最近読んだ本より

 

図画蜂起19552000

中村宏画集 美術出版社 200091日第1刷

by SF Kid

 当HPで取り上げた、『犬の学校』の挿絵を描いている中村宏の画集です。『犬の学校』は、当クラブのメンバーである、いぬさんの思い出の本だそうで、挿絵にも思い入れがあるそうです。いぬさんから、中村宏さんについて聞かれたため、検索サイトで調べたところ、この本にたどり着きました。

『犬の学校』では、不気味で異様な存在感を発揮して、ストーリーを盛り上げていた中村タッチですが、この本は、表紙から終わりまで、マニアックで濃いエキスを発散しまくっています。この本の恐ろしさに比べると、『犬の学校』の挿絵などはまだカワイイもんであります。

「戦争・革命・地形・怪奇・顔・お尻・便器・井戸ポンプ・エロス・蒸気機関車・飛行機・立入禁止・セーラー服・望遠鏡・カタストロフィー」なんていう分類が表紙に掲げられていますが、中村画伯の作品がこれらにカテゴライズされて収録されています。特に、セーラー服に対する執着は大きいようで、セーラー服を着た不気味な少女(時に一つ目)が繰り返し現れ、蒸気機関車に、飛行機に、戦車に、軍艦に、ケーブルカーにメタモルフォーゼ(変形)しております。この見立ては面白いものですが、また一方で不気味でもあります。セーラー服を着た少女、というと、男にとってある種ときめきのようなものを感じてしまいますが、そういったつもりでこの画集を鑑賞するわけにはいきません。中村氏のセーラー服少女は、醜悪な老魔女のようでもあり、死体や骸骨と屍姦し、肛門を露出して悪夢の饗宴を繰り広げる存在であります。丁度パゾリーニの『ソドムの市』のようなグロテスクな世界であります。

表紙に掲げられた絵などは、セーラー服を着た一つ目の不気味な少女が列車に変身して大勢並んで、セーラー服を着た機関車につながっているという、シュールな光景であります。

それだけではありません。氏が手がけた挿絵の数々。描いている媒体がまたすごい。大岡昇平の『レイテ戦記』の雑誌連載当時の挿絵をはじめ、稲垣足穂との共著、渋沢龍彦、夢野久作,倉橋由美子、大江健三郎、花田清輝、埴谷雄高……。「現代詩手帖」の表紙や大学新聞、大学祭のポスターまで手がけています。 

これだけ見れば、氏を子ども向けのSF童話の挿絵画家に登用する、という発想のすごさに驚きます。実際、『犬の学校』の不気味なストーリーと相乗効果をもたらして、独特の存在感をもった一冊となりました。いやー、SFとは、新しいものへの挑戦、ですね。子ども向けだから、マニュアル通りのストーリーで歯ごたえのよい挿絵をつけて適当にお茶を濁しておこう、なんて考えていては成長がありません。時に難解ながら冒険心あふれる試みで次の世代を育てよう、という試みも大切ではないでしょうか。いぬさんのように、忘れられない一冊となった人も存在します。

今更ながら、『犬の学校』を企画・出版した方々の冒険心を気付かせてくれる一冊でした。

 

2001.9.2(日)

 

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