円安とインフレへの対処を!                  戻る

 

 

為替市場において極端なドル買いの動きが出た今年2月20日は、数年後には「あれが日本経済の転換点だった」と言われるようになるでしょう。これから日本はインフレの時代に入ります。もちろん信じる、信じないは自由です。私の一番の希望は、皆さんがこれを読まれたことをきっかけに、ご自身でも情報源にアクセスし、自身の考えを深めていただくことです。

 

 

この2月20日に急激に円安にふれた原因はわかりません(投機筋もしくは日本政府による売り?)。が、この振り子がてこ入れ効果を発揮して、その後も円安基調が持続しています。もともと世界中のみんなが「そろそろドルに対しても円安になるのではないか」と考えていたからです。(現にユーロやその他の多くの通貨に対してはすでに円安が続いています。たとえばユーロに対しては2000年の終わりごろからずっと円安が続いているのです。それに、アメリカ政府が経済政策を転換する時期も遠くない、おそらくこの秋の大統領選挙後に変化が起きる、ということも、円安予想の根拠になっていると思います。)

さて、日本は輸出主導型経済です。最大輸出先であるアメリカのドルに対して円安に変わることは日本経済に大きな恩恵を与えてくれます。(諸悪の根本は、日本が60年以上も同じ輸出型経済政策をとり続けていることにあります。私の経済予測に興味ない方も、日本の経済原則について最後のほうで書きますから、それだけでも読んでみてください。)

この円安とリンクするように、最近日本の経済指標も目に見えて改善しています。以下は、私が口座を持っているマネックス証券のメルマガからの引用です。

 

========<マネックス社長 松本大のつぶやき>=========

2月27日      <春が来た>

株式市場にも、ようやく本格的な春が来たのでしょうか。今日は日経平均も1

1000円台を回復し、東証一部売買高も13億株を超え、全体にいい地合で

引けました。最近の経済指標には目を見張るものがあります。10−12月期

の名目GDPが前期比で年率2.6%増えたことは18日に書きましたが、本

日発表の指標だけを見ても、1月のサラリーマン世帯消費支出が前年同月比で

名目でも3.1%増、1月の鉱工業生産指数が前月比3.4%上昇で3年1ヶ

月ぶりの水準、更に1月の新設住宅着工が前年同月比7.3%増(首都圏に至

っては何と12.3%増)と、驚くような数字が立て続けに出てきています。

今日は東証一部業種別騰落率で見ても33業種全てが上昇で、かつ1位が証券、

2位が不動産です。これはまるでバブルの再現です。本当に信じていいのでし

ょうか?しかし春が来る時は、疑っていても着実に春は来るものです。明るい

気持ちでマーケットを見ることも大切だと、私は思います。(引用終了)

 

このメールがあった日以降も、平均株価はやや過熱気味に上昇し続けています。

これは「春が来た」のでしょうか?

 

そもそも日本政府は、景気回復に向けて一生懸命努力してきました。決して言い過ぎではなく、日銀は自己資本比率の死線を超えてまでも超金融緩和を断行してきましたし、財務省がドル安阻止にかける140兆円の外国為替特別会計予算という意気込みも半端ではありません(国家予算である一般会計は82兆円なんです)。ですから早晩日本の景気が上向くのは「予想された未来」でした。

もともと数年前から日本では政治家が「インフレターゲットを導入せよ」と言ってきたことはご存知ですよね。世間がインフレ待望一色に染まったため政府・日銀も無視できなくなり、中曽根時代以前から持論としてきた「構造改革論」を脇においやって、インフレ政策を続けてきたのです。具体的には円を市場にばら撒き続けてきました(=超金融緩和政策)。今まではその円はおおむね市場に無視されてきました(たまに円が使われ日本の株式市場に買いが入るとポカリと株高になることはありました)。日本の銀行もばら撒かれた円を使って中小企業に融資する余裕もなく、ひたすら国債だけを買って運用するような状況でした。この間、真に自由な経済活動をすすめるユーロ市場では当たり前のように円安になりましたが、アメリカは双子の財政赤字を解消すべく積極的にドル安を吹聴してきたため円高が続き、アメリカ経済に復調の兆しが見えた今、ようやくドル高円安局面に変わろうとしています。金融緩和の効果が現れつつあるので、その結果としてインフレが訪れるでしょう。直近の経済指標が上向いているからといって、すぐに「景気回復だ」と考えてはなりません。繰り返しますが、政府が行なってきたのはインフレ誘導です。ですからインフレに変わる局面においてその表面現象として経済指標が上向いてきたと考えるべきです。

