.モンロー研究所での体外離脱体験(OBE)はどの程度信用できるのか?

2004.8.17 更新
2004.8.14 作成


体外離脱体験 (OBE: Out of Body Experience) で有名なモンロー研究所の各種プロジェクトでの報告事例はどの程度、信用できるのかを検討してみます。

この検討のために、ロバート・モンロー自身の著作ではなく彼と11年間の間、共同調査に携わった
Rosalind A. McKnight の著作
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"Cosmic Journeys My Out-of-Body Explorations with Robert A. Monroe"
ISBN 1-57174-123-2 Hampton Roads Publishing 1999
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を吟味してみます(この本の日本語訳は出ていないようです)。以下、特に言及がない場合はこの本からの引用です。

今回の検討でロバート・モンロー自身の著作を直接の対象としないのは次の理由です。

(a) ロバート・モンロー自身の著作の内容は対外離脱後の異世界の記述は多いのですが、この現実の地上世界に直接関わる記述が少なく検証に向いていません。たまに地上世界の記述がある場合でも遠い未来やモンローの過去の個人的体験でありこれも検証に向いていません。

(b) Rosalind の著作にはこの現実の地上世界に関わる記述が豊富で、しかも個人的体験に限定されない内容が含まれています。このため、検証に向いています。

(c) ロバート・モンロー著作は、Rosalind との共同調査で得られた多くの具体的事例をベースにし、それらを抽象化、一般化しています。これらを検証するにはその元となった個々の具体的事例をあつかう必要があります。

(d) 批判的な読者に対する配慮の違い。ロバート・モンローは批判的な読者の視線を十分に考慮して記述内容を選択しているいる様子が伺えます。 一方、Rosalind の著作ではそういった考慮はあまり見られません。従ってRosalind の著作の方が資料としては利用価値が高いと判断します。

まず、1976年にロバート・モンローが Rosalind を被験者として行った未来への(精神的な)時間旅行の実験の記録を見てみます(この記録は277ページから292ページにあります)。 記録では Rosalind が西暦3000年頃へ精神だけ時間旅行し、その場で体験しつつある内容を直にモンローに口頭で報告しています。その内容をいくつか列挙してみます。

(1) Rosalind はアメリカ大陸をはるか高空から見下ろしており、その大陸の形が細く変化していた。海から隆起した場所と海に沈んだ場所があり、緯度も変わるほどの劇的な変動が地球に生じていた。北極と南極に相当する位置も移動していた。

(2) 21世紀の始めにブラックホールの影響で、地球の両極が大きく移動していた。原文では次のようになっています。
---{
"Thus, in the early part the twenty-first century there were major shifts on the earth, followed by a seriese of minor ones. There were some major things happening throughout the universe. There were pulls on our poles. It seems there was a lot of activity in one part of the universe that directly affected our earth.
"In fact there was a mojor shift in the universe--something to do with black holes--that directly affected us.
---} 279ページ

(3) 1970年代に宇宙人によって多くの人間が UFO 内部に誘拐され脳内に通信装置が移植(インプラント)された。
---{
"The highly evolved space beings had taken many people onto spaceships and implanted communication devices in their brains.
---} 280ページ

(4) 1977年(この実験の翌年)初頭、多数の宇宙船が到来して地球のまわりを囲んで浮かび、それらの宇宙船からたくさんの小さな宇宙船が出てきた。1980年までの間により多くの人々が他の惑星とのコンタクトを信じ始めるようになった。
---{
Between 1977 and 1980, many more people began to believe in interplanetary contact. Beginning in 1977, spacecraft came int great numbers and hovered around our planet. Many of the smaller craft came from larger spaceships.
---} 280ページ

(5) 悪い宇宙人も地球に来て、人間を誘拐してインプラントした。西暦2500には地球は彼らとの宇宙戦争に巻き込まれた。しかし、良い宇宙人が地球に助けに来てくれた。
---{
"But there were beings from outer space that made contact with planet Earth who were not reiendly and did not have the best of intensions. They also had been in contact with the earth for some time and abducted and implanted many humans.
...skip...

