ASM-1(80式空対艦誘導弾)

 

 

F-1に塔載されたASM-1のダミー弾(写真はF・A・Sよりのリンクです)

 

以下の文章は管理人が世界の傑作機No.117「F-1」用に執筆したものの一部を編集者の許可を頂いて転載したものです。

 

ASM-1F-1へ搭載することを前提に開発された、固体ロケットモーターによって推進するアクティブ・レーダーおよび慣性誘導による複合誘導の中距離空対艦誘導弾で、フランスのエクゾセ、ドイツのコルモラン、ノルウェーのペンギン等と同じ世代である。なお、F-1へは左右パイロン下に計2発搭載される。巡航速度は亜音速で、最大射程は約50km程度とされている。  

【開発経緯】

F-1支援戦闘機の代表的搭載兵装となったASM-1(80式空対艦誘導弾)1973年から防衛庁技術研究本部によって技術開発が開始され1980年に制式化された。

主契約会社は三菱重工でミサイル本体の設計と組み立て、各種試験、F-1へ搭載するための関連機器の製作を担当し、終末誘導を行なうアクティブ・レーダーシーカーは三菱電機、初期・中期誘導を行なう慣性誘導航法装置は各種航空機向けで経験が深い日本航空電子、海面上を飛翔するために必要な電波高度計を日本無線、弾頭と着発信管をダイキン工業、電池を日本電池が担当することとし、各社から技術者が出向してASMET(ASM Engineering Team)を結成し、技術研究本部の監督のもとに開発を行なった。

開発においては、高い性能を持ちながら開発費の高騰からコスト高を招いて採用されなかったAAM-2空対空誘導弾の反省を踏まえて、開発経費低減のためにミサイル・シミュレーターを用いたシミュレーションが大幅に採り入れられた。当時の苦労話として信号処理等にアナログ処理が多用されていたため、ゴースト処理等がなかなかうまくいかなかったとの話が伝わっている。

総開発費は試験費4億円を含む113億円とされている。ちなみに同種の西側対艦ミサイルのベストセラーである(R)AGM-84ハープーン対艦ミサイルの開発試験費は32,700万ドル(1977年当時の為替レートで約856億円)である。

航空自衛隊による実用試験は19795月から開始され、実用試験用供試弾10発が使用された。6月には廃艦標的である海上自衛隊の護衛艦「かや」(旧米タコマ級PF)に対して、FS-T2改を発射母機として能登半島沖のG空域で実射試験が行なわれた。この際ミサイルの実射は4発を予定していたのだが、1発目のミサイルが命中後、翌日には標的艦が沈没してしまうというハプニングが生じている。この実用試験の際には、米軍からミサイルの破片の回収について念入りに行なうように異例の指示があったことが伝えられている。

実用試験完了後、装備審議会を経て1980年に80式空対艦誘導弾として制式化され、同年には部隊配備用として25発が発注されている。その後毎年調達され、最終納入年度は1996年である。その間、毎年25発程度が発注されていることから、350発程度が航空自衛隊へ納入されている模様で、訓練による射耗分を除いても、航空自衛隊は現在でも300発程度のASM-1を保有しているとみられる。なお、調達価格は11億円程度となっている。  

ASM-1諸元】

全長

3,980o

胴径

 350o

主翼

翼幅

1,190o

翼弦(翼取り付け根部)

 940o

操だ翼

翼幅

 905o

翼弦(翼取り付け根部)

 215o

重心位置

発射時

2,230o(先端から)

質量(kg)

発射時

 600kg

80式空対艦誘導弾制式要綱より  

ASM-1の構造】

ASM-1の構成について80式空対艦誘導弾制式要綱(昭和551222日発行)を元に解説する。ASM-1の構成は誘導部、弾頭部、ロケットモーター部、制御部よりなるモジュール構造である。  

