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03式中距離地対空誘導弾(中SAM)

 

(写真は防衛省からのリンクです。)


03式地対空誘導弾は2003年度に制式化された陸自の最新型地対空ミサイルシステムで従来のMIM-23 HAWKを更新するものである。MIM-23は1960年代以降、西側各国で採用されて何回かの改良が施されつつも今日まで使用されてきたが、さすがに改良も限界にきたようで、新しいシステムを開発する必要に迫られた。米国はドイツ、イタリアなどの欧州各国とともに新型ミサイル開発計画Medium Extended Air Defense System (MEADS)を立ち上げた。実は日本もこれに参加を求められたが、日本の国内事情からこれを諦め、新中距離地対空誘導弾として研究・開発が開始された。これは日本の大手防衛関連企業の多くが関わる非常に大規模な開発計画で、開発予算においても人的規模においても我国始まって以来のミサイル開発計画と言える。

システムの編成は射撃統制装置、射撃レーダー装置、発射装置、通信装置等によって編成されてFire Unitを構成している。これらは全て写真のような米軍のHeavy Expanded Mobility Tactical Truck (HEMTT)に似た車両(なお陸自に新しく配備された重装輪回収車はこの車両をベース にしたものと思われる)及び高機動車 に搭載されており、高度な路外機動能力を持っている。また一部のシステムを除いて、空輸が可能なサイズに纏まられている。さらにシステムが搭載された各車両はPATRIOTと同様に高度なEMP(電磁波)シールドが施されているものと思われる。なお未確認ではあるが、高機動車に擬似電波発信装置を搭載したデコイシステムも存在するらしい。これは警戒管制システムのFPS-3が装備しているものと同様なものと思われ、電波ビームを空中で交差させることにより擬似目標を作りだし、対レーダーミサイル(ARM)を誘引するものと言われている。

射撃レーダーはアクティブ・フェイズドアレー・レーダーで、高度なECCM能力と多目標同時追尾能力を持ち、目標の捜索、追尾、ミサイルの誘導等を1つのレーダーで済ましている。これはHAWKが捜索レーダーや追尾レーダー、CWイルミネーター等幾つものレーダー装置を必要とすることと比較すると隔世の感がある。またシステムがコンパクトに纏まったため、HAWKに比べて、システム運用に関わる要員数は大幅に減少している。目標情報は射撃レーダーだけではなく、DADS(師団対空情報処理システム)、またBADGE(自動警戒管制組織)を通じて警戒管制レーダー(移動式警戒管制レーダーを含む)やAWACS(空中警戒管制機)やAEW(早期警戒機)からも目標情報を入手することができる。将来的には開発中の対空戦闘指揮統制システムともリンクするであろう。なお、目標情報の共有という観点からいくと本システムが捉えた目標情報も他のシステムに提供できるものと考えられる。これらの能力は後述する見通し線外射撃能力に生かされている。

ミサイルはPATRIOTと同様にキャニスター発射方式であり、発射装置はキャニスターが6器でワンセットとなっている。ミサイルの発射は写真のように垂直発射方式で、これによりPATRIOTのように広い射界を確保する必要が無くなり、陣地選定融通性が大幅に向上している。関係者の間からはビルの谷間からでも撃てるとの話も伝わっている。余談だが現在、開発が進められているSSM-1(改)においても垂直発射機能が要求され、TVC(推力偏向制御)を用いることになっている。

ミサイルの誘導方式は初期・中期が中間指令付プログラム誘導で、終末誘導はミサイル自身が持つアクティブレーダーホーミングによる。これは空自が装備するAAM-4(99式空対空誘導弾)と同様な方式で、これにより多目標同時対応能力を得ている。これらはAAM-4で開発された技術が盛り込まれていることは想像に難くなく、恐らくはAAM-4と同様にアクティブレーダーシーカー、指令送信装置、アクティブレーダー近接信管等のRF送信系に特殊な送信方式を用いていて、非探知性と高度なECCM能力を獲得しているものと思われる。弾頭は指向性弾頭が採用されているであろう。

またこのシステムの大きな特徴として見通し線外目標への対処能力があり、これは目標情報の共有化とデジタル・マップ目標経路予測機能及びミサイル自身による目標探索機能により実現している。これにより目標が射撃レーダーに捕らえられなくても、超低空や山岳などの障害物の向こう側から進入する巡航ミサイルや航空機に対応できる。ミサイルは複合操舵方式を採用していると言われているが、TVC(推力偏向制御)又はサイドスラスタと空力操舵との組み合わせか、技本と三菱重工が特許を取得した双操舵飛しょう体制御が用いられている模様である。(前翼は固定式との話もある)ミサイルの射程距離は不明だが、HAWK(MIM-23)以上、パトリオット以下というのが妥当な線 だろう。

03式中距離地対空誘導弾はHAWKに対して大幅な能力向上を果たしており、随時HAWK部隊を置き換えていくことになっている。 また射程を除いてはPATRIOTの能力さえも凌駕していると言われる。そのためPATRIOT後継のミサイルシステムは本システムがベースに 射程距離を延伸したものになると見る向きもあり、その動向が注目されている。なお本システムの主契約者は三菱電機で、ワンセット(1個群)のお値段は約470億円である。