護衛艦について3

 

昭和18年9月25日、絶対国防圏が設定された。千島、小笠原、内南洋、西部ニューギニア、スンダ、ビルマを含んだ圏域を概定し、東部ニューギニア、北部ソロモン、マーシャル、ギルバートの放棄が決定された。これにより、放棄戦域の守備部隊には過酷な運命が待ちうけることになった。

船舶被害は増加の一途をたどり、新規輸送船の建造は遅れていた。あらゆる資源が不足し、前線では連合軍の前に敗退を続けていた。本格的に動き出したアメリカ工業界の軍需生産は巨大な戦力として太平洋を押し渡り、日本軍の前に現れ出していた。

昭和18年も押し詰まったころになって漸く海上護衛問題は重大な問題として認識されるようになった。昭和18年11月15日の海上護衛総司令部の設置、昭和18年12月15日の護衛専門航空隊901空の編成、同日の護衛空母の海上護衛総司令部部隊編入、昭和19年4月1日の特設船団司令部の設置などが相次いだ。

 

海上護衛総司令部の設置

昭和17年4月10日の第一、第二海上護衛隊発足いらい、海上護衛に関する中央機構の設置については議論されていた。昭和18年9月25日の連絡会議と9月30日の御前会議を経て、海上護衛強化の議が決定された。

種々の案が討議され、幾多の紆余曲折があった。最初に総鎮守府制案が議論され、10月8日頃海上交通司令部・海上総隊案、次いで10月18日頃に海上交通総司令部・海上護衛艦隊司令部案が審議され、翌19日には仮称護衛総隊案が研究された。そして海上護衛総司令部案に落ち着き、11月15日正式設置の運びとなった。

 

主要職員は

司令長官 大将 及川古志朗

参謀長 少将 島本久五郎    などなど。以下省略。

 

任務は

1、                                      第一、第二海上護衛隊を麾下に収め、その担当航路を中心とする船団護衛に任ぜしめること

2、                                      海上交通保護及び対潜作戦に関して、各鎮守府、警備府司令長官を指揮すること

 

海上護衛総司令部設置時における第一海上護衛隊の兵力

駆逐艦:若竹、呉竹、早苗、朝風、朝顔、芙蓉、刈萱、夕凪、帆風

海防艦:松輪、佐渡、對馬、擇捉、若宮、干珠

水雷艇:眞鶴、友鶴

哨戒艇:第二号哨戒艇、第三号哨戒艇

特設艦船:長壽山丸北京丸、崋山丸

 

海上護衛総司令部設置時における第二海上護衛隊の兵力

駆逐艦:追風、朝凪、隠岐

海防艦:福江、御蔵、平戸、天草、滿珠

水雷艇:鴻、鵯

特設艦船:長運丸

 

本書「海上護衛戦」のなかで、海上護衛総隊の設立遅延を嘆く声が多くみられたが、開戦から昭和18年11月までの海上交通保護活動は、権能・陣容不足の軍令部第12課の担当であり、商船を十分守れなかったのは当然だった。

12課は昭和17年10月軍令部の第1、2課の中から分離独立した。海上交通保護は第12課の掌事であり、担当部員として少佐1名を配された。作戦兵力は第1課が握っており、第12課は分離の結果かえってやりにくくなった。(第12課長松永敬介大佐回想)

海上護衛総隊の設立は2年遅すぎた。海上護衛総司令部は天皇直属のもとに連合艦隊司令長官よりも先任の及川大将を司令長官に配し、護衛実戦力を有し、各鎮守府・警備府を区処するという強大な権能を備えた。

 

901海軍航空隊の編成

昭和18年12月15日、対潜作戦及び護衛を主任務とする第901海軍航空隊(司令:上出俊二中佐)が新たに編成され、海上護衛総隊司令部直属となった。

従来は護衛専門の航空隊は存在せず、各基地の航空機が必要に応じてこれに充てられた。海上護衛総隊が発足当時航空兵力は各鎮守府警備府所属の海軍航空隊の兵力に過ぎず、その実勢は12月1日現在、艦爆36、艦攻80、二座水偵48、三座水偵64、哨戒機(中間練習機)24、合計252機(補用機含む)、11個航空隊。はなはだ準備状態は遅れており、また物質的にも貧弱だった。

