なぜ日本は宇宙からの高解像度監視能力を検討しなければならないか

ロンドン・キングス・カレッジ 戦争学講座教授
ブペンドラ・ジャザニ

* 原文が必要な方は御一報下さい


概要

 来るべき平和維持活動における商業地球観測衛星の役割と日本が加盟している多国間軍備管理条約について検討を加えた。商業リモートセンシング衛星によって多くのことが監視できるため、日本はそのような監視活動に参画できるということが結論づけられている。
 これに限らず、日本は平和維持活動のような行為にも参加することが必要になるかもしれない。さらに、日本はいくつかの平和維持条約に参加している。他の条約加盟国が条約で定められたことに違背していないことを検証する必要もある。


商業衛星を使って宇宙から監視を行うことが可能である。

・平和維持活動:大規模の部隊の集結ならびに移動、軍用空港、ヘリコプター基地、戦車ならびに装甲戦闘車両の大規模の展開ならびに移動、軍備の展開手法なども監視できる。
 このためには、光学センサーとレーダーセンサーの両方が必要となる。多くの場合、それぞれの兵器システムは探知できないかもしれないが、それらの展開の変化は上記のどちらかのセンサーを使った変化抽出によって監視できる。移動に限ればレーダーは有効であるだろう。またそれぞれの武器システムの場合には光学センサーと一緒に使うことが有効であろう。

・核兵器非拡散条約:監視すべき主要施設は、ウラン鉱山、ウラン濃縮プラント、プルトニウム生産用原子炉、いくつかの原子力発電所、再処理工場、実験用原子炉などである。以下に宇宙からの主な監視特徴を述べる。

* ウラン鉱山: 温排水、大型輸送用貨物の山、鉱山の通気口、
* 濃縮工場: 電力供給からの熱放射、大きな建物、通常の場合には厳重な防護(能動的・受動的)、
* 原子炉: 熱赤外バンドで監視することで運転中であることの特徴がわかる。同上の施設の周囲の防護
* 再処理工場: 熱放射、大きな建物、厳重な防護


 上記のすべてにおいてマルチスペクトルセンサーが重要な役割を果たす。高い空間分解能と高いスペクトル分解能があることが望ましい。レーダーは、防護柵と能動的防護の探知に有用であろう。全天候型・日夜の監視も可能である。

・核実験禁止条約:たとえば大量の土の掘出、試験関連施設、防護柵を監視することで準備を探知することが可能である。さらに、爆発による地表の変化を監視することができる。核実験禁止条約を監視するにあたっては、レーダーと多バンド光学センサーの両方が有用である。

・化学兵器禁止条約:化学施設の周囲にある警備設備が可能である。運転状況は多バンド光学センサーによって判断できる。一般に、高分解能のパンクロマチック光学センサーは重要である。またこれらのコラテラル(副次的・関連)情報も大変に重要である。

1.導入

 第二次世界大戦以来、およそ31の軍備管理条約・議定書・協定ならびに環境条約が調印された。これらを別表1に掲げる。いくつかの重要な多国間国際軍備管理条約のなかで、日本は9つに加盟している。(表1)過去48年間の間に26の主な軍備管理条約が締結されたというのは非常に印象深いが、それらを丁寧に吟味してみると多くは大きな影響を及ぼす内容ではないということがわかる。しかしながら、過去6年間で状況は変わった。いくつかの条約のもとで、ミサイルや航空機や装甲戦闘車両などの多くの兵器システムが廃棄されつつあるか、すでに廃棄された。もっと最近では、核弾頭の削減も起きている。こうして軍縮プロセスが始まった。

 軍縮が遅々として進まなかった主要な理由のひとつは、どのような軍縮条約の合意内容をも検証する手段の問題であった。この議論の一例は、包括的核実験禁止条約(CTBT)についての議論である。この条約の提案が最初になされたのは1954年にさかのぼる。しかしながら、国連がCTBTについての交渉を開始してよろしいとの指令を受けたのはやっと1993年8月になってのことであった。このように長く遅れをとった理由の主なものとして検証の問題があげられてきた。

