夢と冒険の世界へ!

鶴書房 SFベストセラーズ 第25巻

夢の戦士

 (川又千秋 作/佐竹美保 カバー・さしえ)

1979310日初版発行)

登場人物

 夏木伸介……明朗快活なスポーツマン。女生徒の人気ナンバーワン。

 風巻研一……物静かなロマンチスト。学校の成績は伸介より優秀。

白木国子……研一らと同じ高校の生徒。

小波七郎……伸介の兄の友人。アメリカやイギリスのSFに凝っている大学八年生。

 木家桃子……北海道の高校生。研一らと夢の中で知り合う。

 パパ・カウライ……トンガの青年。研一らと夢の中で知り合う。

 ジョージ・H・モリス……オーストラリアの青年。研一らと夢の中で知り合う。

リック・マクドナルド中尉

……アメリカ陸軍の極東部隊の中尉。七郎さんとはSF翻訳勉強会を通じて知り合い。

ジャダス総統……アルダリア星人の総統。地球を乗っ取ろうと計画を立てる。

ミダス……アルダリア星人の長老。ジャダスに反対している。

 坂口都夫……アルダリア星人から夢で重大任務をさずけられたと主張、新聞やTVに出る。

窪宮哲三……金集めのために、インチキ宗教を主宰したり、官僚の汚職に手を貸している。

政治家の黒幕と言われている。

坂口少年に近づき、ノア党という団体を作る。

 

あらすじ(ネタばれあります)

  夏休み。高校生の研一は、夏木家が海岸に持っている海の家に伸介と共に泊まりに行く。海水浴やヨットや天体観測など楽しい休暇を過ごす二人だが、毎晩見る悪夢が気がかりだった。

  それは30年後の地球の夢であった。公害によって汚しつくされ、死臭ただよう地球の未来……。二人は毎晩この同じ夢を見たのだった。

  地球上の多くの子ども達にこの夢を見せていたのは、アルダリア星人であった。アルダリア星人は、夢の中で彼らを自然豊かな楽園に集め、説明する。

  地球は公害のためにあと30年で駄目になるということ。地球人に対して友好的なアルダリア星人は、地球の代わりにここ、地球から8.7光年離れたおおいぬ座のシリウスを回る第五惑星への地球人の移住を手助けしたいということ、そのために地球人に語りかけているが、感受性の鋭い一部の少年少女たちが眠っている間にしか聞こえないこと、精神が肉体から自由になりやすい睡眠の時間を利用して、彼らの精神を、ある特殊な装置によって、この惑星上に実体化させていること。このことを大人にも伝えて欲しいこと。

そして、この夢が現実のものであるということの証拠に、二つのものが与えられる。一つは、地球ではまだ知られていない材質で作られたプレートで、太陽系とシリウスの位置を示す天文図とシリウス第五惑星の地図が刻まれていた。もう一つは、ライターくらいの大きさの装置で、ボタンを押して眠ると、アルダリア人のテレパシーが通じない大人でも、夢の時間を利用してシリウス第五惑星に実体化できるのである。

そして確かに二人は、翌朝起きてみると、この二つの物体を夢のなかから持ち帰っていたのだった。

悩んだ二人は、伸介の兄の友人・小波七郎さんに相談、装置を使って二人と一緒にシリウス第五惑星に実体化する。木家桃子やパパ・カウライらと一緒に惑星の探検に出かけた一行は、偶然、空腹でぼろぼろになったアルダリア星人の子どもと遭遇する。彼を助けた縁でアルダリア星人の長老・ミダスに会い、これは地球乗っ取りの陰謀だと知らされる。

公害で故郷の星を失ったアルダリア星人は宇宙船で第二の星を求めて600年も宇宙を漂流していた。漂流のうちにエネルギーや食料も不足してきた。そんな時に地球を発見した。地球がかなりの軍事力を持っており、食料も不足しているアルダリア人は正面からの侵略ではなく、計略を用いて地球を乗っ取ろうとしていたのである。

シリウス第五惑星だと思い込ませていたのは、月の裏側に着地したアルダリア星人の宇宙船であり、地球人を第五惑星に運ぶと騙して、宇宙空間に放り出す作戦だという。

七郎さんや研一達は、ジャダス総統が率いるアルダリア星人強硬派の陰謀を防ごうと作戦を立てるが……。

 

書評:少年時代のあの長かった楽しい夏休み!ファンタジックな夢の世界!