そうした状況を打開するために901空は編成された。館山基地で編成され、兵力は96式陸攻24機、97式飛行艇12機を基幹とした。初めて大型航空機が護衛作戦に起用された記念すべき出来事である。長大な航続距離で長時間・広範囲の護衛・対潜作戦が可能になり、後には電探・磁探等の搭載することになる。

 

航続力:96式陸攻  160ノット 3363浬

     97式飛行艇 130ノット 3159浬

 

901空の兵力は昭和19年3月1日には陸攻48、飛行艇32機に増強され、6月中旬には本部が東港に進出、本格的な護衛作戦に従事するようになった。

昭和20年1月1日には953空等を統合、同年5月には各機種合計212機を保有するまでに成長していた。

 

護衛空母の配備

昭和18年12月15日、雲鷹、海鷹、大鷹が、同月20日、神鷹の計4隻の特設空母が海上護衛総司令部部隊に編入された。

軍令部の考えとしては、基地相互間の距離の離れた横須賀-小笠原-サイパン方面の護衛に従事させたい意向であったが、直ちに護衛空母としてそれらが活躍できるわけではなかった。

雲鷹、海鷹、神鷹は輸送作戦に従事しており当分そのまま、大鷹は損傷修理のために12月21日から入渠するという状況であった。その他に、護衛空母の護衛をする護衛艦艇は不足しており、さらに空母搭載機にしても在来機の流用であり、搭乗員の対潜護衛訓練も十分ではなかった。そこで、搭載機の整備・補充・搭乗員訓練のために、第931海軍航空隊の新設となった。

初めて船団護衛に空母が使用されたのは昭和19年3月下旬、海鷹が南西方面航路で作戦に従事したのが初めとなった。その後残り3隻も第一海上護衛隊に配備され、主に門司-シンガポール間の重要船団の護衛に当たった。

 

931海軍航空隊

昭和19年2月1日、佐伯基地に開隊し、海上護衛総司令部に配された。護衛空母搭載飛行機隊の訓練及び整備が目的であり、兵力は97艦攻48機。

 

第四海上護衛隊の設置

昭和19年にはいり、南西諸島方面の防備強化のため、4月10日、第四海上護衛隊が設置された。

旧佐世保防備戦隊のうち海上護衛関連部隊を抽出して編成され、佐世保鎮守府司令長官の麾下に属し、鹿児島-沖縄間の護衛を主任務とした。当初司令部は奄美大島に置き、マリアナ失陥後8月9日沖縄に移動した。

兵力は沖縄海軍航空隊、友鶴、眞鶴、第15号掃海艇、第49号・58号駆潜艇、富津丸など。

 

第三海上護衛隊の設置

第四海上護衛隊編成の1ヶ月後、本州南岸における船舶被害の増大に対応して、東京湾-紀伊水道間の海上交通線確保を任務として5月20日編成された。横須賀鎮守府司令長官の麾下に編入された。

兵力は駒橋、成生、第14号駆潜艇、、第46号哨戒艇、第26掃海艇(第1第2京仁丸、第18八幡丸、第10昭和丸)、伊勢防備隊(特駆潜3隻、特掃2隻、特敷1隻)。大阪警備府との協力態勢の円滑化のため、司令部は大阪に置かれた。B-29による機雷投下が激しくなった昭和20年4月15日解隊された。

 

対潜訓練隊の編成

護衛艦艇の不足から、増勢された新造艦は配属後すぐに船団護衛作戦に投入された。しかし、敵潜の技術向上と、新造艦の艦長・幹部が経験不足の予備仕官だったことから、その訓練未成ぶりが暴露されてきた。