そして、ここからが問題です。マネックス社長さんも言うように、まるで「バブルの再現」なのです。

 

 

最良のシナリオ

厳密に考えれば前回のバブルとは異なる状況も多いでしょうが、似ていることのほうが目に付きます。あの時も円高に苦しんでいましたし、相当量の金融緩和を実施していました。アメリカの経済が悪かったことまで類似しています。むしろ、今のほうがあの頃に比べてもっと極端な円高であり、極端に金融緩和していて、極端にアメリカ経済は悪いのです。ただ前回と比べて絶対確実に異なる点があります。それは「日本はすでに大規模なバブルを経験した」ということです。世間にとやかく言われなくても政府、日銀、財務省はわかっているはずです。私たちは急激な経済変化をコントロールする政府の手腕に期待できるかもしれません。そうすると、大規模な変化は見送られ、順調、持続的に景気は回復します。これは最良のシナリオです。適度なインフレとなり今年中に日経平均株価は1万5千は突破する程度でしょうし消費も活発化するでしょう。

 

 ところがもし私自身がこのようなシナリオだけを予想しているなら、わざわざみなさんに向けて長い文章を打つこともなかったでしょう。

 

 

最悪のシナリオ

何であれ将来を見通すときに必要なことは「最悪のシナリオも想定してそれにも対応する用意をしておく」ことです。このシナリオの最大の根拠は、「そもそも、誰もインフレをコントロールする手段を持っていない」ということです。意外に思われるかもしれませんが、すべての経済指標は最低一ヶ月遅れで集計されるので、これをコントロールするのは神業なのです。(蛇足ですが神業を実践する人も世の中には存在しています。例えばアメリカのFRBのアラン・グリーンスパン議長。実はアメリカ経済は今にもデフレに陥りそうな状況が数年続いていましたが、FRBとアメリカ政府の絶妙のコントロールにより、今に至るまで小康状態を維持しました。アメリカの株式指標であるダウ平均は、テロによる突発事故を除いて、ITバブルがはじけてから大規模な調整局面(=新たな売買のポジションを得るために一度株価全体が大いに下がってしまうこと)を「迎えないで」今日に至っています。これは信じられないような神業です。新聞を見ているとよくわかりますが、グリーンスパンはブッシュが「強いアメリカ・ドル安政策」を表明したすぐあとに「アメリカ経済が冷え込む危険あり」を警告したりしています。正反対のことを言う二人は喧嘩しているのではなく協力し合っているのです。市場関係者は、結局ドルがどちらに傾くかわからずに、思い切った手を打てません。すると結果的にバランスを取って推移するようなことになります。アメリカは口先介入一つを取ってもこのような絶妙なコントロールを当たり前のようにやっています。残念ながら日本には、ここまで腕のたつ人はいないでしょう。)

最近私は日経新聞社の「検証バブル 犯意なき過ち」という本を読んでいるのですが、読むとよくわかります。政府の打つ手すべてが後手に回っており、結果としてバブル発生もその後の急落もコントロールできなかったのです。今回のインフレ政策は当時のバブル前夜よりも「過激」です。先に「最良のシナリオ」で描いたようなコントロールは、いくら経験をつんでいるといっても極めて難しいものと言えるでしょう。それに、本来日銀はこのようなコントロールをする機関ではないのです。実際には日銀ががんばるでしょうが、国民は日銀に過大な期待を寄せすぎていると言わざるを得ません。

 これとは別に、さらに大きな問題もあります。超金融緩和のために日銀が背負い込むことになってしまった多額の日本国債の存在です。

 今、日本の国債の格付けが、先進国の中では最低でボツワナなどと同レベルにあることは、ご存知ですよね。なぜかと言えば、そりゃあ、700兆円も国債で借金してしまったら、誰だって「返すあてのない借金だ」と思うからでしょうね。これは世界経済史上、類のない数字です。今年あたり800兆まで膨れ上がる見通しもあります。