懐かしい、楽しい要素満載のSF!!

(ネタばれあります。注意!)

 長い夏休みを海の家で過ごし、海水浴・ヨット・天体観測の日々を過ごす……。これこそSFの世界だ!社会人となった今、夏休みは一日だけ!ううむ、ファンタジーだ。

 この夏休みの描写が印象的です。ジュヴナイル小説の長所は、長い夏休みを舞台にできるところです。

 それで、多くの子ども達が同じ夢を見て、しかもそれが本当にあることだというアイディアが面白い。夢の中で友人と会って話することもできます。そしてその夢のなかから持ち帰った装置を使うと、誰でも夢の中に入れます。これはわくわくするシチュエーションだ。夏休みの描写と相まって、すごく魅力的な舞台設定です。

 それで、友ケ島の一泊旅行のお供に、この本を持っていったわけです。夜、波の音や海の風が入ってくる部屋で眠れないまま読み終え、夏休み気分を満喫しました。

 それにしても、夢の世界とは興味深いものです。夢を有効活用できればいいのですが。

 以前、電車の中で高校生(男)が、「夢の中で勉強できたらいいのに」と言っているのを聞いたことがあります。結構SF的なことを言うんだな、と印象に残りました。

 そういえば、私が幼い頃、「睡眠学習」というのが、雑誌の広告によく載っていました。資料を請求すると、どうやら枕の中にエンドレステープを入れて一晩中聞く、というようなものでした。あの睡眠学習機、本当に効果あったのだろうか。今でもあるのだろうか。

 星新一のショートショートに、睡眠中の脳波を利用して夢の中で仕事ができるようになった社会を描いたものがありました。一仕事おえて目が覚めてから、「さあゆっくり休むぞ」となり、「昔はこれからが睡眠だったんだろうな」とオチがつくのです。

 

 夢の中で実際に友人と会い、冒険する、というのがこのSFの面白いところです。

 それにしても、あれだけ進んだアルダリア星人にしては、ちょっとまどろっこしい侵略の方法だな、とも思います。

 小波七郎さん、いいですね。SF小説にはよく、この手のキャラクターが存在します。好きなことして食っていけたら最高です。お堅い家に育った私には、こういったことをして食っていくなんて生活は想像もつかなかった。もっとSFを読んで、小波的生活について知識を得、考えておくべきだった。

 それにしても、アメリカの軍人さんにまで人脈を持っている小波さん、すごいです。

 軍人でありながら、小波浪士なんかが始めたSF翻訳研究会なんかに加入しているリック・マクドナルド中尉も、もっとすごい!

 

 この本、鶴書房SFベストセラーズの『夢の戦士』、古本屋で購入したのですが、SFベストセラーズの最終形態をしています。

 SFベストセラーズは奥付、巻の番号、目録などがない場合が多く、発行年やシリーズ構成が分かりにくいのです。しかし、最後の方に発行された版は奥付、巻の番号がちゃんと入っており、表紙見返し部分にあらすじが入り、SFベストセラーズの最終形態・完成形となります。私が幼い頃書店で買ったSFベストセラーズはこの形態でした。しかし、古本屋で買った版は、奥付や巻の番号がない場合が結構あります。

 本書には昭和54310日 初版発行 という奥付がついており、表紙には25という番号がついています。また、目録には、25冊のタイトルが記載されています。SFベストセラーズの目録では、もう一つ、26冊のタイトルが記載された版のを持っています。その26冊目は、宮崎惇『蜃気楼の少年』です。この本については「辺境2001年(現・辺境調査局)」の掲示板で問い合わせたことがあるのですが、空想少年さんによると、企画だけで発行されなかったということです。

 空想少年さん作成の目録では、26冊目に『ポンコツUFO同乗記』があります。

 

 

 

2002..15(日)

    

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