研究会「プラネタリウムの役割と使命を考える」
内容報告

2003年4月27日(日)に開催された研究会「プラネタリウムの役割と使命を考える」の内容報告です.

  → 第1部 講演「内外から見たプラネタリウム」
    → 1)日本におけるプラネタリウム
    → 2)海外におけるプラネタリウム
    → 3)作家のみたプラネタリウム
    → 4)音楽家のみたプラネタリウム
  → サンシャインプラネタリウムの存続を願う会からの報告
  →第2部 ディスカッション「プラネタリウムの役割と使命を考える」


第一部 講演「内外から見たプラネタリウム」(14:00〜15:45)

1)日本におけるプラネタリウム

  講演者:日本プラネタリウム協会会長 若宮崇令氏

→ 当日に配布した資料

◇2001年10月、プラネタリウム白書を刊行。この白書に基づき現状について報告(抜粋)
 ・設置台数は350。
 ・設置目的は、社会教育と学校教育50%、学校教育10%、社会教育30%、その他10%
 ・運営主体は、自治体 71.6%、財団法人(公的団体)25.6%、民営2.8%
 ・職名は、解説員、指導員、事務員、指導主事、学芸員、技術員、社会教育主事、業務員、事業係員、その他
 ・雇用形態は、常勤67%、非常勤嘱託18%、常勤嘱託4%、委託4%、アルバイト3%など
 ・専任・兼任は、専任が46%、兼任が54%
 ・投映方法は、学習の場合、全て生解説が47.6%、オートと生解説が27.4%、フルオート10.8%他
 ・  〃  、一般投映の場合、全て生解説が24%、オートと生解説が28.4%、フルオート31.3%他
 ・番組制作方法は、学習の場合、全て自作54.2%、シナリオ自作制作外注7.1%など
 ・  〃    、一般の場合、全て自作34.2%、シナリオ自作制作外注6.5%など
 ・番組製作費は、1000万〜3000万21.6%、100万〜400万16.9%、10万〜100万8.2%
 ・保守点検費は、0円〜2000万
 ・入場者数は、(グラフ添付)

◇プラネタリウムとは、
 ・星空・宇宙の案内人、インタープリター
 ・星の言葉を伝える通訳
 ・プラネタリウムは宇宙と人とを結ぶ絆
 ・宇宙の中の地球、地球上に広がる自然、人間
 ・人間を慈しみ、自然を慈しみ、地球を慈しみ、宇宙を慈しむ
 ・宇宙人としての人間、一段成長した意識の高い人間形成

◇プラネタリウムの活用私案
 ・学校の総合的学習に最適
 ・大人ものめり込むあやしい魅力→プラネタリウムは市民のもの、使える道具→地域に根ざせ、地域のサロン、コミュニティ作成→プラネタリウム番組コンテスト→地方から全国へ→新たなプラネタリウム文化創出へ

◇プラネタリウムの役割と使命
 ・天文知識・宇宙情報・科学の普及
 ・内向きのベクトルを外向きへ
 ・生涯学習から生涯活動へ

*JPSのまとめたプラネタリウム白書を引用し、上記の報告がなされた。

*また、入館者数についてはここ最近、下げ止まりの傾向が見られ、プラネタリウム館の努力によって入館者数の減少に歯止めが掛かっているとの話がなされた。

*若宮氏の持論である、「各学校でプラネタリウム番組を制作し、プラネタリウムにそれを持ち寄って番組コンテストを行いたい。また、その優秀作で全国大会を開催したい」との報告がなされた。プラネタリウムはシナリオ、演出、音楽、美術、さまざまな要素が含まれる総合芸術であり、プラネタリウム空間をこうした目的のために使うことが有益であるとの主張。また、全国大会を開催するために、各プラネタリウムの仕様が一緒であること。そうすれば優秀作を互いに交換して上映しあうことができる、と述べた。

