣化していることが考えられます。

【故障の考え方】

電池管ラジオは電圧が低いため、いきなり電源をいれても事故が起こる可能性は低いと考えられます。ただし、下手にどこかが接触したりしている場合は、あっという間に真空管のヒーターが切れてダメになってしまいます。やはり入念に点検してから電源を入れるに越したことはありません。




【修理】


【1】まず正面から見ます。多少痛んではいますが、清掃してから発送して頂いたため、かなり綺麗です。MW専用の物ですから、ポータブルとしては直しやすい部類です。




【2】裏蓋を外して、セットの後ろを観察します。真空管は左から1AB6/DK-96,1AJ4/DF-96,3Y4/DL-97,1AH5/DAF-96で、後ろに1AJ4/DF-96が1本隠れています。高周波増幅付の5球式で、普通のラジオなら整流管がついて6球式といったところ、ポータブルとしてはかなり高級品です。しかし、電池管は性能が低いため、多分普通の5球スーパーにも及ばないでしょう。真空管は米国系ではなく、松下得意の欧州系の球でまとめられています。シャーシ下にB電池BL-M145を、スピーカー横にA電池UM-1(単1電池)を入れます。BL-M145は真空管のB電源用67.5Vですが、製造中止で入手出来ません。ラジオ用の67.5Vの電池で現在でも残っている物は145ですが、これは大きすぎてこのラジオには使えません。




【3】シャーシ底の紙の覆いを外すと、回路が見えます。まず目に付くのは大きな電解コンデンサの中身が吹き出していることです。これは交換しないと飛んでくるかも知れません。他、カラーコードの入ったソリッド抵抗が多数見えますが、これは曲者です。一般にソリッド抵抗は古くなると抵抗値が増大する傾向にあります。これを多く使った古いトランジスタラジオがありますが、徐々に鳴らなくなるのは、抵抗値が大きくなっていくのが原因の一つです。




【4】シャーシを横から見ます。部品と部品が折り重なるように配置されています。ここがポータブルラジオのいやなところで、悪い部品が分かっても簡単には外せないのです。電解コンデンサを外すには横にあるチタコン等を外さないと無理です。




【5】電源側を見ます。このラジオはAC電源を供給できるように設計されており、電池とACの切替スイッチがあります。この後ろにも電解コンデンサが付いていますが、これも見事に中身が吹き出しています。まずはこれらのコンデンサを交換してから火入れ、悪いところを直していくことにします。




【6】まずは出力管下の電解コンデンサを交換します。コンデンサは100uF16Vでしたので同じ物を取り付けましたが、大きさが小さいので取り付けは簡単です。むしろ外す時が問題で、周囲の部品を焼かないように慎重に作業します。




【7】こちらの電解コンデンサも100uF16Vです。抵抗はビニールテープで巻かれていますが、これは元々こうなっているのだと思います。この電解コンデンサを外すのは至難の業です。




【8】1時間かかって2個のコンデンサを交換しました。結局、折り重なる部品を外してかき分けて・・・。他を焼かないようにするのは大変です。青いコンデンサが新しい部品ですが、小さいので助かります。元と同じサイズなら、まず上の部品を全部外さない限り取り付けられなでしょう。




【9】とりあえず見苦しいところは交換しましたので、安定化電源を67.5Vに設定しB電池の代わりにし、A電池は単一電池を入れて動作確認を行います。無事動作しましたが、音が小さくかなり歪んでいますから他にも不良部品があるようです。




【10】使用されているソリッド抵抗を検査します。この抵抗は断線することはまず有りませんが、時間と共に抵抗値が増大していきます。カーボン抵抗や巻線抵抗は抵抗値が安定していますが、断線することが多いようです。金属皮膜型は信頼性が良いのですが高価です。写真は4.7MΩ抵抗をテスタで測定したところです。表示は6.26MΩすから33%上昇しています。こういう部品が多数出てきますと、次第に音が小さくなり鳴らなくなります。










次頁へ
 

トップページへ戻る