
ロンドン指令X(The SECRET SURVICE 1969)

解説
「ドッペルゲンガ―」を製作した直後、ジェリーの作品に対する向上心はとどまることを知らずまた新たなるスーパーマリオネ―ション作品の可能性を追求した。それは従来のような21世紀の世界が舞台となる作品ではなく設定を近未来としよりリアルな世界観をもって製作することだった。それは「ドッペルゲンガ―」の時にパインウッドスタジオでスタンレー・アンウィンと出会ったときに本作品のストーリーを思いついたという。ジェリーはスタンレーのテレビやラジオ番組が好きだったため迷うことなく今度の新作に彼を主役にしようと思ったのだ。
当初この作品は実際の俳優を使い完全な実写作品とする予定だったのだが、ルー・グレイドが承知しなかったので今回は妥協案としてアップには人形、ロングショットなどには実際の人間の俳優というふうにこれまで以上に人間と人形を融合させ、そしてセットとロケーション撮影の違和感を払拭させようと努力をした作品であった。撮影にはまずロケーションから始めてあとで人形の部分を実景ロケにセットを合わせるというこれまでの作品と逆の方法で行われた。そして撮影は順調に行われたが第一話の完成試写でルーがクレームを出したために製作は打ち切られるかたちとなり僅か13話のみの製作放映となってしまった。原因はスタンレーの喋り具合が訳が判らず(アンフィニ―というギャグ風の喋り方が当時イギリスで受けていた。ただこれは訳の判らない喋り方だったのでイギリスでは知ってても他国では全く不明のために輸出の際には不利となった)しかもイギリスを舞台にしたためにローカル向けの番組になってしまって海外に売るときに不利になってしまったからだった。皮肉にもこれがスーパーマリオネ―ション最後の作品となってしまった。アンダーソン作品の人形映画はこの後、1983年の「テラホークス」まで待たなくてはならない。(もっとも1973年に「The INVESTIGATOR」という作品を手がけているが未公開に終わった)
この作品は以上の理由でアンダーソン作品の中では最もマイナーな作品となってしまったが人形などの出来は最高にリアルなもので実際のスタンレーと人形のスタンレーとの違和感はなかった。また本作品の主題歌は「スーパーカー」セカンドシリーズ以来だったマイクサマーシンガーズがアンダーソン作品に久しぶりに担当し美しいフーガを聞かせてくれる。思えば「スカーレット」以降、急にリアルかつ地味な作風となってしまったために人気が嘘のように落ちたのだと思う。つまりはリアル過ぎたのだ。私はこの作品に関しては未見なのだが日本版は「スタートレック」のミスタースポックで有名な久松保夫がスタンレーの声をあてており少なくとも本国版での違和感を払拭出来たのだと思えるのだが。(アンダーソン作品は日本語版のほうが違和感なく見れるしこっちのほうが個人的に好みである。)