Hallicrafters S-20R
Sky Champion

1939年に発売されたハリクラフターズ社のゼネカバ受信機で、メタル管とGT管による高一中二構成となっている。 カバー範囲は広く0.54MHz〜44MHzとなっている。

同社を代表する受信機の一つで、他のWebでもよく紹介されている。 かのスミッソニアン博物館にも収蔵されている名機だ。 この受信機が発表された1939年、ハリクラのラインアップは、最高位のSX-23(Skyrider 23)、そしてS-20Rと同じデザインでクリスタルフィルタを内蔵したSX-24(Skyrider Defiant)、本機S-20R(Sky Champion)があり、同じデザインのメインダイヤルを持っている。 本機は中級機という位置づけだろう。 下位にはS-19R(Sky Buddy)があり、高周波増幅無し、中間周波1段の5球スーパ風というか、回路的にはS−38の前身と言えるが、透過型のダイアルと側面のウィングは省略されてしまった。

○にhのハリクラフターズのロゴがスピーカグリルとメインダイアルに配されている。
パネル中心のSメータの様に見える窓はバンドスプレッドダイアルで、冗談なのか、メータではゼロ調整のネジが付いている部分にはダミーのポッチまで付いているが、これも○にhのロゴなのだ。 メインダイアルエスカッションの上にも、ウィングで飾られたS-20Rのロゴが配されている。 スプレッドダイアルの下にもSky Champion のロゴが誇らしくプリントされている。 これでもかという、オーバーデコレーションが時代を映している気がする。

S−40に通じる円形の透過型ダイアル、そして側面のアルミ製サイドバンドが特徴である。 このサイドバンドは円形のダイアルと一体となってウィングエンブレムを構成している。 左のSX-23のデザインが原型だろう。

SX-23のダイアルの上左はS-Meter、上右はメインダイアルに連動するロギングスケールと思われる。
中心の円形エスカッションと併せて現在も米海軍機に使用されている国籍マーク、ウィングエンブレムを構成しているのだろうと思っている。 両側のウィングの下部はアルミの飾り帯で、S-20Rでは大きくして左右のボディーサイドに配置したという訳だ。 一連のシリーズに「Sky」という名前が付けられていることから、先端技術である航空機のイメージを重ねたのだろう。 当時のハリクラも最先端技術を搭載したハイテク製品だった。
更に、ノブは総て飛行機のタイアを模したと思われるデザインが施されている。 円周には航空機用のタイヤの溝と思われる意匠が施されている。
 

ハリクラフターズの高一中二受信機は、このS-20Rで完成されたようだ。 以降 最後のSX-110まで、基本的回路、配置など殆ど変化していない。
アマチュア無線では、1966年発売されたトリオ9R59Dの終焉までの30年間、この構成が引き継がれていく。 同時期のハマーランドがHQ120,National社がNC100という高級受信機を出していたのに比べ、ハリクラは大衆路線で人気を博した。
当時のカタログでは$50位なのだが、どの位の価値なのだろう? 当時のアマチュアにとっては相当な金額であったと想像される。


 本来は白色だったと思われるスケールですが、アンバーに変色して、これがよく似合っている。 明るいところで見ると、かなりゴツイ受信機だが、灯を暗くすると、この雰囲気が堪らない。 ビンテージの良さだ。

以前のオーナによって、リキャップや不良な抵抗の交換がされていたので、基本動作に問題は無かった。 感度が低かったが、トラッキングを取り直すと一番上のバンド以外は非常に良好な結果になった。 一番上のバンドは「測定結果」の項で示したように、非常に感度が悪い。 トラッキングでアンテナコイルの同調が非常に甘いので、多分何らかの原因でQが下がっている。 ショートしかかっているのだろう。 この修復は後日の課題にして、早速使ってみた。 バンド 1〜3の感度は現在の基準にして充分だ。 この手の真空管式高一中二受信機の常として、非常にノイズが少ない。 AMの受信音はHiFiと言っても良い、伸びやかな音で、聞いて疲れない。  航空管制のSSBもRF-GAINを絞ることによりまずまずの状態で聞こえる。 BFOをOnにしたり、RFーGAINを絞ると自動的にAGCが外れる様になっているのが普通だが、この受信機では別スィッチになっているので、一応AGCが使える。 

選択度は、7MHzのアマチュアバンドのSSBを聞くには全く役に立たないくらい広いが、最近の空いた短波帯の放送を聞くには充分で、メカフィルの機器では得られない良好な音質が得られる。 音楽がそれなりに快適に聞こえる。

航空機のタイヤを模した、総てのコントロールのツマミは滑りやすく、使いにくい。  後継のS-40では、9R-59にも採用され、現在でも売られている、細かい軸方向の溝の掘られたツマミに変えられた。 使いにくいが、レトロなデザインという面ではハンサムなので赦そう。

私の持っている受信機の中では、S-22Rと並んで最も古い物だが、保存状態の良いこともあり、現在でも一応通用する性能を持っていることに驚かされる。  佳い受信機だ。

詳細写真
測定結果
回路図

RETURN