そこで、昭和18年秋ごろから対潜訓練の強化が叫ばれ出した。昭和19年1月16日、呉防備戦隊内に対潜指導班が設置された。新造護衛艦艇を一時呉防備戦隊に編入し、対潜基礎術力練成のための教育訓練並びに戦備実施の計画指導を行った。訓練期間は当初15日間で、2月1日-15日まで、皮切りは第15号掃海艇に対する訓練であった。

昭和19年8月1日、特設対潜訓練隊が正式に発足し、呉防備戦隊に編入された。以後、これが対潜指導班の任務を強化実行した。基地は佐伯。

8月15日現在の所属兵力は次のとおり。

呂号第68潜水艦、呂号第500潜水艦、鵜來、大東、沖縄、第21・27・29・38・43・56・130号海防艦、第41号掃海艇、第56号駆潜艇、網代(敷設艇)

昭和20年に入ると、空襲激化により日本海側の七尾湾の南湾に基地を移転、富山湾を訓練海域とした。いずれにしろ、この頃には十分な訓練期間は取れなくなっていた。

 

対潜掃蕩隊第31戦隊の編成

当戦隊は敵潜水艦を捜し求めてこれを撃滅しようという機動攻撃的兵力であった。昭和19年8月20日に編成され、連合艦隊に編入された。第3水雷戦隊の兵力を基幹とし、竹級駆逐艦(丁型)、海防艦、対潜航空兵力よりなった。

所属兵力は以下のとおり

昭和19年8月20日現在

五十鈴(旗艦)、第30駆逐隊(卯月、夕月、秋風、皐月、夕凪)、第43駆逐隊(竹、梅、松、桃)、干珠、満珠、笠戸、三宅、第22号海防艦。

9月1日には同日編成された第933海軍航空隊(三座水偵16)が編入され、竹級駆逐艦の竣工を待って追加2隻、また、6隻より編成された第63駆逐隊が追加された。

 

同年11月25日、当時旗艦として行動中の「霜月」が敵潜の雷撃で沈没し、司令部も全滅した。12月1日新たに司令部が再建された。12月15日の時点での兵力は以下のとおり

五十鈴(旗艦)、第30駆逐隊(卯月、夕月、〔秋風:11.13沈〕)、第43駆逐隊(竹、梅、槇、桃、桐、榧)、第52駆逐隊(檜、樅、杉、樫、〔桑:11.25沈〕)、第21・22・29・31・43号海防艦、第933海軍航空隊。

31戦隊司令部は、当初マニラに、次いで昭和20年1月23日高雄に移転した。

 

護衛艦艇の増勢

昭和16年11月に海防艦30隻、昭和17年6月に海防艦34隻、昭和18年6月には海防艦244隻の新規建造が決定したのは以前に述べた。

既成艦船の整備、爆撃等のため、新規建造は遅れ気味であった。そのため、昭和18年12月以降の建造予定分を整理し、昭和19年5月15日にR線表として決裁された。

爆撃、資材不足、人員欠乏のため、予定隻数の建造はできなかった。一方、建造期間短縮のために研究は続けられた。このため擇捉型・御蔵型(海防艦、昭和18年度竣工)では一年以上要した工期も、御蔵型16隻中9隻目の「日振」以降の簡易急造型は5ヶ月に短縮され、改D計画建造艦においては、4ヶ月以内に短縮されるものもあった。

R線表

年度\艦種

海防艦

掃海艇

駆潜艇

駆潜特務艇

19

188

4

5

88

285

20

130

0

0

0

130

21

0

0

0

0

0

318

4

5

88

415

 

