インテグラル樹

Integral trees


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Story
 播種ラムシップは、生命の発生に適した惑星をもつ恒星系を順にめぐりながら、地球種の生命を植え付けてゆくことを目的とした宇宙船だ。そのひとつ「規律(ディシプリン)」号は、太陽よりやや重い恒星「T3」を訪れた際、これと連星系を成す古い中性子星「ルヴォイ星」の周囲に大気の円環体(ガス・トーラス)を発見した。ルヴォイ星の周囲を巡る「ゴールドブラッド惑星」から流れ出した大気から成る完全なガスのリングで、濃密な中心付近では宇宙服なしでも十分呼吸可能なほどだった。かれらはそこを「スモークリング」と名づけ、探査を開始した。
 報告は熱狂的なものだった。スモークリングの誕生から10億年、自由落下状態の特殊な環境下には独自の生態系が進化していたのだ。中でも特筆すべきは、ときに100キロ以上の長さに成長する巨大な植物「インテグラル樹」だった。インテグラル樹の両端は、スモークリング内を公転する大気の速度差によって常に互いに逆向きの風を受けており、積分記号のように湾曲している。両端部には葉が生い茂り、またツリーの重心からはるか離れているため潮汐力による擬似重力があって、人間の居住にはうってつけだった。乗員たちは貨物・補修モジュール「CARM」に乗って次々とスモークリングに降りてゆき、やがて「規律」号はからっぽになった。ただ一人、船のコンピュータに人格を転写された監察官シャールス・デイヴィス・ケンディを残して・・・。

Background
 ラリィ・ニーヴンの小説「インテグラル・ツリー(The Integral Trees ハヤカワ文庫SF)」に登場するスモークリングの景観と、「インテグラル樹」の巨大さを表現したくて作成したパノラマです。原作は植民から500年後、「規律」号の子孫たちの時代ですが、ここでは乗員たちがはじめてスモークリングを訪れた時の状況を描いています。これは、まあ、正直言うと筆者の造形力の問題です。原作に登場する原始的かつ低重力に完全に適応した子孫たちを上手く描ければいいのですが・・・。(^_^;)
 パノラマでは、初期状態で正面遠方に見えるものを含め、3本のインテグラル樹が見えます。カメラは一番近い樹の、全長100キロにおよぶ幹の中央付近、表面から数mのところにあり、真上と真下には、この樹の端房がかすんでいます。幹は直径が1キロ以上もあるので、この近さだと湾曲がほとんどわかりません。
 飛行している箱型の乗り物がCARM・・・Cargo and Repair Moduleで、4m×10m×40m、4基の補助エンジンと1基の主エンジンを後部に備えています。大気圏内ではもっぱら補助エンジンが用いられます。
 やや下方には変形した水滴が浮かんでいます。スモークリング内にはこうした大小の水滴が多数浮かんでおり、「池」と総称されます。
 スモークリング自身は、雲に隠れてあまり判別できませんが、カメラの真下からツリーの端房(葉を蓄えた部分)と平行な方向に伸び上がる水色の帯で、こちら側に向かって反り返りながら空に溶け込んでいます。もっとも、スモークリングの大気の奥行きは数百キロに達しているので、リングの外がどれだけ見通せるのかはさっぱりわかりません。スモークリングの描写といえば、Michael Whelanによる息を呑むような表紙イラストがありますが、実際に描画してみるとかなりの太さをの湾曲した円柱状に見えるので、必ずしも正しい比率で描かれているとは言えないようです。
 なお、小説「インテグラル・ツリー」には、続編「スモーク・リング(Smoke Ring ハヤカワ文庫SF)」があり、またその時代背景は、同じくニーヴン作「時間外世界(ハヤカワ文庫SF)」と共通になっています。

 My Favoritesでも紹介しているUnknown Spaceでは、スモークリングを題材とした素晴らしいオリジナルCG3部作が公開されています。それぞれ独自アレンジによるジャングル「池」そしてインテグラル樹が描かれています。これはすごい。ホントに。視覚効果の進化が目覚しい昨今、はやくニーヴン作品の映画を見たいと常々思っていますが、早くもその一端がかなえられたような感激を味わえます。

Production Note
 このパノラマで工夫したのは、スモークリング本体の描写と、空気遠近法の表現です。
 スモークリング本体は、Bryce3Dプリミティブのドーナツで表現しています。試行錯誤の結果、スモークリング自身を単独のモデルで描画し、それを背景としてツリーや人物などを配置したモデルを描画することにしました。スモークリング自身は最初からカラーで描くのがうまくいかなかったため、真っ黒の空を背景に白濁したドーナツを配置し、その内部にカメラを入れてレンダリングしました。出来た画像は、空の色をスモークリングの形状に沿って変えるためのマスクとして使いました。
 遠方の樹やジャングルは、個別に遠近感をつけています。まず距離感をつけたいモデルを同位置に複製し、グループ化されている場合はいったん解除します。複製したほうのモデルを3D編集で少しだけ(ここでは0.1%)拡大し、青白色半透明、加算のマテリアルを与えると、あたかも本体が遠方にかすんでいるように見えます。加算マテリアルの透明度等を調節することで自在にかすみ具合を変えられるので、モデル内の実際の位置関係に関わらず遠近感を与えられ便利です。
 周囲の雲は、モデル全体を包む巨大な球体に雲の立体マテリアルを与えて表現していますが、立体マテリアル内部では、他のマテリアルの透明部分や加算処理が正しく表現されないのには閉口しました。樹周辺に局所的に雲を置くのを断念したほか、CARMのジェット末端の仕上がりがきれいにいきませんでした。
 インテグラル樹はmyShade2でモデリングしたもの、人物はshade実用データ集「人の森」に収録されているフィギュアを用いています。

2001/03/20 公開

DATA
[Trees,Humen,CARMs]
1B = 0.05
[Smokering Itself]
1B = 100km


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