ラジオ展示室「戦後ST管スーパー」

戦後、昭和25年頃からは主にスーパーヘテロダイン方式のラジオが生産されるようになり、ストレート方式(並3、並4等)は次第に姿を消します。当然、使用される真空管もスーパー用となり、使われる真空管もほぼ決まってきます。この頃から概ね6WC5,6D6,6ZDH3A,6ZP1,80BKというような構成が多く、出力管と整流管のみが異なる場合が多くなりました。昭和30年を過ぎるとmT管の時代となり、昭和35年前後からはトランスレスが主流になります。戦後のラジオは、昭和25〜30年頃のものが豪華で比較的人気があり、市場にもよく出てきますが、実は昭和25年以前のスーパーヘテロダイン受信機が貴重です。これはなかなか出てきません。

ここでは昭和25年以降のST管スーパーヘテロダイン受信機を写真とともに紹介します。ここに紹介するものはすべて修理清掃済みの完動品です。
 



【201】東京芝浦電気(Toshiba/マツダ・現:東芝) 612A型 1952年(昭和27年)

使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:不明




 

このラジオは私が初めて手にしたST管使用のラジオ。1990年頃に5000円で購入した気がする。入手した時、箱は白く汚れてボロボロでシャーシは錆だらけ、布は腐ってほとんど残っておらず、球も使えないか付いていないかで全滅。今思うと非常に高い買い物だった。しかし、当時mT管のラジオを数台しか持っていない私にとっては、珍しさもあり買ってしまった。
 

箱はアルコールでクリーニングの後、スプレー式のニスで補修、シャーシの錆はブラシでできる限り落とし、真空管を取り付けた。今考えるとニスを塗ったのは大失敗である、汚れが残ったままになり、オリジナルの塗装も失ってしまった。スピーカーの布は薄いカーテン地の端切れを購入して交換、つまみは新規に購入した物を取り付けている。内部の電解コンデンサは配線を外してあり使用していない。シャーシ内部で新しい電解コンデンサが働いている。また、リード線等も当時と同じ色の物と交換している。約10年間順調に動作していたが、1999年にOPTが断線し、OPTも交換した。修理はできるだけ原型を変えないように注意しているが、ここまで状態が悪いと、既に手遅れでどうにもならない。
 
肝心の中身は、上記真空管を使用した何の変哲もないマジックアイ付き5球スーパー。STANDARD BROADCASTの表示と、扇形のダイヤルが古さを感じる。スピーカーは珍しいフィールドダイナミック型を使用。音もなかなか良い。42を使用している事、マジックアイが付いている事を考えると、当時の高級品だと思われる。現在、6D6がエミ減気味で感度が良くない。6D6は大量に予備を持っているし、購入しても安いため、交換しても良いが、今後を考えて実用に耐えなくなるまで使うことにしている。また6E5も暗いが、最近高くなったのでギリギリまで我慢している。
 
真空管は左から6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK。6D6はシールドケース付き。上に付いているのは6E5。東芝は80BKを作らず80HKを作っていたようだが、このラジオの銘板プレートには80BKとあり、80BKがオリジナル。

 



【202】松下電器産業(National) AS-350型 1952年(昭和27年)
 
使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK
 
受信周波数:525-1605KC(MW)/5-28MC(SW)
 
定価:18800円(発売当時)
 
 


俗に言うオールウェーブ受信機の初期の物。戦前は短波放送の受信が禁止されていたが、戦後に解禁され、各社とも短波付きのラジオを製造した。写真の通り非常に保存が良い。今まで同型ラジオをインターネットオークションで7台程度と、ここのリンクにもある「日本の古いラジオ」で1台、大阪の販売店スーパービデオで1台、そして私が手放した1台の合計10台以上見ているが、これほど良いものはない。私が1台所有しているから、最低11台は現存していることになる。同一機種で11台というのは多い方だと思うのだが、よほど売れたのか、まだ相当数残存していると考えられる。

実はこの受信機、約12年前に購入した物は、箱がぼろぼろでつまみが1個とれて無くなっていたが、内部は動作良好、錆もほとんどなかった。で、最近買った物は箱が超美品でつまみもオリジナル、ただシャーシはIFTなどが交換されていて調子が良くない。ということで2台を混ぜて完全復活したのがこのラジオである。

