92式対戦車地雷
(開発名 底板貫徹地雷)
 
 

92式対戦車地雷は現在、陸上自衛隊が装備している最新型の対戦車地雷で1986年より研究試作が開始され、1992年に技術・実用試験を経て制式化された。目標とする性能諸元は以下の通りである。

  1. 威          力: 戦車の底板部を貫徹し、内部の人員、射撃統制装置等を殺傷・破壊できること。

  2. 信管感応域: 戦車等の全幅で感応するとともに、そくほう感応許容誤差は1m以内であること。

  3. 対 処 理 性: 地雷処理ローラ・鋤によって処理される場合は、努めてローラ・鋤を破壊出来ること。

  4. 安   全   性: タイマー式安全解除機構及び再安全化機構を有すること。

  5. 敷   設   性: 83式地雷敷設装置で敷設出来ること。

従来の対戦車地雷は主に戦車の履帯が地雷を踏む圧力によって起爆していたが、この地雷は磁気センサーと振動センサーの組み合わせにより戦車の車体全幅内で起爆し、成形さく薬により戦車の弱点である(車体の中で最も装甲の薄い部分)底板を貫徹する。これにより、地雷原の敷設に要する数量が従来型に比べて大幅に削減できる。同様の対戦車地雷であるスウェーデンFFV社製のFFV028対戦車地雷は1,000m平方の地雷原を構成するのに従来型で1,000個を要するところを、300〜400個程度で済むと言われている。

磁気センサーは地磁気変化量を検出するパッシブ方式と、コイル励振による渦電流磁気を検出するアクティブ方式を評価検討した結果、パッシブ方式が採用されている。パッシブ方式では欠点として検知精度が磁気レベルに影響されること、指向性が無く車幅外発火の可能性もあるが、発火論理の組み合わせで対処可能とされた。何よりもパッシブ方式のメリットは消費電力が小さいことと(パッシブ方式の場合は電池2個で180日間、アクティブ方式の場合は電池4個で常時励振時約10日間、振動との複合化で約180日間)、ボディエフェクト(人体等の誘電体を電気回路に近づけると、その電気的特性が変化すること)の影響を受けないことが挙げられる。

外観寸法は高さ約125mm、直径約260mmの円柱形で質量は約8kgである。構造は上部のセンサー及び制御部分と成形さく薬部分により構成されている。なお、探知を困難にするために非磁性材料が使われており、塗装はオリーブ色が標準となっている。上面にはアーミングノブと標示機構用の窓、及び電池用の蓋がある。地雷の設置は83式地雷敷設装置によって行われ、毎時300個以上を敷設できる。地雷は安全ピンを抜いて発火レバーを引き上げると機械タイマ及び電気タイマが作動して一定時間が経過すると,安全解除状態(待機状態)となる。待機状態の地雷は戦車等の接近を振動によって感知し、磁気センサーにより地磁気変化を感知することによって、発火信号を出力して電気雷管を発火させ、中継薬を経て信管放出薬(清掃薬)が発火し、中継薬により伝道薬、さく薬の順に発火する。さく薬の発火によりライナーがメタルジェットとなり、目標の底板や履帯を貫通、破壊する。

なお、活性化された地雷は電池の抜き取り及び傾斜により活性化機構が動作して起爆する対処理機能を有している。また、待機後一定時間の経過、或いは安全化装置により無効化する安全機能を備えている。対環境性は-20度〜50度までの耐寒耐熱性が求められており、さらに水深6mまで使用できる耐水性を有しており、水上目標にもある程度効果があると思われる。

見積量産単価は3,000個/年x8年で約30万円とされていたが、会計検査院の報告によると取得数量は見積量産単価前提数量の約20%以下となっており、調達価格は見積量産単価の200〜250%とされている。ここから推察すると約60〜80万円と思われる。調達数量に関しては旧ソ連軍の脅威が相対的に低下した現在、致し方ないところであろう。なお、主契約会社は石川製作所である。