 検証の重要性は決してなくなっていない。逆にいくつかの軍縮条約にとっては、十分な検証手段があることが一層重要になっている。最近の国際状況の変化によって、いわゆる検証の国家技術手段(NTM)への厳しい要求が緩められることになった。というのは、1987年以来、いくつかの重要な条約においては、立ち入り検査と航空機による監視がほとんどの加盟国に受け入れられるようになったからである。しかしながら、このような状況にもかかわらず、立ち入り検査と航空監視には自ずと限界があることから、条約で加盟国が合意した条項の適合状況の確認のためにはNTMがもっとも好まれる手段であるのだ。NTMのうちで重要なものが宇宙からの観測である。これまで、アメリカとロシアだけが、そしてある程度までは中国が、この能力を保持してきたが、1995年7月にはフランスが自前の軍事偵察衛星の打ち上げに成功し、独自の能力を持つようになった。しかしながら、NTM衛星からのデータへのアクセス可能性は依然として限られている。一方で、商業観測衛星からの情報は、それを買う金さえあれば誰でもが利用できる。

 この問題は、軍備管理条約のみの監視にとどまるものではない。世界の各地で危機が高まっている地域はいくつもあるし、いくつもの紛争がすでに起きている。平和維持活動に参画する国の数はどんどん増加していっているが、それらについての情報は主にアメリカが集める。アメリカとは別の情報源が開発されることが重要である。日本は世界のことに積極的に参加し始めたので、この地球上で起きていることを当然知らなければならない。さらに、しばしば地域でおきている活動が日本に影響を及ぼす。
 たとえば、1970年代でもっとも重要だった多国間条約は核兵器非拡散条約(NPT:1970年)である。1995年5月に中国は、このNPTの無期限延長に合意した一週間後に、また別の核兵器を爆発させた。北朝鮮の核兵器計画を制限しようとする試みは続いているものの、そのミサイル開発の制限に対してはほとんど努力が払われていない。このような状況であるから、日本は独自の宇宙からの監視能力を獲得することを検討すべきなのである。この手法の最大の利点は、それが非侵入型であることである。宇宙からの観測は観測者と被観測者の間でいかなる合意も必要とされない。

 日本は9つの軍備管理条約と、4つの環境関連協定の加盟国となっている。その中でもっとも重要なものは、NPTであり、化学兵器の開発・生産・保管・使用の禁止とそれらの廃棄に関する条約(化学兵器条約)、将来の包括的核実験禁止条約、核分裂物質とその他の爆発物の生産中止についてできるかもしれない条約である。これらとその他関連する条約ならびに必要とされる監視については表1で検討される。

 しかしながら、平和維持活動と信頼醸成措置(CSBMs)に関連した事項について、まず簡単に検討を加えたい。

表1:日本が加盟している軍備管理条約の検証要求
条約現状 検証要求
南極条約(1961)地域内の活動についての情報交換立ち入り検査(OSI)ならびに航空監視
PTBT(1963)無期限検証については規定がない
宇宙条約(1967)無期限と理解宇宙への打ち上げについては一定の情報が国連に渡される
月ならびにその他の天体における設置物の検査
トラテロルコ条約(1968)無期限立ち入り検査を試みる。IAEAに報告。
NPT(1970)無期限IAEAに報告。IAEAのセーフガード。
大陸棚条約(1972)無期限と理解立ち入り検査
生物兵器(BW)協定(1975)無期限協議と協力
ENMOD協定(1978)無期限協議と協力
非人道的兵器協定(1981)無期限 加盟国と国連の間での情報交換
ウィーン協定(1985)無期限と理解加盟国と国連の間での情報交換
オゾン層に関するモントリオール議定書(1987, 1989)無期限と理解 加盟国と国連の間での情報交換
ラロトンガ条約(1986) 無期限 報告書、情報交換、協議とIAEAセーフガード
CWC(1993)未発効情報交換と協議、OPCWが加盟国の活動を監視