*また、若宮氏は、日本プラネタリウム研究会の会長として地域に根ざすプラネタリウムを提唱し、JPSの会長としても同じことを言いつづけているとの話があった。

2)海外におけるプラネタリウム

  講演者:杉並区立科学館 伊東昌市氏

◇海外といってもとても広い。が、アメリカ、ヨーロッパの話を中心に紹介する。

◇海外には2千箇所程のプラネタリウムが存在する。うち350が日本。

◇30箇所ほどのプラネタリウムを視察。海外のプラネタリウム番組の日本語版制作を手がけた経験から、話をしたい。

<日本と海外の比較>
 ・欧米は、科学研究、科学教育普及。
 ・日本は、健全育成、教育普及
 ・日本では科学をあまり重要に扱っていない。
 ・欧米ではサイエンス=真理の追究

<扱う内容について>
 ・欧米では、現代天文学、現代科学一般、星の探し方、古典天文学、科学史、民話、SF
 ・日本では、星座の探し方、星座神話、古典天文学、現代天文学、科学史、童話・民話・民俗、ファンタジーや恋愛物語、SF(非科学的なものも多い?)など
 ・欧米はサイエンスで勝負している。

<表現方法は>
 ・欧米は、具体的、動的(ビデオシアター化)、沢山の映像素材、エンターテインメント、仕掛けが多くダナミック、情報量が多い、アップテンポ、論理的
 ・日本では、情緒的、静的(電気紙芝居)、映像量が少ない、美しい星空中心、癒し系

<設備は・・・省略>

<職員数は>
 ・欧米は、職員数がけた違いに多い。欧米の中規模館でようやく日本の科学博物館並。日本の大多数の館は、数人の職員で運営している。比較にならない。
   ASTC:Sourcebook of science center statistics 2002 より

◇プラネタリウムとは
 ・楽しいサイエンス、教育の場である。  ・宇宙の素晴らしさ、不思議さを紹介する場である。  ・宇宙に関する教会である(海外の人に対して伊東氏の考えとして)。

3)作家のみたプラネタリウム

  講演者:作家 寮美千子氏

→ 寮氏ご自身による発表内容のレジュメ

◇山梨県立科学館のプラネタリウム番組「ラジオスターレストランへようこそ」に原作・脚本という立場で関わった。
 ・これまでプラネタリウムに関わったことのないミュージシャン、音楽プロデューサー、画家などが集まった新しい試み。

◇作家の立場から見たプラネタリウムについて述べる。
 ・音を聞くだけでも面白い空間である。
 ・今の機材でも充分に可能性をもっと追求することはできるのでは?
 ・空間の可能性を様々な角度からもっと探ろう!
 ・折角、良い番組を作ったのに、ある期間山梨だけで終るのはもったいない。他でもかけたいが、システムが一緒でないのが弊害と聞く。何故?
 ・職員は忙しいのかもしれないが、一緒に組む相手をもっと幅広く考えて、新分野を開拓することも必要ではないか?
 ・一度、“科学”のしばりを外してみて、プラネタリウムの空間の可能性をもっと考えてみても良いのではないか?
 ・ただの箱として考えてみて、その特徴を見出した後に改めてそれを科学に生かせばよい。
 ・本当に良いものを作ったら、3歳〜100歳まで楽しめる空間になる。

◇生解説について
 ・生解説を聞くのが苦手。途中で眠くなる。人によっては魅力的だが、全員が上手ではない。
 ・名解説者というのがいると聞くが、すごく上手な解説者はどこにいるのか?
 ・生解説コンテストをおこなってみてはどうか? 技能の優れたものはその魅力で客を呼べる。優れていないものは、人の解説を聞いて勉強できる。全体的なレベルアップに繋がる。
 ・全国の中でも希少価値の解説員になれ!
 ・何故、ギリシャ神話なのか? 民族的関わりを考えるならば日本のものでも良いのではないか。  ・プラネタリウムファンは、ギリシャ神話が当たり前で、それを繰り返すことによって慣れてしまうのかもしれないが、これは悪しきグルローバル化に過ぎないのでは。
 ・自分とのつながりを大事にしたい。

◇プラネタリウムとは
 ・心の納得と、科学的納得の2つを融合させる役割を果たしているのでは?
 ・情緒の面で、科学を、「心に腑に落ちるもの」としてプラネタリウムを利用すると良いのでは?
 ・心の受け皿としての機能を担う。
 ・名古屋市科学館の服部氏の意見として、プラネタリウムは半球ではない。客席側にも空間は広がっている。上に広がるのは宇宙、下に広がるのが私たち。私と宇宙をどう結びつけるか、がプラネタリウムの使命に関わるところではないだろうか。

