94式水際地雷(スイサイ ジライ)
 
94式水際地雷敷設装置
 

水際地雷は施設課部隊に装備され、海岸の水際付近に水際地雷原を構成して、敵舟艇等の上陸を混乱させ、対舟艇火力の発揮を容易にするための装備である。内容的には地雷というよりも機雷の一種であり、わざわざ地雷と呼んでいるのは陸自が運用するものであるからだろう。

水際地雷は2種類あり、一つはT型(沈底式)、もう一つはU型(係維式)である。沈底式地雷はヘリコプター及び94式水際地雷敷設装置によって散布され、外径約0.45m、高さ約0.14m、重量約40kg、係維式地雷もヘリコプター及び94式水際地雷敷設装置によって敷設され、外径約0.3m、高さ約0.65m、重量約45kgである。敷設器は敷設車用及びヘリコプター用があり、敷設車両として水陸両用車が新規開発されている。なおヘリコプター用はHU-1系ヘリへ吊り下げて塔載され、地雷の最大塔載数は15個である。地雷の威力は小型舟艇及び浮航戦闘車両を破壊し、航行不能にすることが求められており、舟艇は約100d前後、車両は15d前後が想定されている。

上がT型(沈底式)、下がU型(係維式)

沈底式地雷は浅瀬に敷設され、起爆は磁気及び振動の複合信管によって、また係維式地雷は係維器により短係止状態で待機し、小型舟艇等の音響を感知して浮上し、起爆は磁気感応によるので、容易に掃海されないように配慮されている。なお起爆は威力範囲内で感応して作動するようになっており、磁気発火速度は調定が可能となっている。また遅延発火機構を有しており、敷設から発火待機までの時間を調整できる他に航過計数機能も備えている。なお地雷は一定期間経過後は自爆する時効性を備えている。発火待機時間、時効時間、磁気発火感度、航過計数については、地雷の外部から3段階の調定することができるようになっている。

外観は努めて秘匿容易な色彩(オリーブ色)が採用されており、沈底式は背が低い円筒形となっているため、波や潮流等の影響を受け難く且つ容易に発見され難くなっている。また、PBX系炸薬を用いて耐弾・耐爆性を備えており、信管以外へ被弾しても誘爆しない配慮が為されている他に、他の水際地雷が30mの距離で爆発しても誘爆及び破壊されないことが求められいる。安全機能は安全ピンの他、伝爆系列の形成及び発火待機時間用タイマーの作動による機械的、電気的安全機構を備えている。なお発火待機時間用タイマーの作動は沈底式は溶解片の溶解によって、係維式は水圧によって作動を開始する。

敷設車は新規開発されたもので、日立造船が主契約者となっている。車両重量は16dで最高速度は地上50km/時、水上11km/時となっている。調達価格は約5億円。水陸両用形式の車両で敷設器を2器搭載し1時間に72個の地雷を敷設できる能力を有し、3名の隊員により運用される。微光暗視眼鏡により夜間の運用も可能であり、また標定・記録装置を備えており、電波測位により自車の位置を5mの精度で記録できる。

敷設車及び敷設装置は94式水際地雷敷設装置として、第301水際障害中隊 (船岡駐屯地)、第302水際障害中隊 (幌別駐屯地)、第303水際障害中隊(宇都宮駐屯地)、施設教導隊(勝田駐屯地)に配備されているが、日本周辺の状況の変化により、ポスト冷戦の今日では今後装備数が増えるようなことは無いと思われる。