2.平和維持と信頼醸成措置

 地域安全保障については、いくつもの条約が発効しているが、軍備管理・信頼醸成措置・平和地域などを通じてさらなる地域安全保障を実現しようという議論が続けられている。これらは中東、南アジア、東南アジア、アフリカにおける非核兵器地域である。韓半島平和地域というものまですでに提案されている。1983年以来、コンタドラグループと呼ばれるコロンビア、メキシコ、パナマ、ベネズエラの国々が、中央アメリカにおける平和プロセスのために調整活動をしている。コスタ・リカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアもこの中にはいっている。この努力は、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、ウルグアイにも支持 されている。

 1986年6月、コンタドラグループは5つの中米国家に対して地域安全保障にかかわるコンタドラ法を提案した。この法は、外国軍隊の撤去ならびに外部からの軍事圧力除去に焦点をあてている。さらに、加盟国は、他の国の領土から30km以内で展開される軍事行動については30日前に詳細情報を提供しなければならないということが求められている。中央アメリカ地域の外の国を巻き込んだ軍事行動は、法の発効から90日以内にさしとめられなければならない。この措置は、装備の上限と部隊の強度についての合意が導入されるまで延長されうる。

 外国軍隊を巻き込んでの軍事行動に関するその他の制約としては、非加盟国の了解を受けることなく、その国の領土から50km以内の地域に外国軍隊を置くこと、そのような軍事行動は1年間に1回、15日以内に限ること、参加する兵員数を3000人以下とすること、などである。加盟国の遵守状況の検証はこの法のもとで設立される検証管理委員会(VCC)によって行われる。兵器、軍事施設、ならびに兵員の現況・在庫に関するデータの交換もVCCによって行われる。

 このような措置によって、加盟国は、信頼醸成措置(CSBMs)を適用させる地域における軍事組織、人員数、主要兵器と装備システムなどの軍事力に関する情報を毎年交換することに合意できる。さらに、加盟国は、信頼醸成措置を適用させる地域における軍事演習などの軍事行動を事前に通知することに合意できる。

2.1 何を監視するのか?

 上記のような条約が地域を基盤として実現すれば、それらは以下のようなものを探知することを必要とするであろう。

* 兵員の装甲車両による大規模な輸送あるいは上陸訓練などの軍事行動。合意によって、それらの行動が行われうる地域と時期については、あらかじめ通知されておかなければならない。
* 司令部の編隊(方面軍、軍団、師団)、部隊(旅団、連隊)、陸上軍の実戦部隊(歩兵隊、装甲部隊、機甲部隊、機関砲隊、砲兵隊、戦闘エンジニア、陸軍航空隊)
* 戦車、ヘリコプター、装甲戦闘車両、装甲車両に常備された(取り付けた)対戦車誘導ミサイル発射装置、自走式・牽引式大砲、迫撃砲、多装式ロケット発射装置(口径100mm以上)、装甲車両から発射される橋梁
* 戦車、装甲戦闘車両、大砲、戦闘機、攻撃ヘリコプター、
* 滑走路とヘリコプター基地


 何を監視すればいいかの詳細と条約によって制限を受ける装備の詳細を表2に示す。

表2:平和維持活動において何を監視されなければならないか
監視対象 方面軍、軍団、師団、旅団、連隊、歩兵隊、装甲部隊、機甲部隊、機関砲隊、砲兵隊、戦闘エンジニア、陸軍航空隊、戦車、ヘリコプター、装甲戦闘車両、対戦車誘導ミサイル発射装置、自走式あるいは牽引式の大砲、迫撃砲、多装式ロケット発射装置(口径100mm以上)、装甲車両から発射される橋梁、空軍基地、軍用空港、戦闘機、攻撃ヘリ
センサーレーダー
光学可視
赤外線


2.2 軍事装備ならびに施設の特徴について

 平和維持活動は、大規模な兵員の集結と移動、軍隊の展開の態様一般について監視する必要があるだろう。宇宙からは、大規模な軍事行動、空港、ヘリコプター基地、戦車や装甲戦闘車両の展開と移動を監視することができる。したがって、宇宙からこれらのものの特徴を認知し識別することが重要となる。