中身はただの5球スーパー。ただし短波を意識しているのか、感度は非常によい。3m以上の長いアンテナをつけると局発を拾って発振してしまうこともある。雑音の原因になるので、もう少し感度を抑えても良いようだ。マジックアイは付いていない。スピーカーはフィールドダイナミック型、音は良い。オールウェーブなら6E5を付けて欲しいところだが、残念ながら付いていない。出力管は42を使用。42を付けるなら6ZP1に6E5付きの方が良かったかも。

デザインは好みが分かれるが、私は好きではない。刑務所?を連想させる。しかし、当時のカタログによると、「テレビスクリーンを思わせる最新型ダイヤル、感度と音色の良さはオールウエーブ界の傑作。」とある。真空管は左から6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK。6D6と6ZDH3Aはシールドケース付き。
 



【203】八歐無線(GENERAL・現:富士通ゼネラル) 5S-20型 1952年(昭和27年)
 
使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK
 
受信周波数:525-1605KC

定価:12900円(発売当時)

 



八欧無線(現・富士通ゼネラル)の真空管ラジオ。2000年に8000円程度で購入した。外観は非常に綺麗で保存状態が良く、内部もオリジナルを保っている。ただし電源コードと一部CR類、真空管は交換している。最近まで室内で使っていたと思われ、物置や納屋にあった物ではないようだ。
このラジオは完動品という事で購入したが、ガサガサいってまともに受信できない。接触不良修理や部品交換でOKになった。選択度も感度もあまり良くない。まだどこか悪いのか、それとも元々この程度か・・・。感度はギリギリ合格点というところ。National AS-350に比べるとかなり落ちる。

スピーカーはパーマネントダイナミック型、現在と同じ方式のもの。ただしマグネットはアルニコマグネット。現在、アルニコは非常に高価なため、現在の機器内蔵用スピーカーの多くはフェライトマグネットを使っている。真空管は左から6WC5,6D6,6ZDH3A,42.80BK。文字が消えた真空管はベースに品名ラベルを貼ってある。またシャーシには整理のため、赤い文字のラベルで修理調整年月日、黒字のラベルで製造年を貼ってある。

内部の部品に製造年を示す番号がないので、製造年は不明だったが、「ラジオ工房」の内尾様に教えて頂いた。ありがとうございました。
 
 


 
【204】松下電器産業(National) BX-110型 1953年(昭和28年)
 
使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,6ZP1,12FK,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:13800円
 



これもマツダ612Aとよく似たデザインのラジオ。扇型のダイヤルが古い。このラジオも私が入手したときは布がボロボロ、殆ど残っていなかったので、マツダ612Aと同じ布を使用して補修している。整流管は12FKがオリジナルだが、12FKは数が少ないため、ほぼ同等の80HKを取り付けている。出力管は私が持っているラジオでは数少ない6ZP1を使用、当時の普及品かも知れないが、マジックアイが付いているので、格安では無いかも知れない。スピーカーはパーマネントタイプ。
私は修理する時にスピーカーコードの途中にコネクタを付ける事にしている。一種の改造になるかも知れないが、簡単に元に戻せるし、修理の時に便利である。真空管ラジオは時々故障する。その際、シャーシを引き出すが、スピーカーはネジ止めされているため、ネジを外すか半田を外す必要があり、めんどうである。スピーカーコードにコネクタを付けていると、簡単に切り離して修理できる。

真空管は左から6WC5,6D6,6ZDH3A,6ZP1,12FK。6D6はシールドケース入り、12FKの替わりに80HKを使用。上に付いているのは6E5。
 
 


 
【205】早川電機工業(SHARP・現:シャープ) RS-350型 1953年(昭和28年)
 
使用真空管:6D6,6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:18000円(発売当時)
 



早川電機工業、シャープ電機(現・シャープ)の真空管ラジオ。最近入手した。当時の最高級品と思われる。このラジオはとにかく重い。木が厚くて箱だけで相当な重さがある。部品取用として購入したが、中を見ると6球スーパーであり早速修理した。入手した時、箱は汚れてボロボロ、油汚れが凄かったため、エチルアルコールで処理して汚れを落とした。前面のアクリルパネルは取り外して洗剤で水洗いした後、コンパウンドでキズと曇りを取り、シャープのエンブレムも七宝焼きなので、コンパウンドで磨いて輝きを取り戻した。布はアルコールで汚れを落とした後、ファブリーズで臭いを取った。修理中に箱の内側に消えかけた「昭和28年」のスタンプ表示を見つけ、この製品は昭和28年製である事がわかる。
入手時、内部もひどい状態だった。球のシールドケースは白く錆びていたため、磨いてOKになった。トランスの絶縁と配線の外れを確認して電源を入れたところ、凄まじい雑音が発生している。調べるとボリウムがダメになっている。同じボリウムは入手不可能のため、ボリウムを分解して内部を清掃、ガリなどは無くなった。同様にスイッチ類も清掃、サビ取り。配線の殆どと、コンデンサ類も一部交換した。