 インフレになると、コントロールするためには、どこかで金利を上げる必要が生じます。正確な説明ではないかもしれませんが、インフレになると債券は買われずに株式や土地などのモノに人気が集まるので、買ってもらうために債券価格を上げて調節ということになります。だから債券の金利を上げるのです。逆に言えば、金利を上げることによりインフレを抑制できます。で、金利が上がると、すでにそれ以前に債券を持っていた側にしてみれば、借金返済の金額が上がるということです。今、日本の借金を一手に引き受けているのが日銀です。つまり金利を上げると日銀が債務超過に陥るのです。この文章のはじめのほうで「日銀は自己資本比率の死線を超えてまでも超金融緩和を断行してきました」と書きましたが、それはこういう意味なのです。世界の格付け機関が「それは借金しすぎ」と断定するほどの国債を日銀が引き受けて、金利が一気に上がれば、当然日銀は破綻します。日銀が破綻するということは、日本の経済が破綻するということです。つまり最悪のシナリオとは日本経済の崩壊です。

 もしこうなれば、誰も円を引き受けなくなり、暴落します。つまり超物価高、「ハイパーインフレ」の到来です。インフレと言えば、年で物価が10%ほども上がるというイメージでしょうか。ハイパーインフレになれば、年で物価が数倍(つまり数100%)にでもなるか、それ以上かはわかりません。

 こんなことにはならないと思いたいのですが、言い換えれば、日本は長期のデフレを打開するためにここまで危険を感じさせるような極端な政策をとってきたということになります。

蛇足ですが、もし仮にハイパーインフレなどになったとして、当然国民は政府に政治責任を追及すると思うのですが、それではいったい責任は誰にあるのでしょう?私は日本国民全員だと思います。政府・日銀・財務省は国民の声にこたえるために一連の政策を打ってきたのです。「こんな極端な政策を望んだのではない」みなさんそう言うかと思いますが、実は私たち自身がインフレを望む世間風潮を醸成してきたのではないでしょうか。インフレはターゲットできない性格のものなのに、インフレターゲット論が世間を沸かせてきました(円安とインフレについては村上龍と経済アナリストたちの対談集「円安+インフレ=夜明けor悪夢?」という本に詳しいです)。インフレターゲット論者は自民党に多く、代表格の一人は、先の参議院選挙で獲得投票数一位に輝いた舛添要一ですし、こういう論が盛んであるところで前回の衆議院選挙があり、自民党は過半数を維持しました。確かにインフレターゲットは政策論の争点にはなっていませんでしたが、それはむしろ国民が自明のものとしていたからではないでしょうか。最近、田原総一郎の「日本の戦争」、山本七平の「空気の研究」などの本を読んでわかったのですが、戦争のときもバブル経済のときも、極端から極端に走る国民性はちっとも変わっていないと私は痛感しており、よけいに今回も心配になっています。このことについてはあとで再度触れます。

 蛇足ばかりですみません。そろそろ始まるインフレが予想以上に激しいものになるかもしれない恐れがあるのに対し、私たちはどう対処できるのか、次に考えます。

 

 

勝ち組と負け組に分かれる

 もう今までと同じように、国民みんなが平等に経済生活を送れるというわけではないと思います。実質的にはすでに「国民総中流時代」は崩れてしまっていますが、経済格差がさらに広がることが予想されます。

 

 