図1:民間空港におけるいくつかのターミナル配置の例


図2:典型的な軍用空港。Aでは弾薬貯蔵地域が空港に近いが、Bでは武器は主要空港施設から離れたところに保存されている。


表3:空港とヘリコプター基地の特徴
  空港ヘリコプター基地
民間いくつかのアスファルトの滑走路(長さ4.3km)、旅客ターミナル、多数の飛行機が駐機できる施設、駐車場ビルの屋上、民間空港あるいは住宅が密集している市街地にもある
軍用コンクリートの滑走路(長さ2.5km)、
強化シェルター(30×20m、40×30m)
ターミナルビルがない。柵に囲まれた弾薬保存施設、
空港は周囲を柵で囲まれており、対空砲や防空ミサイルで守られている。
人口密集地から離れたところにある。
一本の滑走路からいくつかの短い枝が伸びており、その先にヘリコプターパッドがある。軍用空港にもパッドがある。いくつかの基地は一本の滑走路すらない。(長さ2.5km)

空港

 航空機は重くなり速くなっているため、滑走路の表面を硬くする必要がある。このため、通常はアスファルトかコンクリートを使って造られる。一般に民間空港は滑走路が長く、タクシー路があり(表3参照)、大きな維持管理用格納庫と大きな旅客ターミナルがある。また、空港では、多数の飛行機が貨物の積み込み・荷下ろし用の位置につけるようになっており、旅客が比較的簡単に乗降できるようになっている。民間空港には広い駐車場スペースがあり、安全防護用の柵が厳重ではない。民間空港の場合の、いろいろな旅客ターミナルのレイアウト(配置)を図1に示す。

 これに対して、軍用空港は通常短い一本の滑走路しかない(表3参照)ほか、大型の旅客ターミナルや大規模な駐車場がない。滑走路はしばしばジェットエンジンの排気ガスとタイヤ跡によって黒く焦げたようになっている。滑走路の周りには、通常軍用機のための強化シェルターがいくつもある。(図2参照)さらに、いくつか使われていない駐機施設がある。軍用空港には安全対策の柵があるほか、空港施設の中かあるいは少し離れた地点に周囲を厳重な柵で囲った弾薬貯蔵所がある。貯蔵している弾薬が通常のものか、化学兵器か、核弾頭かによって異なる安全柵が選ばれる。近くに対空砲または対空ミサイル施設があり、軍用空港を防御している。

 いくつかの典型的な軍用機やヘリコプターの形状は、Jane'sの世界航空機識別ハンドブックに紹介されている。これらの飛行機がいるかいないかは、それらが比較的小さいために商業リモートセンシング衛星によっては探知できるかもしれないしできないかもしれない。これは背景と対象とのコントラスト比にも依存する。空間分解能が2mよりいいセンサーを使わない限り、識別は不可能であろう。一方、レーダーを使うことによって、これらの機体が存在しているかどうかは探知できる。


ヘリコプター基地

 基本的にレイアウトには二通りある。滑走路がある基地とない基地だ。滑走路があるものの場合は、補給や兵員や兵器を搬入するためのもので、地表は硬く長さが2.5kmある。滑走路からいくつもの枝別れがありその先にヘリコプターパッドがある。もう一つの場合には、そのような枝状構造はあるものの滑走路がない。通常ヘリコプター用の強化シェルターはない。また、このような基地は、周囲を柵で囲む受動的防御と、対空砲やミサイルという能動的防御によって護られている。
 しばしば軍用空港とヘリコプター基地は、少なくとも一部分は森林によって保護されている。それがさらなる受動的防御を提供している。


戦車

 ロシアの主要な戦闘車両であるT-72を考えてみよう。資料によれば、この戦車のタレーは28cm厚の鍛造鋼板であり、車体は20cm厚の層状鋼板である。砲を含んだ長さは9.24mで、車体は6.4m。幅は4.75m、高さは2.37m。戦車は野外に配備されることもあれば、格納庫に収められていることもある。通常、戦車の演習場は戦車の配備されているところの近く にある。この演習場は、2kmほどの長さの土のレーンと500mほどの長さの標的レーンからなる射撃用レンジを持っているかもしれない。演習地域には長さ1kmほどのいくつかの平行のレーンがある。
 装甲人員輸送車や主要戦車の例は、Jane's 装甲・砲年鑑に紹介されている。これらの出版によれば、車両の長さは長さ7.85m、幅2.8mとして紹介されている。本に書かれている情報によって、解析が可能となる。

