物理


シュレーディンガーの猫(その1)



突然ですが、ここにリンゴが一個あります。

なぜそう言えるのか? そりゃ、「見たらそうだった」からです。

(正確には理科のお話21参照)





今度は、りんごがありません。

これは簡単に言えば、「見たら無かった」と言う事です。しかし、「目が悪くて見えなかった」という意味ではないですよね?

ですから「無かった」というのは、正確には「どうやっても検出できなかった」、触っても、匂いを嗅いでも、何をしても「リンゴを検出できなかった」という事ですね。注意して下さい。これが「無い」の定義です。




ここで「物理学」の歴史を変えた、有名な実験の話をしましょう。

まず、猫を一匹用意して下さい。そしてこの猫を、箱の中に入れます。この箱は、外からは中の様子が見えない箱です。箱には、猫といっしょに、ある機械を入れます。

この機械は、毒ガスを噴射する機械で、この機械が作動すると、猫は死にます。ただ、この機械は、いつ作動するか分かりません。常時一定の確率で作動する確率を持った、タイマーで動いています。

ですから、この機械といっしょに入っている猫は、いつ死ぬか分かりません。

さらにこの箱は、フタにスイッチが付いています。このスイッチは、箱に取り付けられた爆弾のスイッチで、箱を開けると爆発する仕組になっています。

さてこれで準備OK。機械と猫を箱に入れて、フタを閉めましょう。

・・・・

フタが閉まっているので、中の様子は分かりません。ですから、猫の様子は分かりません。さて、その箱を3分ほど、ジーっと見ておきましょう。

さて、中の猫は生きているでしょうか?

中が見えないので、猫の様子を知るためにはフタを開けるしかありません。けれど開けるとドカン!で、猫の死骸が横たわっているダケでしょう。これでは猫が「生きていたかどうか(過去形)」は分からないでしょう?

つまり、この「箱の中の猫の状態」は、原理的に絶対分からない訳です。技術不足で分からないのではなくて、「根本的に知る事ができない」のです。

ここで「リンゴが無い」の定義を思いでして下さい。

「どうやっても検出できない」というのですから、「無い」の定義と同じでしょ?

つまり、「猫は死んでいる」でも「猫は生きている」でもないんですよ。ただし「貴方にとっては」ですけれどね。猫本人にとっては、どちらかの状態しか有り得ない訳ですから、どちらかの答を持っているのでしょう。しかし、貴方には「原理的に答を知り得ない」(猫本人に聞こうとすると、ドカン!でしょ?)のです。ですから、貴方にとっては「生」か「死」の二者択一的決定は、有り得ません。「分からない」のではなく「無い」のです。

ね、基本的な事だけに、難しいですね。

この実験を「シュレーディンガーの猫」と呼びます。


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