勝ち組

というか、相対的に資産保全に成功する人の経済環境を想像してみます。ありうるインフレは、円安、株高、地価高、預金の減額、それとひょっとしてあらゆる物品購入価格の高騰を意味します。ですから成功する人の経済環境は、外貨保有、株保有、土地保有にいそしむことです。外貨は、ユーロに対しても数年前からすでに円安ですが、さらに円安が広がる可能性が高いです。ドルに対しても、円安基調になりました。105円の時と比べれば110円〜111円に変わった現在は割高ですが、今からドル保有を増やしてもさらに円安になる可能性が高いために資産保全に役立ちます。また、日本の株価や地価が高くなる可能性があります。ただし株は水物なので銘柄の選択は難しい。それから、平均株価全体に投資するパッシブ投資もありますが、これもあまりお勧めできません。私は以前、アメリカ株のパッシブ投資をみなさんにお勧めするお知らせをしたことがあります。その考えは今も同じであり、長期に、少しずつ投資していけば安全に運用できる期待があります。具体的にはマネックス証券のバンガードスモールキャップインデックスファンドを、今もお勧めします。細かな話ですがアメリカの大企業の平均株価にかけるパッシブ投資は、今後アメリカ政府が金利を引き上げる噂もあり、あまりお勧めしません。が、中小企業の株価の総体にかける「スモールキャップ」なら、まだお勧めできます。これに対して日本株のパッシブ投資はどれもお勧めできません。今から日本株が上昇するかもしれないと言っても、乱高下する可能性があるのです。先ほども書きましたように、今はバブル前夜に酷似しています。バブルがはじけるときを誰が正確に予期できたでしょうか?日本はいつも極端から極端に走ります。このような経済環境の国の株に対するパッシブ投資はお勧めできません(これに対してアメリカでは金融の達人が神業と言えるようなコントロールを施して経済の順調な発展に努めていることを、先ほども書きましたよね)。日本株に興味がある人は、がんばって銘柄選択をして個別株に投資することをお勧めします。ですが繰り返しますが、素人に銘柄選択、売買のタイミングなど決めるのは非常に難しいのでまずは勉強してください。アクティブな投資信託を買うことも良いかも知れません。私がおすすめできるのは「さわかみファンド」とフィデリティの日本株ファンドです。100ほどもある大部分の投資信託は、運用しているのがしょせん私たちと同じサラリーマン社員なので、冴えません。投資信託の商品の選択も慎重に行なう必要があります。

それから、残念ながら私は不動産に疎いのでなかなかできないのですが、今割安な不動産、それも無難な物件であることが前提ですが、それに投資しておくことは超オススメです。売り時を間違えなければ必ず儲かるでしょう。手軽に小額ではじめられる「不動産投資信託」という商品がありますが、株式の投資信託と比べて情報開示が十分にされておらず、私はあまり気に入っていません。ですがそういうリスクを知った上でこれを買うのも一つの選択と思います。

 それから、皮肉なことに、日本政府がお金の価値を減額する何かの施策をすれば、ローンの価格も同様に実質減額されることも覚えていてください。ローンを抱えている人はそういう意味では有利です。ただし、これには金利が上がらないことが前提です。先に書きましたが、インフレが加熱すれば早晩政府は金利を上げざるを得なくなります。物価上昇に対して金利の上昇のほうが激しい可能性が高いので、そうなるとローン負債者はさらにマイナスの打撃をこうむります。具体的には仮に物価上昇4%に対して金利をコントロールしようとしても、その前に5〜6%まで上がってしまうと、「キャピタルフライト・円が日本を見棄てる」の著者木村剛は指摘しています。ですから今、変動金利でローンを抱えている人は要注意です。金利が固定されているローンであれば問題ないです。

 

負け組

 言わずもがなですが、経済環境の急転を目の前にして何もしないことが負けにつながります。今から預金の価値は激減するかもしれないです。けれども不思議な感もないわけではない。タンス預金にしろ、銀行に預けているにせよ、預金の価値が減るというのは、盗難にあったり、銀行が着服したりしなければありえないと、一見思えます。それがそうではないのです。

 円安の意味。先ほど1ドル180円と言いましたが話をわかりやすくするために、今100円の相場が1ドル200円になったとすると、それはドルに対して円が半値になったことを意味します。銀行に預けているだけで、価値が半分になります。輸入物品の価格が上がるのにそれに対応して財布の中身が上がらないというアンバランスです。

 もっと具体的、直接的に預金の価値が下がるという噂があります。今日本は、お札が新札に切り替わる時期を控えています。この時に「新札交換税」というか、旧札と新札の交換比率を日本政府が操作するのではないかという噂です。そもそも新札を発行する予定は一年以上前からありました。そこですぐさま「新札交換税」が生じるという噂が立っています。そういうシナリオを描いた本の一つ、「ライオンは眠れない」を私は買って読みました。サミュエルバトラーという外国人著者の名前になっていますが実は大蔵省の人間が書いたのではないかという噂があります。新札と旧札の交換比率を、例えば新札の1万円に対して旧札1万二千円必要とします。これで実質タンス預金の価値は約20%減額されたことになります。簡単ですね。この噂の信憑性がなぜ高いかというと、実は新札への交換時期が、はじめこの4月だったのが、7月に変わり、今、今秋というふうに順に先送りになっているからです。いかにも慎重に時期を伺っている感がします。ことに7月を避けた意味は、参院選に重なるからではないでしょうか?それよりは選挙が終わって一段落したあとに一気に改革を断行する方がいい。覚えていますか?先の衆議院選が終わった直後から、道路公団の改革は骨抜きにされ、イラク派遣が決定し、年金は改悪されることが決定されました。国民にうけない施策は選挙直後に行なうのが一番です。そういう意味で新札の発行時期が今秋に先送りになったことは信憑性を高めています。このことは、私が愛読しているメルマガ「ビジネス知識源」でも繰り返し指摘されています。