4)音楽家のみたプラネタリウム

  講演者:ミュージシャン あがた森魚氏

◇サンシャインで、星空コンサートを行ってきた。プラネタリウムの魅力に取り付かれている。

◇音楽家の立場から見たプラネタリウムについて述べる。
 ・ふだんは音楽で何かを形にしているので、言葉によってはあんまり上手ではない。
 ・自身は、プラネタリウムを使わせてもらい、楽しませてもらっているクチである。

◇自らのプラネタリウム体験
 ・大学で東京にきて初めて五島プラネタリウムにいって(映画が予想外に面白くないときに)、あの当時でさえも、すでにちょっと古い感じがかわいかった。サンシャインはむしろハイカラすぎるといった感じ。
・作り物の星であっても、自分自身のことに気づかされる空間である。宇宙の片隅にいるということ、ちっぽけな存在を知るということ、スケールを知るという点において。

◇サンシャインのコンサート「プラネッツアーベント」で必ず歌う歌の紹介
 ・「いとしの第六惑星」(会場で曲を流す)と「水晶になりたい」

◇星への思いを抱くようになるのに大きな影響を与えたもの
 ・稲垣足穂『一千一秒物語』

◇プラネタリウムの意味
 ・サンシャインは同じプログラムばかりやっていて、工夫がない、という指摘があったが、今のままで十分いいと思う。満天の星がある、というだけで十分大切な場所なのだ。
 ・経済状態のために、こんなに大切な空間をなくしてしまうことがあってはならない。やはり社会として大事なものは、大事なんだ、と、ちゃんと残していかなければならない。
 ・たかだか動員が無いからといって、厳しい状況におかれているのがもったいない。功利主義の現状の中で、その場に集わせて、未来を語り、ある種の理想を共有できる大切な場所だと思う。


     −休憩−

(休憩時間中、参加者の方々に、講演者への質問やプラネタリウムに対する意見を「質問票」に書いていただいてそれを提出していただく)


○サンシャインプラネタリウムの存続を願う会からの報告

  報告者:水野孝雄(東京学芸大学教授)

 ・閉館の報を聞いた時は、会社に対して存続を願い出るだけだと考えていた。
 ・その後、設置にあたり、豊島区とサンシャインシティが取り決めをしていることが判明。公共施設としての側面もあることから、豊島区議会への請願書を提出した。
 ・継続して会社側(サンシャインシティ)にも要望書を提出(署名約6千人、内区民1500人)
 ・6月1日閉館と言われているが、まだわからない。
 ・今後の可能性。
 (1)存続
 (2)他社テナントにより存続
 (3)多目的ホールとして利用(機器、イスは撤去)


第2部 ディスカッション「プラネタリウムの役割と使命を考える」(16:15〜17:50)

登壇者:若宮崇令、伊東昌市、寮美千子、あがた森魚、林 衛(科学ジャーナリスト)、大平貴之(メガスター製作者)
進行:高橋真理子(山梨県立科学館)

高橋:話は多岐に亘る。問題の一つ一つの全ての解決方法を見出すのは難しい。今日のディスカッションの目標は、プラネタリウム関係者には、明日からの具体的な活力を持って帰っていただき、それ以外の方々には、プラネタリウムにもっと関わりたいと思っていただく、といったところに設定したい。
 ディスカッションの切り口として以下を掲げておきたい。
 ・プラネタリウムの特徴とは何か(他メディアとの違い)
 ・プラネタリウムは何をやるか?
 ・マネージメント戦略について
 ・利用者のコミットの仕方
 ・連携の可能性をさぐる(慢性的な人材不足を受けて)

<プラネタリウムの特徴>

高橋:まず、プラネタリウムの特徴について若宮さんからお話を。

若宮:星空の実験室。夜でなくても星を見ることができる。時間空間を如何様にでも表現できる場所。デメリットはそこに行かなくてはならないこと。場所が固定されてしまう。

高橋:若宮さんのお話には、学校での黒板よりもプラが良いという側面を含んでいると思う。大平さんは沢山の星を見せることにこだわっていますが、その意義は?