 いくつかの軍事装備の特徴と置かれている環境について表4にまとめた。

表4 武器展開地域に関するいくつかの特徴
戦車戦車を格納するための長い格納庫
重量車両の轍がはっきりしている演習場
射撃練習場
森林の中にある場合もある
一般的に防護柵がある
人口密集地域から遠くにある
近くに兵舎がある
軍用機一般に滑走路は一本
防護柵により立ち入り制限
武器貯蔵所が空港内か厳重な防護柵をして離れた森林の中にある
強化格納庫
大型の輸送機は探知できるかもしれない
ヘリコプター補給用の一本の滑走路
たくさんのヘリコプターパッド
防護柵があるかもしれない

3 日本の軍備管理条約への加盟

3.1 南極条約(1961年)

 この条約は特定の地域に適用されることを目指した条約の最初である。南極条約は、軍事基地・施設の建設、軍事作戦、あらゆる兵器の実験を禁止している。(第1条 1項)条約5条1項において、いかなる種類の核爆発実験も核廃棄物の投棄も禁止されることが特記されている。
 南極条約の目的を遂行するために、加盟国はその地域における活動についての情報を交換しなければならない。(条約第三条) さらに現地立ち入り調査も許される。(条約第7条)条約は重要であるが、条約によって地域が非核化されているために、どこかの国はこの地域で核実験を行ったり核兵器を配備するという可能性は極めて少ない。したがって、検証もそれほど重要ではない。


3.2 部分的核実験禁止条約(1963年)

 大気圏内・宇宙・水面下での核実験を禁止する条約は、部分的核実験禁止条約と呼ばれており、1963年に調印され、その年に発効した。条約加盟国は、大気圏内・宇宙・水面下での核兵器の実験や疎保田の爆発を、禁止し、避け、行わないことを約束する。(条約第一条) こうしてこの条約は地下核実験は許容するのである。
 このような重要な条約において、いかなる検証の手段も条約内で規定されていないということは驚きである。しかしながら、アメリカと旧ソ連は、条約加盟国が条約で定められた事項を遵守していることを監視する宇宙からのシステムを開発した。たとえば、アメリカはVELA衛星と呼ばれる12の衛星を打ち上げた。
 これらは高度11万kmの軌道で運用された。これらは、宇宙での核実験を探知するためのX線とγ線と中性子に反応する放射線探知器を備えていた。衛星には爆発の化学的要素からの放射スペクトルを解析するための光学センサーも搭載されていた。大気圏核爆発に特徴的である閃光は、衛星に搭載された「バングメータ」という光学センサーで探知されていた。(注5)

(注5) 大気圏内での核爆発反応は大変に複雑である。しかしながら、バングメータに関する限りふたつの主な反応がある。まず、兵器の爆発の総エネルギーの50%から75%を含むX線が、兵器の周辺2〜3mの空気に吸収されて、空気を大変な高温度にする。それからすぐに、爆弾の破片がイオン化されて、爆発による残りのエネルギーをもって拡散する。これと、X線の吸収の結果の高温の空気が、最初の火の玉を形成する。外周が大変に急速で拡大するところに、大変に強い衝撃波が生み出される。これが冷たい周囲の大気に移動して、とても明るいガスを産み、目に見える火の玉を形成する。しかしながら、この衝撃ガスは透明でないので、その背後からくる濃密なプラズマが見えにくい。火の玉が最大規模になって目にも鮮やかになって消えていくときに、この衝撃の濃密さは、なくなる。衝撃が弱まり、衝撃を受けた大気が冷めてくると、背後の熱いプラズマが透けて見えるようになる。こうして、火の玉の明るさは二回目のピークに達する。放射によるエネルギーの喪失と衝撃ガスと冷気の混合により、火の玉の明るさは急速に低いレベルに落ちる。光の分布曲線の一般的形状は爆発力や兵器デザインとは関係なく一定であるが、最大・最小に達する時間は爆発力の関数となる。