"It is around the year 2500 when we were involved in a space war with these beings. But it didn't long long, because a balance of power took place, with our highly evolved alien friends from outer space helping us.
---} 281ページ



以上、ざっと引用しましたが、巨大な地殻変動、地軸の移動(Pole shift)、良い宇宙人と悪い宇宙人、宇宙人によるアブダクションとインプラント、宇宙戦争…などなど、いわゆるオカルト界の定番アイテムが山盛りです。中でも(4)の1977年〜1980年の出来事(西暦3000年の未来から見た歴史的事実)は完全に外れています。

総合的に判断すると上記の(1)〜(5)の本質部分は Rosalind が無自覚のまま生み出した幻想(いわば白昼夢の類)だと判断するのが妥当だと考えます。 Rosalind が嘘をついているというのではなく、彼女は単に幻想を事実(異世界で体験した事実)だと誤認しているだけでしょうけれども。

明瞭な意識を保ったまま、別世界のイメージを生成し、そのイメージ世界の中に入り込んで各種の体験をすることは体質や訓練によって可能なことです(シャーマンや、魔術、密教の修行がまさにそれを含んでいます)から、(1)〜(5)を Rosalind の報告通りに解釈する必要性はありません。

さらに上記の実験の後、1976年12月〜1977年1月の間に、Rosalind はロバート・モンローとの実験で体外離脱した状態で宇宙人の UFO を訪れたと述べています。その時に、過去の彼女の誕生時の情景や子供の頃、プールで溺れた時の詳細な情景を宇宙人の機械を通して見たと述べています。その宇宙人の機械は人間の前世や来世まで表示できると言います。

---{
"The leader has pushed a button and tells me to lie on the table. Now `he's' bringing the eyelike thing down over me and is turning the table around so I can see what's behind me--which is a large screen. Now, the eye comes down over me, and I can see pictures of me when I was a little girl! I can see whole experiences, both pleasant and unpleasant. The beings are taking pictures out of my brain and displaying them of the screen. This instrument records the complete consciousness of the indivisuals.
... skip...
And this technology can show other lifetimes of a person -- including the future. This instrument is going deeply into my whole history and is throwing it right up there on the screen. Nothing is hidden.
---} 185ページ

ところが、これほどの万能機械を持った宇宙人や精神的に高度に成熟したRosalind の目に見えないガイド(彼らは既に時間の束縛から自由な存在)がナザレのイエスについては "highly evolved being" (283ページ)とか、ごくありきたりで抽象的なことしか言えず、イエスの具体的な人生、行為については一切、具体的言及ができないでいるのは奇妙な話です。

彼らガイドの語るイエス像は貧弱ですが、もっと貧弱なのが彼らの伝える「智慧と哲学」の教えです。225ページから238ページまで"The Wisdom and Philosophy of the Invisibles" の章があり、ここで見えない存在(ガイド)が語る教えが記載されています。そこでは

---{
We are a universe and are a part of a universe, just as we are God and are a part of God.
---} 227ページ
「我々は神であり、神の一部だ」とか、

---{
"The Aquarian Age is the speeding up of vibrations on many levels of the existing visible universe, and many dimensions of the soul level of existence.
---} 228ページ

水瓶座の時代、バイブレーション、ピュアなエネルギー、そして

---{
What is the origin, and final end, of the physical universe, according to your religion?
...skip...
"It was created from man's need to create.
---} 229 ページ。

のように宇宙は人間のために作られたとか、お気楽で安っぽく中身の無いニューエイジの宗教がダラダラと語られています。

一方、同じ Rosalind が被験者の場合であっても、高く評価すべきケースもあります。その端的な例が255ページから268ページに記述された patric event (パトリック事件)です。自分が死んだことを自覚できていない死後の存在(つまり幽霊)に対して体外離脱した人間が、手を差し伸べるという極めて注目すべき事例です。

まず、別世界の存在から Rosalind の口を通して次のような説明がなされます。自分が死んだことを知らない彷徨える魂が何百万も存在しており、かれらを救う必要があると。

---{
We were speaking to you of the souls who are still tied into the earth energies, even though they have stepped out of the physical body, and who are unaware that they are no longer in physical form. They have been called 'earthbound spirits,' and even `ghost,' These souls need help.