 さて、繰り返します。為替で半値、交換税で20%減、そしてハイパーインフレが訪れて物価上昇が賃金より2倍高くなるとすれば、今より預金の価値は約5分の1に減ります。

 仮にそうなったとしても、やはり預金で預けているのが一番、という人は多いと思います。実は、日本の経済は資産を消費者から収奪して企業に還流することが常態でした。このような状況に慣らされた私たちが、もうどうなってもいいやと思っても、うなずけることです。日本人には「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という行動原理があります。本当に大事なことはこういう日本の常態を変えなければならないということですが、これについてはあとで再度触れます。

 

 

ずっと同じの日本の経済政策

 以前から繰り返し表明していますが、日本の資本主義経済は世界各国の資本主義と同じものではなく、むしろ社会主義に近いものです。江戸時代からの「赤信号をみんなで渡る」伝統が実質社会主義を維持しています。このことはウォルフレンの著作に詳しいです。はじめてあたる人はまずは「ウォルフレン教授のやさしい日本経済」を読まれることを超オススメします。この本、ちっともやさしくないですが、ウォルフレンの他の著作よりはまだましです。ひとたび理解できればそれは日本経済の急所をつかめたことと同じ。目からウロコ状態になります。

 日本の経済政策は第二次大戦中からの「市場拡大政策」が引き続いているだけ。日本人が、経済がよくなると感じる場合は、生産が伸び、輸出が伸びる時です。一方で、消費を伸ばす鍵になる輸入については、これを厳しく制限した。今でも「非関税障壁」と言って、輸入製品が国内市場に出回らないよう調整されています。(最近は輸入品の安いものもちらほら見せながら完全には自由を許さないコントロールが続いています。例えば一時はやった100円前後の輸入発泡酒。今はあまり見かけなくなりましたね)しかしこれはおかしい。経済はお金が循環することで成り立ちます。生産が伸びれば、消費も伸びなければ一貫しない。輸出だけがんばって輸入しなければひずみは拡大する。その一貫しないことを、日本経済は60年以上もやってきました。(今も、NHKでは「プロジェクトX」などで商品開発→生産が伸びる→サクセスストーリー、とやっています。ちょっとこの見せ方は国民をだましていることになるので感心しませんが、喜んで見ている人もよくないと思います。)アメリカから技術を輸入してそれで国内企業を鍛え、やがてその分野でアメリカ企業をしのぐほどの力をつけさせて輸出攻勢に出るということを高度経済成長期までずっとやってきました。

ところが日本がでかくなり、世界的に影響をもつまでになった今ではこんなことがうまくいくはずがない。80年代になってアメリカが日本に文句を言ってきた(貿易摩擦問題)。アメリカ経済の事情もあって、円高にせざるを得なくなった(プラザ合意)。輸出を信奉する国にとって円高は恐怖です。そういうときに日本の官僚が思いついた奇策こそが経済バブルを生じさせること。土地の信用を利用して無理やりお金を生み出す壮大な実験でした。実験を行なったのは当時の大蔵省です。それに国民が乗っかった。だが結局はうまくいかなかった。その後、市場拡大政策が方向修正されたかというと、そんなことはまったくありません。今もみんな、どうすれば生産が伸びるか、輸出が伸びるか考えるだけで頭がいっぱいです。

 

 

政府主導の日本経済崩壊計画

 私が書いた最悪の予想を、日本経済の今までのパターンとあわせて考え直せば、ショッキングだが当然の結論が出てきます。それは、財産課税やハイパーインフレが、すでに政府・日銀・財務省の今年の行程表に載っているのではないか、ということです。説明を一切しないで政府はまたもや日本国民を右往左往させるような経済の悲喜劇を起こそうとしているかもしれない。