 地下核実験を監視するのに特に適している衛星による手段は3つある。
 観測衛星は核実験の準備状況を探知することができる。通常実験は直径1.5mから3mの垂直に掘られた穴の中で行われる。時には直径が3.5mにもなることがある。穴の深さは、200mからおよそ1500mに及ぶ。こうして、少なくとも1万立方メートルもの土と岩が掘り出されなければならない。さらに、爆発が起きると、実験データは電線や光ファイバーケーブルを通じて試験抗のそばに置かれたトレーラーに電送される。

 次に、リモート・センシング衛星のパンクロマチックと多スペクトル センサーを利用して、爆発による植生や他の地表面の変化を抽出できる。一千万分の一秒の間に放出された膨大なエネルギーは、核物質の周囲の温度をあっという間に数百万ケルビンにまで上昇させ、周りにあるあらゆる物質を融解させる。かなりの圧力(数キロ気圧)が生まれ、当初の穴を広げることになる。

 衝撃波があらゆる方向に広がり始め、地震波が生まれる。深さと核物質 の爆発力によって、爆発の上の地表は上方にふくらみ、表面に亀裂が現れる。亀裂は地表のゼロ地点を中心にして放射状に円周をえがき、REGIONALな構造と平行に亀裂が現れる。円周状の亀裂は、ゼロ地点を中心にして予定された地域の中に現れる。

 穴の拡大が止まったときに、融解した岩やその他の物質は下方に沈んで 裂け目をつくり、地表面は再び平坦になるか、若干盛り上がった状態になっている。数秒して、あるいは何時間かたって、もし裂け目が地表にまで達すると、穴は崩壊して表面にクレーターのようなものを残す。万一クレーターがないにしても、爆心地の上の地表に亀裂が現れる。
 これらの地表面の効果と植生に対する影響によって、地下核実験を監視できる。アメリカのにあるユッカ盆地にあるネバダ核実験場では、およそ80%の核実験においてクレーターが形成された。

(注7 M N ガルシア「ネバダ実験場における表面効果の地図化と量的研究のための写真測量」、アメリカ写真測量学会誌PE&RS第55巻8号、1989年8月 1197−1201ページ参照)


 第三の方法は、地下核実験を、その電離層への影響によって探知するというものだ。連鎖的で複雑な物理的課程が、大気圏内あるいは地下核実験によって始まる。爆発によって発生した音波は、大気を通じて上昇する。それらは高い高度の低密度にいたるまでひろがり、90kmから300kmの電離層に達する。音波は、電離層内の電子を妨害する。これは地上設置型のレーダーか、衛星搭載のレーダーサウンダによって探知できる。

 もしCTBTが調印された場合には、衛星による観測が今よりももっと重要になるということを記憶しなければならない。なぜならば、CTBTのもとでは、試験が実施されたことだけを探知すればいいからだ。爆発の規模についての知識は必要とされない。衛星が検証の役に立つのは、かなりのものである。

 このようにして、監視できるものとしては、

* 核実験の準備の最中に取り出された大量の土。試験抗の周りに円周状に配置されたセンサー。こうして岩石や土砂の山と、円上の小道が探知できる。
* しばしばゼロ地点の周辺に、防護策が作られるが、これらも探知可能 である。
* ゼロ地点の地表面におけるクレーターや、植生の増大や欠如といった 爆発にともなう表面の変化。

 最後の点については、核実験後の地形の変動をレーダーインターフェロメトリ技術によって探知することの検討が行われているという報告がある。


3.3 宇宙条約(1967年)