"There are many millions of souls that are in the earth vibration with the feeling that they are still in their physical bodies. They are locked into a time zone. It is necessary to penetrate their time zones, to talk to them individually and bring them into the awareness that they are no longer in physical form.
---} 258ページ

次に、1821年にスコットランドの片田舎 Bar Bay Harbor で生まれた Patric O'Saunessy が木材運搬船 Laura Belle 号で航海中に沈没し、魂だけが長く彷徨っていた時に Rosalind とコンタクトさせられ、彼女の口を借りてこういいます。

---{
"It's so cold. It's so cold in this water. Oh, my God. If you can just send someone. It seems as if I've been floating out there for so many days. It's so cold! I don't see any of my shipmates.
---} 262ページ

何日も海に浸かっていて、とても寒く、仲間の船員は見つからないと。彼は現在が1879年だと思いこんでおり、一晩中(少なくとも12時間以上)、丸太に掴まって真っ暗な中、孤独で海上を漂流していると思いこんでいます(実際は100年もそうしていたわけですが)。

---{
I must have been here all night -- at least twelve hours.
---} 264ページ

モンローは patric に名前や生まれた場所、船の名前、何があったのか、親類のことを尋ねながら patric にもう丸太にしがみつかなくていいんだ、光がみえるだろう?、両親が迎えにきているから一緒に行こう、と誘います。彼は救いの手が見えるようになります。

---{
PATRIC: " I see a hand. Who is reaching their hand down to me!"

RAM(モンロー): "And there will be a light, and you will be able to see in a new way."

PATRIC: "It is getting lighter. The darkness is lifting. I have release the ship. I feel as if I am floating above the water. I can see... I can see... Is that my mother? It's my mother! I's my mother..." (crying)

RAM: "Yes, yes. And you can move on now, Patric."

PATRIC: "It's my mother and my father reaching for me! (crying uncontrollably)

RAM: "That's fine. Go with them."

PATRIC: (still crying) "Excuse me for crying... I feel so happy. I don't know who you are, but you have helped me."

RAM: "I am a friend."

PATRIC: "It's so good to get out of the water...outof the darkness. Thank you ..."

RAM: "There are many friends waiting for you. Go on and away."
---} 266ページ

この部分の訳出は不要でしょう。まことに感動的な場面です。


この patric event がベースになってモンロー研究所のプログラム(体験ツアーのようなもの)が作られ、以後、一般参加者も同様の事例を多数経験しているという事実の重みも評価できます。

patric event 関連の報告に重大な虚偽が含まれていないという前提の上で、私はこの patric event こそ、モンローや Rosalind の最大の業績、発見であり宗教的、哲学的にも極めて深い意義をもつものだと考えています。 この patric event が Rosalind の幻想に過ぎないと判断するのは、それを否定するにたる実験的事実が見つかってからでも遅くはないと思います。patric event を安易に信ずることも、科学のドグマで安易に否定する事も共に賛成できません。

宗教的な面から見ると、patric event は極めて重大な意味を持ちます。キリスト教の臨終のサクラメント(聖体と終油、洗礼と聖餐)や仏教の臨終儀式、読経・供養の類がどの程度まで有効(あるいは無効)なのか、これを具体的に評価する手段となりうる可能性を持っています。

私は、臨終の当人が深層意識レベルで強い宗教的確信を持たない場合(大半の人間に当てはまります)、従来の宗教の儀式はほとんど役に立っていない、ほぼ無力だ、と予想しています。つまり、現代の大半の人間にとって、いま正に死ぬという状況、死んだ直後の状況では従来の宗教による救いや導きは、迷信と紙一重で何の役にも立たないと。このような状況では patric event が端緒となったモンロー研究所の手法は宗教的に決定的に重要な意義をもちうる…こう評価します。


従って、Rosalind の場合は

(z1)体外離脱して至った「別世界でのリアルな体験」と、
(z2)体外離脱体験中に生じた「幻想の中での体験」

が相当程度まで混在している、と判断しています。前者の中には patric event のような高く評価すべきものが含まれます。

結論として、モンロー研究所での体外離脱体験の事例には高く評価すべきものと、「幻想の中での体験」が相当程度、混在していると考えます。



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