今までの議論を政府の立場からひっくり返して見てみるとよくわかります。繰り返しになるので簡単に書きます。

 

大前提としては、輸出主導型の経済を維持すること。バブル経済時に失敗した財務省に代わって日銀が台頭。日銀の一番の存在目的は、円の信用を守ることだから、バブルなんてとんでもない。この構造を改革したい。ちょうど変人首相も「構造改革」を主張してくれる。そこで、まず冷え切った不況、円高の下で輸出産業にリストラを誘導。日銀、喜ぶ。しかし輸入産業、赤字企業、公団は、自民の抵抗勢力や、天下り先を確保したい官僚に守られリストラせず。日銀、がっかり。

いくつかの経済指標が改善されてくる。ところがお金は消費に還流してこない。おもに輸出で稼いだドルが日本に蓄積されるだけで、使い道もまったくない。アメリカの消費を助けてあげているだけ。だからお金が足りない。バブルのときは土地の信用を利用したが、この手はもう使えない。

だったら「円」に対する国際的信用を利用すればいいじゃん、と財務省。円を市中に溢れかえさせれば、いやがおうにもインフレ到来。輸出主導型経済は完全復活するはず。うまくいけば赤字も帳消しにできる。なんたって財布の懐が寒くなるのが財務省にとっては一番困ること。それで日銀を攻め立てる。日銀は円の信用を守る番人だからおいそれとは了解しない。

ところがここで、インフレターゲット論。デフレに飽き飽きした国民が後押し。国民に攻められては日銀もどうしようもない。わかりました、日銀は自殺しましょう、と福井総裁。日銀は本来してはいけない超金融緩和を実施。財務省は円をばらまく。ばらまいても有効に活用されなければ意味がない。現に有効に活用されなかったから、さらに国債を日銀が引き受けることに。これは、日銀にとって自爆装置。

このまま行ったら先の土地バブルと同じで、いつか円が崩壊します。「日本はたいへんなことをしているんですよ」と格付け機関が国債の評価を下げる。

だったら、崩壊のシナリオを今のうちに作っておけばいいじゃん、と政府、財務省。財産課税を実施しやすくするために新札を発行することにしましょう。宣言は小泉さんがしてくださいね。時期は自民党に配慮して、参院選のあとにしておきましょう。財務省はハイパーインフレになるよう、140兆もの巨額の円を今年は用意しますから。円安から始まること、間違いない。日銀はできればインフレをコントロールして、最悪の事態を招かないようにしたい。でも、ようやく活況を呈しそうな矢先で金融を引き締めれば世論が許さない。必然的にコントロールの手は後手に回るしかない。

経済指標の改善を受けて株式が上昇(現在の状況です)。これがじわじわ上がるようならよいが、何かのきっかけをもとに、みなが「日本は本当は危ないんじゃないか?」と思い出すとやばい。きっかけとは、国債の格付けがまた下がるとか、実は不良債権処理がまだすんでなかったとか、など。円安が急速に進み、金利が急上昇。

ハイパーインフレ到来。日本の信用「円」はたたき売りされる。死に体の日銀、最後に夢が実現。つまり、円高の今までは安穏としてきた輸入企業が超円安になりばったばったと倒れ始める。金利が高騰するため赤字決算企業も一瞬にして消える。その代表は大手建設業だが、今のままだとワンカップの企業も同じ運命をたどります。小泉さんの熱の入った演説の後、財産税が実施。抵抗勢力の願いむなしく政界も再編必至。確かに構造は改革されるが、饗宴のあと一転日本は大不況に。今度は不況下で安い輸入物品が価格を吊り上げる「スタグフレーション」到来。ここで財務省が本領発揮。日本に輸入はさせないと非関税障壁。ようやく過熱した経済が収束に向かう。

 

ということになりませんか?全体的なお金の流れとしては、消費者、国民がその費用を捻出して円安を演じ、輸出企業に与えることになり、バブル経済と同じ結果です。結局、今までの経済原則を維持することになります。

 

 この予想を受ければ、腹立たしいと思われる方がほとんどでしょう。先に紹介しましたウォルフレンは、「日本人は政府当局から情報を遮断され、無知の状態に置かれている。日本人は一人一人が市民として政府に説明責任を果たさせるべきだ」と説きます。