 月や他の天体を含む宇宙の探査と利用のために国家が行う活動を規制する原理についての条約は、主として宇宙平和利用について規定するが、1967年10月に発効した。この条約の唯一の軍備管理的要素は、第4条であり、条約加盟国は「核兵器やその他の大量殺戮兵器を地球を回る軌道に配備しない、それらの兵器を天体上に設置しない、それらの兵器をいかなる方法においても宇宙に配備しないことを約束した」。宇宙・月・天体が核兵器・生物兵器・化学兵器から自由になれば、いずれにしてもそれらの環境にそれらの兵器を配備する意味がないということを理解しておくべきだろう。おそらく、このために、この条約の中には吟味された検証手段がない。
 条約第十条には、「国が打ち上げた宇宙物体の飛行について」現地検査を行う可能性が論じられている。しかしながら、そのような打ち上げを事前に通知することについて何の規定もないので、結果としてそのような打ち上げを監視することを要請する可能性はない。しかしながら、第十一条には、加盟国は「国連事務総長と国際科学学会に対して、最大限可能で実行可能な範囲内で、そのような活動の性格、遂行、場所および結果を報告することに合意する」とある。この条文は、現状どのように履行されているかといえば、情報は打ち上げの実行からはるか遅れて国連事務総長のもとに届けられる。
 さらに、かりに情報が国連のもとに届けられても、その宇宙飛行の本当の性格を推量することはできない。
 この条約の中には、さらに、「条約加盟国は、月や天体を含む宇宙において、悪い汚染を避けるべく、研究を行う」(条約第九条)とある。実際のところ、加盟国による宇宙活動によって、使用済みロケットの爆発や宇宙兵器の実験のために、宇宙空間には危険なデブリが生まれた。第九条によって、そのような活動に関連した情報を配布することが決められているが、いまだかつてそのような行為が行われたためしがない。したがって、少なくともデブリを監視する検証システムがなくてはならない。


3.4 NPT(1970年)

 NPTは英国、アメリカ、旧ソ連によって1968年に調印されたにもかかわらず、発効したのは1970年3月になってからであった。条約において、条約に加盟した核兵器所有国は、「核兵器またはその他の核爆発装置を、、、移転しないことに、またそれらの核兵器またはその他の核爆発装置を直接または間接に管理することに同意する。また、核兵器非所有国が核兵器またはその他の核爆発装置を製造するか取得すること、あるいは管理することを、いかなることがあっても、補助、励まし、導くことがないことを約束する」(第一条)とある。

 一方、NPTに加盟している核兵器非所有国は、核兵器またはその他の核爆発装置を受け取らない、製造あるいは取得しない、あるいはその製造の補助を求めたり受けたりしないことを約束する」とある。(第二条)

 5つの核兵器所有国の中で、中国とフランスは、長い間NPTに参加しないできた。しかしながら、1992年3月9日に、中国はNPTに加盟した。同様にフランスは1992年8月3日に、加盟の公文をロシア連邦と英国とアメリカに渡した。英国、アメリカ、旧ソ連と同様に、フランスは1991年9月12日にIAEAと保護手段協定を結んだ。このような協定のもとで、これらの4つの核兵器所有国は、その保護手段手続きを国内の民間核施設に適用することを自主的に申し入れた。

 NPTの第十条の2によれば、「この条約の発効後25年後に、会議を開いて、条約の効力を永久に続けるか、それとも更なる固定期間の延長とするかを決定する」とある。こうしてNPT見直し・延長会議が1995年4月17日から5月12日までニューヨークで開催された。この会議には、当時の178の加盟国のうち、175ケ国が参加した。加盟国は、3つの大統領提案に沿って、無期限延長を投票することなく採択した。この3つの提案とは、「条約の見直しプロセスを強化する」(文書 NPT Conf 1995/L4)、「核非拡散と軍縮の原理と目的」(文書 NPT Conf 1995/L5)、「核兵器の非拡散についての序婦約の延長について」(文書 NPT Conf 1995/L6)であった。

「核非拡散と軍縮の原理と目的」において、ふたつの重要な手段が合意された。
 まず、「軍縮会議によって、1996年までに普遍的で、国際的かつ効果的に検証可能な包括的核実験禁止条約の交渉を終えること。CTBTの発効を待つ間、核保有国は最大限の抑制を行うこと」。二番目の約束は、「核兵器やその他の核爆発装置のための核分裂物質の製造を禁止する非差別的で普遍的に適用される条約のための交渉を即刻開始し早急に締結すること」または、その削減である。


* 以下、続く