大平:本当の星空にたくさんの星があるのですから、それを表現したかった。スーパーCDと普通のCDの違いのようなもの。本当なら見えない星も表現してみた。

高橋:自分が宇宙の中で一人であると実感させることの意味もある?

大平:星の奥行き感について徹底的に追求した。何故、星を見ると綺麗に思うのか? これは遺伝子の記憶だと思う(ある人の受け売りだが)。人類が生まれてからの歴史の中で綺麗な星を見てきた。その記憶が遺伝子の中に組み込まれて、プラネタリウムに足を運ばせるのではと思う。

高橋:科学を伝えるという側面から、林さんはどう思うか?

:何が問題か、日本はプラネタリウム密度が高い国、でも客が来ない。理由はコンテンツの質が低い、メディアの性質でいうと色々なことができるのはその通りだが、メディアとして自立していない。マスコミやTVなどのメディアは、企業からのサポートを得て自立している。スポンサーの助力を受けている。プラネタリウムにもまだいろんなやり方が残されているということだ。

<プラネタリウムは何をやるか?>

高橋:番組の内容について踏み込みたい。さきほど提出していただいた質問票の中に、「プラネタリウム側は一生懸命やっているが、若年層とのベクトルがずれているのではないか」との指摘もある。これを書いてくださった方にちょっとコメントをいただきたい。

参加者A:大学院で天文学を研究している。ここ1年、プラネタリウムに行ったことがない。プラネタリウムに行きたくならない。天文の仲間も皆、プラネタリウムに行こうとしない。情報としてプラネタリウムに行っても得るものが無い。

高橋:情報量としてわざわざそれを知りたいと思うほどの内容が、日本のプラネタリウムには無いとのことだが、日本のプラネタリウムの評価について、伊東さんはどう思う?

伊東:クオリティがないと何をやってもダメ。一生懸命、できることを一つでも良いからやれば良い。ちょっとずつ、でもこだわってやってみる。担当者の力量を上げるためには、得意分野を伸ばすこと。中身で勝負する。内部努力をする。他の館の番組を移す手間は大した手間じゃない。自分でやれば20〜30万。自分たちで実際にオート番組を制作してみること。組み立てる努力をしよう!

高橋:サイエンスの部分を強化する以外に、日本のプラネタリウムは色々なことをやっている。お客の興味がそこにあることも事実。ニーズがあるからそれをやっているともいえる。サイエンスだけでない部分も多いと思う。先ほど、寮さんから「神話と科学の融合」についての話があったが、もう少し話をして欲しい。

:『ラジオスターレストランへようこそ』では、宇宙のレストランでものを食べることを題材に、科学について解説した小説。超新星爆発によって生命の元が生まれたということを、レストランで思い出していく、という物語。プラネタリウムでそれをやることができて良かった。サイエンスは大事だけど、それを深い納得にしていくための物語が必要。

高橋:物語はサイエンスを伝える効果が高いというご意見だが、逆に、映像ではなく、まずは星空が重要である。それこそが天文教育である、という方もお出でだと思うが・・・。

参加者B:自分も天文学を研究している。確かに、NHKを見た方が科学にはとってもためになる。最新の科学情報を科学館で紹介してくれる人は少ない。それについてどう思うか聞きたい。

若宮:日本のプラネタリウムの職員の中に専門家はほとんどいない。考え方がまちまち。色々な方向を向いている。

伊東:ワンパターンな作り方しかできない施設が多い。私は学習投映はすべて生解説で行う。ほとんどのプラネタリム館は番組としてでしか表現できていない。柔軟性が無い。

参加者B:日本のプラネタリウムには専門家がいないのだから、もっと専門家の方々と協力して番組を作っても良いのではないのか? 国立天文台やヘイデンに負けないCGなども写すことができるはず。

高橋:連携に話が及んでいるので、それはあとの話題につなげたい。番組の話に戻す。プラネタリウムでは解説者が介在している意味合いが大きいと思うが、何故、語り部がいるのか? どういった役割を果たしているか?

