SSM-1(88式地対艦誘導弾)

 

SSM-1の発射機

 

SSM-1はASM-1(80式空対艦誘導弾)から発展した地上発射の対艦ミサイルだが、他の地上発射型対艦ミサイルと異なる点は、SSM-1は沿岸に配備されるのでは無く、敵の上陸部隊による砲爆撃を回避するため、海岸線より100km以上も奥の内陸部より発射される点にある。この様な運用方法は他に例が無く、我が国独自の兵器体系と言って良いかもしれない。

1SETの構成は以下の表のようになっている。

構  成  装  置

数 量

誘  導  弾

  実弾(又は演習弾)

96発

地 上 装 置

  捜索標定レーダ装置(JTPS-P15)

 6組

  中継装置(JMRC-R5)

12基

  指揮統制装置

 1基

  射撃統制装置(JTSQ-W5)

 4基

  発  射  機

16基

  装 て ん 機

16基

  擬  製  機

所要量

発射手順はジープに搭載された捜索標定レーダ装置(JTPS-P15)が海岸線に進出し、目標艦船を探知すると中継装置(JMRC-R5)を通して指揮統制装置へ目標データを送信し、指揮統制装置は連接する機器のステイタスを把握しつつ、発射位置と目標位置を基に最適の経路を自動的に計算して射撃統制装置(JTSQ-W5)に対して射撃データを送信し、射撃統制装置は発射機に対して発射指令を発する。

ロケット・ブースターにより発射されたミサイルはロケット・ブースターを切り離すと共に内臓のターボ・ジェット・エンジンを始動させ、ストラップダウン型の慣性航法装置の位置データとFM-CW(連続波周波数変調)の電波高度計から得る高度データに基づいて飛翔しつつ山越え又は廻り込み機能により山岳などの障害物を回避し、海岸線に進出した後は超低高度飛翔に移行して海面上を飛翔し、目標に近づくと内蔵するアクティブ・レーダー・シーカーを作動させ、目標を捜索、発見、識別、追尾を行って突入する。

ミサイルのシーカーはハープーン(RGM-84)より高い周波数を用いているとされているので、Kuバンド帯(12.5〜18Ghz)が使われている可能性があり、高いレーダー解像能力とECCM(電波妨害排除)能力を備えているとされる。

信管は着発信管で、発射時の加速度とシーカーが目標を捉えた後にアーミングへ移行する安全装置を備えると共に目標を捉えられなかった場合は設定時間経過後に自爆する安全機能を備える。またオプションで無線による指令により自爆する機能を備えることもできる。なお弾頭は焼い剤を付加した弾頭重量225kgの徹甲りゅう弾である。

このミサイルの特筆すべき点は、極めて高度なECCM(電波妨害排除)能力と目標選択アルゴリズムを持つ点にある。

ECCM能力はパワー・ジャミングに対してはHOJ(Home On Jamming)モードに切り替わって電波妨害源を追跡し、ディセプション(欺瞞)・ジャミングに対しては、真目標と偽目標の位置状況を対比して真目標を探し出して追跡することが出来る。また目標選択アルゴリズムは多数のミサイルが発射されると、距離の近い目標かレーダー反射面積が大きな目標に集中してしまうことを防ぐもので、確率論を応用した極めて手の込んだアルゴリズムを採用し、特定の目標に集中しないようになっている。

 

ミサイル本体にはレーダー反射を低減させるために磁性体を含んだ特殊なステルス塗料が使われていると言われる。

また発射前のミサイル本体は発射筒内に格納されてメンテナンス・フリーであり、発射前に注入装置によってジェット燃料が不活性ガスによる圧力で注入され、またこの燃料は使わなかった場合に抜き出すことができる。

 

SSM-1は米海軍のポイント・マグー・ミサイル射場で発射試験を行ったが、極めて小さな洋上目標に全弾が命中した。その中には米国側によって高度な電波妨害が施された場合も含まれ、米国側に衝撃を与えたと言われている。

 

SSM-1をベースとしてハープーン(RGM-84)の後継として、艦載用としたSSM-1B(90式艦対艦誘導弾)とP-3C等の航空機へ搭載するASM-1C(90式空対艦誘導弾)が作られている。これらはハープーン(RGM-84及びAGM-84)の発射管制装置とインターフェイスができるようになっており、ASM-1CはP-3Cとの母機適合をはかるために翼形状が一部変更されている。また、シーカも若干の改良が加えられている。なお、SSM-1の誘導部をASM-1へ導入したASM-1(80式空対艦誘導弾)改の構想もあったが、これは実現していない。

 

主契約会社は三菱重工業で、ミサイルの単価は約2億円程度と言われている。

 

SSM-1は射程の延伸とTVC(推力偏向制御)を用いた高角度発射機能の付与による生存性の向上と陣地融通性の確保、同時弾着による生残性の向上、ライフサイクル・コストの低減などを目的とした改良型の開発が88式地対艦誘導弾システム(改)として、技術研究本部により行われている。

 


 

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