昭和18年12月から翌年10月までの海防艦建造数

昭和1812月 0

昭和19年1月 淡路

昭和19年2月 笠戸、能美、倉橋、第1・2・3・8・10号

昭和19年3月 第4・6・5・7・9・11・12・14・16・18・20・22・24号

昭和19年4月 千振、第13・15・17・19号

昭和19年5月 屋代、草垣、第26・28号

昭和19年6月 日振、第30・32号

昭和19年7月 昭南、鵜來、第21・25・27・43号

昭和198月 大東、沖縄、第29・32・33・34・38・42・44・46・130号

昭和199月 久米、第23・39・51・52・54・56・61・132・134号

昭和19年10月 生名、新南、屋久、第35・36・41・50・63・64・66・112・138・205・207号

計 75隻

 

5月に石垣、壹岐、6月に淡路、第15・24号が、8月に草垣、佐渡、松輪、日振、9月に平戸、第10号、五百島、10月に第21号が沈没したため、海防艦の純増加数は62隻であった。

 

昭和19年10月末における第一海上護衛隊の兵力は以下のとおり。

艦船番号

艦艇名

艦船番号

艦艇名

艦船番号

艦艇名

艦船番号

艦艇名

1

汐風

24

47

7号海防艦

70

 

2

春風

25

崋山丸

48

8号海防艦

71

 

3

呉竹

26

 

49

9号海防艦

72

32号海防艦

4

朝顔

27

長壽山丸

50

11号海防艦

73

33号海防艦

5

 

28

第三拓南丸

51

 

74

34号海防艦

6

昭南

29

第八拓南丸

52

 

75

 

7

沖縄

30

17号掃海艇

53

13号海防艦

76

 

8

鵜來

31

18号掃海艇

54

14号海防艦

77

 

9

 

32

 

55

 

78

38号海防艦

10

 

33

38号哨戒艇

56

16号海防艦

79

 

11

 

34

 

57

17号海防艦

80

 

12

 

35

130号海防艦

58

18号海防艦

81

 

13

擇捉

36

132号海防艦

59

19号海防艦

82

 

14

對馬

37

 

60

20号海防艦

83

 

15

 

38

 

61

21号海防艦

84

 

16

千振

39

 

62

 

85

 

17

屋代

40

 

63

23号海防艦

86

46号海防艦

18

占守

41

1号海防艦

64

 

87

 

19

大東

42

2号海防艦

65

25号海防艦

88

 

20

倉橋

43

3号海防艦

66

26号海防艦

89

 

21

御蔵

44

 

67

27号海防艦

90

 

22

45

 

68

28号海防艦

91

51号海防艦

23

 

46

6号海防艦

69

 

92

 

 

艦種別内訳

駆逐艦4、海防艦40、水雷艇2、掃海艇2、哨戒艇1、特設砲艦2、特設駆潜艇2 計53隻

 

作戦指揮下艦艇

特設空母 神鷹、練習巡洋艦 香椎、海防艦 新井崎・能美、掃海艇 第1、19、21、41、101号、駆潜艇 第21駆潜隊

(第17・18・37・38号)・第23号駆潜艇

このほか、南西方面所在駆逐艦等も随時作戦指揮下に入れられた。

 

航空隊兵力配備

基地

基本配備兵力

可動兵力

装備

東港

二式飛行艇×1

同×1

電探機×1

97式飛行艇×5

×4

電探機×4

高雄

96式陸攻×6

×6

電探、磁探機×1、磁探機×5

一式陸攻×3

×2

電探機×2

零式輸送機×1

×1

 

93式中練×1

×1

 

ラオアグ

96式陸攻×3

×3

電探、磁探機×2、磁探機×1

マニラ

96式陸攻×6

×6

電探、磁探機×4、磁探機×2

三亜

96式陸攻×4

×4

電探、磁探機×2、電探機×1、磁探機×1

ミリ

96式陸攻×3

×3

電探機×3

小祿

96式陸攻×5

×5

電探、磁探機×3、磁探機×2

大村

96式陸攻×3

×3

磁探機×3

97式飛行艇×3

×3

電探機×3

館山

96式陸攻×4

×4

電探、磁探機×2、磁探機×2

二式飛行艇×1

×1

電探機×1

97式飛行艇×1

×1

電探機×3

零式輸送機×1

×1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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