若宮:プラネタリウムは、暗い空間の中で客の気配が感じられる。解説者の存在によりレスポンスを得ながら話を進められる良さがプラネタリウムにある。解説者の心、意気込みを人の前で語れることが重要。解説者がいることにより、客の反応が得られる。

高橋:人が介在するからTVと違うといえるかも。立ち返ってサイエンスを伝える使命があるともいえる。

大平:川崎で若宮さんに小4の時に機械を操作させてもらった。非常に感動した。そもそも番組は始まりがあって終わりがあるが、エンドレスに何かを表現できる空間があっても良い。常に何かをやっていてフラッっと入ってもらって、その場その場で違った対応をする。折角、色々な可能性があるのに・・・。

:大平さんは自分で解説するの?

大平:自分ではやっていない。これからやってみる。

:昔、スポーツセンターに努めていた時がある。当時、見るスポーツから、参加するスポーツへといわれていた。場を提供してスポーツをしてもらう・・・。どうして同じことがプラではできないのか? 日本のプラネタリウムは教えてやろうとしすぎているのではないのか? 本当のサイエンスリテラシーとは、自分でできるようにすることにある。アメリカの場合には、もっと参加できるようなプログラムがある。むしろ日本でやってこなかったのであれば、これからに可能性がある。
 サンシャインの話が出ていたが、むしろ閉館のこのタイミングはチャンス。私もサンシャインに行ったことがあるが、はっきりいってとてもつまらなかった。プラネタリウムに行こうと思って行ったが、つまらないものを見せられた。もう2度と行かない・・・ということになる。そうしないために、ここに集まった多くの大学関係者やクリエイターやプラネタリウム関係者がNPOを作り、サインシャインを維持してゆけば良い。先ほど、(水野さんから)お話があった存続の(2)のパターン(他社のテナント)でやるべきだ。(拍手)

<利用者のコミットの仕方>

高橋:利用者がプラネタリウムを「使う」という方向に話が向いてきましたので、そのあたりを広げていきます。参加者の中で、もし自分がプラネタリウムを使えたら、自分はこんなことを伝えたい、話したいという人はいますか?

参加者C:天文教育は未来へ続く。あまりにもバーチャルが続きすぎて良くない。学校の先生も、星はパソコンで教えて済ませる先生が多い。私は見つけ方を教えると良いと信じている。プラネタリウムの活用には、学校の先生をもっと巻き込んで、先生に星の勉強をさせれば良い。星の学習に実習を入れればよい。大事なのは底辺の拡大である。

:自分の星座を作れれば良いのではないか? さきほども話をしたが、でてくる星座というのは、どうしてああいう形になるのかわからない。自分で作ってみると、そこから物語も生まれるかもしれない。

若宮:私が提案した方向に話が進んでいて嬉しい。参加するのは面白いことだと思う。プラネタリウムには参加性が欠けている。しかし、スペシャリストがいる所と、いない所がある。現実にスペシャリストがいない所では、財政難でつぶれる可能性が高い。今、何ができるかが大切。プラネタリウムは使える道具だと示すこと。参加できるプラネタリウムをやろう!
 逆に、科学的、かつエンターテイメント性が非常に高いヘイデンのようなプラネタリウムはあっても構わないが、それは、東と西に一つずつでも良い。全部が同じである必要は無い。色々な番組をコンテストでかけられるような仕組みが欲しい。

高橋:それに関してだが、さきほどいただいた質問票の中に、「市民に開放する可能性もあっても良いが、結果、的外れな方向性に行く可能性がある」との指摘もある。 おそらく市民とプラネタリウムの間をつなぐファシリテーターが必要だ、ということではないかと思うが?

若宮:市民の中には能力の高い方もいる。プラネタリウムの役割がはっきりしていれば、横道にそれることはない。

:場をまとめる役割は重要。現実的にはそういった人(ファシリテーター)が不可欠。

<外部との連携>

高橋:各々の持つ得意な分野から参加するやり方もあるのではないかと思うが、あがたさんは音楽や映画をつくられる立場として、どんな参加の仕方があると思うか?