こうしてよみがえったラジオ、高周波増幅を6D6で行ってから、周波数変換を6WC5で行う構造になっている。一般の5球スーパーに比べると、約30dB程度ゲインが大きく、感度と安定度が大変優れている。5球スーパーでは受信中にラジオのアンテナ線に触ると音量が上がるが、このラジオではアンテナ線に触っても音量が殆ど変わらず、マジックアイも完全に閉じたままである。AVCが大変良く効いているらしい。ローカル局はアンテナ線を外してもガンガン鳴るし、夜間の遠距離受信も5球スーパーに比べると非常に良い。感度はPLL受信機ICF-7600D等と比較しても遜色ないのではと思われるほど。整流管は80が付いている。高周波増幅を付けているためか、80BKでは足りないようだ。性能は良いが、かなり大食いである。

真空管は左から6D6,6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80。6D6と6ZDH3Aはシールドケース入り。6WC5の真上に付いているのは6E5。
 
 


 
【206】松下電器産業(National) コンゴー CF-610型 1956年(昭和31年)
 
使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,6V6GT,80K,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:17900円(発売当時)
 



松下製、Hi-Fiラジオ。選択度を切り替えるスイッチが付いており、帯域幅を広くして高音質を狙うか、音質を落としてでも選択度を上げるか、切り替えることが出来る。またトーンコントロール切り替えも付いている。mT管スーパーには良くある機能だがST管ラジオでHi-Fi仕様なのは珍しい。このラジオは箱もスピーカーも特大で、驚くほど良い音がする。パイロットランプも派手で合計8個も付いている。ダイヤル灯が2個と、トーンコントロール表示が1〜4までの4個、Hi-Fi/PHONOの表示で2個使用している。帯域切り替えを広帯域側にするとHi-Fiランプが光る。

出力管は42に替わり6V6GTが使用されており、高出力になっている。ラジオといえば42,6ZP1か6AR5が相場で、6V6GTや6AQ5は普通使わないのだが、Hi-Fiを意識しているのか、42が時代遅れになったのか。6V6GTを使ったおかげで整流管も80Kを使う事になったらしい。当時としてはかなり高い製品だったと思われる。

このラジオは入手した時パイロットランプの配線がボロボロになって裸線がむき出しになっていた。この頃の松下のラジオは黄色と緑の配線がボロボロになる傾向がある。同一の太さと色の線にすべて交換した。またパイロットランプもすべて交換した。また、このラジオを維持するために6V6GTを購入するハメになった。私はラジオ一筋で真空管アンプはいじらないため、6V6GTは持っていなかったが、ソビエト製を1本380円で入手。10本予備を持っている。

真空管は左から6WC5,6D6,6ZDH3A,6V6GT。6V6GTの奥に80K、6WC5の真上に6E5。6D6と6ZDH3Aはシールドケース付き。
 
 


 
【207】素人組立品 1952年(昭和27年)

使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80K,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:無し
 



昭和27年に素人かラジオ店が部品を買い集めて作った5球スーパーラジオ。手作り品は珍しいものではなく、良く出てくる。メーカー品と違い、修理に手間がかかる事が多く、機構部品の寸法などがきちんと合っていない事が多いため、見栄えがよろしくない。また、回路が間違っていたり、部品の仕様がちぐはぐだったりするから、今から真空管ラジオを買うなら、メーカー品を修理したほうが無難だと思う。ただ、このラジオは完動品で、新品のマジックアイを付けてくれて5000円だったため、思わず購入した。が、やはり完動ではなかった。NHK第一放送が受信できない、ハムがすさまじい、OPTがシャーシ内部で宙ぶらりん。一応動作はしているが、危なっかしい。

最初から分かっていたが、スピーカーは断線したのだろうか。1970年頃テレビに使われたと思われる楕円型のものが付いていたため、通常の円型のものと交換。ジャンク箱を探したところ、SONYと大きく書かれたスピーカーがあったためこれを使用。真空管ラジオにSONYのスピーカーというのは全く似合わない。また、電解コンデンサは容量抜けで、中身がはみ出しているため全部交換、いくらトラッキング調整をしても600KHz以下が発振停止で受信できないため、6WC5も交換。再調してOKになった。OPTはシャーシ上の穴を利用して固定。このOPTは昭和35年頃交換された物らしい。オリジナルはスピーカーについていたので、スピーカーと一緒に失われたと思われる。その他色々と10時間程度かかって修理したが、調子よく動いている。