●誘導部

誘導部はホーミング装置、慣性装置、高度計、オートパイロット電子装置、電池、誘導部胴体よりなっている。ホーミング装置はXバンドのアクティブ・レーダーシーカーで、目標を捜索、捕捉し追尾して誘導信号を発生する。また、このシーカーはECCM機能(電波妨害排除)を有している。慣性装置は、ストラップダウンデジタル方式でセンサー部、コンピューター部からなり、ASM-1の各速度および加速度を検出して姿勢角計算を、また、ホーミング装置からの誘導信号を受けて誘導計算を行なうとともにホーミング装置の作動制御計算を行なう。

高度計はFM/CW(周波数変調/連続波)方式の電波高度計で、送受信機、アンテナなどからなり高度測定および警報信号発生機能を有する。オートパイロット電子装置は慣性装置からの信号を受け演算補償を行ない、4軸の操舵信号へ変換してサーボ装置に供給する。また、ロケットモーターの点火制御およびASM-1の内外部電源切り換えの機能を有する。電池は自動注液式酸化銀亜鉛形であり、信号により活性化され電力を発生する。  

●弾頭部

弾頭部は弾頭、信管、上方トンネルからなる。弾頭はHE半徹甲弾で弾頭重量は225kg(150kgとの説もあり)であり、爆発時の爆風圧および弾殻破片によって艦船を破壊する。信管は着発信管であり、設定秒時により自爆する安全機能を持っている。上方トンネルは、アンビリカルコネクターを介して搭載母機とASM-1を結ぶ配線を装着している。  

●ロケットモーター部

ロケットモーターはソリッドタイプの固体燃料ロケットで、オートパイロット電子装置からの点火信号により点火し、所要の推力を発生してASM-1を加速した後、速度を維持して巡航飛翔させる。主翼は軽合金製で軸対象直交十字形に配列されており、ロケットモーター外筒に取り付けられている。下方トンネルは下方配線を保護するものである。下方配線は誘導部、弾頭部、ロケットモーター部および制御部を結ぶ配線でASM-1の胴体下部に装着されている。  

●制御部

制御部はサーボ装置と操舵翼からなり、サーボ装置はマグネティックパウダクラッチを用いた電気サーボであり、オートパイロット電子装置からの操舵信号により4軸の操舵翼を駆動する。最大舵角は±20°、最大出力トルクは3.5kgf.mである。

 

F-1ASM-1運用】

ASM-1は初期・中期を慣性誘導、終末期誘導をアクティブ・レーダーホーミング誘導による複合誘導である。発射シーケンスはレーダーで目標を発見すると、発射に必要な管制データをJ/AWA-1対艦ミサイル管制装置を通じてASM-1へそれを伝達する。

発射時はインパルスカートリッジの発火によりパイロンからピストンによって打ち出されるとともにロケットモーターへ点火され、海面上の超低空(海面上約10m程度)まで降下し、FM/CW(周波数変調/連続波)電波高度計により一定高度を維持しつつ目標へ接近する。FM/CW方式は一般的なパルス方式に比べて送信出力を小さくでき、被探知性に優れる利点がある。

初期・中期誘導はストラップダウンデジタル方式の慣性誘導であり、搭載母機から与えられた目標情報と対比しつつ方位制御を行ない、終末期はアクティブ・レーダーにより目標艦船を補足して追尾してホーミング誘導を行なう。なお、ECCM(電波妨害排除)機能を持つとされているが、当然ながら詳細は不明である。周波数変換機能や電波妨害源追尾機能(Home On Jamming)を備えていると考えられる。

目標への突入はシャローダイブまたはシースキミング飛翔で、破壊力は大抵の艦艇であれば、1発で戦闘力を奪い、中小型艦では沈没も免れ得ない程度の威力はある。

なお、ASM-1ECP(技術変更要求)による改良を随時行なっており、誘導制御部を後述するSSM-1(88式地対艦誘導弾)のものへ換装するASM-1改も構想されたことがあるが、これは結局実現せずに終わっている。

 


 

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