 ところが私は、ウォルフレンとは異なる主張を持っています。以下は経済予測も超えた、日本という国のかたちについての根本的な議論です。興味ある方のみご覧ください。

 

 

この国のかたち

日本国民はいつも政治に不満を持ちますが、そういう政治を現状のままにとどめているのも国民自身だと私は思います。そもそも日本は島国で外国からの侵略もほとんどなく、定常状態であることを良しとする民族でした。そこで家長を中心にみんなが一つにまとまって何でも同じ方向に向かって歩きました。みんなが一つにまとまるための最も大きな象徴が天皇でした。明治になってそのことが憲法に明文化され、今にいたっています。この定常社会の伝統は個々人の性格をも見事に規定してきました。それが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ことであり、「出る杭は打たれる」ことであり、山本七平が言うところの「空気支配」です。橋爪大三郎は「togetherness」と命名しています。今ではほとんど日本人が自然にしているところの行動原理となっています(これを読んでいるあなた自身がそうなのですよと、私は言っているのです)。

第二次大戦前、負けがわかっていながらアメリカ開戦が決まったとき、国民は晴れ晴れとした気分になったそうです。後世の私たちの教育では、戦争が始まった時、政府や警察には逆らえないのでやむをえず悲惨な運命を引き受けて兵隊が戦地に赴いたような物語に仕立てられていますが、あれは嘘です。国民は真の情報も知らされなかったから、仕方なかった、という論も、嘘です。本当は、国民は真の情報を知ろうともしなかったのです。今も同じです(この文章を読みながら「自分には関係ないよ」と思っているあなたのことです)。さらに、負けがわかっていながらアメリカ戦が決まりそうなとき、天皇自身が「これは絶対に負ける戦争なので中止すべきだが、今自分が戦争中止を言い出したら国民は私を精神病院に放り込んで代わりに誰かを立て、めちゃくちゃな戦争を始めるだろう。だから私が戦争を指揮するほうがまだましだ」と思ったそうです。これも、私たちが授業で学んだこととはたいそうニュアンスが異なりますが、実はこれが日本人なのです。先の経済バブルも同じ。確かにバブルを引き起こす経済要因はそろっていましたが、国民自身が乗らなければあんな狂乱騒ぎにはならなかったはずです。マスコミが騒ぎ、国民がそれに乗ったのです。私はこの国民性が変わることはないとほとんどあきらめています。今回文章にしている内容も、この国民性があればこそ、十分に予想される未来なのです。

 だから、日本は変わるべきだなどという大それたことは言いません。でも、あなたはあなた自身の考えで行動して欲しいと言うことはできます。株式で儲けるために一番大事なことは、実は「他のみんなと違うことをすること」なのです。そしてこれこそが個人として経済全体の安定に役立つ唯一の方法でもあります。変わり者が勇気ある一歩を踏めば、それは経済の方向が極端に触れてしまうリスクを減らすからです。ですから、勇気ある一歩を踏むあなたは、自身の資産を保全する上、日本経済の安定に一役買うことができるわけです。

 

 さて以上の通り、かなり大胆に予想を書いてみました。ハイパーインフレなどは予想が当たっても悲しいですし、当たらなければそれにこしたことはありません。ただ冒頭に書いたことを繰り返しますが、私の一番の希望は、この文章に対してすぐに信じる、信じないの判定を下す前に、皆さんがこれを読まれたことをきっかけに、ご自身でも情報源にアクセスし、自身の考えを深めていただくことです。そのために、私自身の情報源はできるだけ出典を明示したつもりです。そう言えば最近村上龍は、JMMという経済メールマガジンを主催しているということで、私もまだ見ていないのですが、若い人が資産運用を考えるのに役に立つことが載っているかもしれないので興味ある方はアクセスしてみてください。また、日本経済の話をしているのに経済学者からの引用は少ないですが、経済学者は私たちに役に立つ内容を書いてくれませんし自分自身もあまりわかっていないようです。専門的で難しくてもチャレンジする気がある方に、日本人では野口悠紀雄をお勧めします。外国の論者ではR・ターガート・マーフィーもお勧めです。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。ご指摘など何かあればお教えください。

 

 

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