真空管は左から6D6,6ZDH3A,42,80BK。6D6の奥に6WC5が隠れている。上に付いているのは6E5。6D6と6ZDH3Aにはシールドケースが付くようになっているが、6D6のシールドケースしか残っていない。
 
 


 
【208】松下電器産業(National) AS-450型 1954年(昭和29年)

使用真空管:6D6,6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK,6E5

受信周波数:525-1605KC(MW)/2.5-7.5MC(SW)/7.5-22MC(SW)

定価:30400円(発売当時)
 


 

このページにあるNational AS-350の上位モデル。オールウェーブ受信機で、3バンド高周波増幅付きの最高級モデル。AS-350は短波の受信周波数が5〜28MHzになっているが、このセットは2.5〜7.5MHzと7.5〜22MHzになっている。20MHz以上は太陽黒点の多い時期しか遠くまで届かないため、普通は放送局数が少ない。よって、22MHz以上が受信できるより、5MHz以下が受信できる方が実用的である。また、短波の受信帯域が2分割されているため、チューニングがしやすくなっている。

昭和27〜29年にかけて生産されたモデルであるが、あまりにも高価すぎて売れなかったのか比較的珍しい。ただ、高かったラジオは大切にされる傾向があるのも確かで、良い物に出会える可能性もある。このラジオも入手したときから動作していた。前の持ち主が手入れしてくれたようで、汚れも比較的少なかった。入手後、箱は分解掃除、数点の部品を交換と再調整、シャーシを磨き上げた。布も大変良い状態で残っており、物置等に放置されていたとは思えない。ただ、残念なことに前面右下の化粧合板がはげている。もう1台、ジャンクのAS-450を補修用として持っているので、これを使って暇な時にでも修理しようと思っている。

中身は高周波増幅とマジックアイが付いた6球+アイ付きスーパー。感度は非常に良く、オールウェーブ受信機としては大変実用的。中波放送も安定して受信できる。マジックアイはカタログでは6G5が付いている事になっているが、このセットには6E5が付いている。回路図も6E5になっているので仕様変更があったようだ。スピーカーは比較的小型の6吋フィールドダイナミック型で、低域が出にくいが聞きにくい音ではない。いわゆるHi-Fi仕様ではないが、3段切替のトーンコントロールが付いており、PU入力もある。珍しいのはプレーヤー専用の電源出力コンセントが本体背面に付いていることで、この電源はラジオの切替をPUにしたときに出力される。気に入らないのはとても重いこと。シャーシが重いのか、厚い木箱のせいか、非常に重く持ち上げるのにも苦労する。

真空管は左から6D6,6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80K。上に付いているのは6E5。

 


 
【209】山中電機(TELEVIAN・存続会社無し) 6S-404型 1953年(昭和28年)

使用真空管:6WC5,6D6,6ZDH3A,42,80BK,6E5

受信周波数:525-1605KC

定価:14800円(発売当時)
 



戦前の大メーカー、山中電機のラジオ。戦前、TELEVIANのラジオはかなり有名だったようだが、戦後1950年代に倒産、このメーカーは無くなったため、現在知る人は少ない。ただ、さすがは一流品だけあって、作りもしっかりしている。
回路的には標準的5球スーパーでマジックアイが付いている。スピーカーはフィールドダイナミック型で古さを感じる。比較的珍しいのは木箱の内側天面に金属板が貼って有り、これをアンテナにしている事だろう。この頃良くあるやり方ではあるが、東芝や松下のラジオでこのようなアンテナが付いている物を見たことはない。内蔵アンテナとしては良い方法であると思う。このアンテナで地元放送局と、遠距離の大出力局程度なら十分実用になる。外観はどこかで見た事があるようなデザイン、このページにも似たようなデザインの機種がある。布は良く保存されており、電源が入るとダイヤルが美しい。マジックアイは「寝ぼけ眼金具」が付いている。

このラジオは最近オークションで5000円で購入。部品取りにとの事だったが、テレビアンだったのと、つまみ等、部品が全て揃っていたので修理することにした。難しい修理ではないが、外観の清掃にかなり時間がかかり、楽ではなかった。修理の様子は修理のコーナーに出しているので、そちらを参照下さい。

真空管は左から6D6,6ZDH3A,42,80BK。上に付いているのは6E5。6D6の奥に6WC5。
 
 






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