あがた:作り出している方は楽しませてもらっている。科学には回答があるが、文学には回答が無い。男性のインテリジェンス、女性の美しさほど、危険なものは無い。冷静に考えると、プラネタリウムは人類の英知の結晶。プラネタリウムの可能性を追求すると面白いことができる。
 欧米は具体的、日本は情緒的。もっとイマジネイティブなものがあっても良い。プラネタリウムにとって大事なことは、人が集う場所。音楽はライブ、人が大事。プラネタリウムはライブの側面も、学術的な冷徹な面もあって欲しい。プラネタリウムで感動するのは、星が一杯であること。貴重な役割だ。俺達を包んでいる星の存在を知らしめる。学術的な打ち出しをすることは必要だが、本質的なコンテンツは、「星の空間」「存在感」である。人が集うことの大事さを忘れるな。
 場の魅力は、映画館やコンサートに行って見るのと同じこと。その場で場を共有できる楽しさ、感受性を大事にしよう。(拍手)

:そもそも日本は科学と科学以外のことを分けすぎる。それが日本的なものの特徴かもしれないが、ニュートリノ発見の日米新聞報道の比較をすると、アメリカの記事は正確さよりも面白さ、ドラマ性に重きを置いている。日本は、学術的な正確性を伝えようとするあまり真面目すぎてつまらない。
 (1998年6月5日のニューヨークタイムズ記事を例示)例えば、この記事の中では、科学記事の中に詩が出てくる。物語であることと科学の情報を伝えることは矛盾していない。

:プラネタリウムにも可能性があるが、こういった施設だけに、科学教育を押し付けるのではなく、ありとあらゆる場面で科学教育的な要素は入れられる。たとえば、ディズニーランドでも。色々な媒体にそれを訴えてゆく必要があると思う。

:『啓蒙とは何か?』(岩波文庫)には、啓蒙活動について触れられている。蒙(くらき)を啓くが本当の意味。科学教育を取り巻く考え方については、今までは左。これからは右。(下図)

(国立天文台広報普及室,運営委員):先日、朝日新聞に立体プラネタリウムとの記事が出たが、あれは記者が勝手に書いたもの。あれはプラネタリウムではない。だが、ここで作られる画像は、公開する予定である。誰でも使える。プラネタリウムで是非使って欲しい。リソースを使うには、人と人の関わりが無いとダメ。宇宙開発事業団、宇宙科学研究所、日本宇宙フォーラムなどに問い合わせれば、いくらでも協力してくれるはず。どんどん人を使ってください。
 連携をするにあたり、文化としての科学を根付かせるための方法を考えようとした場合、市民、ジャーナリズム、学校教育、生涯学習施設の連携が不可欠。天文台のみとか、プラネタリウム団体とか、団体が3つあるとかの狭い範囲で考えている状況ではない。今年の11月9日、10日に代々木にある国立オリンピックセンターで“21世紀型科学教育の創造”としてワークショップを開催する。是非来て欲しい。

高橋:かなり時間が押してきているが、これだけは言っておきたいという方は。

参加者D:昔、サンシャインで解説員をやり、明石や葛飾でもやっていたことがある。私は大学では英文学をやっていた。ほとんどの解説員は大学で天文学をやっていた方かもしれないが、私はその意味では素人。今、話を聞いていて、NHKの方が天文の知識は多いという方がいましたが、プラネタリウムに来る人にはさまざまな人がいる。一般市民の方が大勢いる。その方々の存在を忘れてはならない。星の美しさが私の心を癒した。そして、星に興味を持った。プラネタリウムに行かないとできないこともある。科学の最先端を知りたい人もいる。美しさを感じる人もいる。さまざまだということを知って欲しい。

参加者E:理科教育は不思議だな、何故だろうと思うこと、考えることにある。プラネタリウムを天文教育と名乗ることに腹が立つ。

高橋:まだ議論しつくせないことばかりだが、利用者の方々がいかに参加し、つくる立場になっていくか、また、プラネタリウム以外の分野の人達といかに連携していくか、といった点で多くの提案をいただいた。また今後も議論を続けていければと思う。

     記録:明井英太郎(日本プラネタリウム研究会 事務局)
     一部加筆・修正:高橋真理子(山梨県立科学館)

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